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SDGs未来都市とは?持続可能なまちづくりに向けた取り組みを解説!

自治体による地方創生への取り組みの必要性が叫ばれて久しい。近年では地域社会だけでなく世界的な課題である環境問題への取り組みの重要性が高まっていることもあり、経済の活性化と環境課題の解決という両軸で事業計画を立案する自治体が増えている。

そのような自治体が注目するものの一つに、「SDGs未来都市」がある。今回は、SDGs未来都市とは何か、またその選定基準や選定された自治体の事例を紹介する。

【目次】
 • SDGs未来都市とは
 • SDGs未来都市の選定基準とモデル事業
 • 今後の展望
 • 自治体による取り組み事例

 • 地方創生をSDGsで加速させる「SDGs未来都市」

SDGs未来都市とは

SDGs未来都市とは、SDGsの理念に沿い持続可能な開発を実現しつつ経済・社会・環境の3つの側面から新たな価値を創出する取り組みを推進しようとする都市・地域の中から、特に優れた取り組みを提案する自治体として政府から選定される都市・地域を指す。環境未来都市、環境モデルに加え、地方創生のさらなる促進を目的としてつくられた。

これまでには、北海道ニセコ町・下川町、山形県飯富町、富山県富山市、石川県白山市、神奈川県横浜市・鎌倉市、岡山県真庭市、徳島県上勝町、熊本県小国町、長崎県壱岐市、福岡県北九州市などが選定されている。

 

SDGs未来都市の選定基準とモデル事業

SDGs未来都市として選定されるためには、次に紹介する選定基準をクリアする取り組みを推進する必要がある。

内閣府による選定基準と選定プロセス

SDGs未来都市の選定には、自治体SDGs推進評価・調査検討会による「SDGs未来都市等選定基準」が用いられており、「自治体によるSDGsの取り組みの全体計画」「自治体SDGsモデル事業の取り組み提案」に加え、同検討会の「委員による参考意見」の3つの枠組みが設けられている。

全体計画には「将来ビジョン」「自治体SDGsの推進に資する取り組み」「推進体制」「自治体SDGsの取り組みの実現可能性」の4つの評価項目があり、評価採点に必要な事項が記載されているか、過度に冗長な表現がないかなどがチェックされる。

SDGs未来都市に選定されるためには、自治体は各評価項目に関する内容を記載できているかを確認し内容を詰めていく必要があるだろう。全体計画を練る際には、地域特性への理解を高めるとともに課題分析を行い計画に落とし込むこと、住民生活の質の向上に対する視点をもちながら、実現可能性の高い内容とすることがポイントだ。

また、2050年カーボンニュートラルの実現と経済・社会・環境の三側面への考慮、多様なステークホルダーが連携する体制の構築や連携によるシナジー効果やメリットが具体的に記載されていることも重要である。これまでに選定された自治体の提案には、バイオマス資源による発電などの地域資源の循環型利用や、太陽光発電など自立・分散型エネルギーマネジメントの構築などがある。

なおSDGs未来都市は次のプロセスを経て、提案書の提出から3~4カ月後に選定される。

1.提案書を内閣府の担当者に電子メールで送信する
2.自治体SDGs推進評価・調査検討会による評価
3.書面評価によりヒアリング対象団体を決定
4.ヒアリングの実施
5.SDGs未来都市等の選定案の作成
6.SDGs未来都市等の選定・公表

自治体SDGsモデル事業と補助金の概要

自治体SDGsモデル事業とは、SDGs未来都市の中でも特に先導的な取り組みとして選定される事業のこと。内閣府は、SDGs未来都市に選定された自治体の中から、毎年10程度の事業を選定するとしている。

自治体SDGsモデル事業では、SDGs達成に向け、地域のステークホルダーと連携した積極的な取り組みが求められている。

自治体SDGsモデル事業に選定されることにより、事業の対象経費の一部を補助する「地方創生支援事業費補助金」の対象となる点に注視したい。

地方創生支援事業費補助金は、自治体のSDGsモデル事業の成功事例を増やし、SDGs未来都市・SDGsモデル事業を普及させ地域創生の深化につなげることを目的としている

地方創生支援事業費補助金には、自治体SDGsモデル事業と複数の自治体が連携するケースが対象となる広域連携モデル事業がある。

地方創生支援事業費補助金について

自治体SDGsモデル事業に選定されることで、補助金を活用しながら新たな施策を実施できる可能性がある。

出典:内閣府「地方創生支援事業費補助金(地方公共団体における持続可能な開発目標の達成に向けた取り組みの推進事業)交付要綱(案)」

 

今後の展望

政府が策定した「SDGsアクションプラン2023」には、「デジタル田園都市国家構想」のもと、地方の特色を活かしながら持続可能な経済社会を実現する取り組みの一つとしてSDGs未来都市を位置づけると記されている。

デジタル田園都市国家構想とは、デジタルの力で地方自治体にある課題を解決するとともに、地域の個性を活かし魅力の向上を図りつつ、日本国内のどこで暮らしても便利で快適な生活を実現できる社会を目指すという国家構想のことだ。
 

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令和5年5月時点で、SDGs未来都市に選定された自治体は182にのぼる。なお、政府は2024年度までに210都市の選定を目指している。

自治体SDGs推進評価・調査検討会による「令和4年度 SDGsに関する全国アンケート調査」によると、SDGsに関心を持つ自治体が94.5%であるのに対し、アンケート時点で取り組みを推進している自治体は65.7%にとどまっている。

多くの地方自治体は、住民の高齢化と過疎化という大きな課題に直面している。生活の質の向上を図りながら地域を存続させていくためには、SDGsへの取り組みも含め、各種制度を活用しながら地域経済の活性化につながる新たな施策やサービスを展開し、好循環を生み出す必要があるだろう。

自治体による取り組み事例

SDGs未来都市選定に応募するには、具体的にどのような取り組みを計画していく必要があるのだろうか。ここからは、その参考としてSDGs未来都市に選定された3つの自治体による取り組みを紹介する。

Case1.東京都足立区

足立区では、地域住民のサードプレイスづくりやロールモデルと出会う機会づくりを通し、将来にわたり安心して暮らせる持続可能なまちを実現するとした。また、各施策により住民のレジリエンスと挑戦する意欲、経済的な自立力を高めていきたいという。

足立区には、大きく分けて治安、健康、学力、貧困の連鎖の4つの課題がある。中でも貧困の連鎖を区が抱える課題の原因の根幹として、子どもたちへの貧困の連鎖を断ち切るための支援を重視した。

区は、再開発の進む綾瀬エリアをモデル地域として、「綾瀬未来創造活動拠点プロジェクト」を計画。同プロジェクトでは、未来の地域作りに必要なアイデアを提案・実施する場として「アヤセ未来会議」を設立。また、長期間利用されていなかった高架下物件を区が借り上げ、地域の住民同士のつながりを生み出す「高架下No Border LAB」を設立した。住民同士だけでなく、企業や団体等多様なステークホルダーが結びつくイノベーション創出の場としての期待が高まっている。

さらには、SDGs達成に向けた取り組みを行う区内外の事業者や団体を「あだちSDGsパートナー」として登録し、取り組み内容を特設サイトにて公開するなど、区全体でのSDGsへの取り組みも広くアピールしている。

Case2.山口県宇部市

宇部市では、「魅力・活力・人材にあふれた『共存同栄・協同一致』のまち」を2030年に目指すべき姿として、次の10の取り組みを進めるとした。

1.ICT・地域イノベーション、働き方改革の推進
2.観光産業の推進
3.地域支え合い包括ケアシステムと連携したコンパクトシティの推進
4.持続可能な開発を学ぶための教育、学習機会の推進
5.若者・女性の活躍推進
6.共生社会ホストタウンの推進
7.子どもの貧困対策、地域の見守り・支え合いの推進
8.ガーデンシティの推進
9.地域エネルギー・バイオマス産業都市の推進
10.環境保全対策の推進

また、「宇部市SDGs私たちの未来共創補助金」を設立し、SDGsの達成に向けて取り組む地域や市民団体、企業、学生を補助金で支援。さらには、ステークホルダーのさらなる連携と協働を目指し、情報発信のプラットフォームとなる宇部SDGs推進センターホームページを開設。広く情報を発信するとともにSDGsに取り組む企業・住民を増やすべく会員登録を募っている。

Case3.石川県野々市市

大学のキャンパスが複数所在する野々市市では、市内人口の4分の1が22歳以下という特色を持つ。また、スーパーや雑貨店など利便性の高い店舗が充実しているだけでなく、市内全域を網羅したコミュニティバスの運行で近隣地域へのアクセスが容易であることから「暮らしやすいコンパクトシティ」として対外的にも認知されている。

これらの魅力を高めながらSDGsを実現する取り組みとして、リスキリングの推進を中心とした施策を提案した。

リスキリングの推進にあたっては、住民のサステナブルスキルや経験をデジタル証明として可視化できる「オープンバッジ制度」を考案。これにより、自発的なリスキリングとSDGs推進を実現し、持続可能な社会に対する意識を向上できると期待している。

大学生をはじめとする若者の定住促進のため、地域への愛着心向上を目指した地域の拠点を活用したリスキリングワークショップの実施、各種機器の利用やワークショップが可能な既存施設を活用した「マイプロジェクト活動」拠点の構築も行うとしている。

あわせて、金沢工業大学、石川県立大学、SDGsベンチャー企業、野々市市のSDGs推進ワーキングチームの若者を集め、「ののいちSDGsアクションマップ」を作成。これは、立場の異なる若者が市内でフィールドワークを行い、「身近にできるSDGsを実現するアクション」を野々市市の地図上に描いたもの。経済、社会、環境の三側面を色分けするなど、分かりやすく親しみやすいマップとなっている。

また、野々市市の魅力を広く発信することを目的として、YouTubeにチャンネルを開設し、手話講座や英会話など、自己学習に活用できる動画を配信している。

地方創生をSDGsで加速させる「SDGs未来都市」

共通の目標として世界的に取り組みが進められているSDGs。17のゴールを実現するには新たなアイデアと取り組みが必要であることから、着手が難しいと考えている自治体もあるだろう。しかし、自自治体にある課題を解決することは、SDGsの実現にもつながっていく。

SDGs実現の第一歩として、SDGs未来都市選定応募を活用してみよう。自自治体が抱える課題を可視化し、SDGsを実現しながら課題解決につながる施策を考えることが、地方創生を加速する燃料となるかもしれない。

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