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【セミナーレポート】まずは実証ベースで価値を測る!メタバース×自治体の挑戦事例 ~観光客との接点にデジタルを!~

インバウンド観光需要がコロナ禍前の水準まで回復し、わが国には世界中から観光客が集まっています。特に最近は「体験型観光」が人気を集め、地域ならではの観光資源の価値をどう発信するかが、観光客誘致のカギになっているようです。

そこで今回のセミナーでは、観光DX分野でも「メタバース」の活用事例に着目。デジタル関連の取り組みに対して、予算面や人材面での難しさを感じている自治体も少なくはないようですが、企業と自治体とが連携し、実証を行う事例が増えています。

まずは無料トライアルで先進技術を体験し、地域の情報発信に変化を加える観光施策を検討してみませんか?

概要

■テーマ:まずは実証ベースで価値を測る!メタバース×自治体の挑戦事例 ~観光客との接点にデジタルを!~
■実施日:2024年9月25(水)
■参加対象:自治体職員
■参加者数:43人
■プログラム
Program1
~嬉野観光を援けるDXの挑戦~嬉野メタバースなどの取り組みについて
Program2
無料トライアル実施中!観光メタバースサービス「Buralit」とは?


~嬉野観光を援けるDXの挑戦~嬉野メタバースなどの取り組みについて

<講師>

 

 

 


佐賀県 嬉野市
設部 新幹線・まちづくり課
課長 馬場 孝宏 氏

プロフィール

1994年4月1日に嬉野町役場へ入庁後、3部署にて業務に従事。2006年1月1日市町村合併により嬉野市に。合併後、建設・新幹線課を含む3部署にて業務に従事。2019年4月に課長職に就き、2部署にて業務に従事後、2023年4月より新幹線・まちづくり課長に就任し、現在に至る。


新型コロナウイルスの影響により、基幹産業である観光産業へ大きなダメージを与える中、2022年9月に九州新幹線西九州ルート「嬉野温泉駅」が開業した。駅に隣接した道の駅「うれしの まるく」も同時開業し、新しい駅前空間をバーチャルでも楽しめる交流空間「デジタルモール嬉野」の供用も開始されている。

地域の魅力を全国・全世界に発信し、実来訪への働きかけを進める嬉野市の取り組みを、馬場氏が紹介する。

嬉野市の課題について

令和4年に西九州新幹線が開業し、嬉野市には100年ぶりに鉄道駅「新幹線・嬉野温泉駅」が誕生しました。駅に隣接する形で道の駅もオープンし、これを機に新しい観光展開にチャレンジするため、内閣府事業「未来技術社会実装事業」に新技術を活用した観光戦略を提案し、採択されました。

『「I❤URESHINO」新たな交流拠点の誕生を契機に取り組む“Withコロナ観光まちづくり”』と題し、VR/AR技術、5G技術やAIなどを活用し、情報発信を行っています。以下の図は、取り組みの全体像です。

私たちは、メタバースを「デジタルのハコもの」と位置付け、令和4年度の新幹線開業に間に合うよう、まずは箱、そして環境構築を打ち出し、そこから中身を充実させていくスタイルで取り組みました。

嬉野メタバースの取り組み ~挑戦~

メタバース「デジタルモール嬉野」は、ブラウザ上で操作体感することができる仮想空間です。事業者が決定した令和4年6月から、新幹線開業までのわずか3カ月の短期間で具体化しなければならず、事業者と連携してスタートを切りました。

“旅マエ”の旅行客をターゲットにしている「デジタルモール嬉野」は、まずは同温泉に興味を持ってもらい、行ってみようと思わせることを追求。普及しはじめたばかりのメタバースを利用する抵抗をなくすために、「ブラウザで稼働すること」「処理負荷を抑えること」を徹底し、環境構築をしました。また、嬉野温泉駅は新しくつくられた駅のため、整備時に設計・施工データとして得られる3次元データを活用できたことも、短期間で構築できた大きなポイントでした。

●RealとVirtualの連動
デジタル空間は、実際のリアル空間と連動させてコンテンツをつくっています。令和4年度の開業イベント時には、クイズコンテンツなどに参加してコンプリートすると、リアルの観光案内所でプレゼントがもらえる連動イベントを行いました。

LINEとメニュー連携しているので、LINEでの情報案内通知時に数値が上がることを確認。男女比、年齢比率、利用方法などが分かるように運用しています。しかけの効果がすぐに分かることも、構築ポイントとして重要視しました。

告知をすればアクセス数は伸びますが、現在はまだ「箱」ができただけです。この仮想空間のまちをリアルの観光イベントやPRに活用し、遊びに来たいと思ってもらえるような取り組みを考えていきたいと思います。

令和5年度は、2つの企画を検討しました。

(1)駅前イベント(マルシェ等)との合同開催
・嬉野の新たな集客エリアとするため、駅前で様々なイベントを開催。
・マルシェ開催中、デジタルモール嬉野でもバーチャルイベントを開催(旅マエ)。
・出展者と顧客との“旅アト”のコミュニケーションの場を創り、物販等拡大を図る。

(2)夜市や花火大会のライブビューイングの実施
・ターゲットは話題に興味を持った他地域・遠方のお客さま、嬉野を出た出身者。
・花火大会等のイベントを、デジタルモール嬉野の大型モニター等でライブビューイング(プレゼントイベント等を併催)。

8月にはメタバース空間内で花火大会を生中継。画像が美しく、リアル感のある映像でした。この映像は、地元のケーブルテレビと連携し、リアルタイムで配信しました。

メタバースを1年間運用し、実施課題として下記の検討を進めています。

・デジタルモール内に人口を増やす
・ECサイトの展開(ECサイトを持つ事業者との連携、など)
・ふるさと納税へのチャレンジ

●VR体験サービスの常設
メタバース空間はオンライン上で利用できるサービスとして構築していますが、リアルの観光客にも、その技術を体感してほしいと考えています。話題づくりと盛り上げを図るため、駅前の観光交流センター、観光協会の窓口に、VRの体験サービスができる環境をつくりました。

嬉野メタバースを活かす取り組みと今後の展望

「バーチャルコンシェルジュ」は、来訪された“旅ナカ”のお客さまを想定。対話形式で役立つ情報を提供します。駅から市街地へのバスの時刻表や、オススメ情報を、時間帯に合わせてバーチャルコンシェルジュが案内します。

この公式LINEアカウントは、友達登録1万人を目指し取り組みました。ファンを増やすため告知・誘致活動を続けており、2024年11月現在、12,000人近くが登録しています。

●市民参加が可能な見える化コンテンツ『嬉野散歩』
デジタルモール嬉野のメタバースは、同温泉駅前に空間展開しています。しかし、市内中心部や伝統的建造物群などのメタバース構築は、費用負担の面で実現困難です。そこで、360度カメラを活用した街並みの紹介を「嬉野散歩」というコンテンツで構築・提供しています。

●スタンプラリーによるイベント連携
市内の店舗内にある二次元コードを読み込むことでLINEにつながり、スタンプラリーで嬉野周遊を楽しめます。参加者の居住地や性別、年齢、行動等のログを取り、観光動態分析を行っています。

メタバースやサービスの発展には、地域とのコミュニケーションを密接に行うことが重要です。令和7年度末には、「デジタルな街・嬉野」が当たり前になっていることを目指しています。

無料トライアル実施中!観光メタバースサービス「Buralit」とは?

<講師>

 

 


TIS株式会社
テクノロジー&イノベーション本部
XR推進室
室長 山﨑 晴貴 氏
 

プロフィール

2023年10月TIS入社。360度動画観光メタバースサービス「Buralit(ブラリト)」の事業戦略およびクリエイティブを統括。前職の不動産情報サービス事業会社では、Well-beingに関する研究やXR技術を活用した、事業創出プロジェクトを牽引している。


TISが提供する観光メタバースサービス「Buralit(ブラリト)」は、360度カメラによる360度動画を用いた、臨場感ある観光メタバースを手軽に作成することができる。導入期の現在、無料トライアルの申し込み自治体を募集中。同サービスを活用した地域の観光客増加策や、購買行動促進につなげる取り組み、直近で追加される機能などについて、山﨑氏が紹介する。

360度実写観光メタバース「Buralit(ブラリト)」のサービス紹介

「Buralit」は、ユーザー自身が撮影した360度動画を使い、コンテンツを手軽に制作して発信できる観光メタバースサービスです。弊社では、以下の3項目を満たすものがメタバースであると定義しています。

(1)身体性
「アバター」を自分の分身として操作し、情報の能動的取得と理解や共感につながる。

(2)マルチモーダルコミュニケーション
文字だけではなく、声や表情、身ぶりなどを伴った深いコミュニケーションができる。

(3)経済活動
メタバース内の利用者の行動が、購買・現地訪問などの経済活動、価値交換につながる。
 

Buralitならではの3つの特徴を紹介します。

①「360度動画」でつくるメタバース
メタバースをつくる場合、一般的には3Dモデルを使用しますが、Buralitは家電量販店などで購入できる360度カメラさえあれば、誰でも手軽にメタバースをつくることができます。

②3D地図ベースの「オープンワールド」
コンテンツは3Dマップ上に配置されるため、観光スポット同士の位置関係や距離感をつかみやすい体験設計になっています。ユーザーは、アバターを操作して3Dマップ上を歩いたり、飛んで移動したりするので、「まち歩き」をするような感覚で楽しむことができます。

③Web/SNSと連携しやすい「オープン性」
Buralitは、個別URL(ディープリンク)が発行されるので、WebサイトやSNSからBuralitへの誘導が簡単にできます。Buralitから外部サイトへの送客もできるので、複数メディアを連携させた観光プロモーションを展開できます。

Buralitでできる観光プロモーション

Buralitを使って、どういうものをつくり、どういうプロモーションをしたら良いかを紹介します。360度の動画の持つパワーを最大限使ったコンテンツをつくってみましょう。

●Buralitが得意な表現・題材とは
そのスポットが、一番イキイキ、キラキラしている瞬間を映像として残して伝えること。3Dモデルとは違い、その「瞬間」をデジタルデータとして残しておかないと、コンテンツとして発信ができません。発信ができないとメタバース活用もできませんし、プロモーションにも使えません。その方法の一つとして、我々は360度動画を提案しています。

こちらが撮影している様子です。3脚等にカメラをセットし、1、2分ぐらい撮影する感じです。

自分たちのまちには大きなテーマパークなどがない、訴求できるものがあるだろうか、どういうものを撮影したら良いのかが分からない、などとお考えの職員が多いと思います。

日本政策投資銀行と日本交通公社が発表する、「訪日観光客が、日本のどういうものを見たいか」という調査結果によると、有名スポットに行きたいというものばかりではなく、トップ2が、日本の自然や風景の見物と桜の鑑賞でした。これらは、どの地域にもあるものです。ありふれたものに価値を見出してくれるのが、今日の観光客の特性だと思います。

また、これは我々の事例ではないのですが、例えば北海道の美瑛町では前田真三さんという写真家が、美瑛町の風景を長年撮影し、写真集等を出版しています。

美しい風景ですが、実はここはジャガイモ畑です。その美しさを見出し写真で発信することにより、現在も観光資源になっています。このような題材であれば、皆さんのまちにもあるのではないかと思います。それに気づき、Buralitで撮影して発信してください。

また、残しておきたい光景もあると思います。例えば「将棋のまち」と言われる大阪の新世界。6月、最後の将棋道場「三桂クラブ」が閉店しました。他にも、行くたびにお店がどんどんなくなっています。こういう、2度と見られない残しておきたい風景も、人の心を打つコンテンツになると思います。

Buralitを実際に使ってみましょう

ここまでBuralitの紹介をしてきましたが、興味がある自治体には弊社が色々な形でサポートできます。Buralitを使うまでの流れとしては、大きく3ステップです。

①申し込み
アカウント開設のための契約等の手続き

②撮影・編集
360度カメラによる動画撮影と(必要に応じて)編集をする

③スポット作成・公開
BuralitのCMS画面から動画・静止画・テキスト等のデータを登録・公開

 

●Buralit利用のサポート

①コンテンツ掲載料「無料」
事業化検討中のため、2025年3月末まで、無料で提供中です。
※2025年4月以降の方針は別途ご案内

②360度カメラ貸し出し「無料」
契約いただいた場合、360度カメラを無料で貸し出しすることができます。カメラを購入前にいろいろ試したい場合は、貸し出しも用意しています(台数に限りあり)。

③コンテンツ開発コンサルティング・受託
お客さま側で制作が難しい場合、コンテンツ企画の支援や制作受託も可能です。
※内容や規模感に応じて費用は変動。見積もりします。

今後の展開としては、CMS機能リリース、日英言語切り替え、UIアップデートなど、様々なプロダクトの機能追加を用意しています。あなたのまちの観光情報発信に、Buralitをぜひご活用ください。

[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]

Q:操作は簡単とのことですが、具体的に撮影から公開までどのくらいの期間・時間がかかりますか。
A:
現在は、まだCMS機能をリリースできていませんが、この機能無しでも、撮影してBuralitに掲載するまでに、1カ月弱だと思います。CMS機能が実装できれば、大幅に短縮できます。

1日でロケをして、それを編集するのに1週間かからないくらいでしょう。紹介文を書くのも1週間弱という感じでしょうか。慣れてくれば頑張って1週間ぐらいで公開できると思います。

 

Q:今後、有料化になるとのこと。始めるのに必要な費用はどれくらいでしょうか。
A:
コンテンツ作成に必要なのは、360度カメラです。安いものであれば6〜7万円ほどで、三脚なども含め計10万円弱の費用が必要です。

動画の編集については無料のアプリが豊富にあります。慣れないうちは、無料アプリでも十分使えます。ちなみに台数が限られますが、カメラも無料貸し出しできますので、ぜひご相談ください。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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