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家計に大きく影響する「住宅費」、手取りの何%が適切?節約のポイントは?

「将来のために資金づくりをしたいけど、何から手を付けていいのか分からない…」「資産運用したいけど、投資はちょっと怖い」…

元公務員で、現在は公務員専門のファイナンシャルプランナーとして活躍している岩崎大さんに、気になる「公務員のお金」について教えてもらう本企画。

今回は、節約時のインパクトが大きい「住宅費」について執筆いただいた。早速見ていこう。

みなさんこんにちは。元自治体職員で、公務員専門FPの岩崎です。前回前々回と「持ち家と賃貸」をテーマにお届けしてきましたが、今回も「住宅」がテーマになります。具体的には住宅費の節約についてお話したいと思います。

住宅費は節約時のインパクトが大きい

家賃や住宅ローンは、固定費の中でもかなり負担の大きい費目になります節約時のインパクトも大きいので、ぜひ積極的に見直しをしていきましょう。

今回の記事では、ポイントを4つに分けてお伝えします。

1.住宅費は手取りの何%くらいにすると良いのか
2.賃貸の場合の節約方法
3.持ち家の場合の節約方法
4.金銭的な節約以外の視点

住宅費は手取りの何%くらいにすると良いのか

家族構成にもよりますが、手取りの20~25%くらいに抑えることができれば、貯蓄もしっかりやっていけると思います。

・手取りが20万円→4~5万円
・手取りが30万円→6~7.5万円
・手取りが40万円→8~10万円


どうでしょうか?若い方の場合は結構厳しいかもしれませんね。ちなみに、僕の公務員時代の初任給の給与明細を引っ張り出して確認してみると、手取りで18万1,569円でした。25%だとすると4万5千円くらいですね。

都市部だとなかなか厳しいケースもあるかと思いますので、その辺はアレンジして大丈夫です。あくまで1つの目安としてお考えください。

賃貸の場合の節約方法

方法は3つほどあるかなと思います。

1.引っ越し
2.家賃交渉
3.ルームシェアや同棲


引っ越しはシンプルですね。予算内の物件に引っ越せばOK。ちなみに、管理費などの家に関わる費用も含めて考えるようにしましょう。

 

次に家賃交渉について。実は、家賃は交渉次第で下げることもできます。家主になったつもりで考えてみましょう。もし現在の入居者が出ていってしまったら、どのようなデメリットが発生するでしょうか?

まず、募集のためのコストがかかります。また、新しい入居者が決まるまで、家賃を取りっぱぐれる可能性もあります。どれくらいの期間、空き部屋になるかは分かりません。そのほか、清掃等にかかるコストも必要ですね。いずれも、時間的・金銭的なコストが発生してしまいます。

そうすると、多少家賃を下げてでも、引き続き入居してもらったほうが良い、という判断もありえますよね。実際、数年に1回くらい家賃交渉して、見事減額を勝ち取っている方もいらっしゃいますよ。

自治体職員さんで借り上げの事務経験がある方は分かるかもしれませんが、そのエリア内の相場というものがあります。相場から著しく外れている場合は、なんとか相場内に持っていく交渉をしたりしますよね。

個人の場合も同じです。交渉しましょう。もちろん、一方的な態度ではダメです、あくまで話し合いなので。同じ物件に長く住んでいる場合などは、交渉してみると良いかもしれません。

 

そのほかの家賃減額の方法として、独身であればルームシェアや同棲をしてみる、というのも個人的にはオススメです。

僕自身、公務員時代の当初5年くらい、大学時代からの友人とルームシェアしていました。3LDKで家賃は7万円くらいだったので、半額ずつ負担して1人当たり3.5万円で住むことができました。

入居費用や更新料、火災保険料など、もろもろの費用も半額になるので、かなり節約効果は高かったですね。このあたりは性格的な向き・不向きもあると思うので、万人に向いている方法ではありませんが、「自分にもできそうかも」と思ったら検討してみてください。

持ち家の場合の節約方法

4つほど検討できるかと思います。

1.金利交渉
2.借り換え
3.繰り上げ返済
4.売却して住み替え


まず金利交渉について。
借り入れ中の金融機関に、金利を下げてもらえないか交渉してみましょう。

交渉の切り口はいろいろあるかと思いますが、例えば、「現在の借入金利よりも安いローンへ借り換えを検討しているんですが…」と切り出してみると、「いやいやウチで金利下げますから」と、なるかもしれません。

現在の金融機関で金利を下げてもらえるなら、借り換えよりは手間が少なくてラクですよね。特に、借入時の金利と現在の一般的な金利に開きがある場合は、交渉の余地があるかと思います。ぜひチャレンジしてみてください。

 

次に、借り換えについて。
住宅ローンは、借入金額が大きい、返済が長期間、という2つの特徴があります。これらの特徴は、「わずかな金利差が、返済総額を大きく左右する」典型的なローンです。

とは言え、「もう住宅ローン終わりかけです…」という場合は、あんまりメリットはないかもしれませんね。逆に、住宅ローン残高が1,000万以上残っていて、返済期間もまだ10年以上ある、という場合は、借り換えを検討する価値があるかと思います。

借り換えのシミュレーションサイトもたくさんあるので、一度ご自身でシミュレーションしてみましょう。注意点としては、返済額だけで比較するのではなく、借り換えにかかる手数料などの諸費用も込みで比較しましょうね。

また、金利種別の変更にも注意が必要です。現在は全期間固定金利で借りているのに、金利が安いから変動に借り換えるというのは、これまで受け入れてなかった金利変動リスクを受け入れる、という方針転換になります。

もちろん、そこも検討した上で決めるのはOKですが、金利が安いから、という理由だけで決めないように注意しましょう。

 

では次に、繰り上げ返済について。
ここでは、一般的な住宅ローンの返済方式である「元利均等返済」についてお話します。

「繰り上げ返済をするとお得になる」という話を聞いたことありませんか?実際、何がお得になるのかというと、「利息」です。

住宅ローンを組むと、毎月ローンを返済しますよね。ここをもう少し分解すると、毎月「元金」を返済しながら、「利息」も合わせて支払うことになります。必ず「利息」も払っていくわけですね。

ですが、繰り上げ返済の場合はその全額が「元金」の支払いに充てられます。つまり、繰り上げ返済をすると、しなかったときと比べて「元金」の減りが早くなります。

利息は元金をもとに計算されるので、元金が減れば減るほど、利息も減ります。このように、繰り上げ返済をすると、「元金が減る→元金をもとに計算される利息も減る」という効果が生まれ、支払う利息が少なくて済むということになります。

そしてここがポイントなんですが、残っている元金が高いほど、支払う利息も高くなります。つまり、ローン序盤=元金がたくさん残っている時期は、支払う利息もたくさんになるし、ローン終盤=元金が少ない時期は、支払う利息も少なくなるということです。

ここをもう少し深掘りすると、「元金がたくさん残っている序盤ほど、繰り上げ返済の利息軽減効果も高い」ということになります。

逆に、ローン終盤で、例えば退職手当が入ったので一括返済をしたとしても、利息軽減の効果はそんなに高くない、というケースも考えられますね。

早く繰り上げ返済できればそのぶん利息的にはお得になりますが、手元の現金を失うことにもなるので、そこのバランスを図る必要があります。

もっと根本的な話をすれば、繰り上げ返済の時期をやりくりするよりも、借入額そのものを抑えたほうがずっと収支は良くなります。

 

最後に売却からの住み替えについて。

なかなか気軽に取れる手段ではありませんが、実際に自宅を売却されて住み替えをされたというご相談例もあります。時間的なコストもかかりますので、まずはその他の手段でコスト削減できないか検討されるのがベターかと思います。

金銭的な節約以外の視点から「職住近接」のススメ

ここまでは主に金銭的なお話でした。最後に、金銭面以外の視点からも考えてみよう、という提案をしたいと思います。

職住近接(しょくじゅうきんせつ)って聞いたことありますか?職場と住居が近い、ということを指す言葉です。職場の近くに住むなんてヤダ、という方もいるかと思いますが、僕は実際に試してみて、意外に快適だったんですよね。

公務員を辞める直前の1年半くらいの間ですが、職場にものすごく近い物件に住んでいました。自宅のドアを開けて、職場到着まで5分以内という立地。

始業ギリギリまで自分のやりたいことができるし、昼食も自宅で食べて、自宅のベッドで昼寝もできました。なにより、人生の自由時間が増えたことがとてもうれしかったことを覚えています。

例えば、職場まで片道40分かかっている人が片道5分の家に引っ越せば、1日の自由時間が70分増えます。週5、月20日勤務だとすると、

1週間で約6時間
・1カ月で約23時間
・1年で約280時間


これだけ自由時間が増やせます。働きながらここまで自由時間を増やせる方法はなかなかないんじゃないかと思います。

人生でお金よりも大切なものはいくつかあると思いますが、その1つは「時間」ではないでしょうか。どれだけ大金を積もうが、過ぎてしまった時間を買い戻すことはどんな大富豪にだって不可能です。

住宅費を抑えることも大切ですが、自由時間を増やせるのであれば、目安のパーセンテージを多少超えても良いかもしれませんね。

増やした時間で投資の勉強をする、というのも良いでしょうし、趣味や家族との時間に充てて人生の充実度を上げる、というのも大いにアリだと思います。ぜひ、職住近接も検討してみてください。ハマる方にはかなりハマる方法だと思いますよ。

まとめ

ということで今回は、住宅費の節約をメインテーマにお届けしました。簡単にまとめましょう。

住居費は固定費の中でも金額が高く、見直し効果が高い
・住宅費は手取りの20~25%を1つの目安に
・賃貸の節約方法3つ:引っ越し、家賃交渉、ルームシェア
・持ち家の節約方法4つ:金利交渉、借り換え、繰り上げ返済、売却して住み替え
・職住近接も検討してみよう


少しでも住宅費の見直しの参考になればうれしく思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

 


岩崎 大(いわさき・だい)

公務員専門FP事務所代表。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP®。

1984年生まれ。熊本県出身。自治体職員として、生活保護・地域おこし・防災・選管・児童福祉などの業務に携わる。在職中にFP資格を取得し、2017年に退職・独立。公務員世帯に特化した独立系FP事務所を運営中。

ブログやメルマガ、YouTubeなど各種メディアで「公務員にとって本当に役立つお金の知識や情報」を発信中。YouTubeチャンネル「公務員専門FP」はチャンネル登録者7,000名(2021年10月時点)。

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