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【セミナーレポート】ゼロから生み出す自主財源! ~地方創生事業を支える企業版ふるさと納税~

財源確保の手段である「企業版ふるさと納税」。導入自治体も全国の9割を超え、定着した感があります。しかし現実としては、寄附額の伸ばし方やリピーターの確保など、運用に苦心している現場も多いようです。

本セミナーでは、内閣府の担当者から制度の概要、活用メリットなどについて改めて伝えてもらい、加えて活用を推進している自治体の事例、専門事業者からのアドバイスをお伝えします。

概要

□タイトル:ゼロから生み出す自主財源! ~地方創生事業を支える企業版ふるさと納税~
□実施日:2024年7月5日(金)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者:212人
□プログラム:
 第1部:企業版ふるさと納税について
 第2部:寄附を通じて、もっといちはらを知ってもらいたい!
 第3部:企業版ふるさと納税活用術


企業版ふるさと納税について

セミナーのトップバッターは、内閣府の担当者が登壇。制度の目的や概要についてのおさらいをしつつ、「人材派遣型」を活用するポイントや、自治体に向けたメッセージなどを伝えてもらった。


<講師>
山中 凌氏
内閣府 地方創生推進事務局

プロフィール

北海道南幌町出身。2015年に北海道南幌町役場に入庁。

2023月より内閣府に出向し、企業版ふるさと納税の広報や活用促進等に取り組む。

主に、「企業と地方公共団体のマッチング会」や「企業版ふるさと納税大臣表彰」を担当。


制度をうまく活用するために押さえておきたい“3つのポイント”。

このセクションでは、企業版ふるさと納税について、制度の概要や活用メリットなどを改めて説明します。

まず、企業版ふるさと納税を活用する意義について。社会では人口減少や少子高齢化が進み、公共サービスの担い手不足が顕在化しています。その反面、地域の課題は複雑化し、自治体の力だけで解決するのは難しい状況です。これに対し、地域の社会課題に積極的に取り組む企業や人材も増えてきており、そうした民間の資金や人材を地方に還流するため、2016年に生まれたのが本制度です。お金をもらって終わりではなく、それをきっかけとして、より官民連携で地方創生を進めていくための重要な第一歩となるツールだと考えています。

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この制度は、簡潔に言えば“自治体が行う地方創生の取り組みに対し、企業が寄附をした場合、その寄附についての法人関係税を税額控除する”という仕組みです。

制度のポイントは大きく3つあります。

1点目は、“企業が寄附をしやすい仕組み”です。制度が始まった当初は、約3割の税の軽減効果でした。その後2回の改正を経て6割分の税額控除を上乗せし、最大9割の税の軽減効果が得られます。

2点目は、個人のふるさと納税とは異なり“寄附企業への経済的な見返りは禁止”ということ。返礼品も禁止しており、基本的には自治体のホームページや広報紙などで紹介する、あるいは首長との対談、感謝状の贈呈、といった形でお願いしています。

3点目は、“寄附額を事業費の範囲内にする”ということ。なお、この制度は東京都や三大都市圏について、地方交付税の不交付団体は対象外となっており、企業の本社がある自治体への寄附も対象外です。それ以外の自治体は全て活用できます。

本制度を活用する際には、「企業版ふるさと納税をこのような目的に活かして地方創生に取り組みます」という地域再生計画をつくる必要があるのですが、これはほとんどの自治体がすでに持っている地方版総合戦略を転記する形でよいため、大きな負担はありません。この地域再生計画は、東京都を除く全ての道府県が持っており、市町村全体でも94~95%はすでにカバーできている状況です。

寄附をもらって終わりではなく、民間の力を借りたまちづくりにつなげる!

企業版ふるさと納税には「人材派遣型」もあります。これは寄附の中に人件費も含めて、その人件費相当分の人材を一緒に派遣していただくという形式です。企業にとっては自分たちのノウハウを活かした地域貢献ができ、社員が活動を通して視座を高めることができる。そして自治体にとっては専門的ノウハウを持つ人材に来てもらえる上に、持ち出し分がない。双方に大きなメリットがある制度です。

令和6年4月1日時点での実績としては、派遣された方が延べ157名、活用団体が119団体で、制度自体も広がってきているようです。特徴的な事例は企業版ふるさと納税ポータルサイトに掲載しているので、ぜひご覧ください。

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この制度における企業側のメリットとしては「会社のPRになった」という声が多く、ほかにも「SDGsやESGに寄与していることをアピールできた」とか、「被災地の復興に役立たせてもらった」といった感想もいただいています。

導入については自治体から問い合わせを受けることも多く、中でも「どう活用していけばいいのか分からない」という質問が目立ちます。これに対し、自治体で寄附を受け入れる流れを簡単にまとめたのが下図です。

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こうした流れをつくるにあたって、我々から伝えたいのは、企業版ふるさと納税を“シティプロモーションの機会”だと捉え、事業構想段階から企業と一緒に「どうすれば自分たちのまちを良くできるか」といったことを考えながら取り組む、ということです。

また、寄附を増やすためには、首長に動いてもらうトップセールスも重要ですし、まちの取り組みをアピールするパンフレットやホームページなどで独自性を出すのも、企業に選ばれるポイントになります。企業は「なぜこの自治体に寄附をするのか」ということを、担当の上司やオーナー、もしくは株主に説明する必要があるからです。

さらに、寄附をもらって終わりではなく、取り組みの進捗や成果を報告し、その先の関係性を築くことも大切。そうした細やかなフォローをお願いできればと思います。

なお、この制度には「マッチング・アドバイザー」として、内閣府主催のイベントへの登壇や、参加者へのアドバイスを提供するアドバイザーが4名います。マッチング会や研修会を独自で開催する自治体への派遣も行っているので、活用を希望される際にはご連絡を。企業版ふるさと納税ポータルサイトもぜひご覧ください。

寄附を通じて、もっといちはらを知ってもらいたい!

第2部は、企業版ふるさと納税の取り組みを始めて3年目になる市原市の事例を紹介。担当者が、本制度を導入した経緯と、試行錯誤を繰り返した道のり、そして挑戦の後に得られた成果について語る。

<講師>

小井手 遼氏
市原市 企画部 総合計画推進課 副主査

プロフィール

平成21年入庁、環境部不法投棄対策課、財政部固定資産税課を経て、令和4年4月から現課に配属。総合計画の推進、自治体SDGsモデル事業の使用済み食品トレーなどのケミカルリサイクル事業、企業版ふるさと納税を担当。


庁内のリソース不足をカバーするために、事業者と連携した活動を展開。

市原市における企業版ふるさと納税の活用に向けた取り組みを紹介します。

当市では、2021年度に3つのリーディングプロジェクトを掲げ、SDGs戦略を策定しました。同内容で国に応募したところ、2021年にSDGs未来都市、および自治体SDGsモデル事業にダブル選定され、現在取り組みを進めています。

そうした中、「戦略に掲げた各種事業を展開するには、積極的な財源確保が必要なのでは」という意見もいただきました。
そこで、企業側にも関心を持っていただく機会と捉え、2021年度に地域再生計画を策定。内容は、当市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」からの転記になっており、ほぼ全ての事業が読み取れるつくりです。

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翌2022年度からは、企業版ふるさと納税による寄附の受付を開始しました。ただ、総合計画の進行管理以外にも、SDGsの普及・啓発といった業務が増えており、企業版ふるさと納税の営業や進行管理まで手がまわらない状況でした。そうした中、ジチタイアドと打ち合わせを重ね、成功報酬型であることや、営業に関する支援を受けられるといったことが決め手となり、契約を締結。事務処理、要領の作成、寄附募集事業の決定、お礼の設定など内部調整を行ったのちに、企業への営業リーフレット制作などを進めました。

12月から全国約5000社へ資料を発送。初年度はジチタイアドへの文面や写真の提供だけで、寄附を受領することができました。

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続いて2023年度。当市は市制施行60周年になり、歴史や文化に対する愛着や誇りを醸成するため、各分野の有識者たちが一堂に会する「エンジン01(ゼロワン)文化戦略会議」との連携によって開催したオープンカレッジ「エンジン01 in 市原」を実施。さらに、4年ぶりとなる「上総いちはら国府まつり」では、千葉県誕生150周年記念事業の一環として、内房総5市で連携した「百年後芸術祭-環境と欲望-内房総アートフェス」も開催しました。
こうしたイベントの開催に向けて、当市職員とジチタイアドは直接訪問やオンラインで、事業者に寄附をお願いする活動を積極的に進めました。同社と訪問の分担や役割を決め、コミュニケーションを密にすることで寄附企業を増やすことができています。
同時に、「リーフレットの発送タイミングが遅い」「市長の直筆メッセージを送ってはどうか」といったアドバイスももらいました。これを受けて、8月から寄附の募集を開始し、市長の直筆メッセージも添付して営業を進めました。この直筆メッセージをきっかけに、市長に直接お声がけいただき寄附につながった事例もありました。

寄附企業の社員を地域に招き、シティプロモーション効果もねらう。

続いて、取り組みの具体的な内容や成果について。まず寄附受領額については、募集開始した2022年度は720万円で、翌2023年度には1億8591万円です。ただし後者には、内房総5市で行ったイベント分を当市が取りまとめて受領したものが含まれており、これを除いても3791万。前年比で3000万円以上増えています。

この成果については、職員も営業しましたが、ジチタイアドの獲得額の方が若干多かったという結果です。ほかにも文書の作成や、営業先の選定、発送、寄附の申し込みまでの調整などを担ってもらったこともあり、委託による効果は大きかったと考えています。

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次は寄附企業への“お礼”について。当市では寄附をいただいた際には、まちを訪れていただけるようなお礼を設定しています。
例えば、市内には「I’Museum(アイミュージアム)」という貴重な歴史遺産を未来へつなぐプロジェクトがあり、こちらに寄附いただいた場合は、企業の社員や家族の方などを招いての体験講座や、バックヤードツアーなどを開催。また、他の事業への寄附の場合はイベント招待券のプレゼントなども行っています。

こうした寄附とお礼について「寄附は控除になるのに、なぜお礼が必要なのか」と言われることもあります。参考までに、市町村民税の特定寄附金税額控除欄を確認すると、2023年度で他市町村への企業版ふるさと納税として確認できた額が約760万円であり、今後もこの金額は増えていく可能性があります。

もちろん財源の奪い合いがいいと思っているのではなく、この制度を活用して企業からの声をいただき、同時に私たちのまちの魅力を発信できる、という意味で寄附やお礼のことを考えていくのが重要だと、個人的には感じています。

今年も企業の方々とのコミュニケーションを楽しみつつ、企業版ふるさと納税の寄附獲得に向けて動きたいと考えています。企業の皆さまが当市を魅力的だと感じて、寄附をいただき、そしてリピーターになっていただけるように、そして「こういった事業はどうか」と企業側からも提案をもらえるように取り組み、好循環を生み出していくことを目指します。

企業版ふるさと納税活用術

企業版ふるさと納税を活用するには、企業と自治体の双方を知り尽くした事業者とパートナーシップを組むのが近道だ。第3部では、この制度で実績を伸ばし続けているジチタイアドの担当者が登壇。官民連携のポイントを共有する。

<講師>

松本 銀士朗氏
株式会社ジチタイアド レベニュー事業部 部長

プロフィール

平成29年4月 株式会社ホープ入社。令和3年10月に企業版ふるさと納税支援事業を立ち上げ、現在約200自治体へ財源確保支援を実施しており、寄附企業と自治体をつないで“三方よし”を実現すべく日々奔走中。

※株式会社ジチタイアドは株式会社ホープのグループ会社


完全成果報酬制のサポートで、自治体にムダなコストを負わせない。

当社が属するホープグループの本社は福岡市にあり、2016年6月に東証マザーズ(現・グロース)に上場しています。企業版ふるさと納税のサービスは2021年10月からスタート。まだまだ始まったばかりですが、マーケットの成長とともに、我々の実績・寄附額も伸びてきている状況です。

本セミナー第1部で山中さんから説明があった通り、企業版ふるさと納税が9割控除に拡充されてからは、ほぼ毎年2倍くらい伸びるマーケットになっています。今後はふるさと納税と同様、競争がさらに激化していくことが予想され、自治体側の熱量も毎年上がってきているという印象です。

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そもそも当社がなぜこのサービスを始めたのか、という点ですが、過去にジチタイワークスで自治体職員向けのアンケートをとったことがあり、その回答を分析すると、多くの自治体でうまく使えていない、あるいは工数がまわっていない、といった状態でした。そこで我々が、自治体と企業をつなぐことを得意とし、様々な事業を展開している企業として課題解決に貢献できるのではないかと考え、本事業をスタートしました。

営業支援、事務作業、知見の提供…と多元的なサービス展開が強み。

最新の数字では、約300の自治体にサービスを提供しているのですが、そうした中で、「どんな事業が魅力的に感じてもらえるのか」、「どんなベネフィットがいいのか」といったノウハウが蓄積されています。営業代行のような形で寄附を集める会社というよりは、ささいな困り事などを何でも聞ける相手、といった形で活用いただければと思います。

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サービス内容を説明すると、驚かれることが多々あります。実際、営業コストはもちろん、パンフレットの印刷・活用やウェブの運用にかかるコストも全て当社が負担するので、自治体の負担は寄附金の手数料だけです。従って、寄附が1件もなかったら1円も払わなくていいという、非常に分かりやすい契約になっています。ちなみに、当社と契約した自治体の寄附募集で1件もなかったことは過去1度もありませんので、この点はぜひ期待いただきたいと思います。

本年度から公式ウェブサイトも開設しており、企業版ふるさと納税の総合窓口として運営しているので、ぜひご覧ください。このサイトでは各自治体のパンフレットと同じような内容や、プロジェクト内容も閲覧でき、さらにWeb上で問い合わせも可能です。

個人版と同様、企業版ふるさと納税も先行者が有利になるため、早く参入した自治体ほど多く寄附を集められるという傾向はあります。何かしらやりたいと考えている場合は、1日でも早いに越したことはありません。まずは担当部署で意志決定をして、分からないことや困り事があれば、ぜひ我々にご相談いただければと思います。

レポート内でご紹介したジチタイアド企業版ふるさと納税サービスの詳細HPはこちらよりご覧いただけます。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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