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埼玉県志木市

ChatGPTをどう使う?リアルな自治体活用事情を探る~志木市編~

ChatGPTが世間に認知されはじめた2023年春から様々な生成AIが誕生し、個人的利用だけでなく業務にも活用する例が増加している。人手不足の解消やDXの観点から、生成AIの活用を検討している自治体も多いだろう。

しかし、利用のハードルが高く導入に踏み切れないケースも。勉強会の開催などを通してChatGPTの浸透と活用を進めている志木市の取り組みから、ChatGPTを活用するための第1歩となるヒントを紹介する。

【ChatGPT連載】
Case.1:~神戸市編~
Case.2:~戸田市編~
Case.3:~志木市編~ ←今回はココ

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです

Interview

市政情報課 兼 デジタル推進課
八木 征利(やぎ ゆきとし)さん

現場の職員にも利用者が。早急な対応が必要だと思いました。

Q.なぜChatGPTを利用することに?

八木さん:令和5年の4月頃から、私自身が個人的にChatGPTを使用していたこと、またほかの職員でも利用している人がいることが分かり、知らないうちに業務に活用される懸念から「早急にルールを決める必要がある」と感じました。

ただし、ChatGPTは業務効率化に寄与する便利なツールであると感じたからこそ、規制ではなくルールを定めることにしたのです。

そうして、同年4月24日には全庁的にメールにて指示を送りました。メールでは、「ChatGPTの回答をそのまま使わないこと」「個人情報など機密性の高い情報を入力しないこと」「活用は参考程度にとどめること」「回答内容は慎重かつ十分に精査し確認する(ファクトチェックを行う)こと」の4点のルールを周知しました。

さらには、市長が同年6月広報紙の市長コラムでChatGPTの話題を取り上げていたことも一つ大きなきっかけとなっています。とはいえ、ChatGPTの導入を決めた大きな要因は、それ以前からあがっていた現場の声でしたね。

第一に、ルールの周知が大切だと思います。

Q.“情報漏えいが怖い”という意見もありますが、いかがでしょうか?

八木さん:個人情報漏えいを防止するために、もっとも重要なことはルールの周知だと考えています。全職員が前述したルールを認識して利用することで、個人情報をChatGPTに直接入力することはなくなるでしょう。

それに加えて、API経由でプロンプトが学習されず、フィルタリング機能を備えたLGWAN上で利用できるASPソリューションを導入することで、間違いが起こらない仕組みを構築できます。当市では、令和5年7月からこれらの機能を備えた二つのソリューションのトライアルを開始しました。

自治体内でシステムを内製してChatGPTを活用しているところもありますが、本市のように内製できない場合は、このように民間各社が提供するソリューションを利用することで、職員だけでなく市民も安心できる体制を作れると考えています。ただ、各社で機能が異なるため、選定の際には実際に使用し、比較してみる必要があると思います。

「参考に」と資料をいただいたことで円滑に勉強会を実施できました。

Q.具体的にどのようにして庁内利用を進められたのでしょうか?

八木さん:前述の通り、まずはソリューションのトライアルを7月からスタートしました。ところが、8月に入ってもChatGPTの利用者が思うように増えず、活用が進まなかったんですね。頭を悩ませた結果、まずは知ってもらい、触ってもらうことが重要と考えChatGPTに関する自主勉強会の実施を決めました。

しかし、勉強会をはじめるにしても正直何から着手してよいのか、どのように学びを深めていいのか分かりませんでした。その頃、自治体の情報システム関連の職員が集まるビジネスチャットでChatGPTの勉強会をやったとの話が出たのですぐに資料をいただきました。それを参考にして当市の職員に楽しみながら学んでもらえるよう内容を本市に合わせ、勉強会をスタートさせたのが9月のはじめです。


▲勉強会の様子

当初はなかなか参加者が集まらず苦労しました。が、デジタル推進課の職員が様々な部署に声をかけた結果、4回の開催で多種多様な業務にあたる約70名が参加してくれました。初回は勉強会開催の告知期間が1週間程度だったにもかかわらず、20名の参加がありました。

導入を目指すからには、ChatGPTをより有用な形で活用できるようにとも考えていました。単に何かを尋ねたり、文章を生成してもらったりするだけでなく、アイデアだしやアンケートの素案作りなど、一歩進んだ形で利用できればと。このような状態になるためには、とにかく使ってもらうことに加え、リテラシーの向上が必要です。

そこで勉強会に加え、庁内向けに「ChatGPTかわら版」も作成して不定期に配布するようにしました。かわら版には、ChatGPTの様々な使い方や、プロンプトの作り方と実際の回答、壁打ちの方法などを内容に盛り込んでいます。

基礎から応用までを、気軽に学べる場ができました。

Q.研究成果としてはいかがでしょうか?

八木さん:1回あたり約1時間の勉強会では、そもそも生成AIはどういったものなのかという基礎から、ChatGPTで業務がどのように変わるのかなど、活用のイメージを持ってもらえる内容も盛り込んでいます。

また、ChatGPTを活用するうえで重要なプロンプトの基本について紹介し、各グループに異なるお題を渡してグループワークに取り込んでもらいました。例えば、1班には多世代交流イベントの案だしから、広報紙への掲載文、記者発表文を作成するワークを、別のグループには市の住みやすさ調査を実施する想定で、調査内容やアンケートの作成するワークというように、明確な目的をもってChatGPTに触れてもらいました。

工夫としては、楽しみながら興味を持って取り組んでもらえるよう、1つのグループにはネタ要素を入れるようにもしています。

グループワークの結果発表では、各グループがどのようなプロンプトを入力して、どのような回答が得られたのか、またどのような工夫を施したのかを発表しあいました。

この勉強会では、便利なツールとしてChatGPTを使いこなすには、まずは使ってみること、プロンプトを工夫する必要があることを学べます。加えて、ChatGPTは文章を作成するだけではなく、アイデアだしや壁打ちなど、さらなる業務効率化に寄与する可能性があることも感じてもらえていると思います。

参加者からは、次回開催を望む声も上がりました。

Q.庁内からの反響はいかがでしたか?

八木さん:前述したように、はじめはなかなか人が集まらず苦労した勉強会も、開催してみると参加者からは次の勉強会を望む声が上がるようになりました。

これまでの勉強会には、デジタル関連の部署だけでなく、保育士や教育委員会、図書館の職員など、業務内容にかかわらず多様な職員が参加してくれています。部長職が参加するケースもあり、ChatGPTは多くの職員が興味を持っており、活用に前向きな姿勢が見られました。

また、勉強会終了後には「勉強になった」「今後の業務に活用していきたい」「資料を課内でも共有したい」など、ポジティブな反応をもらっています。

今後も勉強会を継続して、より多くの職員が当たり前にChatGPTを使い、業務効率化を実現できるよう取り組んでいきたいです。

誰もが当たり前に使えるよう、リテラシー向上を目指したいです。

Q.今後ChatGPTをどのように利用していきたいと思いますか?

八木さん:ChatGPTが、文書作成や表計算ソフトのような感覚で使ってもらえるようになればと思います。例えば、広報の原稿やホームページのリード文の草案をつくってもらう、アンケートの素案をつくる、キャッチコピーのアイデアだしをしてもらうなど、日常の業務で当たり前に使ってもらえるようになることが今後の課題です。

以前、市長がChatGPTに関する一般質問に対して、ChatGPTに答弁をつくってもらいそれを読み上げるといったことがありました。ChatGPTに答弁書をそのまま使うのではなく、草案を作り、そこから文章を広げられたらいいとも思いましたね。

何らかの通知の案内文や文章の要約、校正も、ChatGPTを活用すれば大幅な業務効率化につながりそうです。このような状態を目指すのであれば、やはり勉強会を継続して開催していかなければと考えています。

勉強会については、本市のnoteを見て他自治体からも問い合わせが来ており、資料を提供したこともあります。これからどのようにしてChatGPTの活用を進めてよいのか分からない自治体の担当者は、多くの職員がChatGPTとはどのようなものかを知る機会となる、勉強会を開催してみてはいかがでしょうか。

その際、疑問点や不安があれば本市をはじめ、すでにChatGPTの活用を進めている自治体に問い合わせてみることは大切です。その問い合わせが、活用に踏み出す第1歩となるでしょう。

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