公開日:

【セミナーレポート】形だけのデジタル化から脱却!住民も職員も楽になるフロントヤード改革【DAY1】

情報政策
読了まで:16分
【セミナーレポート】形だけのデジタル化から脱却!住民も職員も楽になるフロントヤード改革【DAY1】

オンライン申請や書かない窓口など、住民の利便性向上を目指して導入したはずの施策が、申請データの再入力や紙運用の併用により、かえって現場職員の負担を増やしてしまうといった経験はありませんか。その原因の多くは、窓口と庁内処理が分断されたまま、改善が部分最適にとどまっていることにあります。

そこで、本セミナーではフロントヤードの整備からバックヤードの見直しまで、各フェーズに応じた実践事例をご紹介。庁内業務の改善を通じて、職員の余力を生み出すヒントをお届けしました。

概要

■テーマ:形だけのデジタル化から脱却!住民も職員も楽になるフロントヤード改革
■実施日:令和8年8月19日(水)
■参加費:無料
■申込者数:155人

住民が広報を担う!?子育て手続きデジタル化の認知戦略

最初に話を伺ったのは、三重県明和町の中谷嘉宏さん。デジタル化の認知戦略に向けて、住民に広めてもらうよう発想を転換したところ、なんと申請ポータルへのアクセスが前週比1.74倍に。住民を巻き込んだ戦略を詳しく伺いました。

プロフィール画像

【講師】

中谷 嘉宏 さん
三重県 明和町
まちづくり戦略課 DX推進係 主幹兼係長

令和2年に明和町へ入庁。総務防災課で主に情報業務を担当した後、まちづくり戦略課DX推進係へ。令和6年度には総務省フロントヤード改革モデルプロジェクトを担当。子育てDXアンバサダー制度の導入など、住民起点のデジタル化に取り組んでいる。

効果が大きい手続きに絞る

明和町は三重県のほぼ中央、伊勢湾に面する人口約2.2万人の町です。高齢化や人口減少が進む中、2040年を見据えると、自治体職員を含む働き手が減っても行政サービスを維持していかなければなりません。そこで総務省のフロントヤード改革モデル事業を機に、特に負担の大きい子育て世代の行政手続きのデジタル化に取り組みました。

ただ、私たちが当初から懸念していたのが、仕組みを作っても使われないのではないかということでした。職員は日々の業務に追われ、広報に十分な人手を割けません。人事異動でノウハウも蓄積しにくく、そもそも広報やマーケティングを専門的に学ぶ機会も多くありません。DXは「作る」より「使ってもらう」方が難しいと実感しました。

この当たり前のようで見落とされがちな事実を、身をもって理解したところが出発点となりました。良いものを作れば自然と使われるはず。その思い込みを一度捨てることにしたのです。そこで、妊娠から入園までの一連の流れを踏まえ、子育て世代に必要な18の手続きを選定し、すべてのデジタル完結を目指しましたが、制度上の制約などもあり、実際にデジタルで完結できたのは9手続きでした。

全てをデジタル化するのではなく、「小さな子どもを連れて役場に行くのが大変」「手続きのために平日に休むのがつらい」といった住民へのインタビューを起点に、本当に負担軽減につながるものを選びました。

一方、面談での来庁が制度上必要なものや、マイナンバー取得が絡むもの、法制度上デジタル申請ができないものもあります。自治体だけでは越えられない壁がある以上、できないことに時間を費やすより、今できる範囲で住民の体験をより良くする。その割り切りが前進につながりました。

住民を「広報の担い手」に

次に考えたのが、どうすればサービスを知ってもらえるかです。職員に広報のリソースやノウハウが足りないなら、役所だけで抱え込まなくてもいいと考えた私たち。そこで生まれたのが「子育てDXアンバサダー」です。

実際に子育て中の住民4名にアンバサダーをお願いし、サービスの周知だけでなく、使ってみた感想や改善の意見もいただきました。アンバサダー会議では、どんな伝え方が届きやすいかを職員と一緒に話し合っています。同じ子育て世代の目線や言葉だからこそ、行政からの一方的なお知らせとは違う形で情報が届くと感じています。

もちろん、アンバサダーの方々だけに頼ったわけではありません。住民の心の動きを「認知」「共感」「利用」「満足」という4つの段階で捉え、それぞれに合わせて様々な広報を設計しました。例えば子育て支援センターや図書館でのポスター掲示、公式LINEやInstagram、保育園の連絡アプリなども組み合わせ、生活動線の中で自然に情報に触れられるような工夫です。民間企業とも連携し、足りない広報ノウハウを補いながら、町の中にも蓄積しています。

やった気にならないためにはデータで数字を確かめることも大切です。例えば、町の公式LINEでサービスを広報した週の数字を確認すると、申請ポータルへのアクセスが前週比1.74倍になったことが分かっています。このように一つひとつのデータを確認しながらどの媒体が効果的かを見極め、改善を重ねています。

変えるのは仕組みだけではない

私たちが最終的に目指しているのは、住民と職員双方の「当たり前」を変えることです。住民には「役所の手続きは役所に行くもの」から「デジタルでもできる」へ。職員には「これまで通りでいい」から「人数が減っても工夫すればサービスを良くできる」へ。長年の習慣は、一度の広報では変わりません。だからこそ、住民とのコミュニケーションを地道に続け、信頼を積み重ねていく必要があります。

限られた人員やノウハウの中でも、視点を変えればできることはあります。私たちの試行錯誤が、皆さんの自治体でフロントヤード改革を進めるヒントになれば幸いです。

読む・作る・伝える...その悩み、AIで解決!

次に話を伺ったのは、アドビ株式会社の鷹木信之さん。職員の多くが悩みを抱える「住民への情報発信方法」や「庁内の文書業務を効率化する方法」、「気になるAIの安全性」について詳しく解説していただきました。

プロフィール画像

【講師】

鷹木 信之 さん
アドビ株式会社
デジタルメディア事業統括本部 エンタープライズ第一営業部
官公庁担当 シニアアカウントエグゼクティブ

日本電気株式会社、株式会社セールスフォースジャパンにて、官公庁に対する営業活動に従事し、2024年アドビ入社。アドビ株式会社においても、官公庁マーケット向けの営業活動に従事。

多様化する情報発信を無理なく続けるには

オンライン申請などの仕組みを整えても、住民に知られなければ利用にはつながりません。そのため、チラシやポスターに加えて、SNSやWEBなど様々な媒体を使った情報発信が求められています。

一方、それらを全て制作会社に依頼すると、コストだけでなく納品や修正にも時間がかかります。では職員が内製すればよいかというと、デザインの専門知識がない中で一から制作するのは大きな負担です。さらに、ロゴや配色が統一されず、自治体としてのブランドイメージを損なわないかという懸念もあります。

こうした課題に対し、アドビの「Adobe Express」では、あらかじめ用意されたテンプレートをもとにテキストや画像を差し替えて制作物を作成できます。ロゴや配色も統一でき、チラシをSNS向けの画像サイズへ変換することも可能です。これまで外注していた広報物の一部を職員自身で作れるようになれば、情報を届けるまでの時間を短縮しながら、外注費の削減にもつなげられます。

「読む・探す・作る」にかかる時間を減らす

もう1つ、自治体業務と切り離せないのが文書です。長い要綱や規程を読み、複数の資料から必要な情報を探し、それらを整理して新たな資料を作る。一つひとつは日常的な作業でも、積み重なると大きな工数になります。

そこで活用できるのが生成AIです。関連する文書を読み込ませて質問すれば、要点の整理や複数文書の情報集約ができます。また、必要な情報を一つひとつ探す手間を減らしたり、資料の構成案を考えたりする際にも活用できます。文書を「読む・探す・作る」一連の作業を効率化することで、職員が本来取り組むべき業務に時間を振り向けやすくなると考えています。

行政で生成AIを使うために

一方、AI利用に関して「本当にクラウド型の生成AIを使って大丈夫なのか」という心配を抱える自治体は多いと思います。そこで、AI導入を検討する上で特に押さえておかなければならないポイントを3つご紹介します。

1つ目は「学習利用への制限」。入力したデータがAIモデルの学習に利用されない仕組みになっているかどうかといった点です。2つ目は、AIが誤った回答をする「ハルシネーション」への対策です。回答の根拠を確認でき、ファクトチェックをしやすい仕組みがあるかどうかが重要になります。そして3つ目が、データセキュリティや管理者によるコントロールなど、組織で利用するための管理機能です。

そして、これらを解消できるソリューションが、弊社の「Acrobat Studio」です。

Acrobat Studioは、従来のPDFの編集・管理ソフト「Acrobat Pro」に、AIアシスタント機能と、デザインツール「Adobe Express」を1つにまとめた製品です。「Acrobat AIアシスタント」では、文書の要約や分析、複数文書の比較・集約ができます。

特徴の1つが、AIの回答から根拠となった文書内の箇所へ移動できることです。回答だけを受け取るのではなく、元の文章をすぐに確認できるため、ファクトチェックの負担軽減にもつながります。また「Adobe Express」には生成AI「Adobe Firefly」も組み込まれており、画像や動画の生成、画像編集などにも活用できます。

特別なシステムを構築せず、日々の文書業務や広報業務の中にAIを取り入れる選択肢の1つとして、ぜひ興味を持っていただけますと幸いです。

【参加者とのQ&A(※一部抜粋)】

Q:文書の作成、決裁において生成AIの活用例を教えてください。

A:まずAcrobat AIアシスタントに関しましては、1つの文書だけではなく最大100ファイルまで同時にアップロードして横断的に解析するといったことが可能です。例えば作成途中のNDAとガイドラインをそれぞれ読み込ませ、そのNDAがガイドラインに適合しているかといった点を確認することもできます。

自治体DX最前線!AI電話で業務削減を実現

続いて登壇したのは、株式会社イグアスの五十川雄三さん。自治体の窓口・電話業務を効率化する具体的な方法について、現場の業務フローを大きく変えずに導入できるポイントなどを解説していただきました。

プロフィール画像

【講師】

五十川 雄三 さん
株式会社イグアス
パートナービジネス事業部 営業統括本部 ソリューション営業部 部長

20年以上、営業として民間企業の業務改善とIT活用を支援。現在は株式会社イグアスでAIを活用し、カケデルシリーズ AI受付君・AI架電君など自治体業務の負担軽減とDX推進に取り組んでいる。

電話応対自動化ツール「AI受付君」

庁内にかかってくる代表電話のうち「担当課が分からない」という理由での取り次ぎ依頼は、どれくらいの割合を占めていると思われますか。同じような問い合わせがあって何度も同じ説明を繰り返す、繁忙期には電話が鳴り止まないなど、電話が集中する時間帯は業務の手を止めなければいけなくなり、大きな負担になっていると思います。その解決策となるのが「AI受付君」「AI架電君」です。

「AI受付君」は、職員に代わって電話の一次受付をする仕組みです。電話をかけてきた方の発言から、登録済みのキーワードや類義語、前後の文脈などをAIが判断し、適切な担当者や部署を特定して自動で転送します。従来型のIVRのように番号を選択してもらうのではなく、AIが発言内容を認識し、会話しながら用件を把握するのが特徴です。転送先につながらなかった場合には、SMSやメールで伝言を残すことも可能。営業電話と判断した場合は、その場で断るところまで自動で対応します。

また、FAQ機能では、住民から寄せられる定型的な問い合わせへの回答を自動化。AIが電話で用件を聞き取り、FAQデータベースからキーワードや類義語などをもとに適切な回答を探して案内する仕組みです。もちろん、AIが答えられない場合は担当者へ転送します。日々の質問と回答はテキストログとして残るため、AIが答えられなかった内容を確認し、FAQへ追加することもできます。

電話をかける業務は「AI架電君」におまかせ

「AI架電君」は、人手で行っていた電話業務をAI音声ロボットが代行する自動架電ソリューションです。例えば税金催促機能では、対象者のリストをアップロードすると、AIが順次電話をかけます。会話の中で納付の意思や支払い期日、金額の認識状況などを確認し、その内容をテキストで記録。電話がつながらなかった場合にはSMSを送り、通知漏れを防ぐこともできます。

架電結果や支払い予定日などは日報として自動作成されるため、1件ずつ結果を記録する必要もありません。支払い拒否や複雑な相談などがあれば、担当者へ引き継ぐこともできます。

これは、健診の受診勧奨にも利用できます。例えば、対象者へAIが順次電話をかけ、健診内容や申し込み期日を案内。申し込み希望、見送り、申し込み済みといった回答も自動で聞き取り、分類します。応答がなければSMSを送信し、架電結果や申し込み状況は日報で確認できます。こうした定型的な案内や結果の記録をAIに任せることで、職員は個別の対応が必要なケースに時間を使いやすくなるのです。

これらの機能に共通しているのは、AIだけで全てを完結させようとしていないことです。FAQで回答できない問い合わせや、納付に関する複雑な相談など、AIでの判断が難しいものは人へ引き継ぎます。定型的な対応はAIに任せ、人の判断が必要な場面では職員が対応する。この役割分担によって、住民への対応を続けながら電話業務の負担を減らせると考えています。また「AI受付君」と「AI架電君」はLGWANとも連携しており、自治体業務での利用を想定しています。

さらに、機能はそれぞれテンプレート化しており、必要なものを選んで導入できます。例えば受付機能だけから始めるといったスモールスタートも可能です。

導入期間はおおむね3カ月で、要件定義やシナリオ作成、環境構築、テストを経て本番稼働へ進みます。今回はお試しデモの電話番号もご用意させていただきました。ぜひ、お気軽にお電話してみてください。

住民満足度9.34点(10点満点中)のフロントヤード改革はなぜ実現できたか?

次に登壇したのは、山形県酒田市の渡部一朗さん。来庁から手続き完了までの時間を21分短縮し、「書かない窓口」を実現した酒田市。その背景にある工夫や今後の課題まで、本音で伝えていただきました。

プロフィール画像

【講師】

渡部 一朗 さん
山形県 酒田市
デジタル戦略課 課長

1994(平成6)年、酒田市役所入庁。これまで、福祉課、情報システム課、教育委員会、管財課、まちづくり推進課、納税課、酒田地区広域行政組合事務局を経験。令和7年4月にDX推進部門へ異動となり、令和8年4月から組織改編により現職。

職員自身が窓口を体験して課題を見える化

酒田市では平成30年の新庁舎建設時にもワンストップ窓口を検討しましたが、実現したのは同じフロア内を移動して手続きする「ワンフロアストップ」のみでした。市民が複数の窓口を回る状況は残っていたのです。

そこで改革にあたり、「職員による窓口体験」「業務フロー全体の可視化」「オンライン申請の離脱率分析」という3つの方法で課題を洗い出しました。

実際に職員が市民と同じように手続きを体験すると、6つの窓口を回り、19枚の書類を書き、そのたびに本人確認を求められることが分かりました。これでは想定していた時間内には手続きも終わりません。

さらに、おくやみ手続きの業務フローをつなげてみると、同じ書類を複数の職員がコピーして入力する、各課で死亡確認を繰り返す、市民課で説明したことを別の窓口でも説明するといった重複も見えてきました。中には、入力したExcelのデータがシステムに活用されていなかったり、何に使っているか分からない項目が残っていたりするケースもあったのです。

オンライン申請は、令和5年度は7,871アクセスに対して申請完了が2,993件、完了率は38%でした。紙の申請書をそのままオンラインに移しただけでは、使いやすいサービスにはならない。この分析からも、市民と職員の双方に課題があることが分かりました。

「10割」ではなく「7割カバー」で改革を動かす

そこで、改革を進める上で大切にしたのが「7割カバー」という考え方です。全てのケースに対応しようとすると、年に数件しかないような例外までフローに組み込むことになり、仕組みが複雑化します。その結果、改革そのものが進まなくなりかねません。そこで、まず7割程度の手続きをカバーできれば進めるという方針を立てました。

具体的には、「事前予約」「必要な手続きの事前確認」「書かない窓口」「ワンストップ化」「RPA・システム連携」「データで受け付ける」という6つの改善を組み合わせました。

例えばおくやみ手続きでは、市民に事前予約をしてもらい、来庁前に必要な手続きを職員が確認します。市がすでに持っている情報は事前に入力し、必要な持ち物もあらかじめ案内。来庁後は1つの窓口で受け付け、各窓口を回らなくても手続きを進められるようにしました。

入力項目も大きく見直しています。改革前は、市民と職員を合わせて420項目を記入・入力していましたが、重複の削除や自動入力、事前入力によって96項目まで削減。さらに、基幹システムへの入力はRPAなどで連携し、紙を受け取ってから再びデータ化するのではなく、最初からデータで受け付けることで、転記作業や入力ミスそのものを減らすことも意識しました。

また、ワーキンググループを作って業務フローを繰り返し検討し、プロトタイプを作って動作の検証まで行っています。実際に動かしてみると見えてきたものも多くありました。

市民満足度は9.34点に向上

こうした改革により、市民満足度は10点満点で8.15点から9.34点へ上昇しました。職員満足度も改善し、予約制にしたことで来庁者が月曜日に集中する傾向も緩和しています。時間面でも、来庁から手続き完了までは47分15秒から26分12秒へ約21分短縮。職員の処理時間は35分06秒から10分となり、約25分減っています。


実際、職員からも「バックヤード業務が目に見えて減った」「経験が浅い職員でもできるようになった」「改善を検討する機会ができた」という声があがっています。一方で、改革はこれで完成ではありません。継続的に改善する体制が十分に機能していないことや、担当者の日常業務との両立、データ分析スキルの不足、一部の窓口への業務集中など、課題も残っていますので、これからも改善を重ねていく所存です。

属人化からの脱却!誰でも、全ての住民に伝わる窓口へ

1日目の最後に登壇したのは、コニカミノルタジャパン株式会社の西原大揮さん。外国語への対応をはじめ、筆談や手話など、多様なコミュニケーション手段が求められている昨今。誰が窓口に立っても伝わる仕組みに変えていくための手法を伺いました。

プロフィール画像

【講師】

西原 大揮 さん
コニカミノルタジャパン株式会社 情報機器マーケティング本部
プロダクトマーケティング統括部 ICW事業推進部
コミュニケーションDX事業推進グループ

コニカミノルタジャパンに入社後、インサイドセールスに従事。2024年より、多言語通訳サービス「KOTOBAL(コトバル)」のブランドおよびマーケティングを担当。

多言語対応が大きな課題に

日本で暮らす在留外国人は令和7年末時点で412.5万人となり、過去最高を更新しました。国籍・地域も196に広がっています。最多の中国籍でも全体の2割強で、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパール、インドネシアなど、多様な国籍の方が生活しています。もはや特定の言語だけを用意すれば対応できる状況ではなく、幅広い言語へ柔軟に対応する力そのものが求められています。

さて、こうした状況の中で窓口対応をする職員には「見えない負担」が積み重なっています。外国人住民が来庁すれば、まず対応できる職員を探す。見つからなければ翻訳アプリを使うものの、行政用語がうまく伝わらない。さらに難しい場合は通訳者の予定を確認し、再来庁をお願いする——。一つひとつは小さな作業でも、積み重なれば職員の時間を奪います。

対応が長引けば他の住民の待ち時間にも影響しますし、語学が得意な職員がその都度、本来の業務を止めて対応することにもなります。課題として表面化していなくても、現場の頑張りによって何とか回しているケースは少なくないのではないでしょうか。そこで目指したいのが、多様な住民に対して「職員の誰が対応しても伝わる窓口」です。

誰でも対応できる窓口へ

そこで活用していただきたいのが、機械通訳・リアルタイムAI通訳と、有人オペレーターによる遠隔通訳を組み合わせた多言語通訳サービス「KOTOBAL」です。簡単な用件確認や手続きの説明にはAIを使い、複雑なヒアリングでは有人通訳へ切り替えることが可能です。日本語の音声筆談にも対応し、オプションで手話通訳も利用できます。

さらに透明ディスプレイと組み合わせれば、画面に視線を落とし続けることなく、住民の表情や様子を確認しながら会話できます。言葉だけでなく、「きちんと伝わっているか」を見ながら案内を進められる点も特徴です。

もう1つ、自治体の窓口で活用しやすいのが「定型文」機能です。例えば転入手続きなど、よく使う説明をあらかじめ登録しておけば、職員はカテゴリから定型文を選び、順番に表示するだけで一連の案内を進められます。職員ごとの説明のばらつきを抑え、経験や語学力に左右されにくい窓口をつくることにつながるのです。実際の自治体でも、様々な使い方が広がっています。

窓口対応の属人化を減らすことは、単なる通訳業務の効率化ではありません。対応できる人を探す時間や待ち時間を減らし、職員が本来の業務に集中できるようにする。そして住民にとっても、必要なときに安心して相談できる窓口をつくることにつながります。

「この人でなければ対応できない」から、「誰でも対応できる」へ。ICTを活用してコミュニケーションの仕組みそのものを見直すことが、住民サービスと職員の働きやすさを同時に改善するフロントヤード改革になると考えています。


お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局
TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works