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どんな部署でも自分は活かせる!異動に左右されない”強み”の見つけ方・活かし方【前編】

何かと気忙しい年度末は、多くの公務員にとって気がかりな異動の時期でもある。新天地への異動に心躍らせる人がいる一方、想定外の異動にやりきれない気持ちを抱える人もいることだろう。 そもそも、公務員にはなぜ異動がつきものなのか。異動はどのようにして決まるのか…異動についてはブラックボックスになっていることも多い。そこで本特集では、異動を知り、異動を力にするための記事を公開していく。

今回は、元・武蔵野市職員で、現在は独立しコーチング、ストレングスコーチングをベースとした能力開発の支援を行う齋藤綾治さんにインタビュー。異動に左右されない、「公務員の強みの見つけ方・磨き方」について聞いてきた。

【公務員の「異動大全」】

(1)異動でモヤモヤ…ありますか?全国の公務員にアンケート!
(2)人事担当者に聞く、「異動の実態」【前編】
(3)人事担当者に聞く、「異動の実態」【後編】
(4)どんな部署でも自分は活かせる!異動に左右されない”強み”の見つけ方・活かし方【前編】←今回はココ
(5)どんな部署でも自分は活かせる!異動に左右されない”強み”の見つけ方・活かし方【後編】

公務員にとっての”強み”とは何か

ーー 公務員は数年単位で異動するため、キャリアの積み上げが難しいという声をよく聞きます。そんな公務員が「強みを生かす」と言われてもピンとこない人もいるかもしれません。そもそも公務員にとっての”強み”とは何でしょうか?

齋藤綾治さん(以下、敬称略) 強みには二つの軸があると思います。1つは公務員のみならず、どんな仕事においても普遍的に通用する社会人としての強みを伸ばすこと。もう1つが、公務員だからこそ伸ばせる強みを磨くことです。
前者はコミュニケーション力やマネジメント力、あるいは国家資格やこれまでの経歴といったものが挙げられますが、まずは後者にフォーカスしてお答えしますね。
私自身が元公務員であり、退職後に独立してあらためて気が付いたことなのですが、公務員として働く中で伸ばせる強み、その最たるものが「聞く・対話する・合意する」という力です。
今の時代、多数決で決められる仕事はほとんどありません。1人ひとりの声に耳を傾けることが重要視されているため、政策決定プロセスの過程でいろんな意見を聞くことになるんですね。多くの意見を聞いて、その中から最適解を考え、一つの方向性にまとめ上げていくっていうのは、これは公務員に特に求められる力です。

ーー つまり、「聞く・対話する・合意する」という力があれば、それが公務員としての強みになると?

齋藤 そうです。この3つがないと、どこの部署に配属され何の仕事をやるとしても、やっぱり苦労するのではないでしょうか。
国家資格のような秀でた専門性をもっていたりとか、他の人が持っていないようなレアなスキルがあったとしても、結局公務員の仕事は人と人との間の中で行われていくので、相手の意見を聞く、合意を形成していく、必要に応じて適宜改善していくというアクションがないと、仕事はうまくいかないことが多いのです。

もちろんこれらの力は対外的にも通用します。仮に将来、公務員を辞めて他の仕事に就いたときでも、十分に活かせる強みです

ーー 「聞く・対話する・合意する」の3つをバランスよく強みにしていくことが大事なのですね

齋藤 どれか一つだけ、例えば「聞く」だけが強みだとしたら少し厳しいと思います。というのも、公務員は強い意見を受けることも多く、強い意見を聞く一方だと、ある意味サンドバッグのようになってしまいます。聞いて、聞いて、聞いて、その結果疲弊してしまう。住民対応を行う部署であれば日常的に経験することでもあるので、聞くことに苦手意識を持っている職員もいるかもしれません。
ここで「対話する・合意する」という力も一緒に身につけておけば、一方的に聞くだけではなく、もっとアクティブに聞いて、そして合意を図っていくということができるようになるのです。

ーー では、こういった強みはどのようにして鍛えていけばよいのでしょうか?

齋藤 私自身はコーチングを学んで鍛えていきました。ほかにもいろいろあると思います。ファシリテーションを学んでみるのもいいでしょうし、アサーティブコミュニケーションを学んでみることも役立つでしょう。広く捉えれば「対話力を上げる」ことになりますので、自分の興味ある方法を探して、学んでみるのがいいと思います。

他にも強みを活かした仕事をしたい場合は?

ーー 公務員として磨ける強み以外にも、個人としての、自分ならではの強みを磨きたい人もいると思います。ただ、異動が頻繁にある以上、自分の強みを磨くことが難しいと考える人もいそうです。


齋藤 そうですね。例えば、長年人事を経験し、人事については高度な専門性を持っていた人が、全く違う部署に異動になってしまったら、今までの強みが全部なくなってしまうように感じる。こういう場面はよくあることかもしれません。
ただ私は、そう考えている人に対して、「本当にあなたは人事という仕事にしか強みはないのでしょうか?」と問いかけたいです。もっと新しい力を身につけて自分の幅を広げられるはずですし、違う分野に行っても、今まで培ったスキルを活かせる場面だって必ずあります。もっと自分を信じ、自分の可能性をよく見てあげてほしいと思います。

異動直後の無力感は、誰しもが感じることがあると思います。でもその無力感をよく見てみると、実は強みやキャリアの話ではなくて、異動について、または新しい仕事に対する「不安」や「不満」に理由がある場合が多いのです。
異動に伴う「不安」を減らすことはできますし、「不満」はなくすことが可能です。

ーー どうすればよいのでしょう。

齋藤 ここでの不安や不満には「見えないもの」と「見ていないもの」があります。ですので、まずは「見えないもの」にとらわれず、「見てないもの」をしっかり見てあげることが大事です。例えば「組織は自分のことをどう見ているのか」「人事は何を考えて異動辞令を出したのか」「私の評価はどうなのか」などは気になることではありますが、これは多くの場合、「見えないもの」です。そこに意識を向けても、あまり意味がないだろうなと私は思っています。特に異動の理由なんてその最たるものです。

ただ、公務員には広い視野が求められることを忘れないでほしいということは伝えておきます。公務員の仕事は広い視野で判断をして、まちづくりや住民サービスを行い、地域を未来につなげていくものです。例えば福祉畑の人が、福祉の視点だけで政策を考え予算要求を出したとしても、全体の優先順位を見ていなければそれは通りません。環境の視点から見たらどうだろうかとか、あるいは児童福祉や教育の部門で実は似たようなことやっているかもしれないとか。そういう視野の広さがないと、公務員としての判断力としてはやっぱり弱いんですよね。

こう考えたときに、もし自分が全く異なる分野に異動になったのだとしたら、むしろ期待されているのかもしれないのです。私自身あっちこっちの部署を経験しましたが、全く違う分野を複数経験させてもらえるのは、公務員のキャリアを考える上でもプラスに作用することが多かった実感があります。
いずれにしても、組織が一人ひとりの職員に向けてメッセージを発信することはないですから、もうここは気にしてもしょうがないと、ある程度の割り切りが必要だと思います。

ーー では、「見てないもの」とは何でしょうか。

齋藤 それは「自分自身」です。公務員に限らず、どんな仕事でも同じですが、強みを磨く前に、まずは自分自身のことを理解していないと始まりません。自分が理解できなければ結局他者も理解できないし、そもそも自分を活かすことなどできないのです。

強みというと、資格や実績のように自分の外側に装着していくものをイメージする人も多いのですが、外側ばかりを固めても強みにはなりません。内側、つまり自分の内面にある特性を磨くことこそが本当の強みになるのです。外側に強みを追い求めてさまようのか、内側に強みを見つけて自分軸を磨くのか。どちらに向かうのかによって、ここから先に見える世界は大きく異なってしまうでしょう。

自分を理解するには色々な方法があると思います。コーチングのように専門家を活用するのもいいし、自己理解のツールも様々なものがあります。私の著書でも、「行動・事実」「感情・思い」「思考・理解」の3種類の視点に分けて、強みを解説しています。診断のためのチェックリストもあるので、こういったツールを使って、自分と向き合う機会をつくってみるのもよいのではないでしょうか。

自分の強みを見つけ出すための「3つの視点」 

※出典:齋藤綾治「公務員の『強み』の活かし方」(学陽書房)

■「行動・事実」の視点を持つ人の特徴

「行動・事実」の視点を多く持つ人は、仕事を具体的な行動に落とし込んで実行していくことに強みがあります。

□自分のやるべきことが明確になるとエンジンがかかる
□抽象的な話よりも、できるだけ具体的な話を好む
□やり方や理由にこだわるより、きちんと終わらせることを重視する
□暇なときより、やることが手元にあるときのほうが活き活きする
□常にプライベートよりも仕事を重視しがちだ
□確実に責任を果たしたい。だから自分の業務範囲をはっきりさせたい
□目標を立てて達成していくことが快適
□質にこだわるより、次々完了して量を処理していく方が得意
□考えて立ち止まるよりも、実際にやってみて修正をかけていくほうを好む
□仕事をより好みしない。楽しさやうれしさ、やる気で判断をしない
□気持ちの浮き沈みがあっても仕事の手は休めない
□資料作成、会議、説明会等を確実に完了することを重視する
□不透明な未来の構想よりも、現実にある目の前の課題解決を優先する
□理屈にはこだわらない。むしろ理屈ばかりを議論することに価値を感じない

 ■「行動・事実」の視点を持つ人の強み

・一時の感情に左右されず、具体的な業務に集中し続けることができる
・自ら行動を起こし、業務を完了させる力に優れている
・現実的・具体的に仕事を前に進ませていくことができる
・業務への責任感が強く、困難があってもやり抜く意志の強さがある
・話し合いを曖昧なままに終わらせず、実際に何をやるのかもだと決めていく力を持っている


■感情・想いの視点を持つ人の強み

「感情・想い」の視点が強い人は、一緒に働く人や、業務の先に存在する人の「心」を大切にします。

□自分のためよりも、誰かのためと思うことでエネルギーが湧いてくる
□自分一人よりも、仲間とともに成果を出して気持ちを分かち合いたい
□仕事の中身より、一緒に取り組む仲間のモチベーションに関心が向く
□上司や職場の仲間取り返し空いていることが頑張りにつながる
□誰にとって価値や意味があるのかを実感できる仕事がしたい
□職場内がギスギスしていると影響を受け、気持ちが疲れてしまう
□用件と同じかそれ以上にあいさつ・気遣いの言葉を大切にする
□感謝の言葉に喜び、文句や苦情の言葉にエネルギーを吸い取られる
□自分の意見を押し通すよりも、人の意見を聞いて尊重する方を選ぶ
□業務ばかりが優先され、人の気持ちが後回しにされると疲弊する
□仲間の苦労や気落ちしている姿を見過ごさずに声を掛け、応援する
□優しさを大切にし、人の悩みを親身になって受け止める
□対話を重視する。正しさの追求よりもみんなの合意を大切にする
□頼まれた仕事を優先し、つい自分の仕事を後回しにしてしまう
□後輩や部下を育てることに大きなやりがいを感じている

 ■「感情・想い」の視点を持つ人の強み

・職場の潤滑油となって、チーム力を上げていくことができる
・住民の困り事にいち早く気づき、支援する力に優れている
・相手を受容しながら、合意形成していく力がある
・何よりも人を大切にし、人のために頑張ることができる
・誰のための仕事なのかの視点を持って、仕事の良し悪しを判断できる

 

■思考・理解の視点を持つ人の強み

「思考・理解」の視点が強い人は、考える時間を大切にします。理解を深め、業務を俯瞰しながら、相手を生み出したり、仕組みをつくったりしてくことに強みを発揮します

□考えることを大切にしている。ちゃんと考えてから行動したい
□そもそも何のためにやるのか、そこを知り納得してから動きたい
□抽象的な話も得意。目指す方向を議論することや、方針や理念を決めることを大切にする
□全体を把握したい、俯瞰しながら物事を判断したい気持ちが強い
□アイデアを自由に話せる環境があると活き活きする
□新しい仕組みを考えたり、工夫を凝らしたりすることが得意
□業務の効率化を好み、改善に注力することにやる気が出る
□調べたり学んだりすることを面倒くさがらず、むしろ楽しめるほうだ
□誰が言ったかではなく、ちゃんと根拠を持って判断したい
□指示や提案の際には、結論だけではなく経緯や理由も知りたい
□データや数値に強く、資料を整理したりまとめたりするのが得意
□事前に資料に目を通し、先に考えをまとめてから議論する方が快適
□情報を大切にし、背景や類似案件、参考データなどを重視する
□リスクに敏感。見通しが立たないまま始めることにはちゅうちょする
□質を求め、妥協せずに自分のこだわりを追求する

■「思考・理解」の視点を持つ人の強み

・仕事の効率化や仕組み化を進めていくことが得意
・抽象的に物事を捉え、本質的な解決策を見出す力に優れている
・情報や知識を収集し、整理する力に優れている
・根拠と理由をしっかり押さえながら仕事を進めていくことができる
・過去・現在・未来など、見方を変えながら多角的に検討し、新しいアイデアを考え出す力に優れている。

※この記事は前後編の前編です。後編は近日公開!


齋藤 綾治(さいとう・りょうじ)

1971年生まれ。東京都武蔵野市に入庁し、総合政策、財政、福祉、スポーツ、コミュニティ、文化、教育、保育など様々な部署を経験後、武蔵野市を離れ独立。コーチング、ストレングスコーチングをベースとして一人ひとりの強みを活かす能力開発を支援している。著書に『自分らしさを見つけて伸ばす 公務員の「強み」の活かし方』(学陽書房)がある。

オフィシャルサイトはコチラ

※2022年5月18日新著発売予定!(予約受付中)
『後輩・部下の育て方、関わり方 公務員の新・育成術~思考力・判断力を伸ばす7つの着眼点と実践』(公職研)
 

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