森林所有者に対する意向調査支援
「森林経営管理制度」は放置された森林の整備を目的とし、一括管理による収益化を目指している。朝日村では森林の活用を検討するため、所有者に管理を村に委託するかどうかを調査した。しかし約4割が未回答であるなど、課題が残ったという。
※下記はジチタイワークスVol.35(2024年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左から
朝日村
産業振興課 商工観光林務係
係長 山口 純平(やまぐち じゅんぺい)さん
松本地域森林林業振興会
小口 八恵美(おぐち やえみ)さん
残り4割の回答も回収したいけれど、訪問・調査する時間や技術がない。
総面積の約87%が森林という同村。個人所有の森林が点在しており、戦後に資材用として植林されたカラマツなど、多くの木が伐期を迎えているという。
「昔は村内に製材所があり、大工や建具屋など職人さんもいて、先祖が守ってきた山の木で家を建てることができました。ところが今では所有者が代わったり村外に出たりして、手入れが行き届かない森林が増えています。そこで、森林経営管理制度を活用して森林整備につなげたいと考え、令和3年に意向調査を実施しました」と山口さん。森林所有者71人にアンケートを送り、回答があったのは約6割。未回答者を訪問しようにも人手が足りず、登記や相続などの法律知識も十分でないため、訪問に踏み切るのは得策ではないと感じていたそうだ。
「確かに送付まではできても、その先が難しいようです」と同調するのは、松本地域森林林業振興会の小口さん。「当会では朝日村を含む3市5村の森林整備をサポートしていますが、返答がない人への対応が共通課題でした。そこで朝日村をモデルに委託事業を行い、その知識やノウハウをほかの市村とも共有できないかと考えました」。そうした中、パートナーとして選んだのが、東京電力グループの「東電用地」だった。
交渉の専門家に任せることで回答率が約9割にアップした。
電力設備の用地取得で培ったノウハウを活かし、土地に関する様々なサポート事業を展開する同社。森林経営管理制度に関しては訪問調査のほか、不明所有者の探索や相続人の特定も行っている。「未回答者に特定林班の所有者も加え、108人の調査をお願いしました。同林班は林道が通っているため、採算性が高いエリアですが、所有者が細かく分かれています。同社のノウハウがあれば、パズルのピースを埋めるように森林を集約化し、“面”にすることで、効率的な施業につなげられるのではと期待したのです」と山口さん。
委託を受けた同社は、訪問調査を開始。人口約4,300人の小さな村であるため、外部の調査員が歩きまわると警戒心をもたれかねない。そのため回覧板で訪問を伝えたほか区長にあいさつし、事前の周知を徹底したという。また関東を中心に15拠点を展開し、約630人の交渉対応社員がいるため、遠方訪問も可能。「東京在住の対象者のところにも足を運んでもらえて、ありがたかったです。しかも、一度ではなく何度も訪問してくれました」。
こうした地道な訪問により、意向調査は約9割が回答※、探索や相続人の特定も着実に成果を上げているという。
※令和6年3月 東電用地調べ
自治体のニーズに合わせて、回答率を上げる支援を実施
悩み① 意向調査を行いたいが始め方が分からない
■答えやすい問いを設計
意向調査票の設問内容が複雑だと、回答率も低下しやすい。経験をもとに、平易な内容にしたり、記述式ではなく選択式にしたりして、回答しやすいような設問づくりをサポートする。
※朝日村では、調査を村自ら実施
■コールセンターの設置も可能
住民の疑問や不安に対する問い合わせ窓口として、コールセンターの設置も可能。高い応対技術をもつ専属社員が、意向調査への理解を促すため、職員は業務に専念できる。
悩み② 意向調査を実施したものの回答率が低い
■訪問面談で所有者の意向を確認
村の事業を丁寧に説明し、理解を得た上で回答を回収。遠方の不在対象者にはポストにメモを入れることで、遠くからの訪問を伝え、重要なお願いであることを認識してもらう。
■不明の森林所有者や相続人を探索
戸籍調査や現地での聞き込みなどにより、不明の森林所有者を探索。相続登記が行われていない場合は、職員だけでは難しく専門知識が必要になるため、相続人の特定も支援する。
事例を共有する研修会を開催し、地域全体で課題に取り組む。
こうした成果やノウハウを共有する目的で、令和6年3月には同振興会主催で研修会が行われた。まずは森林経営管理制度に関する講義を振興会が行い、朝日村が今回の取り組みを発表。そして同社が、回答率アップのための手法や、訪問対応による効果などについて解説するという流れだ。
「各市村から数人の担当職員が参加しましたが、大変好評でした。アンケートでは全員が“有意義だった”“大変有意義だった”を選んでいます。制度に対する意欲が高まるきっかけとなり、今後も支援を続けていきたいと考えています」と小口さんは語る。
今回の委託事業で手応えを感じているという山口さん。「今後はほかの林班にも範囲を広げ、同意を得て施業に結び付けたいと考えています。村には移住者やUターン者もいます。森林資源が活用できるようになれば、昔のように切る・使う・育てるの循環が復活し、産業や雇用が生まれると思うのです。実現までに時間はかかるかもしれませんが、専門家に頼んで回答率を上げ、森林を集約化することが、未来につながる大事な一歩だと感じています」と力強く語ってくれた。
県も研修を支援
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