公開日:
【セミナーガイド巻頭掲載】自分は自分のカラーでいいんです

公務員を応援するインタビュー企画、第7回は、元・サッカー日本女子代表の澤穂希さん。現役時代から引退後の今に至るまで、どんなステージでも“自分らしさ”を大事に道を切り開いてきた澤さんに、お話を伺いました。

澤 穂希 氏
元・サッカー日本女子代表
1978年生まれ、東京都出身。15歳でサッカー日本女子代表に初選出され、長年にわたり日本女子サッカー界を牽引。2011年FIFA女子ワールドカップではキャプテンとして日本代表を初優勝に導き、大会MVPと得点王を受賞。同年、FIFA最優秀選手賞を受賞した。2015年に現役を引退後は、一児の母として子育てをしながら、スポーツ普及のために幅広く活動している。
迷っているということは、やりたいということ
──大学時代にアメリカへ渡る決断をされています。振り返って、その挑戦にはどんな意味がありましたか。
当時は大学で勉強をしながらサッカーをしていたんですが、女子サッカーの環境は今と全然違いました。クラブからも「続けたいなら自分でアルバイトを探してほしい」と言われていて。そんなとき、アメリカでプロリーグができるという話を聞いたんです。英語も話せないし、お金もない。そもそも本当にプロリーグができる保証もなかったんですけど、「迷っているということは、やりたいということ」なんだろうなと思って。やらないことには何も始まらないし、自分の人生を親や友達が切り開いてくれるわけではない。自分が思ったときに、思った行動を取るしかないと思い、渡米を決めました。
アメリカの文化に飛び込んでみて大きく変わったのは、自分の意見をちゃんと伝えないと、存在していないのと同じなんだと気づいたことです。ただ待っていてもパスは来ない。自分がどうしたいのか、何を考えているのかを伝えないと、誰にもわかってもらえないんです。そこで、自分の意思を言葉にする大切さをすごく学びました。
メッシが10人いたって試合に勝てるわけじゃない
──キャプテンとしてチームをまとめていたとき、大切にしていたことはありますか。
一番大切にしていたのは、一人ひとりとのコミュニケーションです。同じことを伝えるにしても、Aさんにはこういう言い方がいい、Bさんにはこのタイミングの方がいい、というのは全部違います。だから、日頃から何気ない話も含めて、その人を知ることを大事にしていました。
キャプテンだからといって、全部を一人でまとめないといけないわけではありません。自分ができないことは、他の選手がカバーしてくれる。弱いところや苦手なことも、見せていいんです。2011年のワールドカップ決勝のPK戦では、私は本当は4番目に入っていたんです。でもPKは苦手だったので、監督に「苦手です。行きたくないです」と素直に伝えました。そうしたら得意な選手が行って、結果を出してくれた。これがチームのよさですよね。全部を一人で背負わなくていい。補い合えばいいんです。
よく言うんですが、リオネル・メッシが10人いても試合に勝てるわけではありません。いろんなタイプの選手がいて、それぞれのよさが融合するから勝てる。だから人と比べなくていいんです。比べるからしんどくなる。自分は自分のカラーでいい。その人にしか出せない色が、必ずあると思います。
新しいことを知るのって、すごく楽しい
──引退後は、子育て心理や食生活など、複数の資格を取得されています。学ぶことを今はどう捉えていますか。
現役時代は仕事であるサッカーに集中していたので、他のことを考える余裕はあまりありませんでした。引退して子どもが生まれ、幼稚園に通い始めた頃に少し自分の時間ができたんです。そこで、家族のためによい知識を身につけたいと思うようになりました。学ぶ内容も、資格を取ることを目的にしたり、誰かの真似をしたりするのではなく、自分に必要なことを選んでいます。家族や自分の生活のためになると思った知識を、少しずつ増やしている感覚です。
たとえば子育て心理だと、初めて母親になると、わからないことばかりなんですよね。そんなとき、褒め方や叱り方にしても、知識があるかないかで子どもへの接し方が変わってきます。自分に余裕がないと感情的になってしまうこともあるけれど、少しでも知っていれば、対応の仕方を考えられる。知ることで日々の行動が変わるんです。
それに新しいことを知るのって、すごく楽しいんですよね。座学的なことだけじゃなく、子どもと過ごす日々自体も新しいことの連続、学びの連続です。それが全部楽しいと感じています。
いろんなポジションができれば試合に出るチャンスが増える
──公務員は異動も多く、新しい環境や役割に向き合うことも多いと思います。そんな皆さんへ、メッセージをお願いします。
新しい場所では、最初からうまくいかなくて当たり前ですよね。私も海外のチームに行ったときは、言葉も違うし、生活環境も違うし、最初から全部できるわけがありませんでした。でも、徐々に自分なりに努力して、工夫して、自分を知ってもらいながら役割をつくっていく。その繰り返しでした。
異動や新しい仕事も、同じだと思います。最初はわからないことだらけでも、そこで得た知識や経験は、次の場所でも必ず活きる。サッカーでも、いろんなポジションができる選手は、試合に出られるチャンスが増えます。できることが増えるというのは、選択肢が増えるということなんです。
そして、「やってみたい」「変えてみたい」と思うことがあるなら、絶対にどんどんチャレンジするべきだと思います。迷っているということは、きっとやりたい気持ちがあるということだから。やってみた結果、自分の思った通りにならなかったとしても、それは失敗ではなく経験です。やれば必ず学ぶことがあるけど、やらなければ何もない。
本当に、“一歩踏み出す勇気”だと思うんです。その一歩を踏み出して、新しい扉を開けば、そこには今まで見たことのない景色があるかもしれない。人と比べすぎず、自分の気持ちをちゃんと伝えて、自分のカラーを出していく。その積み重ねで、道は少しずつ開けていくし、広い世界につながっていくと思います。
















