コロナ禍において、災害が発生した時に心配されるのが避難所の“密”だ。そんな中「シェアクレスト」は、避難所の混雑状況をリアルタイムに周知できるサービスを開発し、課題解決に挑んでいる。その詳細を担当者に聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.19(2022年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]シェアクレスト株式会社
コロナ禍において、避難所の混雑に敏感な人が増加。
災害時に、住民が速やかに身の安全を確保できるよう、自治体では避難所を定めている。しかし、定員数を超えた場合、担当職員は電話などで近隣の避難所の混雑状況を確認し、住民を案内する必要がある。「混雑状況は刻々と変化するので、住民がたらいまわしになることもあるそうです」と菅嶋さん。
また、大半の避難所では入室時に受付シートを記入するのだが、住民が駆け込む時間帯は重なる傾向があるため、受付が混雑することも少なくないという。「コロナ禍において“密”に敏感な人が増えています。列に並ぶのを避け、豪雨などの災害時であっても外で傘を差して待つという、本末転倒な事態が起きることもあると聞きます」。
同社では、そんな混乱しがちな災害時に、避難所の混雑状況を可視化するサービスを開発した。また、WEB上で受付シートを事前記入できる機能も実装。記入後、スマホなどに表示される二次元コードを提示すれば受け付けが完了するため、スムーズに入室できるという。
同社はこれまでにも、災害時の危険地域に絞って警報を発令できるシステムを展開。そのシステムを導入した埼玉県狭山市危機管理課の職員から“避難所の混雑を緩和したい”と相談を受け、同サービスの開発に着手したそうだ。
避難所情報サービスがもたらす変化
入室管理をデジタル化し、避難者数の変動を周知する。
住民が避難所の混雑状況を確認するには、専用WEBサイトにアクセスするだけ。「自治体のホームページなどにリンクを掲載し、利用してもらいます」。アプリをダウンロードする手間がかからないことも、住民の利点だという。
「運用にあたって、まず避難所名・所在地・収容人数・設備情報・外観写真などを担当職員が登録。特に収容人数は混雑状況の計算に必要で、受け付けをした避難者の割合が30%を超えると、マップ上のピンの色を緑、100%に達すると赤、といった具合に表示されます」。各避難所の職員が目視で空き具合を確認し、管理画面から“満員”“やや混雑”などを入力する類似サービスもあるそうだが、「主観に左右される可能性があり、タイムラグも生じます」と指摘する。
一方、同サービスは二次元コードで受け付けを行うため、サーバーに全避難者の入室データが登録される。「リアルタイムで避難者数の変動を表示できる上に、自動更新が可能です。また、退出管理も二次元コードで行えます」。なお、事前に受付シートの記入をしていない人や、スマホに不慣れな人などは、従来通り紙のシートに記入。その場合、担当職員がそのシートを撮影すれば受け付け・登録が完了する。二次元コードの読み取りおよび、紙のシートの撮影ツールとして、受付担当職員には専用アプリを提供するそうだ。
アプリ開発を検討するなど、さらなる機能拡充へ。
「入室データをもとに避難者の年齢や性別をリスト化すれば、災害が長期化した場合でも、救援物資手配の適正化につながります」。従来は受付シートの束をめくって対象者を探していた安否確認の問い合わせに対しても、簡単に検索できるようになるという。さらに、「入室データを利用すれば、これまでエクセルなどに手打ち入力していた報告業務の負担も軽減します」と、様々な効果をもたらすことに自信を見せる。
現在はデジタルになじみが薄い人に配慮して、比較的操作しやすいWEBサービスを展開しているが、“移動経路案内などの機能を拡充したい”という自治体の声が集まれば、アプリ開発も検討するつもりだそうだ。「アプリを展開することで、イベントなどの入退場管理への応用も可能になります。災害時にのみ利用できるものではなく、平時の活用を見据えたサービスの開発を進めたいと考えています」。
シェアクレスト 代表取締役社長
菅嶋 誠一(すがじま せいいち)さん
導入することで実感できるメリット
自治体のメリット
●非接触で受け付けができる。
●避難所の混雑状況をリアルタイムで周知できる。
●安否確認の問い合わせ対応が早い。
●避難物資を適正に配布できる。
●報告業務の効率化が可能。
避難者のメリット
●アプリのダウンロードが不要。
●密を避けた避難ができる。
●受付での待ち時間が短縮できる。
職員用アプリ(受付担当職員)
専用アプリで、二次元コードを読み取る、または紙の受付シートを撮影すれば登録完了。避難者の入室データを管理できる。
受付シート(避難者)
専用WEBサイトにアクセスして避難所の混雑状況を確認。事前に受付シートの記入ができる。
運用までの流れ
WEB用受付シートを登録(シェアクレストが作成・登録)
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ID・パスワードを取得
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避難所情報を登録
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受付職員用アプリをダウンロード
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テスト稼働
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運用