区民への防災意識啓発の一環として、名古屋市千種区は「井村屋」の備蓄用ようかん「えいようかん」を使った、オリジナルパッケージ商品を作成した。作成の背景やその経緯について、担当者に話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.26(2023年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]井村屋株式会社
災害リスクが低いからこそ、いざというときの備えを万全に。
「当区は名古屋市内でも比較的災害リスクの低い地域です。それが逆に、課題になっていたのです」と語るのは、同区で防災部門を担当する日比さんだ。他区と比較して河川が少なく、高台もある同区は、市内では災害リスクが低いといわれている。そのため、区民が災害に対する危機感を抱きにくいのが悩みの一つだという。その特性に加え、高校生・大学生の数が市内トップという環境も相まって、特に若い世代を中心に、防災意識を啓発するための取り組みを続けてきた。
「リスクが低いからといって、被災しないというわけではありません。土砂災害警戒区域もあり、大規模災害時にはライフラインの途絶も起こるでしょう。日頃からの備えや、各世帯での自助・共助は、ほかの地域と同様に重要です。それを理解してもらうために、何か良いアイデアはないか模索をしていました」。
そんな折、令和4年12月に、同市の中川区がオリジナルパッケージの「えいようかん」を作成し、防災啓発に取り組んでいるという記事を目にしたそうだ。「これまでの啓発用品としてはチラシや、賞味期限の近づいた非常食を配る、といったものでした。しかしそれでは、見て、試して、そこで終わりになっていると感じており、いかに継続して防災意識をもってもらうかに課題がありました。災害時に役立つような、携帯できるもので、なおかつ持っていてお得だと感じるようなものがあれば……、と思っていたので、中川区の記事を見て“これだ”と。すぐに問い合わせ、検討を始めました」。
持ち歩くことで、意識啓発と情報収集の両方をかなえる。
庁内で検討し、実際に同社と打ち合わせを開始したのは令和5年の年明け。年度内に納品するため、急ピッチでデザインが進められた。同区がデザイン面でこだわったのは、持ち歩きたくなるかわいらしさ。携帯することに意味があると考え、老若男女、特に若い世代が持ちやすいデザインを意識したという。また、側面には区の防災ポータルサイトにアクセスできる二次元コードも掲載した。
このポータルサイトでは、日頃から備えておくこと、区内の避難所一覧、自助・共助の取り組みで大切なことなどを情報としてまとめるほか、災害時には市の公式情報にアクセスし、災害状況や避難所の開設情報を確認できる。平常時と災害時、どちらにも役立つコンテンツが準備されている。
えいようかんの賞味期間は5年6カ月。通常なら備蓄用として目の届かないところにしまい込まれることが多いはずだが、持ち歩いて日常的に意識することで、「平常時と災害時の垣根をなくす“フェーズフリー”の考え方を身近に感じてほしい」という。その思いを込めた“防災を日常に”というメッセージが、パッケージにも記されている。
あらゆる機会で自助を促し、共助の土台をつくっていく。
このほかにも同区では、防災啓発活動に積極的に取り組んでいる。毎年、区内の中学校・高校などで出前授業を開催するほか、令和4年度からは大学と連携し、防災の基本を学ぶ安全学の講座を共催。区民にも開かれた公開講座としている。また、アウトドアを楽しみながら災害時に役立つ知識と経験を得てもらおうと、アウトドア専門店とコラボ動画を制作。フェーズフリーを浸透させようと、工夫を凝らした活動を展開中だ。
学生時代に東日本大震災を経験したという日比さん。当時、たまたま滞在していた関東のテーマパークで被災し、その際に受けたスタッフの厚意やとっさの行動に感動したという。このときに自助・共助の大切さを痛感した経験が、今の取り組みにもつながっているのだろう。
今回完成したオリジナルえいようかんは、今後、区の防災訓練やイベントを中心に、対面で来場者に配られる予定だ。「あらゆる機会を捉え、今後も啓発を続けていきたい」と力強く語ってくれた。
名古屋市 千種区役所 区政部 総務課
(現・名古屋市 監査事務局 監査管理課)
主査
日比 克己(ひび かつみ)さん
食器も水も不要で食べられる!持ち歩きに適したえいようかんの強み
フィルムは簡単に開封でき、水を使った調理も不要。柔らかく上品な甘さで、アレルゲンフリーのため、子どもから高齢者まで安心して食べられる。
※ヤフー「Yahoo! ショッピングの防災グッズランキング(集計期間:令和4年7月1日~31日)」より
用途に合わせて自由に!オリジナルパッケージを作成できるサービス
ケースにオリジナルデザインを施すことができる。1本・3本・5本セットがあり、小ロットの発注も可能。
デザインは井村屋に依頼するか、持ち込みも可能。
導入自治体の“その後”をインタビュー
茨城県稲敷市
市民に緊急災害情報を発信するため、市公式メールへの登録用二次元コードを配置したパッケージを作成しました。その後、令和4年には市公式アプリをリリース。二次元コードを変更し、引き続き活用しています。
詳しい導入の経緯などはジチタイワークスVol.17で紹介しています。
行政経営部
危機管理課 主幹
加藤 達也(かとう たつや)さん
名古屋市中川区
当区は子育て世帯向けなど、幅広く防災活動を展開しています。昨年は初めて区民まつりで防災啓発活動を行い、その際にえいようかんを配布。区民に大変好評でした。今年度も防災啓発に役立てていく予定です。
詳しい導入の経緯などはジチタイワークスVol.23で紹介しています。
中川区役所 区政部
総務課 主事
柴田 健登(しばた けんと)さん
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お問い合わせ
サービス提供元企業:井村屋株式会社
商品営業企画部
TEL:050-1791-2039
住所:東京都文京区本郷1-24-1 ONEST本郷スクエア4F