ジチタイワークス

岩手県釜石市

全職員が当事者意識をもち、情報漏えいを見逃さない組織へ。

システム導入と研修強化の両面で職員の危機意識を醸成

釜石市では令和4年、職員が市民の個人情報を取得・漏えいさせたことを公表した。その後は再発防止に向け、メール送信の設定や従来の研修を見直し、全職員が自分事として捉えられる体制づくりに力を入れている。

※下記はジチタイワークスVol.27(2023年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

メールの送信を遅らせる設定で過失による漏えいを未然に防ぐ。

信頼の回復に向けて再スタートした同市。職員のモラル向上と、魅力的な組織づくりを軸に、DX推進室と総務課が取り組みを主導している。

個人情報が漏えいする原因には、悪意のないケースも多く、日常の落とし穴を防ぐ仕組みが必要だった。まずは多くの職員が頻繁に利用するメールで、誤送信のリスクを減らそうと、令和4年11月頃から送信の遅延設定を全職員に義務化。送信ボタンを押した5分後に自動送信されるため、送信先が間違いないか、添付ファイルは正しいかなどを見直す時間が取れるという。

「本来は送信する前に確認すべきことですが、誤ってボタンを押し、送信してしまうということを防ぐために取り組んでいます。すぐに送れず不便だという意見も聞かれますが、5分の間に言葉の違和感やファイルの添付漏れを見つけることも。メリットの方が多いので、確実なチェックの大切さを全員に感じてもらえたらと思います」と菊地さん。

また、現在は添付ファイル付きメールの送信履歴を全て記録し、DX推進室で内容を確認している。今年の秋頃にはファイルを暗号化し、上長が承認しないと外部から開けないようにするシステムも導入予定だそうだ。

法令順守の徹底に加えて職員の自主的な学びも支援。

システム活用と両輪で進めているのが意識醸成だ。これまで新入職員向けに行っていた研修を、毎年全職員に実施するよう変更した。包括的だった内容も、法令・コンプライアンス・倫理に特化したものに練り直し、約2時間のプログラムを実施。倫理チェックも年に2回行い、意識の低い項目があれば全職員に注意喚起するなど、定期的に対策を行う。

「全員のモラルが低いわけではないので、“研修内容はできて当然”と言う人もいます。それでも全員に定着させるには、しつこいくらい繰り返すことが大事だと考えています」と金野さん。

法令順守と並行し、主に若手職員を対象とした新たな人材育成も始めた。職員が自ら講師を務め、公務員に大切なマインドや、住民との関わり方を学ぶ時間を設けるなど、自主的な研修を進めている。「同じことを起こさない気持ちと、自分事の意識をもちつづけることこそが肝要。同時に、未来志向の対策も展開したいです」。情報漏えいの危険と隣り合わせである環境は全国共通だろう。どんなときでも、“守り”の基本に忠実でいる大切さを語ってくれた。

総務企画部
左:総合政策課
課長 兼 DX推進室長
菊地 美幸(きくち みゆき)さん
右:総務課 課長
金野 尚史(こんの ひさし)さん

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