業務デジタル化に着手しても、小規模の取り組みでは効果が限定される。しかし規模を拡大するには相応のコストが必要だ。同市はこうしたジレンマに対し独自の工夫を重ね、庁内に大きなうねりを起こしている。その詳細を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.20(2022年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
内製・外注のハイブリッドで、デジタル化を加速させる。
DX推進計画の策定に向けて、令和2年度から本格的な活動を開始した同市。情報収集を行う中で神戸市にも足を運び、その視察でサイボウズが提供する業務改善プラットフォーム「kintone(以下、キントーン)」の詳細を知った。
令和3年4月、同市に「デジタル市役所推進室(以下、デジ室)」が設置されると、DX推進の切り札として同サービスを導入することを決定。髙塚さんは「コストやセキュリティ、自治体での導入実績などに加え、中小規模のアプリ開発が内製できることも決め手でした」と振り返る。「業務改善システムを構築すると、通常は数百~数千万円かかります。キントーンならそれを職員が手軽につくれるという点が大きな魅力でした」。
しかし、内製にこだわりすぎるとスピードが落ち、外注に頼れば自立が遠のく。そこで同市は、市内のパートナー企業によるヘルプデスクと職員による内製の“ハイブリッド対応”を取ることにし、サイボウズと連携協定を締結。取り組みを加速させるべく動き始めた。
あらゆる手段で人材育成し、100件超えの依頼に対応!
導入の決定後、デジ室から全庁へ業務効率化の要望を募ったところ、104件もの依頼が返ってきたという。この件数は「予想を超えていました」と髙塚さん。そこでまずは「デジタル化相談案件管理アプリ」を作成し、各課からの依頼を登録して進捗状況などを可視化できる環境を構築。「多くの依頼に庁内からの期待を感じます。デジ室だけでは対応しきれないので、ヘルプデスクの稼働日数を増やしてもらいました」。
これらの案件対応と並行して、アプリ内製の人材を育成する庁内研修を実施。ヘルプデスクとの相談会も開催し、相談内容はアプリで一元管理した。須山さんは「全ての相談案件をデジ室職員が閲覧・管理できます。デジタル化の取り組みを紙で管理していては本末転倒ですから」と語る。
やがて、庁内ではアプリを内製する職員があらわれ始めた。先陣を切ったのは建築都市局で、ベンダーに依頼すると1,000万円以上かかるアプリを1カ月ほどで内製し、補助判定業務の効率化を実現。アプリ構築のノウハウは、同社が提供する自治体限定の情報共有コミュニティ「ガブキン」で得たという。
続いて保健福祉局でも、新型コロナ関連業務や、非課税世帯への給付金事業などでアプリを開発。緊急の案件はヘルプデスクも活用し、さらにRPAの併用で業務を迅速化した。令和4年3月時点で本運用に達したアプリは約20。「これらのアプリで、コスト削減も相当な額に達していると推計しています」と髙塚さんは頬を緩める。
集まったデータを活用し、業務改革を次のステップへ!
同市の業務デジタル化はわずか数カ月で加速していったが、ここで集約したデータは組織マネジメントにも活かされていると須山さんはつけ加える。「キントーン上のデータを可視化することで、業務効率化・改善の状況がつかみやすくなります。職員にも共有しており、アイデアを生み出すきっかけになればと期待しているところです」。
令和4年2月には、各部署からデジタル化案件を集約して検証・実行する「デジラボ」が始動。さらなるDX推進を目指している。髙塚さんは「現在の目標は、令和7年度末までにキントーンによる業務効率化で職員の年間作業時間を5万時間削減、および開発費を10億円削減することです。ゴールはまだ先ですが、手応えを感じています」と力を込める。「来年度には全庁展開と、基幹系システムとの連携も視野に入れています。民間と協力しながら、さらに取り組みを広げていきたいですね」。庁内で連鎖反応的に拡大を続ける、同市の業務改革。今後の動きにも注目したい。
北九州市 デジタル市役所推進室
左:課長 須山 孝行(すやま たかゆき)さん
右:係長 髙塚 靖彦(たかつか やすひこ)さん
北九州市が独自に開発した業務改善アプリ
中小規模の業務改善を中心に、同市が開発しているアプリの数々。内製と外注を使い分け、スピードとコスト減の絶妙なバランスを取りつつ、職員の負担も軽減している。
「ガブキン」が後押し!
約170の自治体が参加中で、自治体業務に特化した情報やアプリのテンプレートが入手できるコミュニティ。自治体間の横連携で、活用スピードがぐっと上がる。
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