
マイナンバーカードを活用した防災スーパーアプリ
平成23年の東日本大震災で多くの県民が避難生活を送った宮城県。当時の状況を教訓に、防災対策の一つとして防災スーパーアプリを導入。地域ポイント事業などを実施しながら、県民への普及を推進している。
※下記はジチタイワークスVol.39(2025年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]ポケットサイン株式会社
企画部
デジタル政策推進監 兼 副部長
髙橋 寿久(たかはし としひさ)さん
震災時、県民の避難状況や必要物資を十分に把握できず、課題が残った。
「東日本大震災では苦い経験をしました。特に沿岸部では大勢の人が避難所にいたのですが、当時は、どの避難所にどのような人が、何人いるのかを全く把握できませんでした」と、髙橋さんは振り返る。震災発生直後から各市町村は支援の最前線となり、県ではより広域な支援や、避難者情報ダイヤルのコールセンター開設に着手していた。しかし、各避難所から届く名簿は全て手書きで未整理の状態。人海戦術で名簿をデータ化するのに、約2週間を要したという。
インフラが混乱する中で、命綱となる支援物資の配布にも問題が生じた。「全国から様々な支援物資が集まりましたが、供給側と避難所側のニーズにはギャップが生じていたのです。例えば、乳幼児がいる避難所にはミルクやおむつが必要なのに、その情報が届かず、必要としない場所に届けられてしまうこともありました」。県内の避難所は最大で1,300カ所を超えていたそうだ。今後また大きな災害が発生した場合、各地に点在する避難所から必要な情報をいかに迅速かつ正確に収集し、必要な物資を把握すればいいのか。県ではこの課題を解決するため、令和4年に防災スーパーアプリを活用した実証実験を行った。
スムーズな避難所受付と同時に、年齢などの情報がデータ化される。
このアプリは、総務省から公的個人認証サービスにおけるプラットフォーム事業者の認定を受けた「ポケットサイン」が開発したものだ。アプリをダウンロードしてマイナンバーカードを読み込めば、氏名・住所・生年月日・性別が登録され、オンラインで本人確認が可能になる。さらに、アプリ内で“地域ポイント”などの機能とも連携して活用できる。
実証実験では、同アプリを使った避難所の受付を実施した。受付場所に大きく掲示した専用の二次元コードを避難住民役の職員がスマホのカメラで読み込むだけで受付が完了し、データは自動的にリスト化される。この実験で100人の受付がわずか2分強で完了し、住民と職員双方の負担が軽減されることが分かったという。また、同アプリには本人以外の家族情報も登録できるため、家族で避難した場合に、一括で受付できる利点もある。
同県はアプリの利用登録を促すため、地域ポイントを付与するキャンペーンを実施。「アプリをダウンロードし、防災と地域ポイント機能の利用登録をした人に、3,000円相当のポイントを付与しました」。ポイント事業の実施には、利用できる店舗の確保が不可欠だ。商工団体や事業者の協力を仰いで地道に拡大に努めた結果、1,250を超える店舗で利用可能に。「ある程度の認知度になると、口コミやSNSなどで拡散されるようになり、事業を開始した令和6年11月時点では約13万人だった登録者数が、令和7年3月には県の人口の約30%を占める約66万人となりました」。
日常的に利用してもらうことが災害時の備えの一つになる。
令和7年度も知事が先頭に立ち、アプリの普及拡大を推進。12月までに登録者100万人を目指して、7月から同様のポイントキャンペーンを開始した。同時に、ほかの事業やイベントなどでポイントを活用する施策も進行しており、経済振興に果たす役割も期待する。しかし「目的は、あくまでもアプリの普及にあります」と髙橋さん。「平時に使っていないものは、災害時に使うことはできません。各市町村にも、避難訓練などでアプリを実際に使ってみるようお願いしています」。平時からアプリを通して避難所情報を共有することや防災についての意見交換を行うことも、県全体の備えにつながると考えているそうだ。
髙橋さんは「東日本大震災から10年以上が経過して、当時の震災対応を知らない職員が増えてきました。県民にも職員にも“いつか災害は起きるから、自分事として考えなきゃいけない”と訴えつづけたいですね」と力を込めた。
↑二次元コードは画像をクリックorタップでも開くことができます。
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