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ローカルブレイクアウトで自治体ネットワークを快適に。導入のポイントを解説

自治体のネットワーク環境は、クラウドサービスの普及やDXの推進に伴い、大きな転換期を迎えている。従来のセンター拠点経由のネットワークでは通信の遅延が発生しやすく、業務効率の低下が問題となっている。

そこで注目されているのが「ローカルブレイクアウト」だ。各拠点から直接インターネットに接続できるこの仕組みを導入することでネットワークの負荷を軽減し、快適な業務環境を実現できる。

本記事ではローカルブレイクアウトの仕組みやメリット・デメリット、導入のポイントについて詳しく解説する。自治体のネットワーク最適化を検討されている方はぜひ参考にしてほしい。

【目次】
 • ローカルブレイクアウトとは?

 • ローカルブレイクアウトのメリットとは
 • ローカルブレイクアウトのデメリットとその対策
 • ローカルブレイクアウト導入のポイントとは
 • ネットワークの遅延に悩んだらローカルブレイクアウトを検討しよう

※掲載情報は公開日時点のものです。

ローカルブレイクアウトとは?

ローカルブレイクアウトとは、企業や自治体のネットワークにおいてインターネット接続を効率化する技術の一つだ。

ローカルブレイクアウトとは?

従来、多くの組織では、拠点ごとのインターネット通信を一度本社やデータセンターを経由させてから外部に接続する「集中型ネットワーク構成」を採用していた。しかしこの方法ではデータセンターの回線に負荷がかかり、通信の遅延が発生しやすくなるという課題があった。

ローカルブレイクアウトでは、各拠点からインターネットに直接アクセスできるため、通信の遅延を最小限に抑えることができる。「ブレイクアウト」とはもともと「脱出する」「抜け出す」という意味をもつ言葉であり、センター拠点を経由するルートから直接インターネットへと抜け出すネットワーク構成を指してこのように呼ばれている。

ローカルブレイクアウトとは?

クラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspaceなど)の利用が増えている昨今、ローカルブレイクアウトを導入することでより快適で効率的なネットワーク環境を構築できると注目されている。

WANとLANとの違い、知っていますか?

ローカルブレイクアウトを理解するために、WANとLANとの違いについて理解しておきたい。

WAN(Wide Area Network)とは、地理的に離れた複数のLANを接続するためのネットワークであり、ルーターやモデム、WANスイッチ、ゲートウェイなどを用いて非常に広範なエリアの通信を可能にする。

WANとLANとの違い、知っていますか?

これに対しLAN(Local Area Network)とは、オフィスや家庭内など限定されたネットワークで、スイッチやルーター、アクセスポイントなどを用いてネットワークを構成する。

ローカルブレイクアウトは、特定の通信の一部をWANを経由せずに直接接続する仕組みだ。

ローカルブレイクアウト、なぜ注目されているの?

ローカルブレイクアウト、なぜ注目されているの?

ローカルブレイクアウトが注目されている理由は2つある。

●    自治体DXの推進に伴うクラウドサービスの利用増加
●    テレワークの普及

業務システムのクラウド移行が進む一方で、従来の自治体ネットワーク環境LGWANでは全ての通信がセンター拠点を経由するため、通信環境に負荷がかかりやすくなっている。その結果、オンライン会議での音声途切れや各種申請システムの処理遅延といった問題が発生している。

また、テレワークの普及によって自宅などの拠点からのネットワーク接続が増加したことも理由の一つだ。こうした課題を解決する手段として、ローカルブレイクアウトが注目されている。

ローカルブレイクアウトのメリットとは

ローカルブレイクアウトの導入により、自治体のネットワーク環境は大きく改善される。特に通信品質の向上とコスト削減の面でメリットが得られる。

ローカルブレイクアウトのメリットとは

通信品質の向上

従来のようにセンター拠点を経由せず、各拠点から直接インターネットにアクセスできるため、クラウドサービス利用時のレスポンスが向上し、職員の業務ストレスが軽減される。特にWEB会議システムやグループウェアでは遅延が少ない環境が求められるため、ローカルブレイクアウトの導入が有効だ。

回線コストの削減

センター拠点を経由する従来のネットワークでは、大量の通信が回線を圧迫し、増強が必要になるケースが多い。しかしローカルブレイクアウトを導入すればセンターの回線負荷が軽減され、回線増強にかかるコストを抑えられる

限られたIT予算の中で効率的なネットワーク運用を求められる自治体にとって、コスト削減は大きなメリットとなる。

ローカルブレイクアウトのデメリットとその対策

ローカルブレイクアウトの導入にあたってはデメリットも存在する。以下のリスクを理解し対策することが重要だ。

ネットワークのセキュリティリスク

ネットワークのセキュリティリスク

従来のネットワークでのセキュリティ対策は、センター拠点を通じて一括管理されてきた。しかしローカルブレイクアウトの導入によって拠点が分散されるため、各拠点でのセキュリティ強化が求められる。

セキュリティリスクを最小化するためには

セキュリティ対策に不備があればサイバー攻撃のリスクが高まる。そのため、高セキュリティなネットワークサービスの導入が必要不可欠となる。

信頼できるクラウドサービスへアクセスする際のみローカルブレイクアウトを適用し、重要なデータやアプリケーションは従来どおりデータセンター経由で接続するなどの対策も有効だ。

ローカルブレイクアウト導入のポイントとは

ローカルブレイクアウトを効果的に導入するためには、いくつかのポイントがある。ここではスムーズに導入するためのポイントを紹介する。

既存のネットワーク環境の調査

導入の前に、既存のネットワーク環境を調査して通信経路や各拠点のネットワーク構成を把握し、通信量などの分析を行う。ボトルネックとなっているポイントを特定し、どのアプリケーションをブレイクアウトさせるか検討する。

遅延の原因となっているサービスを特定できたとしても、基幹システムや個人情報を扱うアプリケーションはローカルブレイクアウトの対象から除外したい。万が一の情報漏えい時にも影響の少ないサービスを慎重に選定し、段階的な導入を進めることが安全なネットワーク運用の基本となる。

運用フェーズでのトラブル対応体制の構築

運用フェーズでのトラブル対応体制の構築

ローカルブレイクアウトの導入後は、拠点ごとにネットワークの管理が分散されるため、従来のセンター拠点経由のネットワークと比べて、障害発生時の対応が難しくなる可能性がある。そのため運用フェーズではトラブル発生時の対応フローを明確にし、ネットワーク管理者が迅速に問題を特定・解決できる体制を整えることが重要だ。

情報漏えいリスクを低減させるためには、各デバイスに対する堅固なセキュリティ対策と、職員に対する継続的な教育の徹底が不可欠である。技術的な防御策だけでなく、利用者の意識向上を図ることで、多層的な防御体制を構築することができる。

ネットワークの遅延に悩んだらローカルブレイクアウトを検討しよう

ネットワークの遅延に悩んだらローカルブレイクアウトを検討しよう

DXの推進に伴い、クラウドサービスの利用はさらに拡大すると予想される。ローカルブレイクアウトの需要は今後も増加していくだろう。

ローカルブレイクアウトの導入は自治体のネットワーク環境を大きく向上させるが、導入にあたっては、セキュリティ面での安全対策が欠かせない。高セキュリティなネットワークサービスの導入や人材育成についても考慮しながら、各自治体に合わせた快適な通信環境を整えて業務効率化を目指していこう。
 

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