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メタバースとは?XRとの違いやメリットを知って活用を検討しよう

令和3年、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、「Facebook」という社名を「Meta(メタ)」に変更したと発表した。それに伴い、今後はメタバース構築事業に注力するとも公表されている。

世界のトップ企業が力を入れるメタバースとは一体何なのか、定義やメリットについて解説し、自治体の活用例も紹介する。観光や地域の魅力の発信にメタバースをどのように使っていくか、活用法を探っていこう。

【目次】
 • メタバースとはいったいどんなもの?

 • メタバースの効果やメリットとは
 • メタバースと相性がいい分野とは
 • 自治体にオススメのメタバース活用法

 • メタバースの今後の動向

※掲載情報は公開日時点のものです。

メタバースとはいったいどんなもの?

メタバースの定義やメタバースと同様に注目されている「XR」との違いを確認していこう。

メタバースの定義とは

メタバースとは「超越(meta)」「宇宙(universe)」をかけ合わせた言葉である。意味を簡単に説明すると「インターネット上の仮想空間」のことだ。仮想空間内では自分の分身となるキャラクター「アバター」を自由に動かすことができ、同じく仮想空間内にいる人同士での会話やショッピングなどを楽しむことができる。

新型コロナウイルスの流行で世界的に行動規制が行われ、対面型のイベントが実施できなくなった。それに伴い、リアルで顔を合わせなくても交流や経済活動ができるメタバースが改めて注目されるようになった。

XRとメタバースの違い

XRとは「Cross Reality(クロスリアリティー)」を略した言葉だ。「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの技術を用い、仮想空間を体験できるデバイスや技術の総称として使われている。

XRとメタバースの違い

なお、メタバースも似たような意味で使われているが、XRが仮想空間を体験できるデバイスや技術のことを指すのに対し、仮想空間内でアバターを動かし、交流や経済活動ができるサービスを指している。

メタバースの効果やメリットとは

メタバースを利用する効果やメリットについて押さえておこう。

物理的制約を受けない

メタバースでは、わざわざ現地に行かずとも遠方の人と交流ができるため、以下の活用方法がある。
●    自宅にいながら仮想空間内で世界各国の人たちと会議ができる、
●    海外ブランドが開いた仮想空間内の店舗でショッピングができる

物理的制約がなく、どこにいても現地にいるのと同じように活動できるのは大きなメリットといえるだろう。

現実では不可能な演出を低コストで実現できる

メタバースは仮想空間を利用するため、現実では不可能なことも実現しやすい。例えば、コンサートや演劇の舞台背景を瞬時に変えることも簡単にできる。人を使って作業を行う必要もないため、コストも抑えることができる。

現実世界でのハンディキャップを解消しやすい

メタバースでは現実での移動を伴う必要がないため、高齢者、体の不自由な人などのハンディキャップを解消しやすい。ハンディキャップがある人の「仕事や勉強をしたい」「多くの人と交流したい」という希望もかなえることができる。

メタバースと相性がいい分野とは

ここまで、メタバースの効果やメリットを解説したが、次にメタバースと相性がいい分野について具体的に見ていこう。

1.オンラインゲーム・エンターテインメント業界

メタバースを最初に活用し始めた先駆け的な存在が、オンラインゲームエンターテインメント業界だ。

「フォートナイト」「ロブロックス」などのオンラインゲーム

「フォートナイト」「ロブロックス」などのオンラインゲーム

メタバース活用の最先端といわれるのが、「Epic Games」が配信しているバトルロワイヤルゲーム「フォートナイト」だ。仮想空間上でプレーヤーが会話しながら敵と戦うというプレイスタイルが人気を集め、総プレーヤー数5億人という巨大なメタバースとなった。

ゲームプレイ以外でも、令和2年にはラッパー、トラヴィス・スコットさんがフォートナイト上でバーチャルコンサートを開催し話題となった。日本のアーティストでも米津玄師や星野源がイベントを開催している。

なお、幅広い世代に人気の「ロブロックス」「あつまれどうぶつの森」などもメタバースを活用したゲームである。

バーチャルライブや音楽フェス

バーチャルライブや音楽フェス

ライブ・コンサートの分野でもメタバースの活用が進んでいる。例えば、キャラクタービジネスで有名なサンリオが開催する「SANRIO Virtual Festival(バーチャルフェスティバル)」では「バーチャルサンリオビューロランド」内で「キャラクターたちのパレードや歌と踊りのステージ」「アーティストやVチューバーのコンサート」など数多くのイベントを行っている。

パソコンやスマートフォンを使い、好きなイベントを選び参加できるというスタイルで、世界中のファンにアプローチできる好例といえるだろう。

2.ビジネス分野

オンラインゲームやエンターテインメント業界から始まったメタバース活用だが、最近はビジネス分野でもメタバース活用が進んでいる。

バーチャルオフィス

バーチャルオフィス

オフィスに行かなくても、メタバース上のバーチャルオフィスで会議などが行える。アバターを利用すると、会って交流するのと近い感覚を味わえるだろう。

また、「離席中」「電話中」「会議中」などのステータスを利用すると、リモートワークを行っていても、自分以外の社員の状況を把握しやすいというメリットがある。

バーチャル展示会

従来の展示会は大きな会場に複数の企業が集まり開催するスタイルだったが、バーチャル展示会では実際に会場に集まることはない。そのため、出展側は設営や物品の搬入にかかるコストや手間を削減できる。さらに、社員を派遣する必要もないため、人件費削減も可能だ。

顧客側から見ても、現地に赴くことなく見学や商談ができるというメリットがある。

バーチャルショップ

バーチャルショップ

メタバース上で出店するバーチャルショップは人件費や家賃を削減できる。また、エリアや時間も限定されないため、世界中の顧客が24時間365時間買い物を楽しめる。現在、「H&M(エイチアンドエム)」や「BEAMS(ビームス)」など、多くの有名ショップがバーチャルショップを展開している。

バーチャル観光

秋葉原、沖縄県や大阪府など、メタバース上で観光を提供する取り組みも行われている。

例えば、大阪府の場合、「バーチャル大阪」と銘打ち、仮想空間内で数多くのエリアを公開し、まちの魅力を伝えている。

現地に行かなくても、旅をしている気分を提供できるため、今後活用する都市が増えることも予想される。

メタバース広告

メタバース広告にはインターネットにつながっている人全てをターゲットにできるというメリットがある。リアルではつくれない演出もでき、訴求効果も高い。

技術さえあれば、どのような広告も作れるため、多くの人を使って作成する従来の広告よりもコストを抑えられるというメリットもある。

オンライン研修

全国から社員を集めて研修を行うのが難しいという企業に注目されているのが、オンライン研修だ。メタバース上で行う研修にアバターの姿で参加する方法で行われる。

アバター同士で会話を楽しむことができるため、参加者同士のきずなが深まるというメリットがあるほか、ロールプレーイングやディスカッションも集合研修と同じレベルで行える。

遠隔医療

医療分野でもメタバースの活用が期待されている。例えば、医師同士の情報提供をVRやARを使って行うなどの技術利用が考えられている。

自治体にオススメのメタバース活用法

自治体でメタバースを活用したい場合、どのような方法があるのだろうか。すでに活用を進めている自治体の例を紹介していこう。

地域の魅力をアピール

メタバースを地域の魅力アピールに活用するという使い方がある。

AIアバター職員「YAKAMIHIME(ヤカミヒメ)」がチャットで対応してくれる

AIアバター職員「YAKAMIHIME(ヤカミヒメ)」がチャットで対応してくれる

画像提供:鳥取県 ©XANA / J&J事業創造

鳥取県では、県の魅力をより広く紹介するために「メタバース課」を創設した。メタバース上では、観光や物産の紹介だけでなく、日本初の「AIアバター職員」による世界中の人とのコミュニケーションを通じ、鳥取県の魅力を紹介している。

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特産品の紹介・PR

特産品の紹介やPR、販売をメタバースで行うことも検討したい。

静岡県焼津市では、市の魅力や自慢の特産品のPRを目的にメタバース上でマグロの解体ショー体験イベントを開催

例えば、静岡県焼津市では、市の魅力や自慢の特産品のPRを目的に、メタバース上でマグロの解体ショー体験イベントを開催している。さらに、ネギトロやカツオのたたきなどの特産品を3Dモデルで紹介した。

静岡県焼津市では、市の魅力や自慢の特産品のPRを目的にメタバース上でマグロの解体ショー体験イベントを開催

画像提供:静岡県焼津市

現地に行かなくてもイベントに参加できるというメタバースのメリットを最大限に活かした企画だといえる。

仕事や医療などのリモート化による、地方定住人口の拡大

メタバースでは、そこにいるかのような臨場感の演出やアバターを使った参加者同士の会話が可能だ。例えば、従来オフィスで行っていた仕事を、メタバースを利用しリモート化することで、地方にいながらほかの地域の企業に勤務することも可能になるかもしれない。

また、医師の診療についても、メタバース上で診察や治療を遠隔で受けられるようになると、わざわざ都会の病院に行く必要がなくなり、地方の人口流出防止も期待できる。

後世に残しておきたい文化財などのデータ保存

交流だけでなく、データ保存の分野でもメタバースを活用したい。例えば、長崎県佐世保市では重要文化財「針生送信所」のVRを制作し、世界中どこからでも閲覧できるようにしている。

日本語、英語、中国語のナレーションや解説もあり、貴重な資料の保存と海外での認知度向上の両方を目指したものとなっている。

長崎県佐世保市の重要文化財「針生送信所」のVR画像提供:株式会社ハコスコ太陽企画株式会社

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メタバースの今後の動向

メタバースは国や地域を問わない交流リアルで臨場感のある演出ができることで注目されている。新しい技術のため、参入すれば話題となり、メディアに取り上げられることも期待できるだろう。

ただし、個人情報・自治体情報の流出リスクやメタバース空間改ざんのおそれなどの問題点があることも事実だ。問題点も把握しながら慎重に導入を考えていこう。

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