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関係人口とは?定住・交流人口との違いや自治体の取り組み事例を紹介

人口減少が進む地方圏において、地域づくりの新たな切り札として“関係人口”への注目が集まっている。移住(定住)のハードルの高さや観光(交流)の一過性という課題を打開するため、自治体による戦略的な施策展開が不可欠だ。
本記事では、関係人口の正確な定義や背景をはじめ、創出・拡大に向けた具体的な施策や先進自治体の事例を解説する。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。
関係人口とは
関係人口とは、移住した“定住人口”でもなく、観光に来た“交流人口”でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々と定義されている。
一過性の訪問者ではなく、地域外から多様な視点やスキルを持ち込み、地域課題の解決や活性化に貢献する“地域づくりの新たな担い手”として期待されている存在だ。
交流人口・定住人口との違い
項目 | 関係人口 | 交流人口 | 定住人口 |
|---|---|---|---|
定義 | 地域や地域の人々と多様に関わる人 | 観光やビジネスで一時的に訪れる人 | その地域に居住・移住している人 |
地域との関わり | 応援・貢献・協働・二拠点生活など | 一過性の消費・滞在 | 居住・日常生活 |
地域での役割 | 地域づくりの新たな担い手 | 来訪者・消費主体 | 地域の構成員 |
なぜ今、自治体に関係人口が必要なのか
人口減少下の自治体において、関係人口が必要とされる理由は主に5点に集約される。
- 地域に関わる人の裾野拡大:定住人口増だけに頼る地域づくりの限界を突破する
- 現場の担い手確保:副業人材やボランティアなど、即戦力の人手を確保する
- イノベーション創出:外部視点との掛け合わせで新たな地域資源を掘り起こす
- 移住・多拠点生活のパイプライン:段階的な関わりを経て、将来の定住・二地域居住へつなげる
- 都市部人材の支援意欲の受け皿:副業やテレワークを活用して地域を支援したいという、都市に暮らす人々のニーズに応える
このように、一過性の観光誘致(交流)から一歩踏み出し、地域に関わる人々の役割を“地域づくりの実行力”として組み込むことが、今自治体施策に求められている。
関係人口を増やすには?自治体ができる3つのアプローチ
関係人口創出施策は、対象となる層の“関与度”に応じて、3段階のアプローチで整理できる。
1 ライト層|地域の“ファン”になるきっかけをつくる
まずは地域を知り、関係づくりの第一歩を踏み出してもらうアプローチだ。
- 情報発信と相談窓口:ポータルサイトやSNSでの情報発信に加え、都市部に相談窓口を設置して心理的ハードルを下げる。
- 体験プログラム:農泊や産業体験ツアーのほか、親子向けの「保育園留学」や「デュアルスクール※」など多様な滞在機会を提供する。
- ファンコミュニティ:地域ファンクラブを立ち上げ、住民と都市部住民が気軽に交流できる場をつくる。
※都市部と地方の2つの学校を行き来し、住民票を移さずに双方で学べる仕組み。
2 ミドル層|離れていても“つながり”を維持する
現地に常駐できなくても、遠隔からの支援や定期的な往来を促す仕組みを整える。
- 滞在拠点の整備:お試し住宅(移住体験住宅)やコワーキングスペース、ワーケーション施設を整備する。
- 住まいの確保支援:空き家バンクの運営や改修補助を行い、二地域居住(多拠点生活)の受け入れ基盤をつくる。
- オンラインの活用:定期的なオンライン交流会やデジタル住民票(NFT※など)を活用し、物理的に離れていても接点を保つ。
※ブロックチェーン技術を使い、デジタルデータの唯一性や所有を証明する仕組み。
3 ヘビー層|地域に入り込んで活躍してもらう
専門スキルなどを活かし、地域の課題解決やビジネスに直接参画してもらう。
- 副業・兼業マッチング:都市部人材のスキルと地元企業・NPOのニーズをつなぐ仕組みを構築する。
- 専門コーディネーターの配置:地域おこし協力隊や民間NPOなどを伴走者(コーディネーター)として配置し、外部人材と地元住民との円滑な接続を支援する。
- 中間支援組織の育成:行政だけでなく、官民連携で関わりを継続的に支える民間組織を育成し、連携する。
自治体による関係人口創出の取り組み事例
自治体が関係人口創出のためにどのような施策を実施しているのか、その事例を見ていこう。
和歌山県|しごと暮らし体験
和歌山では、移住に関心はあるものの具体像を描けていない層や、副業で地域に関わりたい層を対象に、県内での生活と仕事を体感できるプログラムを展開している。転職を前提としない「しごと暮らし体験」をはじめ、現地の事業者と連携してリモート副業へつなげる「副業コース」、コワーキングスペースを活用する「テレワーク体験コース」など、関与度に応じて5つのコースを用意。
令和8年8月現在、農業や伝統工芸、ITまで多くの事業所が登録済みだ。1年に3カ所まで参加でき、最大3日間の滞在を通じて地域住民や先輩移住者と深いつながりを育める点が、関係人口の創出や将来的な移住につながる好事例となっている。
奈良県明日香村|あすかオーナー制度
農業の担い手不足や荒廃農地の増加に対し、歴史的景観の保全を目指して「あすかオーナー制度」を推進している。「棚田オーナー」では、年間契約を結んだ都市住民が地域住民の指導のもと田植えや稲刈りを実施。単発の農業体験に終わらせず、年間イベントを通じて繰り返し現地を訪れてもらうことで、地元住民との深い交流と継続的な関係性を育んでいる。
さらに「うまし酒オーナー」や「一本木オーナー」などへ対象を拡大。都市住民を地域の保全活動に巻き込む多角的なアプローチで、耕作放棄地の解消に取り組む。
18自治体|「やわらかな定住」プロジェクト
一過性の観光でも完全移住でもない、家族のライフステージに合わせた「やわらかな定住」を掲げ、全国18自治体が県境を越えて連携する広域プロジェクトが注目を集めている。
「保育園留学」や「ふるさと住民登録」といった具体的な仕組みを共有。単独自治体では解決が難しい課題に対し、広域で知見を持ち寄りながら、都市部住民へ“第3の選択肢”となる新しい暮らし方の提案につなげている。
▼各自治体の取り組み例
- 熊本県天草市:実績ある「保育園留学」を入り口に、「ふるさと住民登録」へつなげることで、来訪者との長期的な関係性を構築。
- 岩手県西和賀町:保育・宿泊・ワークスペースをパッケージ化し、地域での子育て環境を守りながら、都市部との交流を両立。
- 北海道中富良野町:駅前の交流拠点「BASE33」や森林公園を活用し、心身の健康を重視したウェルビーイングな暮らしを提案。
※熊本県天草市「全国18自治体による「やわらかな定住を核とした関係人口創出・二地域居住推進事業」に参画 地域未来交付金を活用」より
※岩手県西和賀町「全国18自治体による「やわらかな定住を核とした関係人口創出・二地域居住推進事業」に参画しました」より
※北海道中富良野町「北海道中富良野町、全国18自治体による「やわらかな定住を核とした関係人口創出・二地域居住推進事業」に参画しました。」より
関係人口施策を成功させる3つのポイント
関係人口の創出において、現場の自治体職員が直面しやすい壁と、それを乗り越えるための実務上のポイントを整理する。
地元住民・事業者との“温度差”を解消する
行政や受け入れ事業者が前のめりになっても、地元住民が“見知らぬ外部の人”に困惑しては施策が成立しない。事前に住民説明会やワークショップを丁寧に重ね、“なぜ関係人口が必要なのか”という目的共有と受け入れ態勢を整えることが重要だ。
単発で終わらせない“継続的な接点”を設計する
単発のイベントやツアーで終わらせず、SNSコミュニティや定期的なオンライン交流会、ニュースレターの発行などを組み合わせる。デジタルも有効活用しながら、現地に行けない期間でも“日常的な接点”を維持する仕組みづくりが不可欠となる。
ターゲットを絞り“関わり方の選択肢”を明示する
“誰でも歓迎”というあいまいな募集では、継続的な関わりにつながりにくい。“どんなスキルを持つ人に、どのような形で地域づくりへ関わってほしいか”という具体的な関わり方の選択肢を提示することが、質の高い関わりを引き出すカギとなる。
まとめ
関係人口の創出・拡大は、地域の課題解決や持続可能性を高める取り組みとして全国の自治体で模索が続けられている。
関与度に応じた段階的な環境整備をはじめ、地域住民との丁寧な合意形成、デジタルを活用した日常的な接点の確保など、現場での地道な設計が成果につながる要素とされている。地域の特性や抱える課題に合わせ、どのような関わり方の選択肢を用意できるか、整理することが関係人口づくりに向けた最初のステップになるといえそうだ。















