【セミナーレポート】実例から学ぶ!脱炭素も進める地域活性化戦略 ~官民連携で進める環境と経済両立への道~ Day1
政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことで、企業における脱炭素への取り組みが加速しています。自治体においても、令和4年度の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」創設を受け、GX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みが本格化する見込みです。その一方で、多くの自治体では高齢化、人口減少などの行政課題が山積しており、限られたマンパワーでどのように取り組むべきか、現場で悩んでいる職員も多いのではないでしょうか。
そこで今回のセミナーでは、経済活性化を進めながら脱炭素も目指す自治体の実例をご覧いただくことで、様々な施策と脱炭素を同時に進めるヒントとアイデアをお届けします。また、自治体の経済と環境の施策をつなぐ、企業のソリューションも紹介します。
Day2のレポートはこちら
概要
■テーマ:実例から学ぶ!脱炭素も進める地域活性化戦略~官民連携で進める環境と経済両立への道~ Day1
■実施日:2024年1月18日(木)
■参加対象:自治体職員
■申込者数:153人
■プログラム
【Day1】
<Program1>北九州市のグリーン成長に向けた取組について
<Program2>森とくらしの循環で自立する地域づくり
<Program3>官民連携における脱炭素の取り組みの事例と自治体内における脱炭素業務の効率化手法
<Program4>日々の行動変容を促し、まちぐるみで脱炭素の取り組みを!
<Program1>北九州市のグリーン成長に向けた取組について
【講師】
福岡県北九州市
環境局グリーン成長推進部 グリーン成長推進課
グリーン成長政策係長 小田 信介 氏
プロフィール
平成18年入職。環境保全や廃棄物政策に従事した後、平成24~25年環境省に出向し、国の地球温暖化対策に関わる。令和2年より現職。市の温暖化対策計画の改定や国の「脱炭素先行地域」の提案検討に携わる。
環境と経済の好循環による、2050年までのゼロカーボンシティを目指している北九州市。現在、その実現に向けて、国の「脱炭素先行地域」にもとづく周辺17市町と連携した面的な取り組みや、風力発電・水素等の拠点化を通じた新産業創出・競争力強化につながる取り組みを推進中だ。これらの取り組み内容に加え、他自治体・民間企業との連携について、小田氏が紹介する。
北九州市のグリーン成長のあゆみと、第三者所有方式の導入
当市には、「北九州エコタウン」という国内最大級のリサイクル団地があり、西日本全体の廃棄物からリサイクル資源循環の一翼を担っています。地域で生まれたエネルギーを地域で使う仕組みとして、平成27年に地域新電力を立ち上げています。
気候変動に対する取り組みは、国から環境モデル都市として選定された平成20年あたりのスタートです。令和2年10月、政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したのと同時に、当市もゼロカーボンシティを目指す宣言を行い、令和12年までに47%以上の削減目標を策定。令和4年に「脱炭素先行地域」に応募し、選定されました。
以下の図の右側は、国内全体の温室効果ガス排出部門別の割合です。左は当市ですが、産業部門が6割を超えています。ここをどうするかが、当市の重要課題と言えます。
「環境と経済の好循環」に向け、エネルギーをどのように脱炭素化していくかが、市のグリーン成長戦略の基本です。
当市が進める電力のキーワードは、「所有から利用へ」です。第三者所有による太陽光や省エネ機器の導入に取り組んでいます。
第三者所有にするメリットとしては、①初期投資がゼロ、②予算措置が早くなる、③導入スピードが早い…の、3点が挙げられます。イメージとしては、以下の図を参照ください。
周辺自治体や民間企業との連携・横展開
現在、これらの取り組みを、北九州都市圏域17市町に横展開しています。また人手不足やコスト面でカーボンニュートラル取り組めない市内の中小企業にも声をかけ、定期的に会議を行ったり、技術の不明点に対しての助言を行ったりしながら、ともに脱炭素に取り組んでいます。併せて、改正地球温暖化対策推進法にもとづく地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定に対して、計画づくりの手伝いも行っています。
また、再エネ由来電力の導入を周辺自治体とともに進めていますが、GISを活用して見える化と情報発信を行っています。現在、586施設で導入されており、今後も再エネ電力の導入を進めていきたいと思っています。
民間への横展開も始めており、これまでのノウハウを活かし、本年度から民間向け補助制度を立ち上げました。これも、環境省の再エネ交付金(重点対策加速化事業)を活用して補助事業を創設しました。また、脱炭素電力を導入した市内企業を市が認定する制度を創設し、現在、36社を認定しています。
民間企業との共創事例紹介と、今後の展望
当市は「民間企業との共創」をキーワードに、カーボンニュートラル分野で地元企業等と連携協定を締結して次の取組を進めています。
●企業とのEVシェア
●EVを活用した再エネの有効活用
●太陽光・蓄電池のリユース・リサイクル
●風力関連産業の総合拠点化(社会実装)
●水素拠点化とサプライチェーン構築(社会実装)
令和5年2月、16年ぶりに市長が交代し、現在、新しいビジョン策定を進めています。その中で掲げているテーマが“つながりと情熱と技術で、「一歩先の価値観」を実現するグローバル挑戦都市・北九州市”です。当市の技術と強みを活かしながら、一歩先の価値観を実現する、グローバルに挑戦する都市を目指していきたいと思っています。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:官民連携や周辺自治体との連携を進める上で、北九州市の役割や連携する上でのポイントを教えてください。
A:人材確保はどのまちにとっても課題であり、特に官民連携では、民間企業との連携協定をもとに人事交流をしています。連携を進める上で、自治体にもビジネス感覚が必要だと思っていまして、経済合理性・ビジネス化ができるかにベクトルを置くことが重要だと思います。市町連携の場合は、規模によってノウハウや人材の課題があります。そのため、一から人材育成するより、できる人からノウハウをもらった方が早いと思うので、当市としては一緒にやることによって、周辺地域全体が活性化するためにノウハウ提供をしています。
Q:どういった企業と人材交流をしておられるのでしょうか。
A:一例ですが、電力会社です。電力分野は専門家でないと難しい部分があります。電力会社には、周辺市町の支援業務も進めてもらっています。また、自動車から蓄電池をリサイクルできないか、リユースできないかなどの実証も、一緒に行っています。
<Program2>森とくらしの循環で自立する地域づくり
【講師】
岡山県真庭市
産業観光部 林業・バイオマス産業課
エネルギー政策室 室長 杉本 隆弘 氏
プロフィール
1997年に旧美甘村(みかもそん)役場に入庁し、2005年の町村合併により真庭市職員となる。入庁以来、主に森林・林業に関する業務に従事し、最近では木質バイオマスや再生可能エネルギー政策を担当。
市内にある森林、生ごみ、人などの資源を最大限活用することで、地域内の経済循環を実現するとともに、脱炭素社会の実現にも寄与する取り組みを推進中の真庭市。木質バイオマス発電や生ごみの液肥化などの状況について、杉本氏が発表する。
「バイオマス・SDGs・脱炭素」に係る真庭市の歩み
以下の図は、当市がバイオマスやSDGs、脱炭素などに取り組んできた歩みです。1992年の「21世紀の真庭塾」とは、地元の若手の経営者や2代目が集まり、地域の未来を本気で考えようということで発足しています。どういう風にやれば、2010年の真庭市が、住みやすく楽しいまちになっているかという観点で、これを立ち上げたそうです。この取り組みの中から、「豊かな森林資源を活かして地域の振興を図るべき」との意見が出され、現在の当市の取り組みの礎になっています。
2015年にはバイオマス発電が稼働を始め、現在も順調に稼働して地域経済が潤ってきました。また、生ごみの液肥化も同年から始まりました。
2018年、これらの取り組みが評価され、SDGs未来都市に選定されたのを機に、地域エネルギー自給率100%、2020年までにカーボンニュートラル実現を目指すことを宣言しました。
2019年には環境省版のSDGsと言われている、「地域循環共生圏プラットフォーム」にも認定され、第1回の脱炭素先行地域に選定されました。
当市が掲げるSDGsは、環境と経済の両立がポイントであり、教育など社会生活とも連動させようと思っています。
真庭バイオマス発電所と生ごみ等資源化施設について
「真庭バイオマス発電所」と「生ごみ等資源化施設」について、概要を紹介します。
●真庭バイオマス発電所
発電能力1万kw、年間売り上げ約20億円。木質バイオマス発電のため、「燃料費」がかかります。これは、地域の人たちがチップを持ってきた対価で、チップの出どころは基本的には山なので、山林所有者に燃料代の一部を還元しています。経済効果としては、単に燃料代ということだけではなく、そこに関わる方々など間接的な波及効果も含めると、大体52億円ぐらいの効果が出ています。
●生ごみ等資源化施設
今秋の稼働予定で、生ごみ等資源化施設の建築が進んでいます。燃えるごみを約40%削減し、年間約8,000トンの液体肥料として再生することで、ごみ処理のエネルギー・コストを低減させ、脱炭素・低コスト農業の実現を目指しています。また、ここでできた液肥は実際に農業に使って循環させ、環境負荷も低減するという、市民レベルでの循環のシンボルになると思っています。
●事業効果
行革:廃棄物処理コストの削減⇒20年間で29.4億円削減
農業:農業への濃縮バイオ液肥活用⇒低コスト農業、循環する農業の実現
環境:生ごみ分別による可燃ごみ減量化⇒環境への負荷軽減、最終処分量の削減
上記以外にも、脱炭素先行地域としての取り組みとして公共施設照明のLED化や、公用車の次世代自動車化、PPAも昨年から始めています。日産自動車と提携を結び、EVシェアリングも行っています。
人材不足の課題解決と脱炭素への取り組み方
多くの自治体が、専門的な知識を持つ人材の不足に悩んでいると思います。当市も同様でしたが、内閣府から新しい人材派遣制度の活用を提案いただき、応募したところ、ある企業とうまくマッチングし、現在3名の「グリーン人材」に来てもらっています。これにより、専門人材不足の課題については、少し解決できたと思っています。
ゼロカーボンや脱炭素の取り組みについて、何から始めるべきなのか、私の持論を紹介します。
①地域の資源を見直す
②どう利用するか考える
③市民や民間事業者と協働する
特に大事なのは、③の「協働」です。昨年は市民会議を5~6回実施し、今年もすでに2~3回やっています。その結果、良い提案を数多く頂き、「地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を策定することができました。
行政としては、9割以上の提案を活かす形で政策につなげていきたいと思います。また、「エコテイクアウト」という取り組みも実施しており、マイボトルやマイ容器で量り売り購入できる店や、イベントでリユース食器を使う店と連携しています。
なぜ真庭市は脱炭素を推進するのか
工業地帯がないので、それほど多くのCO₂は排出していない当市が、なぜ脱炭素推進に注力しているかについてお話します。
この42年間で、当市の平均気温は1.4℃上昇しており、最高気温は2℃も上がっています。大雨等の災害も増えており、地球温暖化問題が対岸の火事ではないということを、市民も含め感じています。
地下資源への依存を転換しようと考えたときに、森林や土地など地域資源を活用することの重要性に気づきました。山や農地など、当市の資源をうまく使いながら、地域を活性化させ、豊かな暮らしを次世代につなぐ。その取り組みを通じて、地域経済の活性化も図る。そこで生み出したお金を、例えば公共交通網の問題や、子育て問題などの解消につなげていきたいと思っています。
当市では、SDGsバイオマスツアーを行っています。実際にお越しいただいて、我々の取り組みを肌で感じてもらいたいと思います。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:生ごみを市民から集める仕組みは、どのようにしておられますか。
A:生ごみの収集が液肥化の“キモ”となるので、各家庭に生ごみ分別用の小さなバケツを配っています。最寄りの収集スポットに設置されたバケツに、生ゴミを入れてもらい、それを週2回程度収集し、空のバケツと交換する仕組みです。市民は24時間、いつでも収集スポットを利用することが可能です。
Q:液肥化に関して、においの問題はどのようにクリアしているのでしょうか。
A:液肥の性質上、においをゼロにすることは不可能です。施設を安定的に稼働させることと、品質をきちんと見ながら確保していくということで、なるべく悪臭を低減していこうと思っています。揮発性が高いため、農地に散布した後にすぐに耕起します。そのため、土と混ぜてしまえば忌避効果の持続とにおいの軽減が見込めるだろうと考えています。
<Program3>官民連携における脱炭素の取り組みの事例と自治体内における脱炭素業務の効率化手法
【講師】
ウイングアーク1st株式会社 プラットフォーム事業開発統括部
データプラットフォーム事業開発部 企業活性企画グループ
グループマネージャー 大滝 貴光 氏
プロフィール
2021年、ウイングアーク1stに入社。現在、データプラットフォーム事業開発部企業活性企画グループに所属。入社以来一貫して、アライアンス企業との製品連携やデータを活用する協業や新規事業企画を推進している。
ゼロカーボンシティを宣言する自治体が増える環境下、官民連携で脱炭素に向けた取り組みを進めることで、大きな効果が期待できる。今回のセミナーでは、北九州GX推進コンソーシアムの中で、ウイングアーク1st株式会社が進める「見える化/分かる化/最適化/見せる化」という4ステップを、同社の大滝氏が紹介する。また、自治体内における局部横断的な脱炭素業務の負荷を軽減する手法についても紹介する。
そもそも「カーボンニュートラル」とは
2020年に政府が宣言した「カーボンニュートラル」は、2050年までにCO₂排出量をゼロにしましょうという取り組みです。多くの企業にとって、関心度が高いキーワードではあるものの、事業を成長させる中でどうやって排出量を減らしていくのかが、大きな課題となっています。
企業や自治体が、カーボンニュートラルに取り組むメリットととして、以下の5点が挙げられます。
・優位性の構築
・光熱費や燃料費の低減
・知名度や認知度の向上
・社員のエンゲージメント向上、人材獲得力の強化
・資金調達で有利
これ以外にも、温暖化に関しては排出量の報告義務の強化など、政策や法的なリスクがあります。また、既存製品をつくる際、設備の入れ替えを求められるなど、テクノロジーのリスクも出てくると思われます。市場リスクの場合は、消費者の好みの変化に対応することも考えなくてはいけません。
また、対外的なステークホルダーの見る目が変化していますので、単に企業のCO₂排出量を削減すれば良いということではなく、将来的に企業活動を継続するためには、排出量削減を進めながらしっかりと目標設定し、運用・管理することが重要になります。弊社は、そこに向けた第一歩のソリューションを、サービスとして提供しています。
「EcoNiPass」で課題解決・簡単に可視化
弊社の「EcoNiPass」は、CO₂排出量の可視化ソリューションです。排出量削減に向けては、どうやってCO₂排出量を集計するのかといった、活用や業務効率化面の課題があると思います。EcoNiPassは以下の図のように、サプライチェーンとの連携機能で効率化を実現することができます。
EcoNiPassは、CO₂削減に向けた「見える化」を実現し、削減に向けた計画立案支援、削減施策の実行までトータルでサポートしていきます。以下の図を参照ください。
まず、投資すべきポイントがどこなのかを把握することが重要で、その後、調達で改善するのか、機器を入れ替えのるかなど、最適化計画を立てます。
最終的には、各種帳票にCO₂のデータを掛け合わせたり、会計データと組み合わせて意思決定を早くしたりといった、CO₂削減の先にあるビジネスまで、弊社で支援できると考えています。
EcoNiPassの特徴と機能について
EcoNiPassは可視化から削減まで、一気通貫でカーボンニュートラルの実現を支援します。これまでも、デジタルツインを使ったシミュレーションや工場FA機器の提案、物流における削減提案など、多くのパートナーと連携してきました。以下に、機能と特徴について紹介します。
●サービスの概要
弊社のサービスは基本的に、企業単位での排出量を可視化できるプラットフォームを用意しています。Scope1からScope3までのデータを投入することによって、自社のCO₂排出量の見える化ができるモードを用意しています。
検索メニューで個別施設のデータを見ることや、グラフ化ができるようになり、したりできます。Excel等で集計するよりも、効果的な可視化が可能です。
その他、前年同期比や、排出源ごと・原単位ごとの排出量や削減情報を細かく見える化できます。
●サプライチェーン連携
CO₂排出量の可視化は、企業価値を示すサプライチェーン排出量と、製品価値を示すLCA排出量(カーボンフットプリント)の2つがあります。サプライチェーンとの連携だけではなく、事業所や企業グループ単位での集計も容易になります。
●製品別のCO₂排出量(CFP)の可視化
CFPは、原料の採掘から使用後の廃棄・リサイクルまで、ライフサイクル全体でのCO₂排出量を指します。完成品メーカーを除いた製造業は上流側から情報を受け取って、自社のCO₂排出量を加算し、下流側に情報提供します。
●EcoNiPassの料金プラン
料金プランは、各拠点やサプライチェーンと情報連携して利用する「プライマリプラン」と、自社のCO₂の可視化や各拠点の契約をする「セカンダリプラン」を用意しています。
自治体においては、市役所以外の施設のデータ集計に活用するモデルとなっており、CFPのオプションについては、個別の見積もりで対応しています。
自治体における導入事例
北九州市は、「北九州市GX推進コンソーシアム」の取り組みの一環としてEcoNiPassを導入。セカンダリプランで、市内企業への無償提供を行っています。
市内企業約2000社にEcoNiPassのIDを配布し、そのデータを活用し、様々な企業支援を検討しています。
【EcoNiPass導入後の構想案①】
•EcoNiPass導入企業に対し、GXコンサルティング支援メニューを提供。
•削減されたデータを金融機関と連携することにより、サスティナビリティリンクローン等資金調達で利用を検討。
【EcoNiPass導入後の構想案②】
・EcoNiPass導入企業に対し、物流コンサルティング支援メニューを提供。
・算定された物流におけるCO₂排出量をEcoNiPassに連携し、物流における排出量の精緻化を図る。
このように、自治体は弊社のような企業をうまく活用することが、カーボンニュートラルへの取り組みポイントになると思っています。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:サービスを導入するにあたり、自治体のネットワークでも問題はないでしょうか。
A:はい、すでに北九州市でも導入していますので、自治体のネットワークでも問題ないと思っています。
Q:カーボンニュートラルに関する特別な知識がなくても、導入・使用できますか。
A:極力シンプルなつくりにしていますので、基本的にはExcel入力程度のスキルがあれば、データの投入や可視化の操作はできるようになっています。弊社としてもサポートをさせていただきながら、導入支援ができればと考えています。
<Program4>日々の行動変容を促し、まちぐるみで脱炭素の取り組みを!
【講師】
ティーエムエルデ株式会社
係長 下村 真弓 氏
プロフィール
通信販売企業にてプランニング、商品企画業務などを担当。その後、環境問題への取り組みに共感してティーエムエルデ株式会社に入社。現在は販売促進部エコ・アクション・ポイント事務局の担当。
環境に配慮した行動やサービスの利用に対して付与され、貯まったポイントは商品や電子マネーなどに交換できる全国共通のポイントプログラム「エコ・アクション・ポイント」。環境省が推進するこの制度の、自治体での導入事例や導入自治体の声を、下村氏が紹介する。脱炭素に向けた、まちぐるみでの取り組みアイデアとして検討できそうだ。
エコ・アクション・ポイントの紹介
弊社は、環境問題への取り組みが主業務です。リサイクルステーション「ecoひろば」の運営のほか、エコ・アクション・ポイント事業があり、2008年から環境省の支援で民間事業として運営し、2019年に事業継承しています。
「エコ・アクション・ポイント」は、環境省が推進する全国共通の環境ポイントで、参加企業・団体(自治体)がエコアクションをつくり、会員となった住民の方々がエコアクションを実施することで、ポイントを付与する仕組みとなっています。貯まったポイントは、アプリ内で商品などに交換できます。
エコアクションの種類は幅広く、住民はまず、専用アプリをダウンロードして会員登録し、自分が参加できるアクションを下記から探してもらいます。アプリの検索機能を使うと、お住まいの地域でどういったアクションができるのかを検索できます。
また、マイページでは、過去に実施したアクションの履歴確認や、ユーザーのエコアクションを見ることができます。参加企業のイベント紹介や、実施内容などを投稿できる機能もあります。
ポイントの付与方法は、「二次元コードの読み取り」と「アプリ内の投稿」の2種類。例えば二次元コードの読み取りで資源回収した場合、回収ボックスに貼られた二次元コードをスマホで読み取ると、ポイントが付与されます。食品ロス対象商品購入の場合、ポイントシールをめくると二次元コードが出てきます。清掃イベントなどの場合は、参加者に名刺サイズの二次元コード付きのポイントシートを配布します。
一方、アプリ内の投稿で地産地消の食材を選択した場合、テーマに合わせてタイトルと写真、コメントを入力・投稿します。自治体が管理画面で確認し、承認ボタンを押すとポイントが付与できる仕組みになっています。また、前年度同月比で電気使用量が下がったことを証明できるものを、撮影・投稿することで、同様に自治体がポイントを付与します。
アプリ会員と画面を管理する事業者は、それぞれエコアクションにCO₂削減量を登録することで、削減結果を確認することができます。
自治体のメリットとしては、住民限定でポイント付与できる点です。交換商品の中に、自治体の限定商品を加えることもできます。地域限定のゴミ袋や地元の特産品などをポイントの交換商品に入れると、歳入も見込めるでしょう。
自治体における導入事例
直近の状況ですが、会員数は約28,000人(前年比約140%/2024年1月時点)。参加企業数は約34団体で、自治体は現在、4市が導入しておられます。導入事例は以下の通りです。
●京都府宇治市(2022年6月〜)
・会員数:現在約1,500人
・集会所や市役所内での資源回収拠点でのポイントを付与
・エコアクションの種類:下記図参照
宇治市の場合、「宇治市第2次地球温暖化対策地域推進計画」で定めた目標に向け、民生家庭部門の排出量をより削減することが重要と考えていました。エコ・アクション・ポイントを用いることで、市民・事業者の環境・地球温暖化などに対する意識改革を促し、行動変容の第一歩としてもらうことを目的として導入されました。
市民からは、ポイントをためながら環境に良い行動が実行できて、楽しみながら利用している…などの声が聞かれているそうです。
●滋賀県草津市(2020年9月〜)
・会員数:現在約1,300人
・2023年度:アプリから写真で報告のコース、イベント参加や教材利用のコースなど約16アクションを設定
草津市が導入された時期はコロナ禍であったため、アプリを使って「写真で報告」のコース、イベント参加や教材利用のコースなど、16のアクションを行っておられます。
特に、「家族チャレンジで100ポイント」という投稿の中で、地球温暖化対策につながるゴミ削減であったり節水であったり、温暖化の取り組みについての行動、環境学習・環境教育などでも利用いただいています。
導入費用と本日のまとめ
主な費用としては、毎月のシステム利用料および発行ポイントの原資があります。現在、参加自治体のおおまかな予算は80~100万円以内のところが多く、それほど大きな予算を組まなくても参加いただけるシステムとなっています。お気軽にお問い合わせください。
本日のまとめとしましては、以下の通りです。
(1)環境省作成のガイドラインで運用
環境省が運用状況のチェック・評価を行っており、環境省のロゴを使用していただけます。
(2)低コストで簡単に導入可能
専用アプリから簡単にポイント付与が可能です。新たなシステム開発費は不要です。
(3)エコアクションの種類が豊富
「衣・食・住」の、様々なエコアクションに対してポイント付与が可能です。
(4)エコ活動の実績の把握が簡単
エコアクションごとに、CO₂削減量の確認が可能です。環境目標達成への貢献にご利用いただけます。
(5)住民の環境意識を高めます
環境に対する住民の意識改革・行動変容を促し、温室効果ガス排出量削減への取り組みなど環境に対する意識を高めます。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:ポイント導入の際、自治体がやらなければいけない仕事を教えてください。
A:まず、どういったエコアクションをつくりたいか、アクションごとに何ポイント発行するかを決めていただきます。その後、市民向けに広報していただき、エコ・アクション・ポイントのアプリ登録のサポートと、住民からの問い合わせ対応準備をお願いします。また、写真投稿のアクションをご利用いただいた場合は、例えば週に1回ほど確認時間をつくっていただいて、テーマに合った写真かどうかを判断します。もしもテーマと異なる写真が投稿された場合は、否認できますので、投稿者へ間違っている旨のメッセージを送ることができます。
Q:導入自治体は、ポイントで交換できる商品の設定をどのようにしておられますか。
A:商品は参加事業者から提供いただきますが、提供いただかなくても参加は可能です。提供したい場合、自治体専用のゴミ袋などでも結構ですし、クオカードペイやアマゾンのギフト券などの金券も、品ぞろえしています。