ジチタイワークス

一目でわかる引継書作成のコツとは?

新年度を迎え、新しい部署へ異動になった方、同じ部署で役割が変わった方など、様々な形で4月をスタートさせているのではないだろうか。多種多様な仕事がある自治体現場での人事異動は、しばしば「転職」と称されるほど。これまでの経験が活かせず途方に暮れるといった話を耳にすることも多いだろう。

そこで、ジチタイワークスでは『自治体シゴトのテキスト』という企画をスタート。少しでも皆さんの支えとなるよう、多種多様な自治体業務について、その業務に精通している方にやりがいや魅力、仕事のポイントについて知見者にご紹介いただく。

第2回目は引継書作成の実践編。ご登場いただくのは、とある市役所の係長ひろなかさん。入庁してから17年のひろなかさんは、、これまで何度も異動を経験し、いくつもの引継書を作成してきたという。経験を踏まえて具体的な作成のポイントやノウハウを教えもらった。

【自治体シゴトのテキスト、「引継書作成」を学ぶ】

(1) 基礎編|いつ引継書をつくり始める?作成のポイントは?
(2) 実践編|一目でわかる引継書作成のコツとは? ←今回はココ

※著者の所属先及び役職等は令和4年4月公開日時点のものです。
※各記事の掲載情報は公開日時点のものです。

作成前の準備

年度末に引継書をつくると思いますが、正直なところ、年度末の引継書だけではかなり不足するのが実態ではないでしょうか。そうすると、いかに普段のマニュアルやスケジュール管理をどうしているかがポイントになってくると思います。

引継書にはどこに何があるかを示す程度にとどめて、その示された先に詳細が分かるものを置く。そのやり方が理想的なやり方の一つではないかなと思っています。 では、そのマニュアルですが、ゼロからつくるのはかなり難しいというか、しんどいです。 初心者でも分かるものをつくるところから始めたい。

これは、引継書をつくる時期ではなく、年間をかけてつくることができます。

誰が見ても分かる引継書

私は気づいてしまいました。ものすごく参考にしたい業務手順書の存在を。 一つは滋賀県湖南市、もう一つは静岡県伊東市です。 ”業務手順書”でググってみるとヒットします。ほかにもあるかもしれませんが、業務手順書を公開していることがすごいと感じると同時に、ピンときました。 TTPするぞ! 

※TTP=徹底的にパクる(Tettei Tekini Pakuru)の省略形。

この業務手順書が、すごいと思うのは、法的根拠や関連する部署とのやりとり、そしてどこに保管するかまで示しています。一つひとつのオペレーションの詳細をどうするかというのはまた別の話にはなってきますが、初心者が一眼見た瞬間にイメージが湧く、素晴らしい手順書だと思います。

さらに決裁区分も書いてあったりするパターンもあり、迷いが減ります。判断するときに調べごとする時間が大幅に減るような気がしてなりません。そう思った私は、早速手順書のひな型を作成しました。

引継書作成の目的

部下は通常業務で忙しそうだったので、私が担当時代の頃を思い出して作成してみました。 成果物を部下に見せてみると、「え?こんな風に見える化できるんですね!」とつくった業務手順書と実態に乖離(かいり)はなかったようです。

スケジュール管理についても、毎年定例的なイベントがある場合(税の申告に始まる課税事務スケジュールや児童手当の現況届や国庫補助金の申請前準備・実態聞き取りなど)、どの時期にどの順番でやっていくかを箇条書きとチェックボックスで管理する場合があります。

いわゆるToDoリストです。私はこのToDoリストにカレンダーを組み合わせています。いわゆるガントチャートです。 ガントチャートはどうしても横長になりがちで、見にくくなってしまいがちですが、それでもやっぱり便利です。

カレンダーで●月●日のこの時点でXXな状態になっていることができているかどうかで進捗状態が確認できますし、想定通りであればペースを乱さないように続けるし、早ければ、お休みを入れ、ブラッシュアップをすることもできます。 

ガントチャートはExcelでつくり、そのままExcelファイルで管理。いちいちファイルを開くのは面倒かもしれませんが、カレンダーの項目の日付ごとにコメントを入れることができるので、 チェック項目があればより強化できます。

実際にやってみて、うまくいったことや時間がかかってしまったことや、うまくいかなかったことの分析もそのファイルにどんどん入力。紙に印刷して書いていってもいいとも思いますが、それをまた全体のデータに反映させるためには少し手間がかかってしまいます。

やり方はいろいろとあると思いますが、引き継ぎのために実績を残すこと前提で考えると、データ管理でやっていくことがいいのではないかと思っているところです。

業務手順書は全体把握、ガントチャートは詳細の確認。 この両輪をまわしていくことで、業務がどれだけスムーズになるか。そして、ブラッシュアップさせながら、毎年毎年引き継いでいく。これが引継書のつくり方の実践ではないだろうかと私は思います。
 


プロフィール

ひろなか さん

とある市役所の係長。平成17年入庁。企業会計の財務担当をはじめ、スポーツイベント担当、税務課市民税担当、児童福祉担当、給付金担当を歴任。令和4年度からは企業会計部門に再度配属され、DXを担う。Twitter(@16naka_show)では公務員のホンネと役所のあるあるをゆるく発信している。

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