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● 投稿者(自治体職員)プロフィール
テーマジャンル : 住民参加
投稿者名 : 山口 秀樹さん(60代)
所属部門 : 琴浦町前副町長
活動:自分ごと化会議 in よなご 共同代表
無作為に選ばれた市民が行政の事業評価に参加する。
鳥取県米子市で、無作為抽出された市民による事業評価が行われた。主催したのは、私が共同代表を務める「自分ごと化会議」だ。私たちは、市の選挙人名簿を閲覧して2,000人余りを選び、会議の案内を郵送した。これに応えて、21人が市民判定人として手を挙げた。
市民判定人は、“路線バス補助金”、“高齢者のフレイル対策”、“児童の虫歯予防対策”の3事業について、市担当課と外部有識者の議論を聞き、意見交換に参加した。最終的にそれぞれ「要改善」「拡充」「現状通り」と判定した。
路線バス補助金2億円の事業については、市民目線で前向きな意見が相次いだ。例えば、市場調査や路線ルート選定において、行政や市民もしっかり関わるべきだという意見や、交通弱者だけでなく利用者をもっと開拓すべきだという提案も。さらに、運行経費から運賃収入を引いた赤字部分を単純に穴埋めせず、企業側の努力を引き出すインセンティブを設けるべきといった意見も出た。会議の結果は後日、市長に報告する予定だ。
市民視点での事業評価により、市政への関心を高める。
一般的な市民参加の方法として、条例による審議会や委員会が行われているが、これらは団体代表者や関係者中心で、行政側のシナリオに沿って議論が進められる傾向がある。市民の公募枠はあるが2~3人にとどまり、市民が意見を述べる場は多くない。
また、各自治体で事業評価が行われている。人口減少が進む中、従来通りの方法では自治体財政はもたず、事業の精査が不可欠だ。しかし、行政側が選んだ団体代表者や関係者中心の議論では、大胆な事業見直しは難しい。そのため、市民に事業評価に参加してもらい、納税者の目線で見直しを行うことが必要だ。参加する市民にとっても、市の施策を自分事として考え、市政への関心が高まるだろう。
参加後アンケートでは、行政の説明に対し自分たちの考えを話し合ったことで、“納得感が得られた”という感想が多く寄せられた。さらに、“市政や税金の使われ方に関心が高まった”と全員が答え、市民の意識を変えるきっかけになった。
市民参加の仕組みを整え、事業評価を見直す。
自分ごと化会議では、地域や年齢、性別など一切考慮せず、住民基本台帳(または選挙人名簿)から無作為に選ばれた人たちが市民判定人となる。市民判定人は、行政の課題について外部有識者の議論を聞き、その場で事業の要否を判定する。そして、市はその結果や議論をもとに事業を見直し、最終的な結果を公表する。全国の自治体では行政主導で行われているものの、米子市では市民が主催して実施した。
市民が政治や行政に無関心では、自治体の健全な運営や持続的な発展は望めない。行政の側から“敷居を低く”して、一般市民と行政が対話する場を提供することが肝要であり、無作為抽出による方法が適している。市民には行政の施策を自分のこととして、関心をもって監視してもらいたい。こうした、無作為抽出による市民参加の仕組みを、自治体政策の年間サイクルに位置付けてはどうだろうか。
▲ 自分ごと化会議 in よなごに参加した市民判定人や審議員、スタッフの皆さん。
当日のライブ配信のアーカイブをYouTubeにて公開中。https://www.youtube.com/@jibungoto_yonago