ジチタイワークス

人財育成において不可欠な、リーダーや管理職の具体的な行動とは?

「仕事にやりがいを感じられない」「これからのキャリアが思い描けない」......。
自治体で働く中で、誰もが一度は“キャリアデザイン”で悩んだことがあるだろう。

本企画では、静岡県庁職員や藤枝市副市長などのキャリアを積み、現在は藤枝市理事兼人財育成センター長を務める山梨秀樹さんに、「公務員のキャリアデザイン」について執筆していただく。
これまでジチタイワークスWEBでも、様々な自治体職員の方に仕事観や経験について語っていただいたが、本企画ではキャリアデザインについての全体像を俯瞰して考えていく。

第2回目となる今回は「人財育成において不可欠な、リーダーや管理職の具体的な行動」について。
山梨さんは「肝心なのは、組織、職場に、明るくて気持ちの良い空気を、言葉の力で意図的につくる努力」だと述べている。一体どういうことなのか、早速見ていこう。

組織の活力が増す!その1 
リーダーの持つ言葉の力

人財育成システムをうまく稼働させるには、職場のリーダーや管理職の具体的な日常行動がとても重要です。

私はその中でも特に、日々の「言葉」の取り組みが大切だと考えています。

言葉の力は人財の士気の高揚、全職員の気概と情熱を引き出す風土の醸成に大きく寄与し、ヒトの育成を含めた組織経営の主要素とも言えるものです。

では、実際に、どうすればよいのでしょうか?

肝心なのは、組織、職場に、明るくて気持ちの良い空気を、言葉の力で意図的につくる努力です。職員の個性や優れたところを活かし、伸ばせるような日常の言葉遣いへの配慮、気配りです。「察し」と「思いやり」のある言葉で、あたたかな組織・職場の経営を進めるのです。

これは、すぐに実践できますね。

管理職の皆さんは毎日、部下にどんな態度で接し、どんな言葉をかけていますか?

管理職はいつも部下に見られています。部下は相談や決裁、報告のタイミングなどの必要性から、管理職の動静や顔色にとても敏感です。部下は管理職を注意深く観察しているのです。

その管理職が、
①朝のあいさつに始まり、
②部下をねぎらい、
③時折あたたかい言葉をかけ、
④部下を励まし、
⑤最後に声を上げて笑う。

そして、指示や指導は、この5つの言葉・行動の中に簡明に織り込む。
これらを習慣的に行えば、新たな空気が部下に、職場に、確実に浸透していきます。

ヒトは心理で動く、感情の生き物です。

管理職は自分の力量と経験に自信を持ち、日頃から部下に声をかけ(雑談も、スベるギャグも大いに結構!)、苦しくてもともに笑い、一緒に考えて悩み、時に自らの敷居を下げて部下と語り合う方がいいと思います。

部下は管理職の説諭や叱責より、日頃の立ち姿、振る舞いを見て育ちます。

若い職員が将来、管理職になったとき、どうすれば優れた職場の空気をつくることができるか。これを知っているかどうかで、次世代の組織風土、職場経営のあり方が決まります。組織経営における言葉力の役割はとても大きいものがあります。

 

組織の活力が増す!その2 
自分の仕事を徹底して発信

もう1つ、職員の士気を大いに上げる方法があります。各職員の徹底した仕事情報の発信です。

今、発信の方法はたくさんありますから、紙であれSNSであれ、様々な全国媒体を最大限に活用します。

各職員が施策の情報をどんどん発信し、住民から様々な評価を得る。そして、施策の担い手として自身の社会的存在感(人々の役に立てた!) に気づき、その実感と自信を持てるようになる。

これを役所が組織的に推し進めるサイクルのプロセスで、組織の経営戦略を確立し、役所の内外に浸透させていくのです。

 

〈職員の士気と活力を生むサイクル〉

 

大切なのは、組織の全職員が、自分の仕事のPRパーソンとして活動することです。

自分の仕事を広く知ってもらえる喜び。それを感じる職員を庁内で1人でも多く増やすことが、中・長期的なヒトの育成戦略、自治体の重要な経営戦略となります。

我々公務員の仕事は全て、人々に知られてこそ意味があります。住民に見えない、聞こえない行政の努力と成果は、良否の評価も全くされません。知られない仕事はしていないのと同じで、住民にとって無価値ですから、知られぬままにしておくのは納税者に対する背信的行為でさえあります。

仕事で成果が出たら直ちに住民にお知らせするのはもちろん、成果がまだ出ない段階でも、取り組み内容や課題点などを随時、人々に知らせるべきです。税を主な原資とする我々の業務は、その進展や成果の有無と無関係に、常に納税者たる住民に説明、つまり広報すべきなのです。

これは行政に特有の恒常的な責務であり、私はこれを「常時的説明責任(Continuous Accountability)」と呼んでいます。

例えば、報道関係者による取材は、職員にとって格好の発信のチャンスですから、絶対に逃してはなりません。

我々自治体は、あらゆる機会を通じて報道関係者と接し、今の施策や新規事業、その進捗状況や課題等を記者に繰り返し伝えるべきです。

そして、管理職は取材対応を、実際に担当する職員に任せましょう。担当者であるあなたは、自身が取り組む仕事を世に知らせる重要な機会を最大限に活かしてください。

発信するのは新規事業に限りません。既存の事業でも、その魅力と効果を丁寧に分かりやすく伝えることです。

そこでは行政用語は絶対に禁物!誰でも分かる簡明な言葉で、仕事とそれに向けるあなたの想いを語ります。あなたが目指す理想と目的を、丁寧に説明するのです。これらは日頃からの言葉の訓練で、かなり上達します。記者にいくつメモ(=キーワード)を取ってもらえるかで、記者がどのくらいあなたに共鳴しているかが分かります。

伝えた努力の甲斐あって、あなたの仕事が報道され、反響があると、職場は大いに盛り上がります。あなただけでなく、職場のみんながうれしい。

この流れがだんだん定着すると、部署間で施策の発信競争が起こるようになります。そして、それが徐々に組織の「勢い」に変化していきます。職場が明るい雰囲気に包まれ、組織全体の空気が変わるのです。

私のこの話を疑う前に、まずやってみてはいかがでしょうか?

明るい闘志が庁内に湧き、仕事をもう一歩進めようという活気と気迫が生まれ、職員の目が輝き、動き方が変わります。その姿を見るのは、実に楽しいものです。

仕事をするまでが公務の半分。残り半分は徹底した発信。これで公務が完成します。

あなたの仕事に住民が関心を寄せ、称賛や激励の電話が入ったり、課題の指摘があったりします。それらを受け、あなたは仕事をさらに改良していきます。こうした日々の住民との「掛け合い」が本来の行政活動でしょう。

これが全ての職員によってなされれば、行政のレベルは格段に上がり、まち全体の雰囲気までだんだん変わってきます。

地域の評価と反応がいくつ、わが仕事に向けられるか。あなたの仕事が注目されて「世に出る」ことで、たたえられ、検証し、さらに改善する機会が得られます。

そういう仕事、やめられません!

 


もっと読みたい

【連載】「公務員のキャリアデザイン」を学ぶ

第1回:自治体職員のキャリアデザインとは、“公務員としての人生設計”です。だからこそ、組織は、職員を優れた職業人としてどう大成させるかについて、重い責任を負っています。その一方、住民の幸福度を上げるための自治体の最重要テーマは、組織の総合戦力を上げること。そこで、第1回では、職員の人生設計に組織が寄り添い、自治体の将来を担う人財を明るく育むワザについて考えていきます。

第2回:人財育成システムをうまく稼働させるためには、職場のリーダーや管理職の具体的な日常行動が非常に重要です。「肝心なのは、組織、職場に、明るくて気持ちの良い空気を、言葉の力で意図的につくる努力」だと山梨さんは述べています。また、職場の士気を上げる方法として、各職員の徹底した仕事情報の発信も重要です。その背景には「常時的説明責任」があるとのこと。一体どういうことなのか、掘り下げて学んでいきましょう。

第3回:キャリア形成を進める上では、仕事の段取り方も重要です。山梨さんは「仕事をテキパキとよどみなく行うための知恵と工夫は、スピーディーに効果的な業務成果を出すことに寄与し、仕事の不安も解消します」と述べています。「段取り力」がどんな要素で成り立っているのか、どうすれば会得できるのか、日常業務で何を心掛ければ良いのか、具体的に見ていきましょう。


プロフィール

山梨 秀樹(やまなし ひでき)さん

昭和33年11月生まれ。昭和58年3月京都大学経済学部を卒業し、同年4月、静岡県庁に入庁。総務部市町村課、旧総理府(現内閣府)地方分権推進委員会事務局、静岡県総務部合併支援室などを経て、平成20年10月藤枝市行財政改革担当理事、平成24年8月同市副市長、平成28年4月静岡県知事公室長、平成29年1月静岡県理事。平成31年3月に同県を定年退職し、同年4月から藤枝市理事。令和2年4月から同市人財育成センター長を兼ね、現在に至る。

著書に「伝えたいことが相手に届く!公務員の言葉力」(ぎょうせい)。ほかに寄稿、論文、大学ほかでの講義、講演など。

著書

伝えたいことが相手に届く!公務員の言葉力』(ぎょうせい)

このページをシェアする
  1. TOP
  2. 人財育成において不可欠な、リーダーや管理職の具体的な行動とは?