ジチタイワークス

いつ引継書をつくり始める?作成のポイントは?

本年度も早いもので、気づけば3月下旬。この時期、多くの公務員が「人事異動」について考えるのではないだろうか。多種多様な仕事がある自治体現場での人事異動は、しばしば「転職」と称されるほど。これまでの経験が活かせず途方に暮れるといった話を耳にすることも多い。

そこで、ジチタイワークスでは『自治体シゴトのテキスト』という企画をスタート。
少しでも皆さんの支えとなるよう、多種多様な自治体業務について、その業務に精通している方にやりがいや魅力、仕事のポイントについて紹介いただく。

今回は特別企画として、新年度を迎えるにあたり、部署異動の人も課内移動の人も必要となる引継書作成についてご紹介。ご登場いただくのは、とある市役所の係長ひろなかさん。入庁してから17年のひろなかさんは、これまで何度も異動を経験されいくつもの引継書を作成されてきた。経験を踏まえて具体的な作成のポイントやノウハウを教えたいただく。
 

【自治体シゴトのテキスト、「引継書作成」を学ぶ】

(1) 基礎編|いつ引継書をつくり始める?作成のポイントは? ←今回はココ
(2) 実践編|一目でわかる引継書作成のコツとは?

※著者の所属先及び役職等は2022年3月公開日時点のものです。
※各記事の掲載情報は公開日時点のものです。

引継書をつくり始めるタイミング

皆さん、引継書をつくり始めるタイミングはいつですか?3月になってから、人事異動の発表があって、自分自身の部署異動が分かってから初めて着手する人も少なくはないと思います。それも間違いではないです。 かつて私もそうでした。

というのも、それまで自分の目の前の仕事が手一杯すぎて、そもそもマニュアルの整備もうまくできていない状態。慌てて作成した引継書のクオリティーはものすごく低くて、新年度に入ってからほぼ1年間、後任者からひっきりなしに電話があったことを記憶しています。 そんな過去の失敗から、近年は遅くても2月に入ったら引継書の着手をするようになりました。

早すぎない?という声も聞きますし、実際にその時期からつくり始める光景を毎年のようにやっていますので、「ひろなかさん、今年も異動するつもりで始めちゃいましたね。」と言われています。 なぜ遅くても2月かというと、新年度の予算について審議する3月議会の準備で様々な説明資料をつくるのに、並行して実務としてどういった形で進めていくか考えるのにちょうど良い時期だからです。

議会では事業の詳細までは幹部が説明するわけではないけれど、まず実働部隊の私たちがどういったスタンスでその事業に取り組むかは、議会での説明にとても大きく影響します。 そのために、引継書の着手のタイミングとしては遅くても2月上旬ではないかなと考えています もし仮に次年度も引き続き同じ業務に携わるとしても、業務のブラッシュアップという面では必ず役に立つので、早めに着手したとしても損はありません

引継書に記載する4つのポイント

では、引継書では記載していくのは以下の4点です。
・年間スケジュール
・業務概要
・制度改正の対応や運用変更の内容
・書類の保管場所

年間スケジュールは引継ぎの全体把握という上では最重要ではないかと思います。 定型的な業務をこなす部署でも、大きなイベントがある部署でも、いろんなことを並行していく部署も、年間でいつ何があるか(あったか)を年間スケジュールという大きなものにまとめておく。 担当業務として、何をするのか、隣の席の人に何を協力してもらうのか、細かいことは年間スケジュールには書きません。 補助金の申請、実績報告、契約、精算、受付、発送、といったことで良いので、各月のやることに落とし込んでいってみましょう。

業務概要は年間スケジュールをつくりながらでも、その前後でもどちらでも良いですが、ついつい細かいところまで書きたくなってしまいます。細かいところの説明については別途業務マニュアルや詳細スケジュールをつくっていると思いますので、ブラッシュアップする形で残しておく。業務概要の中では、”◯◯処理期間の詳しい方法は□□フォルダの▲▲ファイルにあります。”といった具合に記す。

実は、業務概要については文章で長々と書くと読みづらいので、エクセルでつくった表にまとめておくようなやり方がオススメです。

そのときにファイルの保管場所も示しておく。 基本は、いつ何をやるのか、そしてどこに何があるか。これだけでもしっかり残しておく と次の担当者の負担がかなり減ります。とはいっても、全てを完璧に引継書で済ますことは難しいです。ここで一つ大きなポイントは、この引き継ぎをご自身と次の担当だけに済まさないこと。まわりの職員や係長などのグループのリーダーまたは管理職とも共有しておくこと。普段の業務と同じで、まわりとの共有をしておくと、漏れが減ります。 基礎的なことなので、「こんなことは分かっているよ。」という方も少なくはないと思います。

まだこれからだなと思う方もいらっしゃると思いますので、新年度からの業務の参考になれば幸いです。


プロフィール

ひろなか さん

とある市役所の係長。平成17年入庁。企業会計の財務担当をはじめ、スポーツイベント担当、税務課市民税担当、児童福祉担当、給付金担当を歴任。令和4年度からは企業会計部門に再度配属され、DXを担う。

このページをシェアする
  1. TOP
  2. いつ引継書をつくり始める?作成のポイントは?