消費生活センターには、高度な専門知識を要する相談がもち込まれるケースも少なくない。そこで、広島県では「日本FP協会」にファイナンシャル・プランナー(以下、FP)の派遣を要請。住民からの複雑な相談にも応じられる体制を整えている。
※下記はジチタイワークスVol.24(2023年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]NPO法人日本FP協会
専門家ならではの視点と知識が消費者相談に新風を吹かせる。
平成21年の消費者庁設立に伴い、国は地方における消費者行政の強化を推進。その支援事業の一環として、地方消費者行政活性化基金を創設した。その基金を活用して、多くの自治体が消費者被害の防止および救済に取り組み始める中で、同県でも住民から寄せられる複雑困難な消費者相談に対応できる体制づくりに着手した。
それまで消費生活センターに寄せられていた相談のうち、専門知識が必要になるケースが多い分野を対象に、専門家による相談会を開設。そのうちの一つが“家計管理・資産運用の相談会”だ。「保険や金融などのお金の問題は、自分たちでは対処できないことがあってもどかしいという現場の相談員の声から始まりました」と担当の佐伯さんは振り返る。
「専門家相談会の最大の目的は、住民が抱える複雑困難なケースに対応すること。併せて、専門家がどのように考え、どのように助言するかを聞くことで、同席する相談員の対応力向上も期待していました」。
お金に関する幅広い知識をもち公正・中立な助言ができるFP。
外部の専門家に依頼するにあたり、同県が白羽の矢を立てたのがFPだった。「お金に関する全般的な知識をもつ専門家としてFPが最適だと考えました。保険や金融、投資など、お金に関する相談は幅広いので、それら全てに対応できる専門家が必要だったのです。さらに同協会に所属しているFPであれば、特定の金融商品の説明に偏らず、公正・中立な助言ができると考えました」。また、同協会には行政機関との連携事業も多いことから、安心して任せられると判断したという。
相談会を重ねるうちに、FPと相談員の役割分担も明確になってきたのだとか。「相談員は約款を読み込んだ上で、トラブルを解決するのが得意です。一方、金融商品の内容や相談者の生活状態などをもとに、前向きな提案ができるのはFPだと感じます」。
最近は、現役世代からの相談が増えているという。コロナ禍や物価上昇などにより、家計や教育資金に関する見直しを迫られているようだ。それに対しても「FPと協働することで、生活保護を受けたり、多重債務に陥ったりする前に、生活再建のお手伝いができると考えています」。
専門家とつながることで、住民への支援体制を充実させる。
「FPは広島市内にある県の消費生活センターに派遣されますが、住民は居住する市町のセンターにさえ来れば、そこからリモートでFPに相談できます。中山間地域の住民も気軽に専門家につながれると好評です。また、同協会とのパイプができたことも相談員には大きなメリットです」。
急を要する内容の場合は相談会を待たず、同協会に直接相談をつなぐこともある。常日頃から連携できるため、住民に対して充実した支援が行えるという。「取り組みから約10年が経過し、今いる相談員の対応力はかなり上がってきています。しかし今後、退職などによる相談員の入れ替えは避けられません。新しい人が入っても対応力を強化し続けられるよう、これからもFP相談会は続けたいと考えています」。
同県のFP派遣の活用は専門家相談会にとどまらない。令和4年度から金融経済教育が高校の必修科目の一部に採用されたことを受け、FPを講師とする教員研修を実施。教える側の教員に金融経済教育を学んだ経験がほとんどないため、公立および私立高校の教員約30人が参加し、授業の内容や進め方について学ぶという。住民生活とお金の問題は切っても切れない。同県とFPとの協働は、今後も多方面で続くようだ。
広島県 環境県民局 消費生活課
佐伯 美香(さいき みか)さん
FPならではの中・長期的視点から相談者が納得する適切な助言を提供。
FP派遣で自治体サービスを向上させる
1.より専門性の高い助言を受けられる
契約トラブルの相談は、契約した商品や勧誘されたときの状況などによって解決方法が異なることも。契約関連の専門知識をもつFPが対応することで、トラブルを早期解決できる可能性が高くなる。
2.相談員の対応力向上につながる
広島県の場合、相談会には県の相談員が同席する。FPによる相談者への対応を間近で見聞きすることによって専門知識が蓄積され、通常業務でも適切な対応ができるようになる。
3.公正・中立な意見が聞ける
同協会では、FP(CFP®・AFP認定者)に対して公正・中立な立場を義務付けている。保険商品や投資商品など、営利に結び付きやすいからこそ、特定の企業や団体に忖度しない意見は貴重だ。
公的機関と日本FP協会の連携事業
自治体へのFP派遣は当協会にご相談ください!
47都道府県に支部があり、自治体へは支部が地元のFPを派遣します。当協会に在籍するFPは資格取得後も継続教育を受け、知識を日々ブラッシュアップ。“くらしとお金”に関する専門家対応が必要な場合は、気軽にお問い合わせください。
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