度重なる豪雨被害で見えた防災備蓄の新たな必需品。

近年では、洪水や土砂災害を引き起こす台風や集中豪雨が増加しており、自治体として大規模災害への備えは急務となっている。同市は４年連続で豪雨による筑後川支流の内水氾濫被害に見舞われており、避難所を１週間ほど開設するケースが増加。それに伴い、ここ数年で避難所に対する市民からの要望の変化を感じているという。

「これまでは空調やトイレといった基本的な衛生環境面の整備を求められていましたが、最近はテレビやWi-Fi設備など、情報を得るための環境整備を求める声が高まっていると感じます」と湯口さんは話す。特にWi-Fi環境は、今や暮らしに欠かせないインフラ。災害発生時でも、情報収集や安否確認のために必要となる。大規模な土砂災害や地震などが発生した場合、あらゆるライフラインが絶たれ、電話回線がつながらなくなるおそれもあり、代替手段の確保が求められる。

避難所の通信手段確保にモバイルWi-Fiを準備。

避難所における通信インフラ整備の必要性を感じていた同市が導入したのが「使わなかった時ゼロエンWiFi（以下、ゼロエンWiFi）」だ。令和３年８月に「モバイル・プランニング」から、地域貢献活動の一環として端末50機とモバイルバッテリー50台の寄贈を受けた。

湯口さんは「Wi-Fiルーターがあれば、災害発生時でも避難者の方々がスマホなどを使ってインターネットにアクセスできる環境を確保できます。また、分かりやすい説明書が封入されているため、普段Wi-Fiを使用したことないような、デジタルに詳しくない人でもスムーズに使えるのが助かりますね」と話す。住民が避難してきた際にも、各自で説明書を確認しながら接続できれば、職員の負担を軽減することが可能だ。

また、一般的にWi-Fiルーターは導入したときから使用料金が発生するが、ゼロエンWiFiの場合は使った月のみ月額の固定料金が発生し、使わなかった月は料金が請求されない、つまり“０円”となる。“使用しなくても固定費が発生するので、Wi-Fiを手元に置いておくとコストがかかる。使ったときだけ支払うプランがあればいいのに……”というリクエストから誕生した同サービス。“いざというときの備えとして、置き薬のようにWi-Fiを手元に置いてほしい”という同社の思いもあり、契約期間に縛りはなく、解約違約金なども発生しない。災害時を支えるライフラインとして備えておけるだけでなく、災害備蓄品の保管にかかるランニングコストを抑えたいという自治体の困り事の解決にも一役買ってくれるといえるだろう。

災害が発生したときこそ通信インフラは必要。

災害発生時、避難所でまず優先されるのは空調やトイレなど基本的な環境の整備。かたや、通信インフラの整備はどうしても後回しになりやすいのが現状だ。しかし、災害が発生したときこそ、通信手段の確保が重要だと湯口さんは話す。「避難所で通信手段がなくなると、被害情報の収集や安否確認が難しくなってしまい、避難者の方々は大きな不安を抱えたまま過ごさなければなりません。今やスマートフォンに頼らずに過ごすのは難しく、災害発生時であればなおのこと必要です。こういった状況を踏まえて、今後はほかの自治体においても、災害発生時の避難所における通信インフラ整備に力を入れていくのではないでしょうか」。

同サービスは端末のレンタル料や貸し出し送料、契約解除料が不要なため、災害時など、もしもの時の選択肢になりやすい。「こうして民間企業の協力を得られるのはありがたいですね」と湯口さんは語る。避難所でも安心して使える通信環境の整備が自治体に求められている。

久留米市 総務部 防災対策課 主査
湯口 秀隆（ゆぐち ひでたか）さん

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