各地の自治体や銀行、老人ホーム、空港などで導入されている「ミライスピーカー」。
音量を上げなくてもクリアな音が遠くまで届き、難聴者や高齢者が聞き取りやすいスピーカーを導入した神奈川県綾瀬市役所障がい福祉課の山上秀樹さんに話を聞きました。
※下記はジチタイワークスVol.1(2017年12月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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難聴の職員が発した「音がわかる!」の一言
綾瀬市役所福祉部障がい福祉課 課長 山上秀樹さん
障がい者のストレスを少しでも軽くして、どの人にも外出を楽しんでほしいと、綾瀬市では平成29年10月にオープンした保健福祉プラザに「ミライスピーカー」の導入を決定しました。特許を取得した「曲面サウンド」で音をクリアに遠くまで届けることができるこのスピーカーを導入したのは、職員の言葉がきっかけでした。
普段彼女は補聴器を使っていますが、「音」としてとらえることができても意味がわからないことがあるそうです。その職員が「今のは『7番』ですよね。音の意味がわかります!」と言ったんです。私たちも試しに耳を塞いでみたら、聞こえてくる。音に広がりがあり、透過性があると実体験で証明できたので、試験的に呼び出し業務が最も多い市民課の窓口に設置しました。
難聴者の若年化や高齢化社会を見据えて対応を
受付番号を表示するモニターと連動させ、フロアで呼び出し音声を聞いてみました。天井が高く、ざわざわとした吹き抜けの空間で音を届けるのは難しいものです。しかし庁舎の真ん中にあるスピーカーの音は、奥の喫茶店にいても、エントランス付近にいてもわかる。
補聴器をつけた難聴者にヒアリングすると、「今までよりはっきり聞こえる」との感想をいただきました。福祉課に所属していて感じるのは、最近では高齢による難聴だけでなく、難聴が低年齢化しているということ。「障害者手帳」の範囲に入らない“隠れ難聴”の方もいらっしゃる。2016年4月からは「障害者差別解消法」が施行されたこともあり、公共の場のバリアフリー化は今後力を入れて取り組むべき課題だと考えています。
市民課に設置されたミライスピーカー。位置を高くするために、販売店がオリジナルで収納ケースを作成した
障がい者対応は全課での配慮が必要
平成30年度予算でミライスピーカーを保健福祉プラザと市民課に1台ずつ、正式に購入しました。プラザ内での無料貸し出しもスタートし、会合やイベントの多い公民館にも2~3台の追加設置を検討しています。
このような障がい者への配慮は「福祉課が考えること」と思われがちですが、どの課でも配慮は必要です。健常者も障がい者もスポーツは楽しむし、子育てで同じように悩むことはあるでしょう。役所内全体のバリアフリーのために、管理職研修や新採用職員研修に障がい者対応についての項目を取り入れています。
私たちは聞こえない、見えない、歩けない人が感じる「壁」を取り払い、分け隔てなくサービス・支援を提供するのが使命です。人を思いやれる社会は、役所内の気遣いから。「いつも行っている場所でのストレスが、いつの間にかなくなっていた」と言われるのが理想です。
“聴こえ”の秘密は曲面サウンドスピーカー
(右)ミライスピーカー カーヴィー。マイクアンプ内蔵で拡声器としても使え、2チャンネルの入力が可能。(左)ミライスピーカー ボクシー2。1チャンネルの入力が可能で、マイクアンプ内蔵のモデルもある。価格は両シリーズ共に、オープン価格。
音量を大きくしなくても、難聴者がわかりやすい音を届ける「ミライスピーカー」。2016年4月に施行された「障害者差別解消法」にも対応する製品の特徴を紹介します。
声に特化し、小さい音でも聞こえる技術
難聴者や高齢者が役所の窓口や病院に行くと、いつ呼ばれるのか不安で心が安まることなく、呼ばれてもわかりづらくてストレスを抱えています。たとえ補聴器があっても、すべて聞こえているわけではありません。公共の場での音のストレスを解消し、みなさんに外出を楽しんでほしいと思っています。
こんなお困りはありませんか?
○難聴者・高齢者に配慮し 音のバリアフリーを考えている
○スピーカーの近くでは音がうるさく、遠くでは聞こえない
○マイクを使うと「キーン」と嫌な音がする
○音量を上げるとスピーカーの音が割れる
特長
○1台で100名程度をカバー!遠くにいても近くにいてもクリアな音を届ける
○世界初の技術「曲面サウンド」で難聴者の“聴こえ”をサポート
○スピーカーの音割れやマイクのハウリングが発生しづらい
○難しい設定なし! 「障害者差別解消法」に対応し1台で音のストレスを解消
こんな場面で活用されています
役所窓口
1日に多い時で1000名が来庁する東京都足立区役所戸籍住民課の呼び出し用に導入。雑踏の中でも聞こえやすく、呼び出し回数が減少。
老人ホーム
カラオケ、体操、テレビ鑑賞、マイクをつないで朝礼アナウンスに活用。「音がきれいに聞こえる」「音の違いがわかる」との声が寄せられています。
その他
議会の傍聴席やセミナー、イベントにも導入されています。