取組概要
○学校・幼保・市民センター等132施設の点検・清掃・修繕等をまとめて委託
○全ての日常修繕(概ね130万円未満)を含む包括管理としては 全国初の事例
○元請事業者はマネジメントを担い 実作業は多くの協力会社(地元中心)が行う
(地元事業者の仕事が減るものではない)
○受託者は公募型プロポーザル(6者参加)の結果 日本管財株式会社
取組期間
検討・準備期間 平成27年度~平成29年度
業務開始 平成30年度
※本記事は愛媛県主催の「行革甲子園2020」の応募事例から作成しており、本記事の内容はすべて「行革甲子園」応募時のもので、現在とは異なる場合があります。
背景・目的
【目的】 公共施設の安全性の向上、長寿命化、管理の効率化
【背景(これまでの課題)】
(1) ノウハウ不足で非効率な施設管理
・大半の施設では技術職員は配置されておらず、技術的なノウハウが不足
・所管課ごと業務ごとの管理で契約件数が多く仕様もバラバラ
(2) 施設の老朽化の一方で更新費用は不足
・市有施設の2/3が築30年以上だが 全施設の更新には投入できる財源の2倍超が必要
・施設の統廃合には多くの関係者の理解が必要で時間がかかる
・その中でも何とか施設に係るコストを減らす必要がある
(3) 業務は増加する中職員(特に技術職員)は減
・ここ10年で正規職員は約350人(15%)減
・中核市移行等で事務職員・福祉等専門職員は増加に転じたが、技術職員は今後も減少の見込み
取組の具体的内容
(1) 対象施設
(2) 対象業務・金額(公募型プロポーザル提案上限額)
(3) 業務開始までの経過
(4) 年度ごとに対象施設・対象業務を拡大
(5) 実施体制
(6) 修繕実施フロー
特徴(独自性・新規性・工夫した点)
(1) 「職員減」となるコスト削減を果たすため日常修繕を取り込む
○施設包括管理の実施にあたっては 担当職員の「仕事の余裕」を生み出すレベルではなく 「職員減」につながるコスト削減を果たすため 先進自治体の多くで包括管理の対象となっている点検・清掃に加えて 件数が多く 現場確認等の手間もかかる日常修繕を全て包括管理に取り込むこととした(下図)
○日常修繕を取り込んだことで 施設から連絡のあった不具合や点検で発見した不備にスピーディに対応でき 包括管理の一番の目的である施設の安全性の向上の効果を高めることができた
(2) 「内製化」で安価で柔軟な修繕を実現
○受託者決定後 業務開始までの協議の中で 軽微な修繕を安価で柔軟に行えるしくみを構築
○修繕業務全体に占める内製化の割合
○内製化で約3割の件数を実施しているが 支払金額は5%未満
○正味の作業時間1時間単位の積算となっているため「現場確認等のついでに修繕」が安価に行えている
取組の効果・費用
(1) 主に人件費の削減(7名減)により4,800万円/年のコスト削減
・全ての日常修繕を取り込んだことで 各施設所管課の減員(8名)と包括管理担当の増員(1名)により 差引7名を減員(他部署への異動) マネジメント経費を加味しても4,800万円/年のコスト削減となった
○包括管理導入によるコスト削減効果
(2) 市の技術職員と専門事業者のノウハウにより適切な判断でスピーディに修繕
・受託者の修繕担当者が概ね連絡を受けた翌日までに現場確認
・現場確認した情報をもとに包括管理担当とすぐに協議し 課長が判断 (技術者同士なので話しが早い)
・内製化で応急修繕し 本修繕は協力会社に依頼するケースもあり (施設運営への影響を最小化できる)
(3) 受託者から付加サービスを享受
・【情報共有システム】市と受託者間のやりとりはクラウド型の情報共有システムと電子メールで完結
・【短中期修繕計画】受託者による予防保全巡回点検を踏まえた5年間の修繕計画を受領
(4) 対象施設の満足度が向上
・数値化しづらい包括管理実施後の効果を可視化するため施設への満足度調査を実施
・初年度は「良くなった・少し良くなった」が約7割
・2年目は「良くなった」だけで約5割 「良くなった・少し良くなった」は7~8割
・「変わらない」の多くは 修繕案件が少ないコミセン等の小規模施設
○対象施設への満足度結果
(5) 関係者のコラボによる修繕が実現
・施設の満足度が高まり 協力を得やすくなったため 組織の縦割り越えた 関係者のコラボによる修繕が実現
(6) 公共施設マネジメントに必要な情報が自動的に集まるしくみ(構築中)
・施設保全マネジメントシステムを導入し 点検結果等を紙の報告書からデータベースでの報告や
システムへの直接入力に移行していく
・点検結果や修繕履歴など施設マネジメントに必要な情報が自動的に集まるしくみを構築し
公共施設等総合管理計画 個別施設計画のうち 保全計画の要素を担っていく
公共施設マネジメントの土台となるため 全ての自治体におススメ!
取組を進めていく中での課題・問題点(苦労した点)
(1) 職員減が導入の条件
・まずは多くの先進自治体と同様 点検・清掃のみの包括管理を提案したが
当時の副市長から「それで人は何人減るねん」とダメ出し 職員減が可能になることが包括管理導入の条件となった
・結果的には修繕を含めることで より効果の高い包括管理につながった
(2) 対象施設に含めること 人を減らすことに 理解を得る
・庁内調整で包括管理自体には賛同は得やすかったが(総論賛成)
自分の課が対象になることには反対もあり(各論反対) 対象施設は賛同が得られた施設を優先して決定した
・さらに対象施設の所管課から職員減をする話しには反発が強かったが
幸運にも関係部局長が同期同士であったため その絆にも頼って調整した
(3) サウンディングを参考にマネジメント経費を計上
・プロポーザルの提案上限額は従来の契約実績額をベースに積算したが
マネジメント経費は従来委託していない部分であるため 市内部に積算の根拠がなかった
・そのためサウンディング調査で9事業者から聞き取りを行った
・なかなか回答いただけない事業者もあり 聞き取り結果も0~5,000万円と差が大きかったが
マネジメント経費の予算を獲得する有力な根拠になった
今後の予定・構想
(1) 修繕品質を高め より安全・安心な施設に
・施設・施設所管課との情報共有・連携性の向上
・協力会社の質・数の充実(真の意味での地元業者の育成)
(2) さらなる業務拡大
・年度ごとに対象施設・対象業務を拡大していく
・技術力を有し 施設の状況が分かる者が 責任を持って判断する体制を確保する
(3) 公共施設マネジメント全体への貢献
・公共施設マネジメントに必要な情報が自動的に集まるしくみの構築
・データを分析しやすい形で一元化することで施設の存続・廃止の判断にも活用しやすくなる
他団体へのアドバイス
施設包括管理は、施設の安全性の向上と事務負担の軽減に効果的なだけでなく、各種の点検結果や修繕履歴など公共施設マネジメントに必要な情報が一元的に蓄積される点も大きなメリットである。公共施設マネジメントの土台となるため全ての自治体におススメなのだが、日常修繕を含めることでその効果を最大限に高められる。
導入自治体も少しずつ増えているので、まずは先進自治体のコピーで十分だと思う。受託者と協議をしながら進めれば地元事業者の仕事が減ることもない。事前調整でいくつかのハードルがあるが、一部の施設や業務から導入し、段階的に広げていくことも可能なので是非取り入れていただきたい。
取組について記載したホームページ
https://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/kenzenka_shitsu/shise/nyusatsu/h29houkatukanrigyoumuitaku.html
問い合わせ先
兵庫県 明石市 財務室財務担当
078-918-5011