ジチタイワークス

秋田県仙北市

通院できない住民のもとへ、医療を届ける仕組みを築く。

診療設備を搭載した医療MaaS専用車両

仙北市は令和6年2月に医療MaaS(マース)※1車両を導入した。医師でもある市民福祉部の市川さんが所長を務める「市立西明寺(さいみょうじ)診療所」と連携して運用し、将来的には、ほかの市立病院との連携も目指すという。

※1 医療に移動手段を組み合わせたサービスのこと(MaaS=Mobility as a Service)

※下記はジチタイワークスVol.39(2025年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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仙北市
市民福祉部
西明寺診療所
左:所長 市川 晋一(いちかわ しんいち)さん
右:保健課
課長 渡辺 直弥(わたなべ なおや)さん

高齢化や過疎化、移動手段の減少など医療提供体制に課題を抱えていた。

秋田県の中山間地域に位置する同市は、2.5人に1人が高齢者で、単身や高齢者のみの世帯も多い。市内には同診療所のほか、2つの市立病院などの医療機関が13施設ある※2。しかし、施設の偏在や常勤医師の不足など、医療提供体制は厳しい状況にあるという。加えて、近年では路線バスの廃止や運転免許証の自主返納などにより、日常の移動に困る高齢者が増えている。その影響は高齢者の受診状況にも及び、“通院できない”という理由で治療が中断してしまうケースも少なくないそうだ。

同診療所がある西木地区は、全世帯の約4分の1が高齢単身世帯であり、過疎化も進んでいる。この地域の医療を支えているのが市川さんだ。「私と3人の看護師で、日々の外来から訪問診療まで対応しています。訪問診療は非効率な上、雪道などの移動には不安もありました」。同市では平成24年からデマンドタクシー制度を導入しているが、最寄りの停留所までの移動すら困難な高齢者も多いのが現状だ。「訪問診療の提案をしても、家の中を見られたくないなどの理由で断られることもあります。住民の健康寿命を延ばすためにも、必要なときに適切な対応ができるよう、検査や治療ができる機器を運ぶ医療MaaSに取り組む必要がありました」と話す。

※2 令和6年8月時点

 

専用車両が患者のもとを訪れ、診療所の医師とつなぎ診察する。

導入に向けては、市長をはじめ同診療所と保健課が中心となり検討を進めたという。保健課の渡辺さんは「車両は、山間部や雪道の運転を考慮して、四輪駆動車に着目しました。岩手県で開催された展示会で、実際に車両を見学・体験できる機会があり、市川さんや診療所の看護師と一緒に足を運びました」と振り返る。このような体験を踏まえ、令和6年2月に医療MaaS車両「せんぼく医信電診丸(いしんでんしんまる)」を導入。選定したのは、「トヨタ車体」が手がける「メディカルムーバー」だ。

この車両には、同社がこれまで医療回診車や福祉車両などの開発で培ってきたノウハウが活かされており、ベッドや大型のモニター、デスクなどの設備が標準で備えられている。「必要な設備が整っているため、具体的な診察のイメージがつかみやすく、それが導入の決め手となりました」。電子カルテやオンライン診療システムも組み込み、患者宅を訪問。診療所の医師とオンラインでつないで、診察を行っているそうだ。「心電図やエコーを搭載しており、操作と患者対応のために看護師が2人必要です。それでも、患者と介助者を加えて4人が乗車しても十分に動けるスペースがあると、現場からも好評です」。

患者と医師双方の負担を軽減し、持続可能な体制を築きたい。

同診療所では、毎週水曜日の午後に対象となる患者の自宅を巡回する。車両にプリンターと出納印も備えて、診察後にその場で会計まで済ませている。市内の薬局とも連携して、患者が希望すれば、後日、薬剤師が薬を配達するそうだ。「移動が困難な人にとっては、支払いや薬の受け取りに行くこともハードルに感じます。そのため、できるだけ負担がかからないような仕組みを考えました」。

利用者へのアンケートでは、9割が満足と回答。“医師の診断を受けられて安心感がある”や“待ち時間がなくてありがたい”などの声が寄せられているという。また、医療MaaSの導入は同診療所にとってもプラスだったと渡辺さんは続ける。「市川さんの移動が不要になったことで、その時間を外来対応に充てられているようです」。

限られたリソースと時間を有効活用し、持続可能な医療提供体制の構築を目指す同市。今後は2つの市立病院でも同車両を活用し、移動が難しい高齢者に訪問診療を増やしていく方針だという。

オリジナルのデザインに

同市では、車両の名前を一般から公募し、デザインは地域の中学生から募集した。住民の理解を深め、親近感をもってもらうことで利用を促進しているという。

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愛知県刈谷市一里山町金山100

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