ジチタイワークス

長野県

勤務時間の20%以内で他業務に挑戦でき、職員と組織がともに輝きだす。

勤務時間の20%以内で他業務に挑戦できる制度

令和5年6月から「創造的活動支援制度(20%ルール)」を本格導入している長野県。職員が知見や経験などを活かして所属課以外の業務に取り組むことで、まわりの職員のモチベーションが上がるなど、様々な良い影響がもたらされているという。

※下記はジチタイワークスVol.29(2023年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

人材教育に関する調査結果が制度を導入するきっかけに。

同県がこの制度を導入した背景には、県民や職員に寄り添った行政改革を進める中で実施した“職員満足度調査”があるという。そこには、“組織は人材育成に力を入れていない”と感じている職員が、6割近く存在するという衝撃的な結果があった。中には“職員研修が身になっていない”“上司が育成に力を入れていない”など不満を訴える声もあったという。高橋さんは、「一人ひとりの職員が、能力を最大限に活かせるような取り組みが必要だと感じました」と振り返る。

「色々と調べる中で、他自治体が取り組んでいたこの制度を知りました。今の組織に足りないもの、職員が求めるもの、それらを解決することができるのではないかと考え、導入へと踏み切りました」。

同制度は、勤務時間の20%までを自分の所属課以外の業務に充てることができる。手を貸してほしい課が募集をかけ、参加したい業務があれば申請する仕組みだ。個々の意欲や希望を尊重する組織体制を構築し、職員の主体的なキャリア形成の支援を目指しているという。「導入前の庁内会議では、いくつか懸念事項も挙がりました。例えば、出張が発生する場合の費用負担、所属長の同意を得る際における職員の心理的ハードルなどです。それらに一つひとつ回答する形で合意形成を図りました」。また、人事課に規則上の問題がないことも確認でき、令和4年6月から1年間の試行期間を経て、本格導入することになったという。

“DXエバンジェリスト業務”の研修の様子。約70人の職員が参加した。

時間を生み出すための工夫が必然的に業務効率化となる。

参加を希望する職員は、まず所属長の同意を得ることが前提となる。「募集業務への参加に必要となる時間をどのように生み出すかを自分なりに考え、具体的な方法を記載して申請する流れとなっています。そのため、この制度に参加するということは、必然的に自身の業務が効率化されている、ということにもなります」と日詰さんは話す。

その手段としては、これまで紙で処理していた作業の電子データ化や、会議のオンライン化などICTツールを使ったものが多く、参加職員のツール活用が促進されているそうだ。そのほかにも、上司とのコミュニケーションを深め、しっかりと擦り合わせを行うことで業務の手戻りを少なくするといった、基本の強化に着目した効率化も多くみられるという。

令和5年10月時点で募集のあった業務は、就活者向けWEB記事・動画の制作を行う“県職員プロモーション業務”、モデルコースの動画撮影・編集、走行リポートを作成する“サイクルツーリズム推進事業”、県内へのロケ誘致促進を行う“信州フィルムコミッションネットワーク推進業務”など。部署を問わず、様々な募集があるようだ。これまでの参加者は試行期間を合わせて150人以上。「当初は数十人程度が参加してくれたらと考えていたので、これはうれしい誤算でした」。

職員の意識・行動変化のほか、三方良しの思わぬ効果が。

参加した職員へのアンケート調査では、通常の仕事では得られない経験ができたと好意的な声が多く寄せられた。「送り出した課では、まわりの職員も業務の効率化を意識するようになったそうです。受け入れた課も、ほかの課から来た職員をチームとしてまとめるファシリテーション力や調整力が身に付くなど、思わぬ副次的な効果があったと聞いています」。また、同制度に参加すると、業務効率化の観点から人事評価の加点対象になるというのも職員にとっては魅力だろう。

“県職員プロモーション業務”に参加した職員と各所属課から届いた声


業務募集や参加申請については、専用のポータルサイトを作成し、ワンストップで行っている。「以前はイントラネットの掲示板に募集を掲載していたのですが、情報が日々流れていくので見落とされやすいという課題がありました。また、募集や参加の申請に紙とデータが混在して管理が大変だったこともあり、利用者全員が使いやすい方法に改善しました」。今後も改善を重ねていき、参加者を増やしていくことが目標だという。「参加者が集まりにくい業務は興味を引くように工夫をしたり、この制度自体をもっと庁内に周知したり、継続した活動が必要だと考えています」。

参加したくても人手不足で業務過多に陥っている部署では、個人が効率化しても時間を生み出すことが難しい場合もある。「そういった部署がまだ多いのは現状の課題でもあります。チームで助け合うなど全庁的に効率化を図り、土台部分を解決していかなければなりません」。そうすることで参加者が増え、職員だけでなく、組織としてのスキルアップも図れるのではないだろうか。

長野県
総務部 コンプライアンス・行政経営課
左:担当係長 高橋 弘樹(たかはし ひろき)さん
右:技師 日詰 文太(ひづめ ぶんた)さん

こんな業務募集も

DXエバンジェリスト

研修を通してICTツールの利活用スキルを習得し、それを自身の所属課に展開・フォローアップを行う業務。草の根的に庁内のDXを広げていこうというねらいがある。

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