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山梨県

DX人材育成と企業課題を一挙解決!山梨県が挑む、全国でも先駆的な“地域内発型DX”とは?

全国的な課題となっているDX人材の育成と、中小企業のデジタル化の遅れ。これらを“同時に解決”する新たな取り組みとして、山梨県は地域内でDX人材を安定的に育成・輩出し、その人材が県内の中小企業のDXを支援する仕組みの確立を目指す「地域内発型DX」を全国に先駆けて展開している。

取り組みの背景と成果について、同県から委託を受けて事業を担う「ライフイズテック」の寺島さんに詳しい内容を聞いた。

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです
[PR]ライフイズテック株式会社

Interviewee

ライフイズテック株式会社
事業開発事業部ビジネスプランニンググループ
寺島 陵太(てらしま りょうた)さん

若者流出とデジタル化の遅れに歯止めをかける新たなプロジェクトが始動。

全国的に人口減少が進む中、山梨県では特に若年層の県外流出が大きな課題となっており、県内で魅力的な仕事や、雇用機会を提供することが急務となっていた。また、地元の中小企業でも人手不足が深刻化。

DXによる課題解決を目指すものの、IT人材の不足や導入コストの高さなどがハードルとなり、デジタル化の遅れが問題視されていた。

こうした背景から、山梨県は令和6年度に、次世代のデジタル人材育成を目的とした全国でも先駆的な取り組みとして、「山梨県DX人材育成エコシステム創出事業」を開始。

実施にあたっては、次世代のデジタル人材育成などを手がける「ライフイズテック」との連携体制を構築し、中高生・大学生・中小企業を “DXとアイデアの力”でつなぎ、地域に根ざしたDX人材育成エコシステムの構築に向けて動き出した。

県を挙げた推進体制で、DX人材育成エコシステムを構築する。

「山梨県DX人材育成エコシステム創出事業」は、県内の中高生がデジタル技術を学び、大学でさらに高度なスキルを習得しながら、中高生へのDX指導・育成を行うとともに、商工・経済団体などと協力し中小企業のDX支援にも関わる“地域内発型”のDX人材育成モデルである。将来的な地域内定着も見据えた取り組みだ。

[山梨県DX人材育成エコシステム創出事業のスキーム]

事業の起点となったのは、ライフイズテックが令和5年度に提供した、中高生・大学生向けの地域課題をデジタルプロダクトで解決するPBL (課題解決型学習)研修だった。

寺島さんは、「県としても、既存の研修を通じて地域との接点が生まれてきたことを踏まえ、長崎 幸太郎知事から『これらの取り組みを県全体に広げ、地域経済の活性化に資する施策に育てたい』という方針が示されたことが転機となりました」と、振り返る。

事業化決定後は、庁内の様々な部署が連携。知事主導のもと、山梨県DX課が全体の取りまとめ役となり、商工団体や中小企業を所管する産業政策部、中高大の教育機関を所管する教育委員会や総合県民支援局などと横断的に連携する体制が整えられた。

「各研修の実施にあたっては県のまなび支援課や各市町村の教育委員会に協力いただきながら、研修に参加する生徒募集に取り組みました。また、中小企業の皆さんにもご理解・ご参加いただくために、商工団体の経営指導員の方を対象に、DX研修を実施しています。大学生が経営課題への解決策を提案することについて、企業側からは不安に思う声も一部ありましたが、取り組みの意図や研修内容を丁寧にご説明する中で、徐々に理解が得られるようになりました」と語る。
 

DX人材育成エコシステムの詳細はコチラ >

実践型研修で育成された大学生が、企業の“本気の課題”に挑む。

同事業では中高生・大学生それぞれに対し、段階的かつ実践的なDX教育を提供している。中高生向けには、自分でアプリやゲームがつくれる1日コースのプログラミング体験会を実施。これまでに5回開催し、計200人近くが参加した。また、前述の地域課題をデジタルの力で解決するハイレベルなPBL(課題解決型学習)研修も実施し、参加者から高い評価を得ているという。

一方、大学生には、県立大学の新入生全員・約260人を対象としたDX講座を必修授業として新たに開講。さらに、希望する学生向けに事業の中核となる「DXリーダー育成研修」も約2カ月にわたり実施し、高度なデジタルスキルに加え、中高生の育成や中小企業のDX支援に必要なスキルがレクチャーされた。

これら、全てのプログラムを修了した約30人の大学生が「山梨DXリーダーズ(以下、DXリーダーズ)」として認定され、実際の中小企業のDX課題解決に挑む研修へと進んだ。
 

DXリーダーズの研修では、まず課題を抱える企業を訪問し、現場での困りごとや要望を丁寧にヒアリングするところからスタート。「商工団体の協力を得て紹介いただいた企業の方々には、『研修という位置づけではなく、本当に経営で困っている課題を挙げてほしい』と依頼し、最終的に7社にご協力いただけました」と、寺島さんは話す。

こうして、DXリーダーズが各企業に対して企画提案を行い、開発から納品までを担当。令和7年3月2日までに全ての成果物を提案し、無事に研修を修了した。「企業の皆さんからは大変満足いただき、現在もDXリーダーズがWEBサイトなどの実装サポートを継続しています」

“実装”まで踏み込む実践型DXプログラムが企業にも変革をもたらす。

山梨県が主導する本事業の特徴について、寺島さんは「“体験と実装”にこだわっている点が、ほかとの違いです。これまでにも、中高生や大学生が自治体や地域の課題に対し、解決策を協議する場は各地でありましたが、検討に終わらずプロダクトとして形にし、社会に届けている点が強みです」と強調する。

実際に創出されたプロダクトの一部はすでに実装されており、その成果は令和7年3月14日に開催された長崎知事への報告会で発表された。以下は、その一部である。

 

 実践事例1   ジュエリー会社の採用サイトを“求職者目線”でDX


企画・制作から販売までを一貫で行うジュエリー製造販売会社では、熟練職人の離職や営業社員の高齢化で若手の採用が急務であった。しかし、事業内容や福利厚生は魅力的であるにも関わらず、新卒・中途問わず応募が集まらないという課題を抱えていた。

そこでDXリーダーズは、応募者の企業理解が十分ではないことに着眼し、「求職者が知りたい情報」と「企業の魅力」をつなぐ手段として、採用サイトの見直しを提案。現状の採用サイトが、テキスト中心の構成で情報も散在して分かりづらかったのを、応募者目線で情報の導線を再設計することに。

そうして、数値や図表で企業情報を伝えるほか、従業員の1日の働き方や臨場感のある写真を新たに撮影し掲載することで、実際に働くイメージが湧きやすく、共感を得られるサイトへと刷新した。

 


 

 実践事例2   ワイナリーのブランド価値向上を目指し、“こだわりの世界観”を動画とWEBサイトで表現


「どこまでも自然に」をコンセプトに、南アルプスの裾野でブドウの有機栽培からワイン醸造まで一貫して行うワイナリーでは、自然へのこだわりから生産量や販売数の拡大が難しく、またその独自性を十分にユーザーに伝えきれていないという課題を抱えていた。

そこで、DXリーダーズは、ワイナリーの「自然志向」のコンセプトに着目し、ブランド価値・購買単価ともに引き上げることで、結果的に経営の安定につなげることを提案。大自然の中でのブドウ栽培やワインづくりなど、“ゆとりあるオーガニックな世界観”を伝えるため、プロモーション動画の制作と、ホームページの再編に取り組んだ。

動画ではゆったりとした音楽、ナレーションを新たに作曲・収録し、新規撮影と既存素材を組み合わせた映像を制作。また、ホームページも写真を増やし、余白を取ったゆとりあるデザインにリニューアルした。こうして、ほかのワイナリーと一線を画すコンセプトを伝えることで、消費者がそのワイナリーならではの世界観を体感でき、購買意欲を刺激する仕上がりとなった。 

学生と企業がともに成長。想像を超える成果に満足度100%!

支援を受けた企業からは「完成度が高く、プロフェッショナルな仕上がりだった」「若い世代ならではの柔軟な発想と理解力を活かした素晴らしい提案だった」といった声が寄せられた。

「企業アンケートでは、大学生が提案したプロダクトへの満足度・課題解決スキルへの満足度ともに100%という結果でした。サービスへのリピート意向もあり、大変満足いく結果になったと実感しています」と、寺島さんは振り返る。

こうした実践型の研修は、DXリーダーズ自身にも大きな学びをもたらした。アンケートでは全員が「中小企業の課題を解決できると感じた」と回答。自らのスキルが社会に役立つという実感を得たことで、自己効力感や学びへの意欲の向上にもつながったようだ。

さらに、「企業の熱意に触れ、自分も応えたいと思った」「納品後に企業の方が見せてくれた笑顔が本当にうれしかった」といった声もあり、単なる研修にとどまらない、深く実践的な学びが得られたことがうかがえる。

また、報告を受けた長崎知事からも、「ここまで具体的でレベルの高いDX支援ができるとは想像以上だった」と、事業の成果を高く評価するとともに、「この事業への確信と将来への期待がさらに高まった」という言葉が寄せられた。
 

育った人材が地域を支える!循環するエコシステムは第2周目へ。

報告会を経て、人材の育成から企業支援までを一貫して行うDX人材育成エコシステムの第1サイクルは無事に完了。この事業の成果を土台に、令和7年3月17日には、県内中小企業のDX推進を支援するプラットフォーム「デジサポ!やまなし」の運用がスタートした。

このプラットフォームでは、DXスキルを身につけたDXリーダーズが、中小企業の実情やニーズに応じたオーダーメイドのDXソリューションを提供し、「地域内発型DX」の実現を目指していく。 具体的には、SNSの運用支援、WEBサイトの作成・改善、クラウドツールの活用など、中小企業の集客や売上向上につながる「ちょっとしたDX」をサポート。

さらに、生成AIを活用し、企業からの電話相談内容を自動でDX発注仕様書に変換する仕組みも導入している。「発注時のハードルを下げ、企業・大学生の双方にとって負担の少ない環境を整えています」と寺島さん。「サービスは立ち上がったばかりですが、まずはお試しも含めて気軽に問い合わせいただき、中小企業の皆さんと一緒に育てていければと思います」と、今後の展開に期待を寄せた。
 

[ デジサポ!やまなしの仕組み ]


山梨県では今後も、DX人材育成エコシステム創出事業での取り組みを拡大させていく予定だ。具体的には、山梨県立大学の創発デザインコースでDXリーダー育成研修を必修授業として位置づけ、中小企業支援も本格化させていくという。併せて、「デジサポ!やまなし」の機能拡張も進め、より使いやすい仕様へと整備し、県全体のDX推進の起爆剤あるいは原動力として、誰もがデジタルを日常的に活用できる社会の実現を目指していく。

こうした取り組みにより、地域企業と若者がつながり、実践を通じて互いに成長していく好循環が生まれつつある同事業。行政が中心となって、未来を担う人材育成と地域経済の活性化を同時に推進するこの仕組みは、若者の活躍の場を広げるとともに、企業の変革にもつながる動きとなっている。山梨県の挑戦は、人材育成と地域の持続可能な発展に向けた新たなロールモデルとして、今後ますます注目を集めていきそうだ。
 

デジサポ!やまなしの詳細はコチラ >

お問い合わせ

山梨県DX人材育成エコシステム創出事業事務局

サービス提供元企業:ライフイズテック株式会社(企画・運営受託事業者)


TEL:03-5877-4879 (平日 10:00〜17:00)
MAIL:yamanashi_dxeco@lifeistech.co.jp

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