マイナンバーカードを活用したデジタル身分証アプリ
災害発生時、避難所の受付に時間を要してしまうと住民にも職員にとっても負担になる。宮城県ではマイナンバーカードの情報を記録したアプリを活用し、100人が参加した避難訓練でスムーズな受付を実感したという。
※下記はジチタイワークスVol.31(2024年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]ポケットサイン株式会社
紙の受付では記入に時間がかかり、書き間違いや転記ミスの可能性も。
平成23年に東日本大震災を経験した同県。「誰がどの避難所にいて、何が必要なのかを把握し切れず、行政として十分な支援を行うのが困難でした」と、橋本さんは当時を振り返る。そうした中で令和3年、原子力防災訓練を実施。参加者が避難所に到着した際、時間帯によって受付に行列ができる場面が見られたという。
「避難所の受付は、住民自らが氏名や住所を手書きする方式で行いました。時間を要する上、職員が避難者名簿を作成する際に転記を誤る可能性も高いと感じました」。
そこで、円滑な避難につながるツールを求めてプロポーザルを実施。条件に挙げたのは“操作が簡易で緊急時においても情報が判別しやすい” “プッシュ通知を受信できる”といった利用者にとっての機能性。加えて重視したのが、マイナンバーカードの活用だ。「4人に3人が所有している状況になり、本人確認のツールとして積極的に使っていきたいと考えています」。
そして、効果的かつ経済的なサービスとして選定したのが、マイナンバーカードの情報が登録できるデジタル身分証アプリだったという。
アプリ活用で瞬時にチェックインでき、100人の受付が2分強で完了した。
スマートフォンでマイナンバーカードを読み込むと、氏名・住所・生年月日・性別の基本4情報が記録される同アプリ。総務省から公的個人認証サービスにおける「プラットフォーム事業者※1」に認定された「ポケットサイン」が開発したもので、オンラインでの本人確認を可能にするツールだ。例えば同アプリ内に格納されたミニアプリ「ポケットサイン防災」を使えば、住民がスマートフォンで二次元コードを読み取るだけで、避難所への受付が完了。職員が操作する管理画面では、誰がどの避難所にいるかを同時に把握できる仕組みで、デジタル庁のカタログ※2でも優良事例として紹介されている。
令和4年には県職員100人が参加して、原子力災害を想定した避難の実証訓練を行った。「紙とアプリの受付比較では、スピード感に驚く参加者も。アプリだと瞬時にチェックインでき、大きな二次元コードを表示すればみんな同時にカメラで撮れます。約14倍の速さで受付が進み、開始後2分強で100人全員が受付完了しました」。さらに管理の効率化も実感したという。「受付データは自動的にリスト化されるため、職員が転記する手間が要らず、正確性の面でも非常に効果があると感じました」。
※1 令和5年7月28日時点で18社が認定を受けている
※2 デジタル実装の優良事例を支えるサービス/システムのカタログ(第2版)
平時にも使える工夫によって登録を促し、DXを推し進める。
令和5年度に原子力防災分野で身分証アプリを本格導入した同県。懸念していたのが“住民のアプリ登録率”だ。「防災限定だと登録が進みにくい可能性が高い。そこで平時使用を目的に、原発周域ポイントを活用した実証実験を行いました」。地域経済の活性化を図るため、身分証アプリを登録した住民に、域内で使える5,000円相当のポイントを付与。
「現在では地域人口の40%以上が登録し、促進効果はとても大きいと感じます。ほかにもアンケートやスタンプラリーなど複数のミニアプリを実証的に運用し、利用者がより普段使いしやすい環境を目指しています」。
なお、同社とはDX推進のための連携協定を結んでおり、同県が行政課題をもとに開発の提案を行い、実証フィールドを提供。ミニアプリのアイデアを全庁で募集すると、約150の提案があったそう。「市町村も含めたワーキンググループを構成し、ミニアプリ単位で同社とともに検討を進めています。スタートアップならではのスピード感がありコミュニケーションも密で、頼もしく思っています」。
マイナンバーカードで読み込んだ基本4情報の活用は、属性把握を容易にする。有事はもちろん、平時も属性に応じた発信を行うことで、必要な人に必要な情報を届けられれば、きめ細かな住民サービスが実現するだろう。
宮城県 企画部
デジタルみやぎ推進課
橋本 崇(はしもと たかし)さん
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