ジチタイワークス

滋賀県大津市

全庁での接遇力向上をかなえる実践的なマニュアル活用のコツ。

市民からの厳しい意見やクレーム対処の難しさに悩む自治体は多いという。そんな中、大津市は独自の接遇向上マニュアルを作成し、応対力強化に組織を挙げて取り組んでいる。全庁的な取り組みに至った経緯や、広く現場に浸透させるコツについて取材した。

※下記はジチタイワークスVol.24(2023年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

市民応対の現場ですぐに使える実践的なマニュアルが必要に。

同市では、平成27年度に策定した「大津市職員接遇向上マニュアル」が、庁内に限らず市が管轄する保育園や幼稚園など庁外の施設にも広く浸透し、活用されているという。市民応対についてはどうしても職員個人のスキルや経験に依存しがちだ。マニュアル化しても作成するだけにとどまり、浸透しづらいという自治体も多い。そんな中、なぜ同市では庁内外で活用されているのだろうか。

「私たちも最初からうまくいっていたわけではなく、初めて接遇に関する資料を作成した際には同じ悩みを抱えていました。そもそも従来の『接遇の手引き』は、職場内研修でも活用できるように作成したものの、職員への認知度は低かったと認識しています。内容をつくり込んだ反面、ボリュームが大きくなりすぎて実際に手に取る職員が活用しづらかったのだと思います」と森下さん。

さらに、この手引きが作成された平成21年以降の数年間、同市では大きな事件や不祥事などがあり、市内外から厳しい目を向けられることになる。信頼を取り戻すことが喫緊の課題であり、そのため全庁的に接遇力を高める必要があったという。「特に、最前線で市民応対を行う現場に根付くような、実践的で効果的なマニュアルづくりが急務でした」。

つくるだけでは終わらせない、浸透させるための工夫を施す。

同市のマニュアル策定にあたって立ち上がったプロジェクトチームは、庁内公募による若手職員を中心に、接遇やクレーム対応に関する内部講師も交えたメンバーで構成。人事課だけで作成しなかったのは、運用時の受け入れ効果を視野に入れていたからだ。「一方的に展開しても、現場に浸透しない」と森下さんが言うように、接遇力向上の必要性を自分事と捉えるメンバーが部局の垣根を越えて集まったことで、庁内の関心も高まった。さらには、当時市民応対の実情や接遇のレベルを確認するため、徹底した調査と分析を行い、実態に即した内容に、具体例を交えてつくり上げていったという。

そうして完成したマニュアルは、全部局に配布。また、職員が必ず使うイントラネットを用いてデータも配布し、いつでもダウンロードができるようにしている。このほか、全庁を巻き込んだ定期的な取り組みとして、毎月21日を「おもてなしの日」とし、庁内放送での呼びかけと、マニュアルからピックアップした項目を紹介する「おもてなシート」を発行しているという。担当する髙橋さんは、「どちらも若手職員に登場してもらうなど、定期イベント化できていることが周知につながっているようです」と笑顔を見せる。

さらなる応対力向上を目指し、全職員対象の研修も予定。

策定後、時には好意的な声が届くこともあるそうで、変化は確実に感じていると2人は声を揃える。「市役所の仕事はできて当然が大前提なので、褒めてもらえるのは本当に珍しいことです。できていないことやクレームの内容などを職員に周知するのは当然のことですが、同時に良かったこともしっかり伝えて、日々の業務に対するモチベーションアップを図ることを意識しています」。

現場の実態に即した、すぐに実践できるマニュアルとして成果を上げる同市の職員接遇向上マニュアル。令和3年には、コロナ禍などで変化した状況を踏まえてマスク越しでの応対ポイントなどを追加した改訂版を公開。生活が一変し、不安が高まったことで市民からの問い合わせ数が増加しているという。そんな背景もあり、今まで新規採用の職員が対象だった接遇研修を、全職員が受講できるよう、eラーニングでも実施をスタートさせた。柔軟で現場に目線を合わせた運用は今後も継続されるという。

「実用性の高いマニュアルをつくることはもちろん大切ですが、つくって終わりではなくプラスアルファでできることをそれぞれが考え、実践につながる環境づくりを目指していきたいですね」と語ってくれた。

大津市 総務部 人事課
右:森下 嵩(もりした たかし)さん
左:髙橋 敬太(たかはし けいた)さん

たった1人の職員の印象が、市役所全体の印象になります。このことを職員全員が常に意識し接遇力の向上に取り組めるよう、今後も環境を整えていきます。

課題解決のヒント&アイデア

1.現場の職員が実践しやすい具体的なマニュアル

文書形式で実用性の低かったマニュアルから、イラストや写真を交えたり、具体例を多数掲載したりと、現場職員がすぐに使えるマニュアルへ変更。多くの人が現場で読んですぐに行動に移せるように、実用性を高めた。

2.全庁を巻き込み取り組みを定着させ、主体性をアップ

毎月21日をおもてなしの日として、定期的なイベント化を行う。接遇について考える機会を定着させるとともに、イベントに月替わりで若手職員へ積極的な参加を促すことで、課を越えて全庁の職員が主体的に取り組める素地をつくった。

3.クレームだけではなく、好意的な言葉も共有する

窓口に寄せられた応対に関する市民からの意見は、人事課で全て集められる仕組みを構築する。その中から改善すべき点だけではなく、良い意見も全庁へイントラネットを通じ周知することで、日々の業務に対するモチベーションをアップさせた。

毎月人事課がオリジナルで作成しているおもてなシート。該当テーマのマニュアルページ数も記載し、活用の意識づけを行っている。

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