グリーンツーリズムとは?定義やメリット・デメリットをご紹介!
グリーンツーリズムとは、農山漁村地域で自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型のレジャーのことだ。都市部で暮らす人たちに普段と違う環境で余暇を過ごす体験を提供し、農山漁村地域の活性化を促す役割を持つ。グリーンツーリズムの推進によって、新たな余暇ニーズへの対応や、農村地域の産業振興、地域活性化の効果も期待されている。
本記事では、グリーンツーリズムの定義やメリット・デメリット、各自治体の事例を紹介する。
【目次】
• グリーンツーリズムとは
• グリーンツーリズムのメリット・デメリット
• 自治体の事例紹介(栃木県大田原市・青森県)
• 高齢化や過疎化の進む地域も持続可能な運営へ
グリーンツーリズムとは
グリーンツーリズムは、農林水産省が推進する取り組みだ。「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」と定義されている。都市部で暮らす人たちに自然豊かな場所で余暇を過ごす体験を提供して、農山漁村地域の活性化を促すことが目的だ。一次産業が主たる地域に新たな産業を生むことで、地域経済の再生・活性化や、持続的な環境保全を支える仕組みづくりを目指す。
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平成21年に財団法人日本交通公社が行った調査によると、農山漁村への訪問理由は「のんびりできそう」が第1位、次いで「おいしい食材で有名な場所」、「おいしい料理で有名な場所」と、農山漁村にしかない地域資源が主な理由となっている。また、農林水産省の調べでは、グリーンツーリズム施設への宿泊者数は年々増加しており、余暇の過ごし方としてのニーズの高さがうかがえる。※1
日本でグリーンツーリズムの概念が生まれた背景には、欧州のバカンスの文化がある。欧州では農村に滞在してバカンスを過ごすという余暇活動が定着しており、これを踏まえて日本でも平成4年7月にグリーンツーリズムが提唱された。平成6年には「農山漁村余暇法」が制定され、農林水産省は農家での宿泊体験を行う「農泊」をさらに推進しようと、旅館業法や旅行業法など各種法令の規制緩和も進められている。
近年では国内の旅行客だけではなく、インバウンドを推進する動きもある。農林水産省も外国人旅行者向けのプロモーション事業を行うなど、グリーンツーリズムは国際的な市場をねらう産業に発展した。
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※1 出典:農林水産省 「第3回エコツーリズム推進方策検討会資料」
グリーンツーリズムのメリット・デメリット
グリーンツーリズムには、どのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。具体的に見ていこう。
グリーンツーリズムのメリット
一次産業が主な産業である農山漁村に、グリーンツーリズムという新たな産業が生まれることで、地域の産業振興につながることが大きなメリットだ。
グリーンツーリズムには、飲食・購買・宿泊・体験・景観という集客に関わる5つの機能があり、これらの機能は観光客が地域を訪れる理由とも言い換えることができる。それぞれの機能を充実させることで、地域の中で観光客を回遊させることも可能だ。例えば飲食したついでに農業体験をして、お土産を買うなど、グリーンツーリズムの複数の機能を利用してもらうことで、地域全体へ経済的波及効果が生まれる。
さらに、地域活性化にもつながることもメリットと言えるだろう。グリーンツーリズムを行う事業者はもちろん、波及効果により地域の事業者も利益を上げ、さらにその事業者が新たな雇用を生むなど、地域経済の発展を促す効果が期待できる。
また、地域に社会的活性をもたらすこともひとつのメリットだ。具体的には、受け入れ住民と観光客の交流によって喜びや楽しみを感じる、来訪者から地域や生産物に対する評価を受け自信の醸成につながるなどが挙げられる。
グリーンツーリズムのデメリット
地域のリソースを消費することがデメリットと言える。来訪者を受け入れる農家には負担がかかるほか、グリーンツーリズムの運営そのものにも人的リソースが必要だ。また、直売所や飲食店などを新たに設置する場合、環境整備にまとまった資金やスペースが必要になることを理解しておきたい。
自治体の事例紹介(栃木県大田原市・青森県)
各地域の特色に合わせて、さまざまな形でグリーンツーリズムが行われている。ここからは、自治体が取り組むグリーンツーリズムの事例を見ていこう。
case.1 栃木県大田原市
栃木県大田原市のグリーンツーリズム事業は、官民共同で設立した法人が事業の中核を担う、独自の連携体制が大きな特長だ。大田原市が平成22年に策定した事業構想にもとづき、平成26年に市と18社の民間企業が共同出資した法人「株式会社大田原ツーリズム」を設立した。
この法人がグリーンツーリズム事業の窓口となり、学校や旅行会社、企業、団体などから旅行客を受け入れるほか、コーディネーターとして事業全体の取りまとめを行っている。
大田原市は栃木県北東部、那須野ヶ原の広大な平野に位置する自治体で、首都圏への食糧の大規模供給源でもある。広大な耕作地を利用して数百名での田植え体験を実施するなど、大規模な農業体験も可能だ。こうした地域の特性を活かし、修学旅行の受け入れなど教育活動の一環としてグリーンツーリズムを役立てている。
case.2 青森県
青森県は県内各地の170施設※2でグリーンツーリズムに取り組む自治体だ。施設の多くは観光型の事業だが、一部の団体では教育旅行として国内の学生やインバウンドの来訪者も積極的に受け入れている。
青森県で行われている「農家民宿」は、県内の農家に滞在して農作業を体験したり、地元の食材を使った食事作りを体験したりなど、食と農を体験しながら学べる教育旅行型のグリーンツーリズムだ。来訪者は農業体験のプログラムや、受け入れ先の農家との交流を通じて「食と農」を学ぶ。りんご、米、野菜、花木といった青森で盛んに栽培される農産物と、その生産過程を深く知ることができるため、食育だけではなく「青森ブランド」の地位向上やPRにも貢献している。
※2 出典:青森県「グリーン・ツーリズムを体験してみませんか」
高齢化や過疎化の進む地域も持続可能な運営へ
グリーンツーリズムは農林水産省が90年代から推進してきた、息の長い取り組みだ。自然と触れ合う機会の少ない都市圏の人々に安らぎや楽しむ機会を提供すると同時に、高齢化や過疎化の進む農漁村地域に新たな産業を生み出してきた。近年ではインバウンド客を受け入れる動きもあり、今後も成長を見込める産業だ。
農山漁村に産業振興や地域活性化を促し、持続的な地域の運営を実現するために、地方自治体もグリーンツーリズムについて理解を深めておこう。