各自治体では観光プロモーションを積極的に実施している。実施目的は、観光地や特産物をより多くの人に認知してもらうことによる、旅行客の呼び込みや地域における消費の拡大だ。
ひと口に観光プロモーションと言っても動画やSNSなど様々な手法があり、プロモーションを実施する際には、ターゲット層や効果的な手法の選択、プロモーションの目的などを明確にする必要がある。
今回は観光プロモーションにおける成功事例だけでなく、主な手法や成功させるためのポイントまで詳しく解説する。
【目次】
• 観光プロモーションの主な手法4選
• 観光プロモーションの成功事例4選
• 観光プロモーションを成功させるための3つのポイント
観光プロモーションの主な手法4選
観光プロモーションにおいて頻繁に使われる手法としては、「地域の良さについて動画で紹介する方法」や「イベントを開催して集客する方法」などが挙げられる。効果的な観光プロモーションを実施するためには、各手法の特徴を理解しておくことが欠かせない。ここでは、主な手法である「動画」「SNS」「イベント」「アニメとのコラボ」の4つの手法について、それぞれの特徴を解説する。
動画
手軽に取り組むことができるほか、地域について良く知らない人にも魅力を伝えやすいことが特徴の手法。ストーリー仕立てにすることも可能で、構成を自由に組み立てられるため、伝えたい内容を理解してもらいやすい。また外国語の字幕を入れることで、外国人観光客向けのPRとしても活用できる。さらにYouTube等の動画共有サイトに掲載した場合は、再生回数などで反響を確認できるだけでなく、そのほかのSNSを通じた拡散も容易に行える。
SNS
主に若年層に訴求できることが最大の特徴。基本的に無料で取り組めるため、はじめて観光プロモーションを実施する場合でも試しやすい方法でもある。特にInstagram等ハッシュタグがあるSNSの場合は、ハッシュタグを活用した口コミの広まりも期待できる。さらにSNSでは写真が重要視される傾向にあるため、SNS映えするカラフルな写真やおいしそうなグルメの写真を投稿することで、観光地についてもっと知りたい、ぜひ行ってみたいと感じてもらいやすくなることもメリットと言える。
イベント
イベント会場にて特産物を紹介したり、地域のプロモーションビデオを放映したりする手法。ある程度の時間や手間はかかるが、試食などを通して地域の魅力について触れてもらうことで、地域について興味を持ってもらいやすいことが特徴だ。
イベント会場では資料を配布するだけでなく、アンケート抽選会や地域に関するクイズ等を行うと、地域に親しみをもってもらいやすくなる。自分の地域だけでイベントを開催することも効果的だが、より多くの人が集まる可能性が高まるため、ほかの地域との合同イベントの開催も視野に入れると良い。
アニメとのコラボ
近年多く取り入れられる様になった手法。特定のアニメ作品とコラボすることはもちろん、自治体で作成したオリジナルキャラクターを生み出し、活用するケースも増えている。
特定のアニメ作品とコラボしたケースは、地域に愛着を持ってもらいやすくなるほか、幅広い年齢層の人に訴求でき、新しい客層を呼び込める可能性が高まる。アニメの舞台となった地域を巡る「聖地巡礼」も人気なため、もしコラボを実施する場合はその地域を舞台とした作品が向いている。
観光プロモーションの成功事例4選
では、各自治体ではどのような観光プロモーションを実施しているのだろうか。ここでは、観光プロモーションの成功事例を手法別に4つ紹介する。
【動画】飛騨高山プロモーション戦略部×YouTube動画
岐阜県の飛騨高山は、年間60万人以上の外国人観光客が訪れる人気観光地だ。しかしコロナ禍において外国人観光客がゼロになってしまい、インバウンド復活時に向けてSNSでの発信や動画配信などのオンラインプロモーションを強化した。
具体的な取り組みとしては、在日アメリカ人YouTuberが高山を巡る動画を作成・公開するなど、外国人が高山を訪れたいと思わせるような発信を行った。すると過去に高山市を訪問した外国人旅行者から「また高山へ行きたい」とのコメントが寄せられるなど、順調に再生回数を伸ばしている。
事例|アフターコロナ(インバウンド回復期)に備えるための飛騨高山市の3段階アクション!
【SNS】山梨県観光振興課×ライブコマース
山梨県ではコロナ禍における個人旅行客とオンラインでの交流を求め、中国最大級のオンライン旅行会社であるTrip.comグループと連携。主に中国人観光客に向けて、ライブコマースでの観光PRを実施した。ライブコマースとは、ライブ配信とEコマースを組み合わせた手法のことだ。SNS等でライブ配信を実施しながら商品を紹介すると、視聴者はコメントで質問をしながら買い物を楽しめる。
中国においてライブコマースは広く受け入れられ、非常に活発に実施されている。実際に山梨県が実施したライブコマースでは、配信開始から1時間で約112万人が視聴したほか、約888万円(宿泊施設の客室数352)の売上、“いいね”の数は約17万、コメント数約4,800と、かなり効果的な数値が出ている。新しい手法を取り入れて、海外への積極的なアピールを実施した成功例と言える。
事例|インバウンドニーズを“ライブコマース”で広げる山梨県の新手法。
【イベント】瀬戸内4県都市×イベント
コロナ禍においては、自然観光などの「新しい観光」が注目されている。その様な中で自然あふれる地域の魅力をアピールしようと、瀬戸内にある広島市、松山市、岡山市、高松市の瀬戸内4県都市が連携。2022年に大阪駅と博多駅にて、自然や体験・食などの観光資源の魅力を発信するイベントを開催した。イベントでは動画コンテンツを用いたVR体験や観光PRプレゼンステージ、ノベルティグッズの配布、4市クイズなどが実施され、多くの人に4都市の魅力をアピールすることに成功した。
【アニメとのコラボ】岐阜県大垣市×アニメ
漫画『聲の形』の舞台として知られる岐阜県大垣市は、市でオリジナルのアニメ制作を実施している。2018年4月には『おあむ物語 その夏、わたしが知ったこと』が。同年10月には『いつか会えるキミに』が市制100周年を記念してYouTubeにて公開された。さらに2020年4月には、2本のPRアニメ『大垣まつりにいこうよ!』『がきたびっ!〜青春お城編』が公開されている。
アニメ制作の目的は、大垣市の魅力をより多くの人に知ってもらうためで、特に若い世代へ向けてアピールしたいとの考えから制作を続けている。ただアニメ作品を公開するだけでなく、市が制作した作品に登場するキャラクターを観光案内の資料として使用することもあり、様々な場面でアニメを活用し、市のアピールに努めている。
観光プロモーションを成功させるための3つのポイント
では、観光プロモーションを成功させるには、どのような点に注意すれば良いのだろうか。せっかく実施した観光プロモーションを成功に導くためにも、事前に抑えておきたい3つのポイントを解説する。
ターゲットを明確にしてから手法を考える
まずは、ターゲットを明確にしてからプロモーションの手法を考えることだ。現代はインターネットの発展により、SNSや動画など豊富な手法が存在するため、どれを取り入れるべきか迷ってしまう自治体も多いだろう。しかしターゲットを明確にしないまま適当に手法から決めてしまうと、発信する内容がブレてしまったり、相手に届きづらかったりするリスクが生じる。その理由は、ターゲットによって情報を集める媒体が異なるためだ。
例えば外国人観光客は日本語が分からないため、動画によって情報を得ることがある。そのため外国人観光客を多く呼び込みたい場合は字幕入りの動画を制作する。若年層に多く足を運んでほしい場合はSNSを使うなどの工夫が必要である。やみくもにプロモーションを実施しても効果は得られにくいため、ターゲットをある程度絞ってから手法を考えることが効果的だ。
若い世代の職員の意見を活用する
若い世代の職員の意見を活用することも重要である。20〜30代の若い職員は普段からSNSに慣れ親しんでおり、情報収集を行う際は積極的にSNSやインターネットを活用している。もちろん従来の手法であるチラシやパンフレット制作なども重要ではあるが、従来のやり方に固執するのではなく、若い世代の意見や最新の手法を取り入れることで、新たな客層の取り込みに成功する可能性が高くなる。
日頃からSNSに慣れ親しんでいる若い世代の意見を積極的に取り入れ、「普段はどのように情報収集を行うのか」、「特に興味を惹かれる投稿内容はどのようなものか」等を参考にしたうえでプロモーションを実施すると、成功につながりやすくなると言える。
ほかの地域の成功事例をそのまま導入しない
観光プロモーションの成功事例は数多く存在するため、「ほかの地域の事例をそのまま導入すれば成功するのではないか」と考えるかもしれない。しかし観光プロモーションは地域の魅力をアピールするものであるため、地域によって異なる点を訴求することが重要だ。
よってほかの地域がうまくいった方法を取り入れたからと言って、自分の地域でもその方法が成功するとは限らない。成功した地域と同様の手法を取り入れるのは良いが、目的やターゲット・訴求ポイントなどを把握したうえで、オリジナルのプロモーションを実施することがポイントである。
まとめ
地域の魅力をより多くの人に伝え、その地域に足を運んでみたいと思わせるためには、観光プロモーションの実施は非常に重要である。ただしやみくもに行うのではなく、実施する際には手法やターゲット・伝えたい内容などを明確にしたうえで実施することがポイントだ。新たな手法も取り入れつつ、「ぜひ行ってみたい」と思ってもらえる様な、魅力的なプロモーションを続けていく必要がある。
そのほかの「観光プロモーション」に関する記事はコチラ