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広がる公務員の選択的週休3日制度!給与や勤務時間はどう変わる?

国家公務員の週休3日制を認めるよう、人事院は令和5年に内閣と国会に勧告した。

令和7年4月までに勤務時間法を改正し、同年4月1日からの施行を目指す。選択的週休3日制度の導入で、総労働時間を変えずに土日に加えて1日休める働き方を求めるものだ。

国家公務員だけではなく、地方公務員にも週休3日制を導入しようと各地で検討が進められており、中にはすでに導入した自治体もある。今回は公務員の週休3日制の具体的な内容や課題、すでに選択的週休3日制度を導入した自治体の事例を詳しく解説する。

週休3日制とは具体的にどのような仕組みか、給与や勤務時間などがどう変化するか理解しておこう。

【目次】
 • 人事院が勧告、国家公務員の週休3日制

 • 働き方改革や人材確保につなげる狙い
 • 選択的週休3日制の課題とは
 • 選択的週休3日制はすでにスタートしている!
 • 多様な働き方を実現!あなたは週休3日制で働きたいですか?

※掲載情報は公開日時点のものです。

人事院が勧告、国家公務員の週休3日制

人事院は国家公務員の働き方改革の一環として「選択的週休3日」の導入を進める方針だ。これまで週休3日は介護や育児など、事情がある人にだけ適用される制度だった。この制度を一般の職員にも拡充しようと、令和5年に勤務時間法の改正を内閣と国会に勧告。

全ての国家公務員を対象にした週休3日制を令和7年4月1日から開始するための法改正を目指している。 

労働時間はトータルで変わらず、給与も同様

労働時間はトータルで変わらず、給与も同様

一般職の公務員の勤務時間は「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」で定められている。

官庁の執務時間である午前8時半から午後5時に行政サービスを提供できるよう勤務時間を設定し、1日の労働時間は休憩を除くと7時間45分、1週間で38時間45分となっている。 

導入が検討されている「選択的週休3日制度」は、現状のフレックスタイム制のシステムを拡充したもの。

1週間の総労働時間である38時間45分は維持した上で、勤務日の労働時間を長くして週休日を3日に増やす仕組みだ。現在フレックスタイム制を活用しているのは、主に介護や育児などを行う職員に限定されている。対象者を一般の職員にも拡大した上で、土日以外にも平日にもう1日の休日を選択できる。 

週休3日制を取り入れる動きは民間企業の間で広がりつつあるものの、現段階で週休3日制を実際に導入している企業は大企業など一部に限られている。日系企業ではユニクロなどを運営するファーストリテイリング、日立製作所、パナソニックホールディングスなどが週休3日制を導入している企業として代表的だが、厚生労働省の令和4年「就労条件総合調査」では、完全週休2日よりも休みが多い制度を持つ企業は8.6%に留まっている(※1)。 

※1出典:厚生労働省 令和4年「就労条件総合調査」

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働き方改革や人材確保につなげる狙い

国家公務員の働き方を巡っては、若手キャリア官僚の退職が相次ぐ「官僚離れ」が問題になっている。

人事院は令和6年に若年退職者の状況を調べた調査結果を公表。調査の結果、10年未満で退職する職員が平成30年度から5年連続で100人を超え、令和4年度は177人に上っていることがわかった(※2)。

長時間労働などが理由で民間企業へ転職した人が多いとみられる。国家公務員の中でキャリア官僚と呼ばれる霞が関勤務の職員は、国会対応業務を行うため長時間労働になりやすい。

働き方改革や人材確保につなげる狙い

内閣人事局の調査では令和6年通常国会会期中、各省庁が答弁作成を終えた時刻は平均して当日の午前0時48分頃だった(※3)。 人事院は人材の充実を図るため、今後は週休3日制を含めた働き方改革を進めていく方針だ。国家公務員の働き方改革には国会対応の変化も並行して求められ、週休3日制の導入も併せて新たな働き方として定着するか注目される。

※2出典:人事院人材局企画課「総合職試験採用職員の退職状況について」
※3出典:内閣⼈事局「国会対応業務に関するデータ集計 結果」

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選択的週休3日制の課題とは

選択的週休3日制は一部の自治体ですでに試行・導入が進んでいる。その一方で、自治体関係者からは懸念の声もあり、課題も残る。

1.住民サービスの質をキープできるか?

職員の休日が増えることで、自治体の規模によっては業務が回らなくなる可能性もある。週休3日制と住民サービスの質の維持を両立させることが課題だ。

2.1日の労働時間が増えることによる弊害はないか?

1日の労働時間が増えることによる弊害はないか?

1日の労働時間が増えることで、作業効率が落ちるのではといった懸念もある。休日の確保と同時に業務の質の維持も課題となっている。

選択的週休3日制はすでにスタートしている!

地方自治体の中で、すでに選択的週休3日制を導入した事例をみていこう。

地方自治体の中で、すでに選択的週休3日制を導入した事例をみていこう。

【千葉県】令和6年3月から、全職員を対象に週休3日も可能なフレックスタイム制を導入

千葉県は令和6年3月から、全職員を対象に週休3日も可能なフレックスタイム制を導入した。

全ての職員が勤務しなければならないコアタイムを午前10時から午後3時に設定。その時間帯を除いた午前7時から午後10時までの間をフレキシブルタイムにして、始業と終業時刻を選択できる。

4週間で155時間の総労働時間を維持すれば、土日以外の平日にも週休を1日追加することが可能だ。

対象者約7,400人のうち、試行期間中の令和6年5月末時点でフレックスタイム制を申請した職員は176人いたという。 

【愛知県日進市】令和6年7月からフレックスタイム制、選択的週休3日制をスタート

愛知県日進市では令和6年7月から全職員を対象にフレックスタイム制を導入した。

1週間の総労働時間38時間45分を維持すれば、出勤時間を早めたり遅くしたりができる。同じ時期に育児や介護をしている職員を対象に選択的週休3日制もスタート。週休3日制については、対象となる職員のうち希望者を対象に実施し課題を整理した上で、令和7年6月までに対象を全職員に拡大する方針だ。 

【栃木県宇都宮市】令和6年度で制度の不備を洗い出し、令和7年度から本格導入

栃木県宇都宮市は、令和6年4月から全職員を対象にフレックスタイム制と週休3日制を大規模試行している。

これまではフレックスタイム制と週休3日制の対象者は一部の職員に限られていた。対象を全部署に拡大し、令和6年度の1年間で制度設計の不備を洗い出した上で、令和7年度から本格導入する方針だ。

フレックスタイム制のコアタイムは、午前10時から午後4時に設定。コアタイムを除く午前7時から午後9時までの間で、15分間隔で始業と終業の時間を選ぶことができる。1日の最短勤務時間は5時間、最長は10時間。4週間の総労働時間155時間を維持すれば、この範囲の中で1日の勤務時間を変更できるシステムだ。

週休3日は1日の通常勤務時間の7時間45分を4週間の中で分散させ、平日休みの日を選択できる。 

【宮城県】選択的週休3日制やカムバック採用の導入を検討 

【宮城県】選択的週休3日制やカムバック採用の導入を検討 

宮城県は県庁の職員を対象に、選択的週休3日制や「カムバック採用」の導入検討を進めている。1日の勤務時間7時間45分を、ほかの勤務日に振り替えて総労働時間を維持したまま、実質的に週休3日を選択できるシステムが検討されている。これまでこうした選択的週休3日制度の対象者は、子育てや介護中の職員に限られていた。対象者を全職員に拡大し、働きやすい環境を目指す。

併せて検討されている「カムバック採用」は、退職者を再雇用して再び受け入れる採用制度。即戦力となる人材の確保が狙いで、筆記試験は行わず面接などで再雇用を認める方針だ。

多様な働き方を認めることで、人材不足の中でも選ばれる職場環境の醸成を目指している。 

多様な働き方を実現!あなたは週休3日制で働きたいですか?

多様な働き方を実現!あなたは週休3日制で働きたいですか?

週休3日制の導入は企業の間で始まり、国家公務員を対象に導入が進められている。

自治体の間にもその動きが広がり、すでに導入した自治体や試行中の自治体もある。週休3日制は人材不足が深刻化する中、働き手を確保するために多様な働き方を実現する「働き方改革」の一環だ。

総労働時間を維持したまま勤務時間を割り振り、休日をもう1日つくるシステムが主流になっている。週休3日制導入の動きに今後もぜひ注目していきたい。

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