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バリアフリー法とは?歴史や内容、「心のバリアフリー」についても詳しく解説

バリアフリーは1960年代のアメリカで生まれた考え方で、障害がある人にとって障壁(バリアー)となる社会構造や、環境の不備からの解放(フリー)を意味する。日本の公共施設や道路事業などでバリアフリー設備が普及したのは、バリアフリー法をはじめとした法令整備が進んだためだ。

障害者や高齢者に優しいまちづくりを行うために、自治体としてバリアフリー法を正しく理解しておきたい。本記事では、バリアフリー法の歴史や「心のバリアフリー」の推進、設備の具体例や地方自治体独自のバリアフリー条例について解説する。

【目次】
 • バリアフリー法とは何か

 • 「心のバリアフリー」の推進
 • バリアフリー法が定める設備の具体例を紹介
 • バリアフリーに関する独自の条例を定める地方自治体も
 • 地域の特性に合わせたバリアフリーを実現しよう

※掲載情報は公開日時点のものです。

バリアフリー法とは何か

バリアフリー法は高齢者や障害者が移動し、施設を利用する上での利便性・安全性向上を図るため、多くの人が利用する公共施設などのバリアフリー化を義務付けた法律だ。

この法律によって、ハード・ソフトの両面における施策の充実や、高齢者や障害者を含む、全ての人にとって暮らしやすい社会の実現を目指している。

バリアフリー法は平成18年12月20日に施行され、正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」だ。不特定多数が利用する施設や、高齢者・障害者が主に利用する施設を「特別特定建築物」と定めた。特別特定建築物のうち、2,000平方メートル以上の建築物を建てる際には、「建築物移動等円滑化基準」(利用場所までの経路のバリアフリー化、出入り口、廊下、エレベーター、トイレなどのバリアフリー基準)に適合させることが建築主に義務付けられている。 

さらに、令和3年の改正により、地方公共団体は500㎡未満の規模の建築物を義務付け対象とする場合、その規模に見合った「建築物移動等円滑化基準」を柔軟に設定できることになった。車いす使用者用のトイレや車いす使用者用の駐車場の基準は、地域の実情に応じて、条例で定めることが可能だ。

バリアフリーの概念の始まり

バリアフリーの概念は1960年代にアメリカでの社会運動をきっかけとして誕生

バリアフリーの概念は1960年代にアメリカでの社会運動をきっかけとして誕生した。当時のアメリカでは、ベトナム戦争で負傷した元兵士たちが社会復帰をする際に、社会構造や環境といった様々な困難が生じ、それを取り除こうという動きが広がった。

昭和43年にはアメリカで「建築障壁に関する法」が制定され、建物内のバリアー(障壁)を取り除くための法律がスタートした。さらに、平成2年には「障害のあるアメリカ人法(ADA)」が制定され、障害による差別を禁止する公民権法が生まれた。こうしたバリアフリーを求めるアメリカでの社会運動は、欧米を中心として世界中に広がっていき、現在のバリアフリーにつながっている。 

日本のバリアフリー法の歴史

日本では平成6年に「高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物に関する法律(通称:ハートビル法)」が制定され、バリアフリーが法定化された。さらに、平成12年には「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(通称:交通バリアフリー法)」が制定され、建物のほかに交通の分野でもバリアフリー基準への適合が義務付けられた。

建築と交通に関係する2つの法律を一本化するため、平成18年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称:バリアフリー法)」が制定され、現在に至っている。 

「心のバリアフリー」の推進

心のバリアフリー

平成30年にはバリアフリー法の改正があり、ソフト面の施策である「心のバリアフリー」を推進することが明記された。この法改正により、バリアフリー化の促進に対する国民の理解を深め、協力を求めることが国としての責務になった。それと同時に、高齢者・障害者が自立した生活を確保することの重要性への理解を深めることが、国民の責務となっている。 

バリアフリー関連法の整備により、ハード面でのバリアフリー化は進んできたものの、ソフト面でのバリアフリー化はまだ発展途上の段階だ。改正バリアフリー法に「心のバリアフリー」が明記されたことで、ソフト面でのバリアフリー化が促進され、高齢者・障害者が暮らしやすい社会の実現が期待されている。

様々なサインやシンボルマーク

ヘルプマーク

配慮が必要な人を支援するために、バリアフリーに関するサインやシンボルマークが様々な場所で使われている。その中の一つである「ヘルプマーク」は、外見上分かりにくい障害や妊娠中などの事情を抱える人が、配慮や援助を求めていることを周囲の人に伝えるため、東京都福祉保健局が作成した。

「障害の社会モデル」と「障害の医学モデル」とは

障害に対する考え方には「医学モデル」と「社会モデル」の2つがある。

障害の医学モデルとは、障害は個人の心身機能の障害によるものという考え方で、障害のある人自身の中に生じた個人的な問題として捉える考え方だ。一方で、社会モデルでは、社会に多様な人がいることを考えずに作り出された社会的な障壁によって障害が生み出されるため、障壁を取り除くことが社会の責務である、という考え方だ。

障害の社会モデルの考え方は、平成18年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」に示されている。日本ではこの条約を平成26年に批准(※1)しており、社会モデルにもとづく対応が法的にも求められている。平成28年に施行された「障害者差別解消法」ではこの考えにもとづき、国・地方公共団体・事業者に対して、障害者への不当な差別の禁止や合理的配慮の提供を義務付けた。 

※1出典 内閣府「我が国の「障害者権利条約」の批准」

合理的配慮

合理的配慮とは?

障害のある人から、社会の中にあるバリアーを取り除くために、何らかの対応を必要としているとの意思を伝えられたとき、負担が重すぎない範囲で応じることを合理的配慮という。令和3年に「障害者差別解消法」が改正され、行政機関だけではなく事業者にも合理的配慮の提供が義務化された。 

バリアフリー法が定める設備の具体例を紹介

国土交通省では、「バリアフリー法に基づく道路移動等円滑化基準」や、「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」の中で、バリアフリー化に必要な設備の具体例を示している。

特定道路は歩道を整備、車いすがすれ違える幅を確保!

特定道路は生活経路を構成する道路のうち、多くの高齢者・障害者が徒歩で利用する道路のことで、国土交通大臣によって指定される。  原則として、特定道路は車道と分離して歩道を整備する必要がある。歩道は車いすがすれ違える幅を確保するほか、車道に対する高さは5cm(※2)が標準となっている。 

※2出典 国土交通省「バリアフリー化が必要な特定道路を追加します 」

公園の出入り口や駐車場、経路をバリアフリーにしトイレにも配慮!

公園内にバリアフリートイレを設置

不特定多数の人が利用する公園施設を整備する際には、公園の出入り口や駐車場、経路などもバリアフリー化が必要だ。公園内で広場や休憩所、駐車場を行き来できる移動経路を確保した上で、経路上の段差を解消することや、公園内にバリアフリートイレを設置することがガイドラインで定められている。 

信号機をバリアフリー化、違法駐車や道路標識の補修も

 信号機を改良して音響機能を整備

交通安全特定事業は市町村と公安委員会が協力して行うバリアフリー化の取り組みだ。 信号機を改良して音響機能を整備したり、歩行者用青信号の時間を長めに確保するなど、高齢者・障害者が安全に利用できる道路設備を行う。歩行者の経路上の障害となる違法駐車の取り締まりや、道路標識の補修もこの事業に含まれる。 

「特定建築物」「特別特定建築物」をバリアフリー化する基準とは?

バリアフリー法では、多くの人が利用する施設を「特定建築物」、その中でも高齢者・障害者が主に利用する施設を「特別特定建築物」と定義している。こうした施設を建築する際、廊下で車いす使用者と人とがすれ違える幅を確保したり、車いす使用者用のトイレを設置したりなどの基準が義務付けられている。さらに、廊下の幅は120cm以上が義務基準となっており、望ましいレベルの誘導基準では180cm以上(※3)とするなど、最低限確保すべき施設基準のほかに、望ましいレベルである誘導基準が設けられている。 

※3出典 厚生労働省「バリアフリー法(建築物分野に限る)の概要」

バリアフリーに関する独自の条例を定める地方自治体も

国が制定したバリアフリー法にもとづいてバリアフリーに取り組む自治体がある一方で、独自の条例を定めて、事業者と協議しながらバリアフリー化を促進する自治体も数多く存在している。

【大阪府】障害当事者と行う現地検証などで独自の基準を定める

車いす使用者用のトイレ

大阪府では平成4年に「大阪府福祉のまちづくり条例」を定め 、まちづくりに取り組んできた。建築物などの施設基準を具体的に示し、施設の建設事業者と事前に協議するプロセスを設けることで、府全体でバリアフリー化を推進している。国の基準の改定や、障害当事者と行う現地検証などを経て定期的に条例の見直しも行われている。令和5年5月の改定では、車いす使用者用のトイレの大きさを見直し、直径180cm以上のスペースを確保することや、大人用介護ベッドを設置することなどの基準が追加された(※4)。 

※4出典 大阪府福祉のまちづくり条例ガイドライン<令和5年5月改訂版>

【神奈川県横浜市】市独自の事前協議制度や整備基準を定める

横浜市では平成9年4月に「横浜市福祉のまちづくり条例」を施行し、暮らしやすいまちづくりに取り組んでいる。 独自の施設整備マニュアルを作成し、車いす使用者のための出入り口に操作しやすい戸を設置することや、エレベーターやトイレを利用する際のマナーを定めるなど 、細やかな基準をイラストとともに具体的に解説している。

地域の特性に合わせたバリアフリーを実現しよう

地域の特性に合わせたバリアフリーを実現しよう

ベトナム戦争後のアメリカで始まったバリアフリー運動は、世界中に波及し現在の日本でもその考え方が取り入れられている。日本では、ハートビル法と交通バリアフリー法が一本化され、平成18年にバリアフリー法が制定された。平成30年からは、改正バリアフリー法に「心のバリアフリー」が明記され、これまで推進されてきたハード面以外に、ソフト面でもバリアフリーを進めていくことが国民の責務となっている。

真に必要とされるバリアフリーの在り方は地域によっても異なるため、まず自治体がバリアフリー法について理解を深め、まちづくりやバリアフリー施策に生かしていくことが重要だ。
 

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