ジチタイワークス

【脇 雅昭さん】WEB限定 ジチタイワークス創刊5周年特別インタビュー 「5年前、5年後」。

神奈川県いのち・未来戦略担当理事。47都道府県の公務員が集まる「よんなな会」および「オンライン市役所」の主宰・運営者。

5年前(2017年)、何をしていましたか?

神奈川県の観光セクションにいました。2019年のラグビーワールドカップを控え、世界各国から来日する方々にどのようなおもてなしができるかを考えていました。 個人の活動としては、国家公務員と地方公務員をつなぐ「よんなな会」が横展開し始めた頃ですね。もともと東京に出向している地方公務員を対象としていましたが、全国から参加希望者が東京まで来てくれていた状況で……。その流れで、“横でつながり、知見をシェアする”ことに共感してくれた人たちによって「よんなな関西会」や「よんなな北陸会」が各地で自然発生するようになりました。当時、官民問わずに集える場として「よんななお坊さん会」や「よんなな防災会」など、「よんなな〇〇会」が60個ぐらいはあったと思います

5年前と今を比べて「(自治体・行政まわりで)変わった・進んだ」と思うことは?

オンライン化が進み、社会課題が“見える化”してきた印象です。例えば最近、子どもの貧困や生理の貧困といった話題をよく耳にしますが、これらは今に始まったものではなく、これまで“個人の問題"として片付けられていたものです。点在していた課題がデジタルの力で集積された結果、社会の構造や仕組みの問題だと認識されるようになった。住民が“助けてほしい”と声を上げやすい環境になってきたのはとても良いことだと思います。ただ、行政にとっては、解決すべき問題が増えているということになりますよね。だから今後、行政だけで社会課題を解決することには限界があると感じています。5年前に比べると官民連携による課題解決は進んでいますが、これからもっと加速するのではないでしょうか。

5年前と今を比べて「(自治体・行政まわりで)変わっていない・進んでいない」と思うことは?

世の中を動かしているのは“人”であるという、社会の本質的な部分は変わらないと思います。義務として働いていても、その人が“どういう価値観”で、“どれだけやるのか”によって結果は変わります。だからこそ「オンライン市役所」では、“個人の好きなこと”や“価値観”を大事にしたいと考え、それをもとにした運営・活動を意識しています。例えば、コロナ禍でワクチンの勉強会を毎週のようにやっていたときも、思いのある人がいるから物事が一気に進む感じがしました。 また、国や自治体同士でまだまだ取り払える壁があるという部分は、“進んでいない”点と言えるでしょうか。先日、中小企業庁の方と一緒にイベントをしましたが、現場(自治体)の最前線の人に政策が届いていないと感じているようでした。政策立案者と現場にいる人をつなぐことも大事だと思います。

この5年のご自身の取り組みで思い出す「苦労したこと」は?

私自身、あまり苦労を感じないタイプなので難しいですね。でも、振り返ってみるとコロナ対策は大変で、だからこそ没入して取り組みました。ワクチンの接種体制などは全国共通の課題。すごく大事だし、絶対にシェアすべきと思い、オンライン市役所内で情報共有できる場を立ち上げました。苦労というか、国家的危機だからこそ公務員が頑張らないといけないと思っていましたね。 また、小さな自治体の中にはオンライン市役所に加入している職員が1人もいないところがまだまだあり、これも苦労というわけではないですが、課題としては抱えています。小さな自治体こそ、限られた人数でたくさんの仕事をしているはずなので、本当はそういう自治体にこそ、私たちが行っているナレッジのシェアを活用してほしいんですよね。

この5年のご自身の取り組みで思い出す「達成感を得たこと」は?

最近のオンライン市役所には、とてもニッチな質問や相談が寄せられるようになりました。そして、それに対して皆からたくさんのコメントが付く。私にとってはこれが理想形です。一人ひとりの小さな声を拾えるプラットフォームになっていることがうれしいですね。今まではマスの声しか拾えなかったのに、デジタルの力で、“1人の好き(なトピック)”や“1人の課題”が、誰かに届き、仲間を見つけやすくなりました。コミュニティという括りの中では、そこにいる皆が関心のある“最大公約数的な課題や話題”が取り上げられますが、同じように見えても、実は個々で違うはずなんです。だからその粒度を細かくして、“個人の困った”を解決したい。その人に合った課題解決を目指したい。ようやく今、そういう理想の世界に近づいていると思います。

5年後(2027年)の地域社会や自治体、公務員に期待する姿とは?

公務員ができることは、地域と真正面から向き合うこと。そのため、今後は課題に真摯に向き合う姿勢が求められると思います。ある課題に向き合っている人が、その地域には1人しかいなくても、全国にはきっとたくさんいるはず。そういう意味でも、横でつながることは益々重要になるでしょう。 また、それぞれの市町村でやることに縛られず、集約して効率よく行える業務は集約して取り組むほうがいいと思います。それを経て残された業務の中から、さらに行政にしかできない、公務員にしかできない仕事は我々がクリアにする必要がある。だからこそ、行政にしかできない仕事以外のことを、熱意ある地域の人々に任せることはできないのか……?それを知るため、まずは地域の人と向き合うことが大切です。私としては、今後も、一人ひとりの想いや能力を後押しするサポートをしていきたいですね。

最後に、5歳になるジチタイワークスについてご意見・メッセージをお願いします。

2010年に立ち上げられたよんなな会。このよんなな会が全国の人たちを横につなぎ、課題やノウハウをシェアしていくものとして本格的に動き始めたのが、2017年です。だとすると、実はジチタイワークスとは同級生になるんですね。 同じ志を持つ同級生として、これからも公務員・地域を後押しする取り組みを連携していければと思っています!

 

 

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