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福岡県小郡市

【小郡市 加地良光市長】「対話」と「官民連携」でまちづくり【前編】

2017年4月、福岡県小郡市のトップに就任した加地良光市長。テレビ局時代の経験を生かし、
「つながるまち小郡」をテーマとして、市民との対話や官民連携に力を入れてきました。1期4年間の任期満了を前に、これまでの市政を振り返り、その成果や大切にしてきたこと、今後の展望までじっくり伺いました。前編と後編に分けてお届けします。

後編はコチラ

全てを市民起点で考えるために、対話を重視

―市長になられたきっかけを教えてください。

私はもともと福岡のテレビ局でアナウンサーや報道の仕事をしていました。ニュースで地方創生シリーズを担当し、20数自治体を取材したときのことです。各自治体が様々な取り組みをされていて面白いと感じた一方で、自分が20年近く住んでいる小郡市は遅れているのではないかと危機感が募ったのです。今やらないと遅れてしまうという思いから、2017年4月の市長選に手を挙げました。

―市政運営にあたって、特に意識されていることは何でしょうか?

あらゆることを市民起点で考えていくために、市民との対話を最も重視しています。小郡市は人口6万人ほどのベッドタウンで、私のように新しく来た住民が、昔から住んでいた住民の人口を上回る時期にきています。それぞれの住まいは、川を挟んで新興住宅地と昔ながらの農村地に分かれており、なかなか交流する機会がありませんでした。また、新しい住民は市外へ仕事に行き、まちに関わることが少ないと感じていました。

小郡市役所 外観

―なるほど、全国的によくある状況かもしれませんね。

はい、ですから皆さんと問題意識を共有し、一緒にまちを良くしていくために、対話を続けています。新しい住民と昔からの住民にも交わっていただくことで、新しい力を生み出していきたいと考えています。

また、新しい住民は福岡都市圏に仕事に通う方が多く、いろんな分野の専門家がいるのですが、まちに参加する入口があまりなかった。そういう方たちの能力を活かさなければもったいないし、多様性をミックスしていくことが大事だと思っています。

技術や知恵がある民間と連携して、課題を解決

―小郡市では、官民連携にも積極的に取り組まれています。なぜでしょう?

これまでの自治体は、国や県の指示を受けながら、ある程度決められたやり方で仕事をこなすというのが一般的なやり方でした。しかし今は財政が厳しいのに加えて、自治体それぞれに多様な課題があり、住民が求めることも多様化して、自治体だけでは解決できない状況に。そのため、民間の知恵やノウハウをお借りしたいというのが大きな背景です。

特に今、話題になっているデジタル化などは、役所内にノウハウのある職員がいないわけですよ。専門性のある方とどう連携していくかがとても大事で、官民連携こそ、新しい課題を解決するための前提条件になっていくのではないでしょうか。

―市長に就任される前から、市では官民連携をされていましたか?

いえ、ほぼなかったですね。自治体としては、民間のビジネス感覚に一線を引きがちで、癒着していると思われたくない、議会から指摘されたらどうしようなど、妙なバリア感があったのではないかと思います。
私が市長になってから、いろいろな企業の方が来られてお話を聞くときなどに、職員に同席してもらうことから始めました。社会には知恵やノウハウを持っている方々がたくさんいて、連携することで私たちの課題を解決できるのではないか、何かチャレンジできないかと意識してもらうようにしました。

―これまでに実現された官民連携の事例を教えてください。

身近なところでは、「防犯カメラシステム支援自動販売機」があります。2018年にNPO法人「元気種っと」と協定を締結し、市内に防犯カメラシステム支援自動販売機を設置してきました。自販機を設置するのはNPOで、その売上の一部を活用して、防犯カメラの設置・維持管理を行っています。防犯カメラの映像は、警察などから求められた場合、市から映像データを提供します。

市は自販機の設置場所を提供し、コストをかけずに防犯カメラを設置できます。また、飲料メーカーはNPOを支援すること、自販機の利用者は飲料を買うことで、安全・安心のまちづくりに貢献できます。知人たちと話し合っていた中で出てきたアイデアですが、この自販機の仕組みは好評で、今では九州各地に広がっています。

防犯カメラシステム支援自動販売機

積極的に外に出て、新しい情報をキャッチする

―連携先を選定する際には、何を大切にされていますか?

お持ちの技術やノウハウがユニークなことはもちろん、トップの考え方、社会貢献をどのように考えられているかということを重視しています。ビジネス色を押し出されると、やはりうまくいかないこともあります。

―加地市長は全ての連携案件に関わっていらっしゃるのですか?

全てではありませんが、僕に話をしに来てくださる方が多いので、そのまま一緒にやらせてもらったりします。私はいつもオープンに、トップでも気軽に会うという姿勢を貫いています。

福岡市などで行われている異業種の勉強会にも、なるべく行くようにしています。気になる方がいたら名刺交換をして、「またお話を聞かせてください」というのは、取材していた前職と同じ感覚で。そうしないと、小郡まで新しい情報が入ってこないんですよね。役所の中って、そこで完結しようと思えば一応完結できるけれど、あえて出ていき、新しい動きをつかむように心がけています。

「特定非営利活動法人 元気種っと」との協定締結式

―新しい動きを捉えて、小郡市の課題解決に結びつけられないかを考えるということですね。

はい、小郡市としては「フィールドを提供するので、一緒にやりませんか」と話を進めることができます。自治体の強みは信頼感。特にベンチャーにとっては自治体と組むことが一つの成果になりますし、お互いにプラスの関係を築けることが大事だと思っています。

知識を身につけ話を聞いて、早めに判断する

―市長の姿勢に触発されて、職員さんも変わってきましたか?

はい、いろんな課題を共有しチャレンジする姿を見せてきたことで、「自分たちもやっていいんだ」という感覚が生まれてきていると思います。役所外の人とつながり、面白い動きをしてくれる職員が、若い人を中心にどんどん出てきています。

―官民連携を生み出す組織づくりや成功させるコツについて、教えてください。

私はもちろん職員たちも、外の人たちと壁を作らず、どんな話でもまずは聞いてみるという姿勢を持つことが大事だと思います。専門的な話で難しそうだと感じても、とりあえず会って聞くうちに分かることもあり、それが自分の自治体にどう役立つのか、どんな接点があるのか投げかけて考えるようにしています。

一方で、相手の技術やノウハウを使えるかどうかを判断するためには、日頃から知識を蓄えておく必要があります。役所の外には広大なマーケットがあり、ビジネス感覚を鍛えるために業界紙やビジネス番組などを見て、今どんなトレンドがあるかという感覚を持っておきたいものです。すると、相手の話を聞いたときに「芽が出始めている分野だ。これに乗っかれば…」とイメージを膨らませられるでしょう。

あとは、「できる」「できない」「いつまでに判断する」「やるならいつか」などを早めに返答すること。相手の時間を拘束するのは失礼になりますから。ビジネスの世界ではスピード感が欠かせないのに、自治体が「来年の予算のときに何とかしましょうか」なんて言っていると、相手は嫌になっちゃいますよね。
(後編へ続く)


加地 良光(かじ りょうこう)

1964年11月13日生まれ、東京都出身。埼玉大学経済学部卒業後、NBC長崎放送入社。その後、TVQ九州放送にてアナウンサーなどを経験し、2017年から小郡市長に就任(1期目)。
「つながるまち小郡」をテーマに、市民との対話を中心に市民起点で考え、まちづくりを進めるという市政運営に取り組む。
マニフェストに掲げる施策の中から、重点的に取り組む事業をピックアップし、47施策にまとめた「つながるまち小郡アクションプラン」の実現に向けて邁進中。
2020年11月には、地方創生時代における優れた政策提言の向上に資する取組を表彰するマニフェスト大賞(マニフェスト大賞実行委員会主催)において、第15回マニフェスト大賞エリア選抜<九州・沖縄エリア>に認定された。
 

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