周遊の利便性を向上させるグリーンスローモビリティ
時速20km未満で公道を走る電動カート「グリーンスローモビリティ(以下、グリスロ)」は、環境負荷が少ない次世代モビリティとして注目されている。これを観光地で活用している高梁市に、導入効果などを聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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交通弱者を救う一手として検討したが、観光周遊のため活用することに。
令和3年度に国交省が行った「グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業」に参加した同市。これがきっかけで本格的にグリスロの活用を検討することになったという。
「環境への配慮があり、速度がゆっくりというポイントは、交通弱者の移動手段に最適なのではないかと考えました。中でも導入することになった『ヤマハ発動機』の車両は導入実績も多く、オープンで開放的なつくりが魅力でした。移動中に乗客と通行人がコミュニケーションを取ることができるなど、移動手段を超えた期待感がありました」と渡辺さん。しかし、この“速度がゆっくり”という点が、思わぬ結果を招いたという。
「まず、交通弱者のニーズが高いエリアで実証実験を行いましたが、ゆっくり走るという性質上、どうしても交通の妨げになってしまうことが分かりました。これにより、交通量の多い公道で一般車と並走するのは現実的でないことが判明したのです」。当初想定していた運行スタイルは難しいという結論に至ったことで、活用の場について再度検討することに。そんな中、“速度がゆっくり”というメリットを観光地であれば存分に活かせるのではないか、という案が浮上したのだという。
自動車乗り入れNGの観光地で運行し、1日に100人を乗せるほどの人気に。
「当市には“吹屋地区”という観光地があるのですが、このエリア内の散策に活用してはどうかと市長から発案がありました」と渡辺さんは振り返る。
この地区は観光地や文化施設が広範囲に点在していて、徒歩では周遊しづらい立地なのだそう。「道幅が狭いため一般車両の通行が困難で、ガソリンスタンドもありません。そこで、この地区に二次交通手段として走らせることになったのです」。こうした発想の転換で使用目的を変更し運用を開始すると、令和5年4月から11月までの8カ月で約6,000人が乗車したという。これは車両を提供する同社の中でも非常に高い成果だそうだ。
「運行は週末のみで2台体制ですから、運行日には1日で100人の乗車があった計算です。乗客からは、のんびりまち並みを楽しめると好評でした。通りの店から手を振ってもらえる、話しかけてもらえるなど、まち全体から歓迎される雰囲気なのも、乗っていて楽しくなる要因になっているようです」。
また、環境面では年間で0.4tのCO2を削減。燃料コストも抑えることができており、自治体として脱炭素社会へ貢献できている点も成果として大きいようだ。
乗客のニーズに合わせた運用で、さらなる人気の獲得を目指す。
観光地での運用に転換したことで確実に成果を上げている同市だが、昨年度の運行を経て、新たな課題も見つかった。それは、想定以上の人気で、本来の目的である“二次交通”としての役割を阻害してしまうということだ。
渡辺さんいわく「伝統的なまち並みを、ゆっくりと電動カートが走るという物珍しさもあってか、乗車すると降りずに乗ったまま楽しんでしまうケースが目立ちました。無料なのもあり、常に満席状態で走っているため、停留所で待っている移動目的の人が乗れないという状況も多くあったようです」と、ニーズの高さゆえの意外な問題点も浮き彫りになっているという。これらの課題に対しては運行ルートの見直しを進め、周遊と観光地運行でルートを分けるなど、順次対策する。乗車数の見える化も開始予定で、“待っていたのに乗れなかった”という状況を回避したい考えだ。
また、現在は市の予算を活用し、運用を地元企業に委託している。そのため、今後の運営費を捻出するために有償化する仕組みづくりも早急に進める必要がある。車内でデジタルサイネージを使って観光情報を提供するなどを計画・検討しており、乗客がより楽しめるようアップデートする予定だ。グリスロ導入のモデルケースとして注目を集める同市の取り組みに、今後も期待したい。
岡山県高梁市
産業経済部 観光課
渡辺 隆弘(わたなべ たかひろ)さん
グリーンスローモビリティの活用で持続可能な活気あるまちへ
1.オープンな仕様が交流を生む
ドアがないカートタイプで、気温や景色で季節の移り変わりを感じられる。乗客同士や歩行者とのコミュニケーションが活発になり、地域住民同士の交流も促進。
2.低速&コンパクト設計
時速20km未満という低速仕様。コンパクトな車両なので、住宅密集地やコミュニティバスが乗り入れることができない狭い道も走行可能。
3.外出機会の創出で健康増進効果
交通空白地や免許返納後の高齢者に外出機会を創出。地域の積極的な交流は生きがいを生み、高齢者の心と体の健康増進にも役立つ。
予算情報
407万円※ (2台分/車両 ラッピング費込み)
「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を活用
※2分の1補助された後の額
令和6年6月26日(水)~28日(金)で開催される「自治体・公共Week 2024」に出展予定。
お問い合わせ
サービス提供元企業:ヤマハ発動機株式会社
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E-mail:itouyuumi@yamaha-motor.co.jp
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