【セミナーレポート】「備え」×「緊急対応」~災害の激甚化・頻発化への対応に必要なこと~ Day2
9月1日は「防災の日」。特に今年は、明治以降に国内で発生した地震としては最大規模の被害をもたらした、関東大震災からちょうど100年の節目にあたります。
100年の間に行政及び国民の防災・減災能力は大きく向上したものの、近年の自然災害の激甚化・頻発化と、自治体の人手不足や財政難とが、災害への備えや緊急対応を難しくしています。そうした中、デジタル技術を活用した企業の防災ソリューションは急速に進化しており、多くの自治体が、災害リスクや被災状況等に合わせたソリューション活用の必要性を感じているようです。
そこで本セミナーでは、自治体職員からの意見・要望をもとに、現場で進められる「備え」や訓練の実例、災害時対応の経験談などの講演を、2日間にわたって開催しました。
Day1のレポートはこちら
概要
■テーマ:「備え」×「緊急対応」~災害の激甚化・頻発化への対応に必要なこと~Day2
■実施日:2023年9月26日(火)
■参加対象:自治体職員
■申込者数:149人
■プログラム
Program1
令和5年6月2日からの大雨等の静岡県の対応について
Program2
防災DX(西日本豪雨の振り返りから)
Program3
災害時の情報連携におけるビジネス版LINE「LINE WORKS」活用の広がりと自治体事例
Program4
「罹災証明迅速化」自治体が取り組むべき課題とは?
Program5
河川氾濫シミュレーションによる防災DX活用
令和5年6月2日からの大雨等の静岡県の対応について
<講師>静岡県 危機管理部 危機対策課
対策班 班長 八木 宏晃 氏
プロフィール
平成8年度静岡県入庁(土木技術職員)、危機管理部局に7年間、交通基盤部土木防災課に6年間在籍。平成25年度、岩手県沿岸広域振興局土木部に配属、平成29年3月熊本県県央広域本部上益城地域振興局土木部に派遣。
令和5年6月2日からの大雨により、磐田市で2級河川が破堤するなど甚大な被害を受けた静岡県。県は同市に対し、災害救助法4号を適用した。そのときの国・県・市町とのやりとりについて、八木氏が紹介する。
令和5年台風第2号の気象概況
令和5年台風第2号は、6月1日午前9時に宮古島の南南東約90kmを北上し、2日には南西諸島から離れて日本の南を東進。3日午後3時、伊豆諸島近海で温帯低気圧に変わりました。その一方で、日本の南にあった梅雨前線が台風の動きに合わせて1日から2日にかけて本州付近へ北上し、前線に向かって非常に暖かく湿った空気が流れ込んだため、前線の活動が活発化しました。
当県でも2日は広い範囲で雨雲が発達し、24時間降水量は浜松市熊497mm、藤枝市高根山で478.5mm、浜松市三ヶ日で386mmを観測するなど、複数の観測点において12・24・48時間降水量が、統計開始以来の極値を更新。当初の予想を上まわる記録的な大雨となりました。
下記の図2点が、当時の解析雨量積算と日降水量、「土砂キキクル」の画像ですが、当県を中心に非常に危険な状況になっていたことがお分かりいただけると思います。
2日午後から3日午前中にかけて線状降水帯も発生し、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があると気象情報が発表されました。以下の図はテレメーター雨量分布図ですが、伊豆の付け根の函南町桑原で時間55mm・連続量が376mm、裾野市須山で時間55mm・連続量662mmなどを観測しています。
6月2日からの大雨による静岡県内の被害状況
静岡県の被害状況を振り返ります。以下の図および写真は県内の被害状況ですが、右下の地図に示されている大きな丸は床上・床下浸水の合計数が多い地域です。
これに伴う避難所の開設状況は、6月3日の午前5時には県内446カ所、避難世帯は318戸で、避難者608人という状況でした。日が明け、12時になった時点で、避難所開設は9市町・223カ所、避難世帯45戸、避難者数68人という状況でした。詳細は以下の図をご覧ください。
災害救助法の適用の流れですが、まず6月2日18時頃、豪雨により敷地川の河川堤防が決壊して氾濫が発生。22時の段階で、内閣府から災害救助法適用申請の照会があり、22時30分には磐田市から適用の要望が上げられました。
これを踏まえ3日0時、県は災害対策本部を設置し、以降、内閣府と「4号」適用に向けての調整を行いました。以下が適応状況の文書ですが、「被害の状況等」の欄に書かれているように、「多数の者が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれが生じている」という判断があり、内閣府もニュース映像などで氾濫情報を把握していたため、スムーズに4号が適用されたということです。
最終的に、大雨による被害は6月16日までにほぼ収束。全壊が6棟、半壊が9棟、一部損壊が16棟、床上浸水が160棟、床下浸水が431棟という被害状況になっています。
関係機関の方々の活動状況を下記の図にまとめていますが、迅速に県に入っていただいた陸上自衛隊の方々をはじめ、中部地方整備局の皆さんにも深く感謝しております。
なお、各市町の本部設置状況は下記の図にまとめています。
災害救助法の目的と概要について
災害救助法の目的および概要について、ポイントが2つあります。災害救助法による救助は、「今起きている災害に際して現に行われる救助」であり、「食料品その他生活必需品の欠乏、住居のそう失、疾病傷病等に悩む被災者に対する応急的な救助」であることが特徴です。
基本的な考え方が4点ありまして、1点目は「現に救助を必要としている者に対して、応急的一時的救助を実施する」ということ。2点目は、災害に遭った者の保護と社会秩序の保全が目的であり、災害の規模が、これらに影響を及ぼす程度である際に実施されるということです。3点目は救助の実施主体で、「都道府県知事等」と書いてありますが、「等」の中には政令市も含まれます。4点目は、国民の協力のもとに実施するということです。救助に必要な人員の確保、物資の調達等は、地方公共団体や日本赤十字社など一般国民の協力を得て…ということになります。
救助の概要は先ほど述べた「法定受託事務」で、「災害により一定数以上の住家の滅失が生じた場合」、「多数の者に生命又は身体への危害が生じ、継続的な救助が必要な場合」の2点がポイントです。適用基準は1号から4号まであり、1~3号までの適用ポイントの詳細を以下の図にまとめています。
これが4号になると内閣府への情報提供・報告が必要で、都道府県知事等と内閣府が調整した上で適用決定となります。情報提供にあたり、災害によって住家被害が発生している、または発生している蓋然性が高いと都道府県が判断した根拠を示す必要があります。
磐田市の場合も、消防や警察への救助・救出要請件数、床上浸水以上の被害棟数(概数でもいい)などがポイントとなったとのことでした。SNSへの投稿やテレビのニュース映像なども根拠となります。同市の滅失世帯数は1~3号に該当しなかったものの、堤防決壊と河川氾濫によって多数の者が危害を受けるおそれがあったため、トータルで判断して4号が適用されました。ちなみに、令和3〜5年までの4号適用は以下の図の通りです。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:発災時、基礎自治体は応急対応で手一杯になると予想されますが、仮に首都圏でそういった状況となった際、円滑に情報共有を行うため、平時から取り組むべきことはあるでしょうか。
A:平時から“顔の見える関係”をつくっておくことが非常に大切だと思います。当県の場合は四つの地域計画局がありまして、それぞれのエリアの担当者同士で連携会議を行うなど、顔の見える環境を早期に築けるようにしています。
昨年9月の台風第15号の際、市町との連携に課題が発生したため、危機管理部の経験がある職員を中心に「市町支援非常班」を設置し、支援が行いやすい体制を整えました。
Q:講演の中で、県と市町とのやりとりについての話題が出ましたが、発災時に県としていち早く知りたい情報と、その理由を教えてください。
A:災害救助法適用に関してのことになりますが、大雨が降っている最中に4号適用を申請しても、雨がやむと4号ではなく1~3号適用となる場合があります。
とは言え、大雨が降っている最中に職員や住民が現地を見に行くことは非常に危険です。先ほど述べましたように、SNSの投稿情報や、地元の方からの消防署に対する通報などをもとに、どこの地域がどういった状況なのかの情報を迅速に知らせていただくと助かります。内閣府の方も、その情報に関しては迅速な情報提供を求めているからです。
防災DX(西日本豪雨の振り返りから)
<講師>東広島市 総務部 危機管理課
課長 上田 崇 氏
プロフィール
平成11年黒瀬町役場入庁。教育委員会、生活環境を歴任。平成16年の市町村合併により東広島市職員となり、医療・福祉、企画、都市計画等を歴任。令和4年度から危機管理課長。
平成30年7月豪雨は、西日本各地に大規模な豪雨災害をもたらし、東広島市においても例外ではなかった。当時、誰も経験したことのない豪雨災害に十分な対応ができず、多くの市民を不安にさせ、職員自身も疲弊したという。その苦い経験を振り返り、様々な取り組みを推進してきたこと、特に災害時の情報収集、伝達に関する防災DXについて、上田氏が紹介する。
平成30年7月豪雨における東広島市の被災状況
梅雨前線と台風7号の影響により、東広島市では7月5日から激しい雨となり、最初のピークとなった6日の夕方には、市内各地で土砂災害が発生しました。さらに翌7日未明、2度目のピークが引き金となり被害が拡大しました。被害の通報は約8000件にのぼり、関連死を含め死者は20名、住家やインフラ被害総額の推計は約165億円と、甚大な被害になりました。避難所開設状況は、市内73施設に最大1601名が避難し、職員による避難所運営が大変だったことを記憶しています。
以下の写真は、市街地の浸水被害状況です。JR西高屋駅周辺で、かつてない浸水による床上・床下浸水、そして車両の水没等の被害が多発しました。
一方、昭和40年代頃に山を切り拓いて開発された団地でも土石流被害が発生しましたが、平時から自治会による声かけや見守りが行われていたことから、死者はありませんでした。避難の呼びかけの重要性が再認識できたケースです。
この豪雨の災害対応の振り返りとして、同年11月に、第三者による大規模災害への対応に関する検証委員会を設置。避難情報発令の時期、情報の伝達方法など4項目を検証しました。
また、避難所運営に関して、当時、多くの職員が他の防災業務と兼務する体制だったため、職員のみでの対応の限界から、新たな交付金制度を創設。可能な範囲で地域の協力をお願いする運営体制に変更し、現在に至っています。
初めての「防災情報システム」について
平成30年豪雨の災害対応を振り返ると、様々な課題がありました。特に大きかったのが、次の4点でした。
①情報共有・処理
主に電話で入ってくる情報を紙の聴取書に書き取り、コピーした地図を添付していました。それらを外に持ち出す場合、再コピーし現地確認後は、元の聴取書に追記。複数セクションで共有する場合、さらにコピーして使い回し、最終的にExcelを台帳として管理する状況でした。そのため、地域の詳細な状況をよく知る支所・出張所と即時的な情報共有ができず、大きな課題となりました。
こうした中、情報のデジタル化の検討を開始しましたが、予算の都合で、高額なシステムパッケージの導入が困難だったため、以下の図のように災害情報の聞き取りから対応までの流れを整理し、令和元年までに情報部門の担当職員の手製で、初めての防災情報システムを構築。当時、こうした人材がいたことは、非常に大きな助けになりました。
②避難情報発令判断
避難判断の発令基準は、197ある大字ごとに危険度を判定しています。当時は5㎞メッシュで危険度が示されていましたが、大字区域を設定する仕組みがなく、見た目の情報だけで発令を判断したと聞いています。その後、危険度情報が1㎞メッシュとなり、手作業や目視がますます難しくなる中で、令和2年度に土砂災害で1名の犠牲者が出たことがきっかけとなり、新たな情報管理システムが必要という意識が高まりました。
そんな折り、広島県が土砂災害危険度情報のWEB公開を開始。危険度レベルや時間雨量、土壌雨量指数等の危険度情報が把握できるようになりました。県のサイトのExcelデータを取り込むことで、地域に色を付け、「見える化」を図るための独自ツールを作成しました。
③情報発信
当市情報伝達のメインツールは、FM波を使った緊急告知ラジオと防災メール、その他多くのツールで整備を進めています。昨年からは市民ポータルサイトによって、必要な情報を必要な人に届けることを目的としたサービスを開始しています。
④その他
●避難所からの定時報告を、FAXから電子申請に切り替え。
●令和3年から、出水期前に災害危険区域内の市民向け通知を発信。
●AIが情報提供するSpectee(SNS等の情報システム)の活用の開始。
●「マイシティレポート」アプリの活用で、市民ポータルサイトによる災害情報等の収集を開始。
●消防局と建設部によるドローンの導入
防災DX(これからの取り組み)
当市はこれまで、防災に関する「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」を強化してきましたが、今後「デジタルトランスフォーメーション」が大きな課題だと認識しています。
本年度から、NTTデータ関西の「EYE-BOUSAI」というパッケージシステムを活用し、「東広島防災WEB」の運用を開始しました。それまで、県気象台や各民間団体の情報をバラバラに収集していたものが、システム上に集約されて一元化を図ることが可能になりました。また、大字ごとに基準値を超えた際、避難情報発令判断が自動的に「見える化」されたり、クラウドサービスにより、現場のスマートフォンなどから被災情報等が入力可能となったりしたことで、情報の即時性を高めることができます。
当市が目指すべきDXは、市や学術研究機関、大学等が持つデータを連係させながら、様々なサービスに活用することだと認識しています。一方で、DXはあくまで道具であり、使い手側の意思であるビジョンが非常に重要だと思っています。まずはビジョンを描き、そのビジョンを共有することが大切だと考えながら、日々の取り組みを進めているところです。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:西日本豪雨の際、市の事前の備えはどの程度まで機能しましたか。
A:計画通りに機能した点は非常に少なかったです。報告だけに終始する本部運営、適切な内容およびタイミングになっていない避難情報の発令、マニュアルに沿ったツールが使用できなかった情報伝達、安否確認ができない不完全な避難所マニュアル…など、反省点が非常に多くありました。
良かった点を挙げるとすると、共助の力が各地域で見られたことです。講演で紹介したように、昭和50年代に開発された団地では大規模土砂災害の起こる中で、呼びかけ避難によって死者ゼロの地域がありました。豪雨を機に、防災意識が高まった部分は確かにあると思います。
Q:西日本豪雨の際に体験した苦労の中で、特に大変だったセクションを教えてください。
A:最も激務だったのは、総括的な対応を図る危機管理課だったと思います。その他、避難所対応と情報収集対応、現場調査対応の3セクションですね。特に、当時は避難所運営に“総力戦”体制を取っており、徹夜で対応した翌日、真夏の屋外の現場調査をするのはとても大変でした。情報収集対応が紙ベースだったため管理が大変な上、ムダも多かったです。
災害時の情報連携におけるビジネス版LINE「LINE WORKS」活用の広がりと自治体事例
<講師>LINE WORKS株式会社
マーケティング本部 篠田 麻実 氏
プロフィール
現場にITを意識させず、チームの連携や働き方を変える「LINE WORKS」に魅力を感じ、異業種から転職。全国のユーザーから直接声を聞き、“本当に役立つ”情報の発信を心がけ活動中。セミナー登壇多数。
警報級の大雨や台風が相次ぐ中、行政や自治体の災害対応においては初動の情報共有が重要になる。ただ、消防や医療、インフラ関連など、広範な関係機関との情報共有に関して、課題を抱えるケースが少なくない。被災状況や避難などの連絡が飛び交う現場で、いかに確実かつ迅速なコミュニケーションを実現するか、自治体の災害対応における「LINE WORKS」活用事例を篠田氏が紹介する。
「LINE WORKS」とは︖
LINEの使いやすさはそのままに、ビジネスに特化させたコミュニケーションアプリが「LINE WORKS」です。カテゴリーとしては、ビジネスチャットやグループウェアと呼ばれるものに該当し、ビジネスニーズに合わせた機能やセキュリティ環境などを重視しています。2016年のサービス提供開始以降、多種多様な業界で利用を頂いており、現在、43万社・450万人以上が活用。セキュリティ意識が特に高い、大手金融機関や保険会社でも導入いただいており、自治体での活用事例も多数の実績があります。
一般のLINEは、個人単位・個人同士で自由につながり合うサービスであるのに対し、LINE WORKSは組織で導入し、運用管理も組織で行うのが特徴です。例えば、○○市役所や△△消防署で使うアカウントを運用管理者がメンバーに付与し、クローズな環境で使うことができます。
退職した職員の分は、情報にアクセスできないようアカウントを削除したり、メンバーがスマホを無くした際は、管理者が遠隔で強制ログアウトしたりできるセキュリティ管理機能も備わっています。
使い勝手は、一般のLINEとほとんど同じです。直感的に使える使用感が、複数ツールがある中でLINE WORKSが選ばれている大きな理由だと思っています。クラウドサービスなので、IDとパスワードがあればスマートフォンやタブレット、PCからもログインできます。
災害時における活用事例/浜松市災害医療ネットワーク
発災時、医療機関同士の情報伝達手段が失われがちです。そこでLINE WORKSを活用し、声ではなく文字の通信で医療機関との連携を強化することになりました。そのためには導入しやすいこと、グルーピングできること、そして、第三者を巻き込んでのネットワークになるため、既読確認ができることが非常に大切です。
平成30年台風第24号が接近した際、浜松市では9月30日夜から停電が発生し、1日早朝、災害医療コーディネーターから災害対応が必要との一報が入りました。医療機関に対し、LINE WORKSを通じてEMIS(広域災害医療情報システム)の入力指示を行ったほか、停電中の医療機関一覧表をつくり、中部電力に早期復旧要請をかけました。
同市の場合、LINE WORKS導入前から、情報伝達手段としてファックス、防災無線、衛星携帯電話、メール等を整備していました。しかし、発災すると支援派遣する立場での思うような連携が図れなかったり、通信の不安定さに悩まされたりしたとのこと。衛星電話も、音声による情報伝達なので正確さに欠けます。
所属課ごとに、トークグループを自由に作成できるのも便利な点です。西日本豪雨の際、同市から広島に支援チームを派遣したのですが、保健師チーム、派遣元の各課、危機管理課などでそれぞれのトークグループが作成され、随時情報共有を行ったとのことです。下記の図が、利用シーンの事例です。
また、診療時間帯に電話をかけると迷惑をかけるかもしれない医師などに対し、既読にならない場合にだけ電話をかけるなどの対応が可能になり、情報伝達時間が大幅に短縮できたという声も聞かれました。
●サービス利用イメージの補足
・既読
LINE WORKSは誰が読んだか・読んでいないかまで確認できます。伝えるべき相手に、情報が伝わったかどうかを心配するストレスが大幅に軽減されます。
・サブメニュー
便利な4機能でチーム力がアップ。
・ビデオ電話
音声・ビデオ通話の幅が広がる。
災害時における活用事例/愛媛県市町振興課
愛媛県は平成30年の西日本豪雨以降、相互応援の市町をあらかじめ決めておく「カウンターパート」方式を導入しました。ただ、市町同士が直接やりとりするのではなく、市町が県に依頼し、県がそれを仲介して伝えるやり方だったため、かなりの手間と時間がかかっていたそうです。連絡手段が電話だったため、担当者につながらないという課題もありました。
そうした背景からLINE WORKSを導入。県内の市を3つに分けたカウンターパートを、それぞれLINE WORKSのトークグループに分け、各グループの被災市町と支援する側の市町が、トークで素早く直接やりとりできるようにしています。
主な構成メンバーである副市町長や防災人事担当者以外に、災害対策本部の防災局や市町振興課の担当者などもトークグループに入ることで、どんな内容がやり取りされているかリアルタイムに把握できます。全メンバーが所属するトークグループもあり、県外で大規模な自然災害が発生した際、全員がすぐに情報共有できます。
その他、自治体の導入のきっかけには以下のようなものがあります。
●非効率な電話と紙による連絡を何とかしたい
●本部に集まる前からコミュニケーションを行い、救護所の早期開設を実現したい
●市長からの指示を災害対策関係者へダイレクトに一斉周知し、関係機関の行動をスピードアップしたい
●大規模災害発生時の消防広域応援体制を整備したい
このように、複数の連絡手段を持っておくこと、一対一ではなく複数での会話状態のやりとりができる連絡手段を確保し、日頃から現場で使いこなすことが重要だと言えます。
【LINE WORKSでは自治体向けの活用事例集を無料公開している。】
閲覧はこちらから。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:LINE WORKSの場合、通常のLINEと違ってグループ内の「誰」が読んだかまで分かるのですか。
A:3人以上でトークをした場合、一般のLINEでは読んだ人数が表示されますが、LINE WORKSの場合はその数字をタップすることで、既読が誰で未読が誰という具合に一覧が出ます。未読の人たちにだけ、もう1回連絡することが可能です。
「罹災証明迅速化」自治体が取り組むべき課題とは?
<講師>富士フイルムシステムサービス株式会社 経営統括本部
デジタル戦略推進部 部長 竹中 稔 氏
プロフィール
戸籍関連システム開発・基幹システム開発に従事後、戸籍コールセンター、カスタマーサポート部門設立。社内DX推進、セキュリティリスク統括、民間事業開発責任者を歴任。現在は新規事業開発およびM&Aを統括。
自治体が提供する生活再建支援策の基礎である「罹災証明書交付の迅速化」が、災害対応力向上の大きな課題となっている。被災した自治体職員の声から浮き彫りになった課題の全体像と、AIやICTなど最新テクノロジーや庁内データを活用した罹災証明迅速化実現の新たな手法について、竹中氏が紹介する。
災害レジリエンスを高める3つの力
弊社はこの3年間、得意分野である画像処理技術、プロセスマイニング技術などを用いて、社会的な課題の解決に取り組んできました。本講演ではその1つである「罹災証明迅速化ソリューション」について紹介します。
防災DXには予測、予防、対応の分野がありますが、弊社は発生後の対応力向上に焦点を当て、活動しています。その中でも、災害からの復旧の端緒となる「罹災証明書」に着目して活動しています。
罹災証明書は、被災者支援策の適用において被災程度を判断する材料として、支援金、義援金の給付や、災害援助金の融資、税や公共料金などの減免ほか、非常に広くの分野で活用されています。被災された方々にとっては、まさに最初の希望と言える罹災証明書ですが、交付の遅れが生活再建の遅れに直結し、社会問題となっています。その原因について、下記にまとめてみました。
住家被害認定調査は、まず全体の被災状況を把握し、調査計画を立てることから始まります。刻々と寄せられる被害情報の把握は、非常に煩雑を極める作業です。さらに、調査資料の準備、調査員の研修、調査班編成なども並行して行わなければなりません。調査結果についても、隣の住家との判定の違いについて不満を持つ方が一定数発生するため、その再調査に要する時間、工数によって作業はますます複雑になり、調査が遅れるのが実情です。
弊社のソリューションは、この問題を3つのシステムで解決します。まず、下図をご覧ください。
「スクリーニングシステム」はドローンなどで撮影した画像をもとに、弊社の画像処理AI技術によって被災状況を把握。また、調査すべき地域や優先度の検討を行うシステムです。
「被害調査統合システム」は罹災証明書の交付申請受け付け、調査員の登録、調査班の自動編成、調査対象家屋の自動割り振りなどを行い、調査計画・調査結果の管理と被災者台帳との連携を行います。
「家屋被害判定アプリ」は、現地調査をサポートするタブレット型のシステム。従来のように多くの資料は不要で、タブレット一つで完結します。現地での操作性にこだわった仕様で、誰でも直感的に操作が可能です。これらのシステムにより、従来作業に比べ、推定では工数・期間ともに50%以上の削減が可能となります。
※「罹災証明迅速化ソリューション」の詳細は弊社ホームページをご覧ください。
情報の一元化と処理の効率化のため、ほかのシステムとの連携も重視しています。これらのデータ連携により、住家被害認定調査だけではなく罹災証明交付以降の支援プロセス全体の迅速化が可能と考えています。
ソリューション開発の経緯
このシステムは3年前、都内の某自治体から「罹災証明書交付に大きな問題がある」という相談を受けたことから、弊社が医療分野で培ってきた画像診断AI技術を家屋の被災度判定に活かせないか、との観点で取り組みを始めました。その後、広島県尾道市、熊本県益城町、愛知県豊橋市、大分県日田市、佐賀県武雄市、熊本県八代市などと共同研究を続け、昨年夏に住家被害認定調査用のタブレットシステムを開発しました。
本年6月には「罹災証明迅速化ソリューション」のラインナップ第一弾として「被害調査統合システム」「家屋被害判定アプリ」をリリースしました。現在、約40の自治体様でご利用いただいております(無償版含む)。
以下、ご利用自治体様の声をご紹介いたします
「罹災証明交付の迅速化」は、平時の備えとして当たり前にシステムが手元にあってはじめて実現するものです。発災してからでは対応が後手に回ってしまいます。弊社では小規模災害にも活用いただける「家屋被害判定アプリ(無償版)」をご提供しておりますので、平時の災害対応訓練などでご活用いただき、ぜひその効果をご体感ください。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:システムの導入による効果を教えてください。罹災証明の発行が何日から何日に短縮されたかなど、効果を説明できるものがあれば知りたいです。
A:災害状況は毎回状況が異なりますので、単純にビフォアアフターの比較は非常に難しいです。実際の災害を経験された自治体にこのシステムを使ってもらったケースから見ますと、約50%の削減が可能と聞いています。ジチタイワークスvol.25に、大分県日田市、石川県小松市の事例を掲載しています。
Q:他社の類似システムとの違いを教えてください。
A:私どものシステムの特徴は大きく2つあります。1つは、「家屋被害判定アプリ」というタブレットのシステムです。自治体様の実務ノウハウを徹底的に調査して詰め込んでいるため、直感的に操作ができます。実際に、1時間程度の研修で十分に使いこなせたとの声もいただいています。
もう1つは、「被害調査統合システム」の中に計画策定・計画管理を支援する機能が盛り込まれている点です。刻々と変化する状況に応じ、柔軟に調査班の編成を可能にする、あるいは調査班のシミュレーションを可能にするといったところで、調査作業全体をマネジメントするシステムは、弊社独自のものです。ここが、他社システムと大きく異なる点です。
河川氾濫シミュレーションによる防災DX活用
<講師>NEC プロフェッショナル
安田 純一 氏
プロフィール
2001年NEC入社。ネットワークやソフトウェアの開発・企画などを経験した後、スーパーコンピューター部門でサービス事業「河川氾濫シミュレーション」を担当。
年々激化する自然災害。国土交通省も、豪雨災害はダムや堤防では防げないため、迅速かつ確実な避難・救援、氾濫を想定した都市計画など、被害を最小化する対策が必要と報告している。それらの課題に対してNECは、防災DXとして様々な取り組みを推進。その1つである「河川氾濫シミュレーション」の活用方法について、安田氏が提案する。
近年の災害発生頻度と国土交通省による提言
いきなりですが、2023年度中に「記録的短時間大雨情報」が何回出されたかご存じですか。実は、9月21日時点で89回、2022年度通期では161回も出されています。ここ10年の累計で大雨注意報62万8581回、洪水注意報は43万1877 回、大雨注意報だけで月平均約6万回です。洪水予報に関しては、馬渕川、最上川、信濃川がトップ3ですが、これ以外にも100以上の指定河川で洪水予報が出されており、もはや全国どこで洪水が発生してもおかしくない状況だと言えます。
国土交通省による「洪水および土砂災害の予報のあり方に関する検討会(報告書)」によると、もはや洪水や浸水はダム・堤防では防げないので、それを踏まえた上で防災対策に取り組むべきとする答申が出ています。水系・流域が一体となった洪水シミュレーションの実現についても言及されており、2級河川については、自治体単位での河川氾濫の取り組みが非常に重要であると指摘しています。
そうした状況下、国土交通省は、下記図のような指針を示しています。
DX社会に対応した気象サービスの推進
気象庁は令和6年から、従来の気象データだけではなく様々なIoT機器等とのシステム連携や、スーパーコンピューターを用いたデータの利活用、DX社会に適合した先進技術の利活用に、官民一体となって取り組む計画です。とは言え、自治体の現場では、マンパワーや時間が足りない、ガイドラインが多すぎて読み込む時間がない、防災担当になったばかりなので対応が分からない…といった課題があるのではないでしょうか。
弊社はこれまで、自治体の課題に対して様々な支援を行ってきました。シミュレーションAIや衛星技術、防犯カメラによる画像解析などを用いて、人々の安心・安全な暮らしを守りながら、「防災DX」を通じて、大雨や土砂災害など様々な災害発生時の支援に力を入れています。防犯カメラの画像解析は豊島区の防災システム、衛星技術は川崎市と連携するなど、各地の自治体で活用されています。
NECの防災DX「河川氾濫シミュレーション」
弊社が持つ様々な技術の中で、本日は、主にスパコン技術を活用した「河川氾濫シミュレーション」について紹介します。大雨による浸水深や河川の水深比を、30分ごとにシミュレーションし、それにもとづいた意思決定を支援するのが特徴です。この技術の概要を下記の2枚の図にまとめていますので、まず、こちらをご覧ください。
発災時、1人でも多くの住民を救うためには、災害時数時間前~災害発生時~災害発生後6時間から数日…という三つのフェーズで、適切な行動を起こすことが肝心だと思います。そのための意志決定を、リアルタイムなシミュレーションで支援します。どのエリアから救助依頼が入りそうか事前に予想できると、迅速な動きが可能になるとのことで、来年度、関西エリアの某自治体で採用いただく予定です。また、「1人でも多く救う」という意味では、消防隊員1人ひとりの安全を守ることも重要ですから、浸水深や河川水深比をシミュレーションによって事前予測することは重要です。
近年、「過去に経験のないような大雨」によって、甚大な被害が発生するケースが増えています。これに関しても、例えば、過去に経験した大雨被害の雨量を2~3倍に増やしたり、他地区で発生した豪雨を自分の自治体で降らせてみたりといったシミュレーションを行うことで、被害の範囲や程度を事前に予測することが可能。その他にも、様々な活用法があるでしょう。
「NECは、河川のことをどの程度まで知っているのか」とお思いの方も多いかもしれません。河川氾濫シミュレーションは、道路や橋梁、港湾河川などの設計を手がける総合建設コンサルタントである三井共同建設コンサルティングと共同で開発し、提供しているシステムです。従来システムは、洪水発生までの河川流量の増加を予測するものでしたが、今回ご紹介している次世代モデルは、RRI(Rainfall Runoff Inundation)採用により、洪水流失に加え氾濫状況まで予測することが可能になりました。
全国の状況解析を行うためには相当な負荷がかかりますが、ベクトル型スパコンSX-Aurora TSUBASAを活用することで、全国の解析も可能となりました。そのため、日本全国を約100mのメッシュに分割し、どの地点でもレーダー雨量から河川水深に切り替えることで、河川流量や氾濫状況の予測がリアルタイムに更新されます。
弊社は自治体の皆さんと協業で、防災・減災に取り組みたいと考えています。発災時、現場が混乱するのは致し方ないことですが、災害の範囲や程度を事前にシミュレーションし、意志決定の準備をしておくことで、より迅速で適切な対応が可能になるはずです。
[参加者とのQ&A(※一部抜粋)]
Q:河川氾濫シミュレーションについて、講演の中で紹介いただいた活用例以外の例があれば紹介してください。
A:平常時の段階で発災時の仮想データをつくり、避難計画を立案したり、被害推定にもとづく災害発生時の予算見積もりを立てたりすることができると考えています。
また、豪雨時や河川氾濫時における道路の浸水深シミュレーションとデジタル地図とを組み合わせ、「このエリアの住民はこのルートで避難するのが安全」といった避難計画を立案することも可能だと考えています。
Q:システム導入の際、自治体側で準備しなければならない機器類や何らかのデータなどがあれば教えていただきたいです。
A:システムそのものはクラウドで稼働していますので、契約いただいた際に発行するIDとパスワードさえあれば、通常PCのブラウザ上でシミュレーション結果などを確認できます。
自治体側で水位計やダムの流量データなどをお持ちの場合、それらをオプションとして追加することができます。オプションではありますが、独自情報を追加することによって、さらに精度の高い予測が可能になります。