
土地・家屋の相続人調査を支援する管理システム
固定資産税業務に欠かせない相続人調査。他自治体や相続関係者など外部とのやりとりも多く、事務作業をいかに効率化するかが課題となっている。戸田市では専用システムを導入して情報を集約し、一元管理に取り組んでいる。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社ビービーシー
左:企画財政部
固定資産税課
主任 佐竹 菜々子(さたけ ななこ)さん
右:企画財政部
固定資産税課
主事 鷲谷 はるか(わしや はるか)さん
相関図や書類を毎回手作業で作成し、複数の管理簿に情報が点在していた。
相続人調査は、固定資産を所有する人が死亡した場合、新たな納税義務者を決定するために、相続人を調べるもの。佐竹さんは、この調査業務をもっと効率化できないかと考えていた。
「他自治体から戸籍謄本を取り寄せるための書類のテンプレートや、相続人とのやりとりを記録する管理簿を、課内で共有して業務を進めていました。しかし、進捗などを一元管理する仕組みはない状態。何か事務作業を行うたびに複数の管理簿を確認したり、入力し直したりして、非常に手間がかかっていました」。また、取り寄せた戸籍謄本などは、データではなく紙で管理。各案件の進捗や申し送り事項の共有手段がない状況で、申請についての問い合わせも、それぞれの担当が対応する属人的な運用になっていたという。
さらに、相続人の相関図作成という特殊な事務作業が発生することも効率化のネックだった。「法定相続人の情報を整理するために、Excelの作図機能を使って作成していました。課税者の特定にも関わる、絶対に間違えてはならない内容なので、作成にも修正にも時間がかかっていたのです」と鷲谷さんは話す。
業務のデジタル化を目標に、様々な方法を模索していた頃、「ビービーシー」から「所有者調査管理システム」の案内を受けたという。
属人化を脱するため、進捗や履歴を全員で共有できる環境を目指した。
同システムでは、土地や家屋の所有者・相続人の状況を一元管理し、調査にまつわる事務作業が行える。所有者と相続人のデータをシステムに蓄積して、調査中に新たな情報が得られた際は、それにひも付けて追加できる。入力したデータをもとに、他自治体への戸籍謄本の取り寄せや相続人への連絡に使用する書類などを、一括作成することも可能だ。
佐竹さんは展示会でデモ画面を実際に確認し、すでに運用している自治体へのヒアリングを実施。検討した結果、導入の予算化を進めることにした。「特に、入力したデータから相関図が自動で作成できることに注目しました。ほかにはない機能だと思います」。操作にはライセンスが必要だが、問い合わせ対応の属人化を改善するためにも、管理者を除く課内全員分の13ライセンスの導入を目指した。そのため、庁内の調整も工夫したという。「事務作業の手間は外部から見えにくく、導入メリットを理解されにくい。どの程度の業務時間が短縮できるかを大まかに数値化し、視覚的に示す形にしてメリットを強調しました」。
主要な業務に力を入れるために効率化と情報共有を推進する。
令和6年度から、同システムの運用を開始。過去に対応した情報は必要があれば移行することにして、主に新規の案件を対象としているそうだ。「相関図や他自治体への請求書類の作成などで、導入の効果を実感しています。1件当たり2時間15分ほどかかっていた相関図の作成を、導入後は手作業での微調整を含めて約15分に短縮できると算出していました。見込み通りの時間短縮が実現できていると思います」。
システム活用によって案件開始から終了までの進捗が可視化され、問い合わせにも課内全員で対応できるようになったそうだ。また、Excelで管理していた頃は、情報を入力しようとしても、誰かが作業していると終わるのを待つ必要があった。同システムでは入力待ちの時間が発生しないため、すぐに情報更新ができる。“後からやろう”とならないため、入力漏れなどを防ぐ効果もあるという。さらに「税務を全く知らない職員が異動してくる場合もあるので、システムを介して引き継ぎができることは重要です」と、2人は強調する。
「今後は、効率化によって確保できた時間で、長期化している過年度の案件に対応していきたいと思っています。そして、課税の適正化や公平性の確保につなげていきたいですね」。