自分でつくれるノーコードの地図システム
地図は自治体の様々な業務で登場する。使い勝手のいいものがあれば業務効率は向上するはずだが、どんな地図システムが必要だろうか。100以上の自治体を訪問し、実情をよく知る「あっとクリエーション」の黒木さんに聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.35(2024年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]あっとクリエーション株式会社
あっとクリエーション
代表取締役
黒木 紀男(くろき のりお)さん
機能が多すぎる地図システムは結局使いこなせないことも。
街路灯や被災状況の確認をはじめ、幅広い業務で使われる地図。知りたい情報が一目で分かり、関係者と共有しやすい地図が理想というが、現状はどうだろうか。
「自治体の多くは、機能が豊富な地図システムを使っています。しかし、専門知識がなければ使いこなすのが難しく、Excelでデータ管理を行っているという話をよく耳にします。ファイルをメールでやりとりするうちに最新版がどれか分からなくなったり、業者に電話やファックスで連絡する必要があったりと、かえって効率化の足かせになることもあるようです」。
阪神・淡路大震災が起きたとき、建設コンサルティング会社に勤めていたという黒木さん。現地調査に出向いたが当時はスマートフォンもデジタルカメラもなく、「もっと効率的に調査する手段はないだろうか」と感じたそう。その思いを原点に、タブレットでの活用を想定して開発したのが、地図システム「カンタンマップ」だ。
同サービスは、業務に必要な機能だけを選べるシンプル仕様。「サイボウズ」が提供する業務改善プラットフォーム「キントーン」と組み合わせることで、ユーザーが業務内容に合わせてカスタマイズできる。操作が簡単で、プログラミングの知識がなくても構築できるのが魅力だ。
必要に応じてすぐ変更できて、公開すれば住民も見られる。
同システムでつくった地図は、インターネット上での公開も可能だ。例えば兵庫県神戸市(こうべし)では、それまで全て紙で対応していた開発許可申請の電子化にあたり、マップをWEBサイト上で公開。閲覧・申請を可能にしたことで、遠方に住む人を含め、ほとんどの人が来庁せずに済んでいるという。「導入以降、WEB上での閲覧・交付件数は増えつづけており、その分、窓口で職員が対応する手間は減っていると聞いています」。
同システムでは、忙しい自治体職員に代わり、すぐに使える“自治体パッケージ”を6種類用意しているという。その一つが、愛知県豊橋市(とよはしし)が導入している“いぬねこ回収パッケージ”だ。動物の死がいを見つけた住民がWEBフォームから連絡すると、キントーンに通知が届く。職員が項目をクリックすると地点をマークした地図が表示され、そのまま業者への回収依頼もできる。
「何かと要望の多い、街路灯や防犯灯、空き家管理に使えるパッケージも用意しています。これらのシステムは、自治体の職員さんと一緒に開発したものです。実情に合わせて柔軟にアレンジしたいという要望を取り入れた仕様にしています」。例えば、場所を知らせる“道路脇”“歩道の上”などの選択項目も、自由に追加・変更が可能。不要だと判断すれば、すぐに削除することができる。
新しい自治体向けパッケージも開発が進み、間もなく登場。
同社は、サイボウズからの評価も高く、オフィシャルパートナーとしてアワード表彰を受けている。近年では防災分野でもタッグを組み、「災害支援プログラム」を通じたIT支援サービスの中で、カンタンマップを無償で提供。災害が発生した多くの自治体で活用されているという。令和6年1月の能登半島地震でも、初動から使われたそうだ。「災害本部では紙の地図を拡大印刷して貼り、付箋を使って情報を書き入れるのが一般的です。しかし、付箋が落ちると途端に分からなくなってしまいます。カンタンマップならリアルタイムで被災情報を表示できるので、“どの場所にどんな支援がどれだけ必要か検討しやすい”と喜ばれています」。
同社では、ほかの自治体向けパッケージも複数開発中で、近々リリース予定だという。これまで業者任せで作成してもらうしかなかった地図を“自分たちで自由にカスタマイズできる地図”に変えてみてはどうだろうか。それが、業務効率化への貴重な一歩になるのかもしれない。