国内で暮らす外国人やインバウンド需要が増える中、行政にも外国語でのサービス拡充が求められている。しかし、リソース不足が深刻化している自治体で、外国語に堪能なスタッフを増員するのは難しいだろう。
現場では、翻訳機や翻訳ソフトなどで対応するケースが多く見られる中、「TOPPAN」が既存の翻訳ツールを大幅にバージョンアップ。利用者も職員も快適にコミュニ-ケーションができるサービスとして、自治体を応援しているという。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
[提供] TOPPAN株式会社
Interview
野阪 知新(のさか ともあき)さん
TOPPAN株式会社 情報コミュニケーション事業本部
ソーシャルイノベーションセンタービジネス開発本部事業開発室
窓口での外国語コミュニケーションでいま求められているものとは?
国内の外国人人口は増え続けている。令和4年6月末の調査結果※によると、在留外国人数は約300万人で、前年末に比べ7.3%増加。国籍別にみると、多い順から中国、ベトナム、韓国となっており、この上位3カ国だけで全体の55%を超える。
もちろん増加しているのは外国人住民だけではなく、インバウンドなど訪日外国人の数もコロナ禍後は復調傾向で、観光地などでは外国語が飛び交う風景が戻って来つつある。
そうした中、外国語への対応に苦心している自治体も少なくはないようだ。
現状では、翻訳機や音声翻訳アプリなどを導入しているケースが見られるが、「こうしたサービスは便利である反面、円滑なコミュニケーションを実現するという面では課題を残していました」と野阪さんは語る。
「特に多く指摘されていたのが、語り手と聞き手の視線がタブレットなどの画面に落ちてしまい、目を合わせての会話ができないという点です」。
実際、スマホやタブレットなどのデバイスを介して会話をすると、センテンスごとに話を止めて画面上の文字を確認する、といったことの繰り返しが発生している。
さらに、会話の端々で画面タップが必要だったり、画面が小さく読みづらいことで、顔を近づけて確認したりといった動作が、双方にとってストレスになることもある。
何よりも、相手の表情をきちんと見ることができないため、感情を読み取れないということが課題視されているようだ。「相手が話を十分に理解していないときに、その表情を読み取らないまま会話を進めてしまうと、そこから先の話も伝わりづらくなってしまいます。これは職員にとっても不安要素です」。
こうしたコミュニケーションエラーをなくすために、TOPPANが新しく開発したソリューションが「VoiceBiz® UCDisplay®」(以下、UCディスプレイ)だ。
※出入国在留管理庁「令和4年6月末現在における在留外国人数について」より
アイコンタクトをとりながらの会話で正確かつ親切丁寧な対応をサポートする。
UCディスプレイは、透明ディスプレイを活用したコミュニケーションサポートツールである。同社の既存製品である音声翻訳サービス「VoiceBiz®」をベースに、より快適な対面コミュニケーションを実現できるよう製品化され、令和5年10月にリリースされた。
同サービスの最大の特徴は、透明で大型のディスプレイを採用しているため、相手の顔と翻訳文字が同時に視界に入るという点だ。
「ディスプレイのサイズは31.5インチTVと同等です。人の有効視野を考えるとこのサイズがベスト。ディスプレイを通して相手の顔を見ながら多言語コミュニケーションができ、自然な会話に近い状況をつくれます」。
リリース前に様々な環境で実証を行い、いずれも高い評価を得たという。中でも印象に残っているのは富士山の5合目で行った実証実験だと、野阪さんは振り返る。
「富士山で外国人から相談される内容は、“財布を落とした”“けがをした”“帰る手段がない”など、心底困っているというケースが多いのです。そこでUCディスプレイを通して相談に答えると『解決できて安心しているのか、まだ困っているのかといった表情を読み取れるので助かった』と喜んでいただけました」。
こうした効果を生むのに一役買っているのが常時翻訳機能だ。発話のたびに画面を操作する必要がなく、話の流れに合わせて翻訳された文章がディスプレイ上に流れていくので、長時間にわたる会話にも集中することができる。
ちなみにUCディスプレイの対応言語は、英語、中国語、韓国語、ベトナム語など全12カ国語。翻訳エンジンは総務省の外郭機関である「国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)」が研究開発したものを採用し、より高い精度を実現している。
特筆すべきは、行政で使われる専門用語の翻訳力だ。「住民票、転入届、在留資格といった自治体の窓口でよく使われる言葉を分析し、代表的な約3,000語を翻訳エンジンに登録しています。これにより、翻訳エラーで会話が途切れるのを防いでいるのです」。
こうした言葉に追加して地域独特の言葉、例えば観光名所や救急医療機関の名称なども追加登録することが可能という。
また、操作性について「最初に母国語を選択し、その後は選ばれた言語で操作説明が表示されるため、説明で手間取ることはほとんどありません」と、外国人が戸惑わないように対策済みという。
発話・聴覚などに困難を抱えた人にも対応し、1枚のディスプレイで“言語の壁”を越える。
外国語対応で様々な強みをもつUCディスプレイ。実証実験の場では思わぬメリットに気づかされたこともあるという。
グループやご夫婦など複数人にも
「窓口では、グループやご夫婦など複数人に対応することも多いものですが、従来は代表の話し手が都度振り返って会話の内容をほかの人たちに伝える、というシーンがよく見られました。しかし、UCディスプレイの場合はみんなで画面を視認できるため、“翻訳の二度手間”がなくせるのです」。
発話が難しい方や耳が聞こえにくい方にも
また、UCディスプレイは外国語対応以外もカバーできると野阪さんは付け加える。「音声認識だけでなく、キーボード入力にも対応しているので、発話が難しい方や耳が聞こえにくい方にもスムーズなコミュニケーションを提供します。
視力に困難を抱えている方にも
さらに、表示する文字のサイズは手元で自由に変更できるため、視力に困難を抱えている方にも読みやすく提示が可能。福祉関係の窓口など、様々なシーンで活用できると考えています」。
自治体にとっては、デジタルでのやりとりをするにあたってセキュリティも気になる部分だが、同サービスは翻訳エンジン・サーバーともに国内管理であるため、データ保護やセキュリティ対策がしやすいという点でもセキュアに使えます」と胸を張る。
こうしたサービス体制のもと、東京都が「東京2025デフリンピック」の開催2年前を機に、原宿に期間限定でオープンした「みるカフェ」(令和5年11月15日〜26日まで)にも出展。
みるカフェは、デジタル技術を活用し、きこえる・きこえないに関わらず誰もがつながることができるコンセプトカフェであり、そこで同社は来店者に、UCディスプレイを使ったコミュニケーション体験を提供した。
このような活動を通して見据えている未来は、“テクノロジーの介在を感じさせないコミュニケーションの実現”だと野阪さんは話す。
「たとえ言語が違っても、互いに顔を見て、機械を意識せずにコミュニケーションできるのが理想です。相談者に対して常にウェルカムだという雰囲気を醸成するのにもUCディスプレイは役立ちます。12カ国語を操りサポートする自治体のパートナーだと思っていただければ、うれしいです」。
従来の翻訳サービスから一歩踏み込んで、より自然なコミュニケーションを可能にするUCディスプレイ。製品名の「UC」はユニバーサルコミュニケーションの略であるが、この“全ての人にコミュニケーションを”という思いを実現するために、今後は対応言語を増やすなど、さらなるアップデートを重ねていくという。
- まだまだある!「VoiceBiz® UCDisplay®」の強み -
(1)使う人を選ばない優れた操作性
マイクボタンを押すタイミングは、人により「最初だけ」「始めと終わり」「押し続ける」と異なるが、これら全てに対応するため操作説明が不要。ほかにも相手の言葉を強調表示するなどUIが優れている。
(2)セキュアなログデータ管理体制
翻訳エンジンは国内のものを使用。音声入力ログ・翻訳ログも国内サーバーで管理しており、閲覧制限やウイルス対策、暗号化はもちろん、オプションでログの一括削除やログ提供にも対応する。
(3)サイネージとしても活用できる
本体はデジタルサイネージとしても使えるため、接客時以外は、画像、動画、テキストなどをまじえ、自治体からの案内や広告など様々な情報を発信できる。時間指定でコンテンツの切り替えも可能。
実証利用のご案内
実証実験にも対応しています。現在希望多数のため、期間などは都度相談。まずはお問い合わせください。