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【後編】持ち家VS賃貸、コスト面から考えるメリット・デメリット

「将来のために資金づくりをしたいけど、何から手を付けていいのかわからない…」「資産運用したいけど、投資はちょっと怖い」…

元公務員で、現在は公務員専門のファイナンシャルプランナーとして活躍している岩崎大さんに、気になる「公務員のお金」について教えてもらう本企画。

今回は、「持ち家か?賃貸か?」について執筆いただいた。

持ち家を買うべきか、賃貸住宅を借り続けるか。コストや日々の満足度、転勤の有無など検討する点も多く、興味のある人も多いだろう。以下見ていこう。

 

公務員専門FPの岩崎です。前回の記事では、持ち家と賃貸についてコスト以外の面から比較し、持ち家が向いている人の特徴、賃貸が向いている人の特徴などを考えてきました。

それでは今回は、もうひとつの重要な側面、コスト面について検討していきましょう。

コスト面から考える持ち家のメリット・デメリット

持ち家のメリットのひとつに「住宅ローン控除」があります。「控除」というのは税金が安くなる仕組みのひとつで、大きく2種類あります。ざっくり言うと、節税効果が高いものと低いものの2種類があり、住宅ローン控除は節税効果が高いほうの控除になります。

また、価値が落ちない物件や、価値が上がる物件を購入できれば資産になります。それが難しいんだよ…という話ですが、上手に物件を選ぶ高度なスキルが備わっていて、運にも恵まれた場合は、持ち家を資産として活用できる可能性はあります。

一方、デメリットとしては次のようなものがあります。

・災害リスクを負う
・ランニングコストは結局かかる
・住居手当が無くなる

まずは災害リスク。何かしらの災害に遭い物件に被害を受けたとき、賃貸なら家主さんが直してくれますが、持ち家なら自分でお金を払って直さなくてはなりません。リスクをなるべく小さくするため、ハザードマップ等も考慮した適切な保険加入といった検討も必要でしょう。

また、持ち家であっても「買っておしまい」ではなく、ランニングコストはかかってきます。固定資産税・都市計画税、リフォーム費用、マンションであれば修繕積立金や管理費など…これらのコストを度外視して賃貸と比較しているケースがたまに見られますが、要注意です。

最後に住居手当の存在。賃貸の場合は住居手当が支給される自治体も多く、公務員メリットの1つだと言えます。この観点から見ると、「持ち家を購入する=公務員メリットを放棄する」ということになります(もちろん、それがダメだと言う話ではありません)。

仮に賃貸の住居手当が月額2.7万円だった場合、住居手当の総額は、

・1年で32.4万円
・10年で324万円
・20年で648万円


となります。税金や社会保険料を加味するとそう単純ではありませんが、少なくとも「同じ家賃負担でマイホームが買えます」というセールストークには注意しましょう。住居手当がなくなる前提に立つと、同じ「負担」でマイホームを購入できるとは限らないからです。

ちなみに、賃貸の住居手当の支給期間は自治体によって異なります。定年まで支給される自治体もあれば、40歳で打ち切られる自治体もあります。ご自身の自治体の給与条例や規則について、一度確認しておきましょう。

なお、総務省の発表によると、「持ち家の住居手当」は2021年4月時点で全地方公共団体の約9割で廃止されています。マイホームを購入した場合の住居手当はなくなる、と考えておいて良いでしょう。

コスト面から考える賃貸のメリット・デメリット

基本的には、持ち家の場合の裏返しになります。まずメリットについては、

・住居手当がある
・頭金による貯蓄消費がない
・コストのコントロールが可能

などが考えられます。住居手当についてはすでに述べたとおりですが、頭金による貯蓄消費がないということは、現金が確保できるということです。現金は使い道が限定されない万能資産なので、生活費として消費したり、運用にまわす原資としても使えます。

また、ライフステージに合わせた住み替えや、家賃交渉などによるコストコントロールも比較的行いやすいという特徴もあります。

一方、デメリットとしては「長生きリスクに弱い」ことが考えられます。これは結構やっかいな問題で、長生きすればするほど家賃の支払期間が伸びるため、老後のキャッシュフローが悪化傾向に傾きます。現役期の資産形成が重要になってきますね。

持ち家についてよくあるテーマ

ここまでの話を一言でまとめると、コスト面については持ち家も賃貸も一長一短だ、ということです。身も蓋もない結論ですが、前半の「コスト以外の面」の記事の内容も合わせてご検討ください。

また、公務員メリットである住居手当の存在は大きいと思います。額や支給期間は自治体によって異なりますので、それらを確認して検討の材料に加えることをオススメします。

さて、コスト以外の面、コスト面、それぞれの観点から検討してきましたが、ここで持ち家・賃貸について良くあるテーマを取り上げたいと思います。

持ち家は自分の資産になる?

持ち家が資産になるかどうかは、不動産投資のスキル(物件の目利き)や運に依存します。現実的には、資産価値を維持・向上できる物件を見抜くのはなかなか難しいのが実情です。そもそも良質な物件は絶対数が少ないので、運や根気も必要ですよね。

つまり、「持ち家は資産になるから買おう」という判断基準は見直すほうがベターです。資産になるから買うのではなく、資産になろうがなるまいが欲しいから買う、というほうが健全ですし、後悔する可能性も下げられると思います。

年を取ると家を借りられなくなる?

未来の日本の人口構造を考えると、高齢者が増えていくと予想されます。そんな社会において、「高齢者お断り」の看板を掲げていては、大家業が成り立たなくなります。高齢化以外の要因としては、そもそも人口減少で借り手が少なくなることも予想されます。

その一方で住宅自体は余っていきます。余談ですが、自治体職員に団地の活性化事業を担当していた時期があったんですが、居住者のいない物件がかなり多く、維持管理が課題になっていました。

このように、需要は減って供給は増える状態になれば、物件が全く借りられないという可能性は低いのではないかと思います。

持ち家は団信で万一のときの住宅費がチャラになるからお得?

これもよく聞きますが…賃貸でも死亡保障を上乗せしておけばOKというシンプルな解決策があります。仮に死亡保険を3,000万円プラスしても、掛け捨てなら保険料の負担は小さくて済みます。

公務員なら職場の団体保険でリーズナブルに備えることもできますし、民間でも収入保障保険などローコストなものも存在します。

そもそも、団信も金利に上乗せするなどして保険料を払っており、無料で付いてきているわけではありませんから、「団信があるからお得」とは言えません。

なお、団信の中身(保障内容)は金融機関によって違うので注意が必要です。「あらゆる疾病を保障します!」となっていても、病気の診断=団信の対象ではなく、就労不能期間が1年継続しないとダメ、といった条件がくっついていることもあります。売り文句に飛びつかないように気をつけたいところですね。

持ち家VS賃貸まとめ

ということで「持ち家と賃貸どっちがいいの?」という永遠のテーマについて、2回に分けてお送りしてきました。

良い判断をするために何よりも重要なことは、「持ち家派vs賃貸派」の不毛な争いから一抜けすることです。「どっちが得?」という問いは他者を巻き込むと不幸になります。そもそも万人に当てはまる正解なんてありませんし、自分や家族の「生き方」の話だからです

生き方に人類共通の正解なんてありませんよね。職場の人や親戚がどんな考え方を持っていたとしても、あなた自身がその考え方・生き方をチョイスする必要は全くありません。

どんな生き方・暮らし方をしたいのか?それを実現するための住宅を選びましょう。自分や家族にとっての幸せってなんだろう?とじっくり考える良い機会になるはずです。そのためのヒントは前回・今回の記事でお渡ししましたので、ぜひ前向きに悩んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
 

家賃や住宅ローンは、固定費の中でもかなり負担の大きい費目
次回へ続く

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岩崎 大(いわさき・だい)

公務員専門FP事務所代表。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、CFP®。

1984年生まれ。熊本県出身。自治体職員として、生活保護・地域おこし・防災・選管・児童福祉などの業務に携わる。在職中にFP資格を取得し、2017年に退職・独立。公務員世帯に特化した独立系FP事務所を運営中。

ブログやメルマガ、YouTubeなど各種メディアで「公務員にとって本当に役立つお金の知識や情報」を発信中。YouTubeチャンネル「公務員専門FP」はチャンネル登録者7,000名(2021年10月時点)。

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