ジチタイワークス

北海道むかわ町

もはや仮設ではない!被災地へ運べて快適に暮らせる木造住宅

自然災害の発生後、手配が始まる仮設住宅。煩雑な手続きなどが障壁となり、供用までに予想以上の日数を要するケースが少なくないようだ。そんな中、むかわ町では“運べる家”を導入して備えているという。担当者に話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.23(2022年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]一般社団法人日本ムービングハウス協会

倉敷市での導入事例や再活用できる点が決め手に。

大規模災害で多数の住民が住居を失った場合、自治体は災害救助法や被災者生活支援法にもとづいて、仮設住宅の手配を行う。ただ、“一刻も早く”という被災者の思いとは裏腹に、迅速に供給できず避難所生活が長期化するケースも少なくないという。工事の発注権限をもつ都道府県との調整や煩雑な手続きが、供用開始までの進捗を妨げる要因になっているようだ。

そうした中、平成30年9月の北海道胆振東部地震で被災した同町は、「日本ムービングハウス協会」が供給する「ムービングハウス」を仮設住宅として導入。地元高校の生徒寮まで含め、計41ユニットを町内に設置した。「被災前まで名前を聞いたことさえない建物でした。ただ、甚大な豪雨被害を受けた倉敷市での導入事例の話や、仮設住宅としての期限が終了した後に別用途で活用できるという話を聞き、復興時を見据えて導入が決まりました」と、経緯について語る大塚さん。

同町内にはアパートなどが少なく、民間の賃貸住宅を借り上げて活用する“みなし仮設住宅”の数が不足していたことも、導入の後押しになったという。

完成品を運んでくるから入居までのスピードが早い。

ムービングハウスは、建物の構造体から外壁、屋根、内装および水まわり設備一式を工場内で組み立てる、移動式の木造住宅。建物は海上輸送用コンテナと同じサイズに統一。特殊な構造用金物を仕込んだ耐力壁パネルなどによる、独自構造で組み立てられている。そのため、建物は横に連結、もしくは積み重ねて利用可能。移動の際は解体することなく、完成品のままコンテナ輸送用のトラックに積載して運搬できる。

仮設住宅には、プレハブ住宅などの建設型と、前述のみなし仮設(借り上げ型)がある。“移動式”である同建物は、災害救助法にもとづく第三の仮設住宅形態として、平成30年、西日本豪雨による被害が特に大きかった倉敷市に導入された。その2カ月後に発生した、北海道胆振東部地震。同町における住宅被害規模は、全壊40棟、半壊186棟、一部損傷3,260棟で、ピーク時は1,000人以上の住民が避難を余儀なくされた。必要数の仮設住宅を、一刻も早く準備せねばならない状況だった。

「完成品を運んでくるので、発注から入居まで早い点が安心でした。断熱性能が高く、“北海道仕様”の断熱加工が必要なプレハブと比較して、約半分のコストで設置できる点などがうれしかったですね」。

リノベーションを施してにぎわい創出の公共施設に。

同協会では、通常のコンテナサイズだけでなく、ハーフサイズのユニットも製造している。それらを組み合わせることで、2階建ても含め、様々な広さ・形状の建物がつくれる。また、内装の構造がシンプルなので、簡単な工事で住宅以外の用途に仕様変更できることも、同建物の強み。その強みを活かして同協会は、「防災・家バンクシステム」の構築を提唱している。平常時は研修所や集会所などの公共施設として活用し、災害発生時に仮設住宅に転用する、稼働資産として備える方式だ。

「現在、仮設住宅として使用した生徒寮の食堂を新型コロナウイルス感染症対策として、分散勤務のための会議室に転用しています。今後空き地の多くなったまちなかの再生に向け、にぎわいを復活させられる施設として再活用を検討中です」。

遊休・休眠施設とならず地域活性化に一役買え、有事の際には仮設住宅へと迅速に転用できる同建物。もしものときのために協定を結び、“第三の選択肢”を加える意義は、今後高まっていくことだろう。

むかわ町 経済建設課
大塚 治樹(おおつか はるき)さん

上質な木造住宅が“安らぎ”を与える

通常住宅に遜色ない快適な居住性

プライバシーを守る遮音性

プレハブと異なり、高い遮音性能が持ち味。むかわ町でも生活音に関する苦情は発生しなかったという。


 

外断熱だから高い断熱性能

厳冬の北海道でも、外断熱工法とトリプルガラス製サッシの窓などの採用により、高い断熱性を発揮。


 

木肌の温もりが優しい室内

床面をはじめ、壁面も木目が露出した“スケルトン”が基本仕様。プレハブにはない、木肌の温もりを感じられる。



 

SDGsに貢献する再利用可能な建物

移設時の廃材がほぼゼロ

大半が再利用不能なプレハブと異なり、解体せず運べるムービングハウスは、廃棄材がほとんど発生しない。


 

期間後も別用途で活用可能

仮設住宅の供用期間は、最長2年3カ月。解体・撤去にはコストがかかるが、ムービングハウスなら転用が可能。


 

災害前の備えとして導入

普段から公共施設として活用していれば、被災時は仮設住宅だけでなく出張診療所などにも直ちに転用できる。


 

協定で未来に備える

むかわ町は同協会と協定を締結し、災害時の住居確保に向けて備えている。

災害に備えるために

災害時の迅速な支援のため「災害時支援協定」ならびに「包括連携協定」の締結をぜひご検討ください。

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お問い合わせ

サービス提供元企業:一般社団法人日本ムービングハウス協会

担当:岡田・三浦
TEL:011-885-6000
住所:〒004-0813 北海道札幌市清田区美しが丘3-10-2-15
E-mail:bp-info@archi21.co.jp
(9:00~17:00 土日・年末年始等除く)

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