業務システム開発プラットフォーム
業務効率化は自治体共通の課題。取り組みを特定部署で終わらせず、いかに庁内で広げていくかが成功のポイントだろう。小城市ではシステム内製ツールに着目し、点から面へ広げる工夫で全職員を巻き込んだデジタル化を推進しているという。
※下記はジチタイワークスVol.32(2024年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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業務効率化でのコスト増を避けるため、職員によるシステム内製を選択。
平成17年に4町合併で誕生した当初からグループウェアを全庁で利用してきた同市。令和3年、庁内業務の効率化に向けてグループウェアの更新を検討したが、費用面で断念したと森脇さんは振り返る。「想定よりかなり高額でした。効率化のためだけに経費増大は難しいという判断です」。
そこで、コストを抑えつつ効果を出せる方法を調査。たどり着いたのが「サイボウズ」の提供する業務改善プラットフォーム「kintone(以下、キントーン)」だった。「ITの専門家でなくても、ノーコードで業務システムが開発できることに魅力を感じました。これならパッケージソフトのない業務でもデジタル化でき、改修も手軽にできます」。
折しも同サービスがキャンペーン中だったため、令和4年5月にテスト導入を開始。全職員にアカウントを配布した。「全庁的な取り組みにするためには、職員が“業務のデジタル化に慣れること”が大切だと考えたのです」。同時に過去の教訓も念頭にあったという。数年前、DXを推進しようとAI-OCRやRPAなどを庁内に導入したが、普及に時間がかかったのだ。この経験から“デジタルツールの浸透は容易ではない”と痛感していた森脇さんは、全庁的に活用してもらう工夫を進めていった。
身近な庁内申請業務から、デジタル活用を自然に広げる。
まずはシステム内製の方法について理解してもらわなくてはならない。全職員を対象としたハンズオン研修を開催し、実際に手を動かしてシステムをつくる機会を提供した。また、森脇さんと古賀さんはいくつかの業務システムをつくりながらスキルを習得。「分からない部分があれば自治体職員向けのオンラインコミュニティ“ガブキン”も活用し、構築の腕を磨いていきました」。
庁内で内製したシステムの運用は、公用車の運転日誌や備品の貸出申請など、職員の多くが関わる手続きから始めた。「日常業務の中でデジタルに触れてもらえるようにしました」。さらに消耗品の管理やストレスチェック、草刈り機の利用簿など、これまで紙で運用されていた各部署の業務をデジタル化。職員の活用状況を観察し、手応えを感じていったという。「このツールであれば、庁内だけでなく住民の手続きや事業者向けにも展開できると考え、本格的に取り組もうと決めました」。こうして令和5年、キントーンを全職員に正式導入した。
全職員が日常的に使うことで、ペーパーレスにも貢献する。
正式導入が始まり、タイミングを見計らいつつ進められたのが“人事評価”のデジタル化だ。「全職員への浸透に加え、人事担当の負担軽減にもつながると考えました」と古賀さんは語る。「人事評価や異動希望調査も、これまで紙で運用してきました。しかし、記入する側も回収する側も負担が大きい。デジタル化することで効率化したかったのです」。
同システムのたたき台は5~6時間で完成し、細部の調整を経て完成。まず部長向けに説明を行い、利便性やセキュリティについて理解を得た上で、全庁での運用がスタートした。「まだ運用を開始してから1年ほどですが、人事担当からは喜ばれており、職員もスムーズに活用できているようです」。
こうした活動の結果、令和5年度末時点では64の業務システムが稼働しており、その約半分は原課の職員が構築したものだという。「同時期に導入した電子決裁の効果も相まって、紙の使用量は年間で約125万枚減りました。ペーパーレスにも大きく貢献しています」。
システム構築スキルの習得で、異動さえもDX拡大の機会に。
現在は、業務のデジタル化が定着しつつある同市。森脇さんは「最近は他部署の職員から“うちの部署でもシステムをつくってみたい”という相談が増えています」と笑顔を浮かべる。「私もサポートをしていますが、職員間でも教え合いながら、スキルを磨いているようです」。
また、システム内製という武器は、職員の異動をよりポジティブに変える可能性があると期待を込める。「システムの構築スキルを身に付けた職員は、異動した先でもそのスキルを活かすことができます。これも全職員で同じツールを使うメリットですし、庁内DXがさらに進むでしょう」。今後は、住民や事業者に向けた活用もさらに広げていくことを目標としており、やりたいことが尽きないようだ。「国も手続きオンライン化などの政策を進めているので、キントーンもうまく組み合わせて、住民や事業者の利便性を高めていきたいですね。目指すは“行かなくていい市役所”です」。
全職員を対象としたツールの導入に始まり、地道な積み重ねと大胆な展開で、業務のデジタル化を加速させている同市。こうした進め方も、自治体DXの正攻法の一つといえるだろう。
左から
小城市
総務部 企画政策課 主事
森脇 康平(もりわき こうへい)さん
前・総務部 財政課 係長
(現・市民部 環境課 副課長)
古賀 勝貴(こが まさき)さん
全職員で業務効率化を加速させる自治体が続々と。
業務内容を熟知している職員自身で、現場にフィットするシステムをスピーディにつくることができるキントーン。導入自治体数は300を超え、日々新たな業務システムが誕生しているという。全職員で活用する自治体も増えており、業務効率化や情報共有、庁内コミュニケーションなどの動きが加速しているようだ。ここでは多彩な活用範囲の一部を紹介する。
CASE1 電子決裁 福島県昭和村
村長が出張中でも承認が下りる!
電子決裁システムを構築し、各課の若手職員とともに全職員に展開。首長や管理職が出張先でも決裁できるようになり、庁内全体の業務効率化・迅速化に貢献している。
総務課 企画創生係
主査 小林 勇介(こばやし ゆうすけ)さん
CASE2 事業者への説明会 佐賀県小城市
運営負担を軽減+混雑を回避!
電子契約に関する事業者向け説明会を複数回開催することになり、申し込みや資料共有、当日の受付をオンライン化。100人ほど参加者が来た回でも受付担当職員は1人で済み、資料の印刷も不要に。
前・総務部 財政課
係長 古賀 勝貴(こが まさき)さん
CASE3 報告書の作成 徳島県神山町
話すだけで報告書が完成!
外出先から留守番電話に音声を吹き込むだけで、自動で文字起こしされる仕組みを構築。帰庁する前に報告書がすばやく完成し、職員の負担軽減に。
前・総務課 企画調整係 主事
松田 一輝(まつだ かずき)さん
CASE4 避難所運営 大分県別府市
避難状況を見える化!
コロナ禍の避難所運営で、避難者数をリアルタイムに把握し、混雑を防ぐシステム。住民は事前に健康状態などをオンラインで入力でき、運営もスムーズに。
企画戦略部 情報政策課 主査
明田 舞子(みょうだ まいこ)さん
and more !
埼玉県鶴ヶ島市
介護認定業務
介護認定審査会のシステムを内製しコストを約90%削減。4万枚のペーパーレスにも寄与。
奈良県葛城市
総合窓口課の開設
各課の窓口対応マニュアルや様式をシステムに集約。2庁舎制でも同じ対応を可能にした。
全庁
●庁内への指示・通知・アンケート
●経費や押印などの申請
●人事評価・異動希望の管理
●職員の勤怠管理
●引継書・マニュアルの管理
●職員間のコミュニケーション
●庁内質問箱・ナレッジ共有
●ファイル管理と共有 など
企画・広報広聴
●プロジェクト管理
●問い合わせ・市民の声の管理
●プレスリリース・取材管理
●広報紙の制作進行管理 など
人事・総務
●職員採用の先行管理
●職員名簿の管理
●会議室や備品の予約・管理
●入札管理 など
財務・会計
●予算執行状況の管理
●議会提出案件の集約
●政党要望・団体要望などの管理
●諸手当の管理 など
情報システム
●システム調達の管理
●ヘルプデスク窓口
●貸出機器の予約・管理
●庁内問い合わせの集約 など
教育
●調査票の申請受付
●児童行動記録の管理
●就学援助費の管理
●校舎修繕依頼の管理 など
子育て
●保育所の一時預かり申請・管理
●子ども医療費の支給管理
●産後ケア空き状況の見える化
●子育て施設の利用申請 など
福祉・医療
●医療機関・保健所との情報共有
●福祉施設情報の管理
●介護保険の認定審査
●補助金の申請管理 など
地域振興・産業
●ふるさと納税の管理
●中小企業の融資や補助金管理
●まちづくり協議会の名簿管理
●空き家バンク など
建設土木
●工事指示・報告管理
●土地境界確定申請の管理
●道路修繕依頼の管理
●街灯の管理 など
農林水産
●農業支援ワンストップ相談受付
●市民農園の申請・管理
●農業生産者情報の管理
●鳥獣対策の管理 など
キントーンの強み
1.他自治体のシステムをコピー
人気のシステムは、同社のコミュニティサイト「ガブキン」でテンプレートとしてダウンロードできるため、ゼロから開発する必要がない。
2.手厚いサポート体制
自治体事例の紹介や、実際にシステムをつくるハンズオンセミナーなど、サポートが充実。職員の挑戦を応援する。
3.セキュリティと満足度
キントーンはISMAP※1登録済。また、同社は日経BPの「自治体ITシステム満足度調査※2」で1位を獲得している。
※1 ISMAP=Information system Security Management and Assessment Program(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)
※2 日経BPガバメントテクノロジー 2023年秋号 自治体ITシステム満足度調査 2023-2024 グループウエア/ビジネスチャット部門1位
イベント情報
\サイボウズ代表の青野さんも参加!/
自治体ユーザーイベントを開催!
令和6年7月23日(火)14:30~19:00
開催場所:サイボウズ東京オフィス(中央区日本橋)
● 能登半島地震におけるキントーン活用と今からできる準備
● 全職員導入自治体の事例発表(下妻市・舞鶴市・西予市) ほか
※所定人数を上まわった場合、当日までに参加受付を締め切る可能性あり
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