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【セミナーレポート】業務効率化を最大化する自治体DX~強い都市を造るための環境づくりとは~

自治体DXの重要性・緊急性は、今さらいうまでもないこと。とはいえ、何からどう始めるべきか、“道筋”の決定に迷っている自治体も少なくないようです。そこで今回は、各地の成功事例からDXに向けたヒントを探ります。
当日の内容を概要版でお伝えします。参加できなかった方は、次回のセミナー開催にご期待ください。


概要

◼タイトル:業務効率を最大化する自治体DX~強い都市を造るための環境づくりとは~
◼実施日:2月16日(火)
◼参加対象:自治体職員
◼登録者数:171人
◼プログラム:
Program1
都市に求められるデジタル・レジリエンス
Program2
DX時代に対応する公衆無線LANサービスの構築ポイント
Program3
自治体DXと戸田市の取り組み


Program 1:都市に求められるデジタル・レジリエンス
~変革の時代をどう生きるか~

国内屈指の先進性を誇る、渋谷区の業務DX。しかし、ほんの4~5年前まで、業務デジタル化に向けた“かけ声”はかかるものの、第一歩が踏み出せない状況だったそう。同区における自治体DXの仕掛け人の1人である澤田伸さんが、現状までの道のりについて語ってくれた。

<講師>

渋谷区副区長(CIO/CISO)
澤田 伸さん


変革の時代、自治体はどう生きるべきか

「変革の時代」との認識を持ってDXに取り組んでいる自治体は、非常に少ないように思えます。できない理由を述べるのは得意だけれど、「どうやればできるか」を考えるのが苦手。「TO-BE(あるべき姿)」を語れない。議論はするけど行動を起こせない。そんな自治体職員が、残念ながら非常に多いのです。実は渋谷区も、私が副区長に就任した平成27年頃は同じ状態でした。

変革を本気で実現するためには、自治体職員と“同じ釜の飯を食べていない”チェンジメーカーを起用するしかありません。私が考えるチェンジメーカーの必須条件は、「今、始める人」。デジタル技術は日進月歩の勢いで進化しているのですから、今、始めないと意味がないのです。さらに、常識にとらわれない若い人をどんどん起用していかねば、社会は変わりません。

「人が本来やるべきこと」に専念できる業務環境

渋谷区は、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像とする「渋谷区基本構想」を平成28年10月に策定。その基本構想に基づき、現在、フェーズ2(令和2年度~令和4年度)の事業に取り組んでいるところです。フェーズ1から現在までの取り組みの一部を、以下に抜粋します。

・産官学の共同出資で「一般社団法人渋谷未来デザイン」を設立
・30人のクロスセクターを育てリーダーの養成を図るプログラム「渋谷をつなげる30人」の実施
・Microsoft365 E5、Microsoft Azureなどの業務環境を庁内に実装
・ERP(業務基幹システム)を刷新し、現行の「渋谷区情報システムネットワーク」の基盤を構成
・AIやOCR、RPAなどの導入による業務生産性(時間生産性)向上

DXに取り組もうとする際、生産性ROI(投資対効果)の面から“割に合う・合わない”の議論が起こりがちです。しかし、DX関連の投資額と直接人件費、業務コストとの単純相関では、ROI算定はできません。AIやロボット導入により、職員対応では実現できない「365日・24時間サービス」を提供することで、どれだけの付加価値創出効果が生まれるか、来庁不要で諸手続きが完了することで、お客様(住民)側のコスト低減効果がどれだけあるかを算定すべきなのです。

ちなみに、“電子国家”と呼ばれるエストニア共和国では、GDPの2%に相当する社会コスト低減が実現できているそうですが、これを日本に当てはめると、膨大な額の社会コスト低減になるのはいうまでもありません。DXによる自治体業務の改革は、住民サイドの社会コスト改革でもあるわけです。

「DX」から「UX(アーバントランスフォーメーション)」へ

職員の不要な業務を無くすことで、いかにコミュニティに密着できるようにするか。これが、自治体DXの本当の価値であり、都市における幸福感を高める方策でもあります。DXを通じて、新しい都市社会(スマートシティ)への変革を図ること、つまり「UX(アーバントランスフォーメーション)」の実現が、渋谷区の今後の目標です。

ただし、都市のデジタル化・スマート化を図るためには正しい順番というものがあります。まず、サービス提供側(自治体業務)のDXを進め、お客様側(住民)のペインポイントを解消するためのDXを実現させる。そして、提供サービスの持続的高度化、便利化・省力化を図る。同時に、市民側におけるデジタル・デバイドを解消するための対策と人的サービスにも力を注ぐ。そうした取り組みを進めてステークホルダ同士の信頼関係を築き、高いQOL(生活の質)を持続的に提供できる都市経営を実現させねばなりません。

[参加者とのQ&A] ※一部抜粋

Q:「変革」を起こすためにはリーダーが必要だと感じますが、それにふさわしい人材が乏しい場合、民間から入れるべきでしょうか。
A:民間コンサルタント等の起用は、決して悪くない施策だと思います。ただし、どこの会社の誰に、どの程度のコンサルを頼むかが問題で、「週3回のアドバイザリー」くらいの民間起用なら止めた方が良いでしょう。

Program 2
DX時代に対応する公衆無線LANサービスの構築ポイント

自治体住民の利便性アップはもちろん、観光客などへのサービス充実、自治体職員の働きやすさなどにもつながる公衆無線LAN整備。まず、何から始めるべきか、どのように活用できるか、どんな設備を選ぶべきか、「フルノシステム」の中山 裕隆さんが解説する。

<講師>

(株)フルノシステムズ営業技術部西日本営業技術課
技術主任 中山 裕隆さん

無線LAN環境を整備して「何」を提供するのか

無線LAN環境の整備に取り組む際、明確にしなければならないことは、「誰に対して何を(どのようなサービスを)提供したいのか」という点です。例えば、自治体職員の業務効率向上やペーパーレス化を目指すのであれば、庁舎内だけを無線LANでネットワーク化し、会議室や議会場でもノートPCまたはタブレットを使えるようにするだけで十分でしょう。職員や議員が使用する個人端末は、無線LAN内蔵のノートPCやタブレットへと徐々に移行しており、基幹業務サーバやプリンタ複合機などは移動しないので、これまで通り有線LAN接続を利用すればよいわけです。

一方で、体育館や公民館などの出先機関でもWi-Fiを活用したり、体育館で開催されているイベントを中継したりといった用途を考えているのであれば、それら公共施設にも無線LAN環境が必要です。さらに、住民サービスの一環としての公衆Wi-Fi整備や災害対策、観光地や地域イベント会場でのフリーWi-Fi整備まで構想するのであれば、複数の基地局や中継局が必要になります。

簡単操作で「00000JAPAN」を発動可能に

当社が行った無線LANのインフラ整備のうち、岐阜県富加町の事例を紹介します。同自治体の場合、「町役場や公民館、学校などの公共施設で使える住民向け公衆無線LANサービス」を目的にしており、多台数端末をスムーズかつ安定接続できるWi-Fi環境の整備と、発災時には迅速に防災Wi-Fiに切り替えられるシステムの導入が命題でした。

中山間地なので、どのように情報配信するかを調査した上で、町内6カ所の公共施設にフリーWi-Fi用設備を設置。平成31年4月から、当社のアクセスポイント「ACERA」27台が本格運用を開始しています。特徴としては、災害用統一SSID「00000JAPAN」に対応しており、専用切り替え装置「Wi-Fiモードセレクター」の鍵をまわすだけで、パスワード無しで誰でもWi-Fiに接続できる環境をつくったこと。この装置は同町役場の総務課で管理しており、集中豪雨などの発災時、避難所となった各施設で開放する予定です。

システム導入の際は5つのポイントに留意

無線LAN環境の様々な活用シーンを想定しておくことも大切です。屋外でも活用する可能性がある場合、Wi-FiとLTE回線との混在環境も検討した方がスムーズに利活用できます。また、ルーターをはじめとする機器類は、真夏の高温下・真冬の極寒時でも安定的に動作するよう、一定以上の耐環境性能を持ったモデルを選んだ方がいいでしょう。長く使う機器ですから、運用サポート体制の充実度を事前に確認しておくことも重要です。

そうした観点から、無線LANのインフラ整備前には、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

1.多台数&安定通信を実現するAPの選択
2.セキュリティ面で信頼性の高い機器
3.APを一括管理できる監視機能
4.将来的なシステム拡張が容易な機器
5.導入後、安定通信が維持できるサポート体制

このうち2の「セキュリティ機能」は、あまりに高すぎると逆に使いづらい場合もありますし、4の「システム拡張性」も、どういったシーンで活用することになるかを、事前に考えておかねば機種選定がしにくくなります。冒頭で述べたとおり、「誰に対して何を提供したいのか」をしっかり考えておくことが重要だということです。


[参加者とのQ&A] ※一部抜粋

Q:フリーWi-Fiの認証は、どの方式が多く使われていますか?また、どの認証方式がお勧めですか?
A:一般に多く使われているのは、SSL認証でアカウントなどを使って認証する方法です。高速道路のSA・PA等のフリーWi-Fiも、このやり方が検討されています。その他、色々な方法がありますが、認証方式を複雑にすると、管理する側も入力する側も面倒になるので、そのあたりの条件を考慮して選ぶといいでしょう。

Program 3:自治体DXと戸田市の取り組み

「デジタル社会形成基本法案」が施行されるのに伴い、全国の自治体に対しても、マイナンバー関連を中心に様々な分野の情報デジタル化が求められています。デジタル化の本来の目的である、行政業務の変革や住民サービスの拡充を実現するために、どのような計画策定が必要なのか、戸田市の大山水帆さんが解説します。

<講師>

戸田市総務部次長兼情報政策統計課長
総務省地域情報化アドバイザー
大山 水帆さん

「何から始めたらいいか」を考える

デジタル関連法案が、第204回通常国会に提出されました。法案のうち、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」と、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」が、私たち地方の公務員に直接関わってくる内容で、今後、自治体業務のあり方が目まぐるしく変化することになるでしょう。

そうした中で、全国の自治体にDX推進が求められていますが、その際、“デジタル化すること”だけを目的にすると、本来の目的が実現できないケースが少なくありません。DX本来の目的とは、デジタル化による業務改善を展開することで、さらなるコスト削減を図るとともに、新たなサービスを創出することで働き方改革や社会そのものを、より良い変革につなげること。つまりDigitalization(デジタライゼーション)を図ることだと再認識する必要があります。

では、デジタライゼーションを図るためには何をすべきか。「情報システム標準化」に関しては、令和7年度までに移行が義務付けられているので、法律にもとづいて粛々と取り組まねばなりません。「デジタル手続法」関連も、“地方公共団体等は努力義務”とされてはいるものの、コロナ禍の現在、先行事例を参考にしながら積極的にオンライン化を進めねばならない事柄です。優先順位をはっきりさせ、“待ったなし”のものから優先的に着手することが重要です。

複数部課署を横断する「全庁的」体制が必要

ペーパーレス、はんこレス、テレワークなどについても、それぞれの自治体の実情に合わせた取り組みを推進せねばなりません。その際、複数の部課署にまたがる施策を進めるわけですから、マイナンバー制度導入時と同等の、全庁的な体制で対応を図る必要があります。戸田市の場合は、現在までに以下のような施策を進めました。

【行政情報の最適化】

・RPAを活用した共通基盤システムの導入
・統合仮想基盤の導入
・窓口機能の拡充
・テレワーク、リーチワークの推進

【地域情報化の推進】

・「いいとだメール」の導入
・防災DX
・災害情報システムの導入
・公共施設にフリーWi-Fiスポット提供
・AI総合案内サービスチャットボット活用など
・オープンデータの推進

このうち「防災DX」では、市内の公共施設20カ所で、通信暗号化された無料Wi-Fiスポット(いいとだスポット)を整備。平成31年2月からサービスを開始しました。「Japan Connected-free Wi-Fi」との認証連携で、市内100カ所以上で公衆無線LANに接続でき、自治体としては全国で初めて、災害時の「00000JAPAN」にも対応できる体制としました。

実際、令和元年10月の台風19号上陸時には、市内28カ所の避難所に3,849人が避難し、うち約45%が00000JAPANに接続・利用していますから、避難所におけるWi-Fi環境の整備は必須であることのエビデンスになるのではないでしょうか。また、荒川堤防が決壊した場合、市のほぼ全域が3m以上水没するという予測にもとづき、「被災者支援システム」「災害時情報共有システム」の構築も進めました。

災害時、自庁データセンターが使用不可となった場合でも、セキュアモバイル端末で災害対応業務を継続できる体制を整えた。


「デジタル市役所」を目指したDX構想

当市は令和2年11月、“デジタル市役所を目指す”ことを正式に宣言しました。自治体DXを通じて、全市民が新たな生活様式において、安全で安心な暮らしや豊かさを実感できるまちづくりを目指す…という内容です。そのための施策を戦略的に行うため、地方自治体向けITコンサルティングを行う「ITbookホールディングス」と包括連携協定を締結したほか、今年1月から、住民票、印鑑証明書などの申請手続きを、来庁不要で完了させられるサービスを開始しました。

令和3年度には「デジタル戦略室」を新設し、「戸田市第3情報化推進計画」に着手。スマートフォンなどで完結する各種手続き、AIチャットによる行政サービス案内、SNSの活用とプッシュ型通知サービスなど、圧倒的に利便性の高いサービスの実現を目指します。それらと並行して、今年3月末頃を目途に「自治体デジタルトランスフォーメーション協議会」の設立総会開催を検討しており、国のデジタル庁に自治体の声を届けるための、提言・提案を行っていく計画です。


[参加者とのQ&A]※一部抜粋

Q:どの業務の「デジタル化」から進めるべきか、優先順位はどのように決めれば良いのでしょう?
A:義務付けられることが決まっている業務、特に「標準化」に関する事柄を第一優先とすべきです。オンライン手続きに関しては、住民サービス向上の観点から第二優先、そして三番目が業務のBPRで、デジタル化を通じてどんなふうに業務改革を進めるか、今から考えておくべきでしょう。



 

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