ジチタイワークス

メタバースの自治体活用事例9選!仮想空間で地方創生の新たな可能性を探ろう

エンターテインメント市場のイメージが強いメタバースだが、近年ではビジネス活用も進んでいる。先進的な自治体でもメタバースを活用した取り組みが始まっているが、どのような事例でメタバースを活用できるのか、その具体的な方法や事例はまだ広く知られていない。
本記事では、自治体がメタバースを活用した先進的な事例を9つ紹介する。この記事を通じて、自治体におけるメタバース活用の可能性を理解し、地域での導入や活用を検討するきっかけとしてほしい。
 

【目次】
 • なぜメタバースが今注目されているのか?

 • 自治体がメタバースを採り入れる際に気をつけるべきこと
 • メタバースの自治体による活用事例9選
 • 加速的度な成長が予測されるメタバース市場の今後

 • メタバースの発展はまだ始まったばかり

※掲載情報は公開日時点のものです。

なぜメタバースが今注目されているのか?

メタバースとは超越を意味するMetaと、世界を意味するUniversを組み合わせた造語で、インターネット上に存在する仮想空間やデジタル環境のことを指す。
ユーザーはアバターと呼ばれる自分のキャラクターを使って仮想世界を探索し、ほかのユーザーと交流したり、ゲームをプレイしたりできるだけでなく、現実世界と同じような社会活動を営むことができる。
近年では各業界の大手企業がメタバースに参入しており、注目度が高まっている。その背景を詳しく見ていこう。

こちらの記事もオススメ!
▶ メタバースとは?XRとの違いやメリットを知って活用を検討しよう

背景その1 “市場規模の大きさ” 

メタバース市場は急速に成長しており、その規模の大きさが注目を集めている。総務省の「令和5年版情報通信白書」(※1)によると、世界のメタバース市場(インフラ、ハードウエア、ソフトウエア、サービスの合計)は、令和4年の8兆6,144億円から、2030年には123兆9,738億円まで拡大すると予想されている。国内においても2026年に1兆42億円まで拡大すると予測されており、企業や自治体の関心が高まっている。

※1出典 総務省「令和5年版情報通信白書」第7節「ICTサービス及びコンテンツ・ アプリケーションサービス市場の動向」

背景その2 “NFTとの高い親和性” 

なぜメタバースが今注目されているのか?
メタバースとNFT(非代替性トークン)の組み合わせが、新たな経済圏を生み出す可能性を秘めている。NFTとは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルアイテムの所有権を証明するトークンであり、メタバース内のデジタル資産(仮想の土地、アート、アバターの衣装など)に経済的価値を持たせることができる。
NFTはブロックチェーン上に記録されるため、取引の透明性と信頼性が確保される。メタバース内でのデジタルアート展示会、バーチャル不動産の開発・販売など、新しいビジネスモデルが次々と生まれている。

背景その3 “通信技術・VR技術の発展” 

なぜメタバースが今注目されているのか?

5G通信の普及により、超高速・大容量の通信が可能になった。さらにVRデバイスの性能向上と価格低下により、一般ユーザーでも手軽にメタバースのVR世界を体験できるようになってきている。これらの技術的進歩がメタバースの普及を後押ししている。

メタバースはゲーム世界だけのトレンドではなく、今後の社会やビジネスのあり方を大きく変える可能性を秘めている。
自治体にとっても、住民サービスの向上や地域活性化の新たな手段として、メタバースの活用を検討する価値は十分にあるだろう。ただし導入の際は、メリットだけでなくリスクも十分に理解し、慎重に進めていく必要がある。

自治体がメタバースを採り入れる際に気をつけるべきポイントについて詳しく解説する。

自治体がメタバースを採り入れる際に気をつけるべきこと

自治体がメタバースを導入する際には、魅力的な側面と同時にリスクや課題にも目を向けなければならない。ここでは、自治体がメタバースを採り入れる際に特に注意すべき点について詳しく見ていこう。

メタバースの依存性の高さ

メタバースは没入感の高い仮想空間であり、その魅力的な体験はときとして過度の依存を引き起こす可能性がある。自らがアバターとなりネットの世界に入る体験は、現実世界では味わえない没入感があり、ユーザーは長時間メタバース空間で過ごしてしまう傾向がある。

特に、脳の発達が未熟で、社会と交流する機会が少ない若年層においては、依存のリスクはさらに高まる。自治体がメタバースを導入する際には依存性のリスクを十分に認識し、適切な利用を周知することが求められる。

匿名性のリスク

メタバースの特徴の一つである匿名性は、ユーザーに自由な表現や交流の機会を提供する一方で、様々なリスクも内包している。未成年者、特に子どもの利用においては、匿名性のリスクに注意を払う必要があるだろう。バーチャル空間で出会った相手から嫌がらせなどの攻撃を受ける可能性もあるため、未成年者の利用に関しては厳格なルール整備が求められる。

セキュリティのぜい弱性

自治体がメタバースを採り入れる際に気をつけるべきこと

メタバースでは、ユーザーの個人情報や行動履歴など、膨大なデータがサーバーに保管される。これらのデータがサイバー攻撃の標的となると、個人情報や資産が悪用されるリスクがある。

悪意のある者が他人になりすまし、犯罪に及ぶ可能性もあるだろう。デジタル資産は、ハッキングや詐欺の標的となりやすい。
自治体がメタバースを導入する際には、セキュリティリスクを十分に理解し、適切な対策を講じる必要がある。

デジタル格差の拡大

メタバースを利用するには、VRヘッドセットや高速インターネット接続に加えて、一定のデジタルスキルが必要だ。高齢者や技術に不慣れな人々が参加できず、社会から孤立するリスクがある。

一部の人だけがメリットを享受し、格差が拡大する事態は避けなければならない。自治体はメタバースの導入にあたり、全ての住民が平等に参加し、恩恵を受けられるよう配慮する必要がある。

メタバースの自治体による活用事例9選

メタバース技術の進展に伴い、すでに多くの自治体が革新的な取り組みを開始している。ここでは、先進的な9つの事例を紹介する。

1.【兵庫県養父市】市内の観光名所を再現したメタバース「バーチャルやぶ」をリリース

兵庫県養父市は、地方創生の革新的な取り組みとして、ソフトバンクと吉本興業と提携し、メタバース「バーチャルやぶ in ZEP」を展開した。
「バーチャルやぶ」では、養父市の観光スポットや市役所が仮想空間に再現され、ユーザーはアバターを操作してリアルと連動したイベントに参加できる。
地元の特産品を販売するECサイトとの連携も予定されており、実際の商品購入に結びつける取り組みも計画されている。

オープニングイベントでの鏡割り後の様子

画像提供:兵庫県養父市

2.【千葉県木更津市ほか】メタバース婚活

令和4年11月、千葉県木更津市を含むかずさ地区(木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市)を対象に、メタバースを活用した婚活イベントが開催された。
参加者はアバターとしてメタバース「GAIA TOWN」に入り交流を行う。対象は主に18歳から45歳までの独身者で、かずさ4市の在住・在勤者、または移住に興味のある方が参加できる。参加費は無料または2,000円程度と比較的低コストに抑えられている。

こちらの記事もオススメ!
▶ 【山梨県北杜市】メタバース婚活で人口の地元定着を目指す。

 

3.【埼玉県戸田市】不登校・引きこもり支援

埼玉県戸田市では、不登校児童生徒への支援として、認定NPO法人カタリバと連携し、メタバースを活用したオンライン不登校支援プログラム「room-K」を提供している。

【埼玉県戸田市】不登校・引きこもり支援

子どもたちはメタバース空間でスタディルームやリビングルームを行き来し、スタッフと交流することができる

画像提供:認定NPO法人カタリバ

戸田市では従来、不登校支援に力を入れていたが、それでも支援の手が届かない子どもがいることが課題であった。そこで認定NPO法人カタリバの「room-K」を活用し、登校に不安を感じる子どもでも自宅等から気軽にアクセスし、学習支援や教育相談を受けられる環境を整えた。参加者は徐々に増えており、メタバースを活用した学びの場に期待が高まっている。

こちらの記事もオススメ!
▶ 【山梨県甲府市】ひきこもり当事者と行政をメタバースでつなぐ。

 

4.【静岡県藤枝市】メタバース体験商談会を実施

静岡県藤枝市は、地域産業のイノベーションとDXを推進するため、メタバース空間「GAIA TOWN」を活用した体験商談会を実施した。
参加者はメタバース空間内の企業のブースを訪問でき、店員のアバターに話しかけると即座に音声会話による商談が可能だ。従来の対面式商談会の概念を覆し、実際の商談会さながらの臨場感を実現しており、新たなビジネスマッチングの形を提示している。

5.【山口県萩市】バーチャル空間でふるさと納税をPR

山口県萩市は、メタバースを活用した「萩市×SPECTRUM メタバースふるさと納税キャンペーン」を行っている。来場者は萩市の公式キャラクター「萩にゃん。」に出迎えられ、親しみやすい雰囲気の中でブースを探索できる。

ブースにはふるさと納税返礼品360点が展示されている。各階に設置された「デジタルポスター」に触れると、萩市のふるさと納税寄付サイトに直接移動し、その場で寄付を行うことが可能だ。

6.【秋田県】あきた移住・交流メタバース万博で移住を促進

秋田県は「あきた移住・交流メタバース万博」を通じて、県への移住促進を図っている。県内を6つの地域に分けてメタバース空間にパビリオン化し、地域の独自の魅力を立体的に表現している。訪問者は秋田にゆかりのあるキャラクターアバター(んだッチや秋田犬など)を選択して仮想空間を探索でき、各地域の特色を視覚的に理解しながら様々な体験をできる仕組みとなっている。

7.【新潟県長岡市山古志】メタバースとNFTを活用した地域おこし

新潟県長岡市山古志地域では、地域の特産品である錦鯉をモチーフにした「Nishikigoi NFT」による地域おこしを行っている。
NFT購入者は「デジタル村民」として地域との新たなつながりをもつことになる。

【新潟県長岡市山古志】メタバースとNFTを活用した地域おこし

メタバース空間で中継された新潟県中越地震の追悼式

バーチャルな参加にとどまらず、デジタル村民の多くが実際に山古志地域を訪れている。デジタル村民が企画したジャズライブが行われるなど、実際の交流によりリアルな場でのアクションも増えている。専用のディスコード上では地域の課題や魅力について活発に議論がされ、新たなアイデアを生み出す場となっているという。

【新潟県長岡市山古志】メタバースとNFTを活用した地域おこし

デジタル村民の冬の帰省風景。大きなシャベルでかまくらを作成中!

画像提供:新潟県長岡市

8.【長崎県西海市】メタバースを学べるアカデミーを開講

長崎県西海市は、デジタル時代の新たな人材育成策として、Web3.0とメタバースに特化した「メタバースアカデミー」を開講した。

アカデミーの主な目的は、Web3.0やメタバースの技術を活用した働き方を実現できる人材を育成することにある。講座は体験とディスカッションを中心とした構成により、Web3.0について知識がない初心者でも学べるように設計されている。

9.【奈良県奈良市】メタバース上で奈良写真美術館をオープン

入江泰吉記念奈良市写真美術館は、メタバース美術館をオープンした。

「古都奈良―春夏秋冬」展では、入江泰吉の作品約20点が厳選して展示され、世界中のユーザーがバーチャル空間で作品を鑑賞できるようになった。
美術館は所蔵する入江泰吉の作品15万点以上のデジタル化とNFT化を進めており、デジタルアーカイブの構築と新たな価値創造を同時に推進している。

加速度的な成長が予測されるメタバース市場の今後

加速度的な成長が予測されるメタバース市場の今後注1.    市場規模は、メタバースプラットフォーム、プラットフォーム以外(コンテンツ、インフラなど)、メタバースサービスで利用されるXR(VR/AR/MR)機器の合算値。プラットフォームとプラットフォーム以外は事業者売上高ベース、XR機器は販売価格ベースで算出している。
注2.    エンタープライズ(法人向け)メタバースとコンシューマー向けメタバースを対象とし、ゲーム専業のメタバースサービスを対象外とする。
注3.    2023年度は見込値、2024年度以降は予測値

出典:株式会社矢野経済研究所「メタバースの国内市場動向調査(2023年)」(2023年8月30日発表)資料より当社作成

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2027年度の国内メタバース市場規模は2兆円を超える予測がなされている。2021(令和3)年度から2027年度(予測)にかけてのCAGR(年平均成長率)は、約71%程度になると予測されている。

市場の発展段階としては、企業がバーチャル空間でのミーティングや展示会、製品開発などに積極的にメタバースを活用し始めることで、市場が拡大していくと考えられる。

その後、一般消費者を対象とするメタバースの利用者が次第に増加すると予測されており、日常生活の様々な場面でメタバースが活用されるようになるだろう。

メタバースの発展はまだ始まったばかり

メタバースの発展は「黎明期」「普及期」「定着期」の3つのフェーズに分けられ、現在はまだ黎明期とされている。メタバースは私たちの生活や社会のあり方を根本から変える可能性を秘めているが、その全容はまだ見えていない状況だ。

現在は前述したように、先進的な企業や自治体によってメタバースの実験的な導入が進められている段階だ。「普及期」に入ると、メタバースの利用がより一般的になり、多くの企業や組織が日常的にこの技術を活用するようになるだろう。「定着期」は2030年から2040年にかけてと予測されており、メタバースが社会のインフラとして完全に組み込まれ、現実世界とバーチャル世界の境界がさらに曖昧になっていくと予測されている。

今後の動向に注目しつつ、メタバースがもたらす可能性と課題を見極め、よりよい未来の構築に向けて、社会全体で取り組んでいくことが求められている。

このページをシェアする
  1. TOP
  2. メタバースの自治体活用事例9選!仮想空間で地方創生の新たな可能性を探ろう