バイオマス利活用政策にも対応可能なコージェネ設備
首都圏を中心に多くの自治体が、2050年までに温室効果ガス(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを目指す「ゼロカーボンシティ」を表明している。目標達成に向け、それぞれの自治体が推進中だが、それを後押ししてくれそうなのが、「三菱日立パワーシステムズ」の業務・産業用燃料電池システム「MEGAMIE(以下、メガミー)」だ。
※下記はジチタイワークスVol.10(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]三菱日立パワーシステムズ株式会社
官民一体となった取り組みが重要視されるCO2削減対策。
平成27年に合意されたパリ協定と、それにもとづくIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書において、「気温上昇の幅を1.5度に抑えるためには、2050年までにCO2の実質排出量をゼロにすることが必要」という目標が示された。
平成27年に合意されたパリ協定と、それにもとづくIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書において、「気温上昇の幅を1.5度に抑えるためには、2050年までにCO2の実質排出量をゼロにすることが必要」という目標が示された。
これに伴い、CO2発生の主因の一つである火力発電の稼働率を抑えるため、節電に力を入れる自治体や民間企業が増えている。ただ、今や電力は、都市機能や生産活動の維持に必要不可欠なエネルギー。節約には限界がある。
そんな中で、大型工場や商業ビルなど、大量の電気を消費する施設を中心に問い合わせが増えているのが、燃料電池とマイクロガスタービン(内燃機関)とを組み合わせることで高い発電効率を実現した、250kW級熱電併給(コージェネレーション)システム「メガミー」だ。メガミーを採用することで、従来の発電システムと比べてCO2排出量を半減させ、低・脱炭素社会構築にふさわしいエネルギー創出に貢献できる。
ガスタービンとの組み合わせで燃料を無駄なく電気に転換。
燃料電池は燃料を燃やすのではなく、燃料と酸素との化学反応によって電気を発生させる設備だ(下図参照)。メガミーに用いられているのは、化学反応を起こさせる“セルスタック”にセラミックスを使う固体酸化物形燃料電池(SOFC)。一部の家庭用発電装置や燃料電池自動車の固体高分子形燃料電池(PEFC)が、水素ガスしか燃料にできないのに対して、SOFCは、すでにインフラが整っている一般的な都市ガスやLPガスも電気に転換できる。また、電力会社から供給される電気の場合、燃料エネルギーの60%近くが、発電から市街地など消費地まで送電する間に失われている。それに対してメガミーは、電気を使用する施設の内部や敷地内に設置できることで、送電によるエネルギーロスがほとんど発生しない。
さらに、燃料電池部分だけでなくマイクロガスタービン部分でも発電できるハイブリッド構造で、タービン排熱による蒸気や温水も得られる。「この構造のおかげで、53%LHV※の発電効率と73%LHVの総合効率を実現しています。総合効率で同等の製品もありますが、発電効率の高さは特筆できるレベルだと思います」と三菱日立パワーシステムズの岸沢さんは自信のほどを語る。
「平成29年の販売開始以降、民間施設への納品がメインでしたが、CO2削減は国や自治体がリードすべき課題。今後は庁舎や公立施設向けにも積極的に活用してほしいと考えています」。
※LHV(低位発熱量)。燃料が燃焼し、仕事に変えることができる熱量。
将来のエネルギー転換政策や自然災害にも備えられる。
環境省や国土交通省が推進中のバイオマス利活用政策に対応可能な点も特徴の一つ。現在、下水汚泥や食物残渣などのバイオマスをメタンガスに変え、エネルギーとして利用する取り組みが進められているが、SOFCを採用するメガミーならメタンガスをそのまま電気エネルギーに変えられる。「将来的には、電力の多くを水素と燃料電池とで生み出す時代が訪れるといわれています。しかし、そうなるまでの過渡期には、従来の都市ガスやLPガス、バイオマス由来のガス、水素を並行して使わねばなりません。メガミーなら、そのいずれにも対応でき、将来的には再生可能エネルギー由来の水素100%燃料によって、CO2ゼロを実現する可能性もあります」と岸沢さん。
令和元年9月に発生した台風15号では、千葉県を中心に90万戸以上が約12日間にわたる停電被害を受け、災害に備えた電力供給体制の整備も自治体の急務となっている。そうした点からも、大規模自家発電設備へのニーズは、今後ますます高まることになりそうだ。
三菱日立パワーシステムズ 燃料電池事業室 企画計画グループ長 岸沢 浩さん
画期的な熱電併給で次世代を担う!
MEGAMIEの強みとは
燃料電池とガスタービンの組み合わせで発電
燃料電池反応を励起させるため、運転温度を約900度とするSOFC。一般的なコージェネ設備の場合、排熱ガスを利用して温水を作るだけだが、メガミーはそれをマイクロガスタービンに送ることで、燃料電池とガスタービンの2段階で電気を発生させることができる。
熱利用が少なく電気利用が多い施設向け
一般的なコージェネ設備と比較して、メガミーは熱よりも電気発生比率の方が高いので、電気利用が多い施設に向いている。
今後の導入拡大に向けた取り組み
1.九州大学での長期かつ安定運転を確認
販売開始に先立ち、実証初号機として平成27年から九州大学(福岡市)に設置。その後、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業での実証も経て、市場投入をスタート。
2.SOFCの特性を活かした活用法も提案可能
例えば大量の発酵ガスを産生する酒造工場や、排煙から水素を精製しやすい化学工場などに設置する場合、それらをSOFCの燃料として活用できる。それらの設置環境の場合、都市ガス消費量を抑える発電を提案することもできる。
3.災害時の自立運転も検証済み
災害などで発電所からの電気供給が絶たれた際、自立運転に切り替えられることを実証実験により検証済みで、今後も継続的に検証を行う計画。また、250kW級システムで住宅300世帯の電力をまかなうことも可能だという。
CHECK
発電効率の高さで「理事長賞」を授賞
コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)が選ぶ「コージェネ大賞2019」で、メガミーは技術開発部門の「理事長賞」を授賞。審査の結果、消費燃料に対する発電効率の高さが評価された。