オンライン授業とは?メリット・デメリット・導入のポイントを解説

令和2年以降、「オンライン授業」という言葉が教育現場で急速に広がった。新型コロナウイルス感染症の拡大により、従来の対面授業では対応しきれない場面が増え、教育のあり方そのものが見直される契機となった。現在では、ICT環境の整備が進み、自治体や教育機関がオンライン授業の導入を本格的に検討する動きが広がっている。
本記事では、オンライン授業の基本的な仕組みや活用方法、導入時に自治体が押さえておくべきポイントを解説する。地域の特性に合った教育の形を検討するヒントとしてぜひ参考にしてほしい。
【目次】
• オンライン教育とは?
• オンライン授業が注目される背景とは
• オンライン授業のメリット
• オンライン授業のデメリット
• オンライン授業を導入するポイントとは?
• ICTを味方につけ、オンライン授業をうまく取り入れよう
※掲載情報は公開日時点のものです。
オンライン教育とは?
オンライン教育とは、インターネットを活用して行う遠隔授業のことを指す。対面授業とは異なり、場所や時間の制約を受けずに学習できる点が大きな特徴である。
ICT技術の進展により、パソコンやタブレット端末を用いた授業配信が一般化しつつあり、大学や大学院などの高等教育機関はもちろん、小・中学校や地方の教育現場でも導入が広がっている。
オンライン教育の種類
●リアルタイムで「ライブ配信」
教員が授業を行う様子をリアルタイムで配信する形式。ZoomやGoogle MeetなどのWEB会議ツールがよく用いられ、画面共有やチャット機能を活用することで、双方向のやりとりが可能だ。児童生徒はその場で質問したり、意見を発信したりすることができるため、対面授業に近い臨場感のある学習環境を実現できる。
●事前に収録!「オンデマンド配信」
教員が授業をあらかじめ録画し、学習者が好きな時間に視聴するスタイル。時間的な制約を受けにくく、個々のペースで学習を進められるのが特徴だ。理解が不十分な部分は繰り返し視聴できるため、学習内容の定着にもつながりやすい。教育機関にとっても、一度作成した教材を継続的に活用できるという利点があり、効率的な授業運営を実現する手段として注目されている。
●対面式の授業を配信する「ハイブリッド配信」
教室での対面授業を実施しつつ、その様子を同時にオンラインで配信する形式。対面とオンラインの両方を組み合わせることで、柔軟な学習環境を提供できる点が特徴だ。体調不良や自然災害など、登校が難しい状況でも自宅から授業に参加できるため、多様な学習スタイルや個々の事情に対応しやすい点が評価されている。
オンライン授業が注目される背景とは
ここでは、オンライン授業が急速に注目を集めることになった背景を三つの視点から整理する。
令和元年末の新型コロナウイルス感染拡大
新型コロナウイルスの世界的流行により、人と人との接触をできる限り避ける必要が生じた。在宅勤務やオンライン授業といった非対面の仕組みが急速に広がり、教育現場でもオンラインによる授業配信が現実的な対応策として位置づけられるようになった。
学校や家庭でのオンライン環境が整ってきた
政府主導の「GIGAスクール構想」によって、全国の小・中学生に1人1台の端末整備が進められた結果、教育機関や家庭でのICT環境が大きく前進した。タブレットやノートパソコンの普及により、オンライン授業がより現実的な選択肢として認識されるようになった。
自然災害が多い日本で教育を継続するため
地震や豪雨、台風など、自然災害が多発する日本においては、登校が困難になるケースが少なくない。こうした非常時においても教育を止めないための手段として、オンライン授業は有効な選択肢である。近年では、災害対策マニュアルにオンライン授業を組み込む動きも見られ、教育の継続性を支える施策として定着しつつある。
オンライン授業のメリット
オンライン授業は単なる“対面授業の代替手段”ではない。ICTの特性を活かすことで、むしろ対面型では難しい教育の可能性を広げる側面をもつ。ここではオンライン授業ならではの主な利点を紹介する。
場所を選ばず学習が可能
オンライン授業は、インターネット環境さえあればどこにいても授業を受けられる点が大きな特徴だ。地理的な制約を受けないことで都市部と地方の教育機会の格差を縮小し、教育の平等性を実現するツールとしても注目されている。
繰り返し視聴による理解の向上
オンデマンド形式の動画教材は、分からない箇所を何度でも見返せるという点で、学習の定着に大きく寄与する。一斉授業では難しい、“自分のペースでの学び直し”が可能となり、個々の理解度に応じた柔軟な学習環境を整えることができる。
災害時などの緊急時でも教育の機会を奪うことがない
地震や台風、豪雨などの自然災害によって登校が難しくなるケースは少なくない。こうした非常時にも、オンライン授業を通じて学びを止めない体制を構築できることは、教育の継続性を守る上で非常に有効な手段となる。
登校困難な児童生徒へのサポート
不登校や病気療養など、様々な理由で学校に通えない児童生徒にとって、オンライン授業は重要な学習手段となる。カメラやマイクの使用を必須としない柔軟な設計により、心理的なハードルを下げつつ、個別に配慮された教育の提供が可能となる。
オンライン授業のデメリット
オンライン授業には多くの可能性がある一方で、現場での導入・運用にあたっては慎重な検討が求められる。ここでは、オンライン授業を進めるうえであらかじめ把握しておくべきデメリットを紹介する。
コミュニケーションが難しい
オンライン授業では、児童生徒の表情や声のトーンなど、細かな反応を捉えにくいという課題がある。カメラやマイクの使用に抵抗を示す生徒もおり、双方向のやりとりが思うように進まないことも多い。結果として授業が一方通行になりやすく、学習意欲や集中力の維持が難しくなる可能性もある。
教員の授業準備の負担
オンライン授業では、教材のデジタル化や動画の録画・編集、チャット対応など、従来の対面授業とは異なる準備作業が求められる。特に、ICTツールの操作やトラブル対応など、新たなスキルの習得も必要となるため、教員の負担が増大する傾向にある。
安定したインターネット環境と機材が必要
授業を行う側・受ける側双方に、安定したインターネット回線とパソコン・タブレット端末、WEBカメラ、マイクなどの機材が必要となる。接続不良や通信遅延、機材トラブルが発生すれば、授業の質や継続性に大きな支障をきたす。導入前の環境整備と運用中のサポート体制は必須だ。
直接的な交流の機会が減ってしまう
学校は学習だけでなく、友人との交流や社会性を育む場でもある。オンライン授業では、友達と直接話したり、一緒に体を動かしたりする機会が制限されるため、孤独感を覚える児童生徒も少なくない。また、ディスカッションやグループワークにおいても、対面に比べて議論が深まりにくく、発言が苦手な子どもが取り残されやすい傾向がある。
オンライン授業を導入するポイントとは?
ここでは自治体や教育現場がオンライン授業を導入する際に気をつけておきたいポイントを紹介する。
児童生徒側の端末とインターネット環境を確認する
最初に児童生徒側の通信環境や使用端末の状況を確認しよう。通信が不安定であれば授業の受講そのものが難しくなる。導入前には通信テストを実施し、接続の安定性や音声・映像の遅延がないかをチェックすること。自治体によっては、必要な機器やWi-Fiルーターの貸与を検討する例もある。
オンライン授業ツールの選定
Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど、オンライン授業に対応したツールは多岐にわたる。選定の際は、操作のしやすさや通信の安定性に加え、情報セキュリティやサポート体制の有無も重要な検討材料となる。画面共有・録画・ブレイクアウトルーム・チャット機能といった、授業運営に必要な機能が備わっているかどうかも確認しておきたい。
チャットツールなどの活用を検討する
オンライン授業では、一方向的な話し手中心の配信となりがちで、それでは生徒の集中力が続きにくい。そこで、チャットツールやオンライン投票ツールを使い、双方向のやりとりを促すことが効果的だ。チャットやスタンプで気軽に反応できる仕組みを取り入れることで、発言が苦手な生徒でも参加しやすい環境が整う。
例えば、教育用ゲームのプラットフォームなどを用いれば、クイズ形式での参加型授業が可能になることもあり、児童生徒の興味を引き出すことができる。
ICTを味方につけ、オンライン授業をうまく取り入れよう
オンライン授業は単に非常時の代替手段ではなく、今後の教育における重要選択肢の一つだ。ICTを活用することで学習の場は教室の外にも広がり、児童生徒一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応が可能となる。
教育の選択肢を広げ、学びを止めないために、ICTを味方につけ、地域に根ざしたオンライン授業のあり方を今こそ改めて考えていきたい。