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【セミナーガイド巻頭掲載】いくつになってもビビッドな心で

公務員応援企画 INTERVIEW
公務員を応援するインタビュー企画、第8回は、「尾木ママ」として親しまれている尾木直樹さん。教員や教育評論家など、様々な形で教育に携わり続けてきた尾木さんに、“成長”や“学ぶこと”についてお話を伺いました。

尾木 直樹 氏
教育評論家
1947年生まれ、滋賀県出身。早稲田大学卒業後、私立高校と東京都の公立中学校で22年間教壇に立ち、子どもに寄り添う教育を実践。その後、大学教員などを経て、現在は教育評論家、法政大学名誉教授、東京都立図書館名誉館長。メディアでは「尾木ママ」の愛称で親しまれ、執筆や講演、SNSでの発信を通じて、教育や子育て、いじめなど幅広い課題に向き合い続けている。
95%悪くても、5%くらいは共感できる部分が必ずある
──公立中学校の教員としてのご経験もお持ちですが、子どもたちと向き合う上で大切にしていたことは何ですか。
一番大切にしていたのは、頭ごなしに決めつけないことです。教員から見れば明らかに悪いことをしている場面でも、「何やってるんだ!」と怒鳴るのではなく、まず「どうしたの?」と理由を聞く。僕はいつもそうしていたので、子どもたちから「どうしたの先生」と呼ばれていたくらいです(笑)。話を聞いてみると、たとえ95%は悪くても、残りの5%くらいは「なるほど」と思える部分が必ずあるんです。そこに共感し、「それは大変だったね」と受け止めると、子どもは自分の問題に気づき、自分の力で立ち直っていく。こちらが無理に変えようとしなくても、勝手にエンパワーメントされて成長していくんですよね。
行政の仕事は組織として動くので、学校とまったく同じではありません。でも、良かれと思って一人で突っ走るのではなく、まず相手の声を聞くことは共通して大切だと思います。今の時代は、対面だけでなく、オンラインなども活用できますよね。「どうすればいいと思いますか」と問いかけ、一緒につくり上げていく。そういうことを大事にしてみるといいのではないでしょうか。
小さな「できた」の体験から人はどんどん伸びていける
──人が成長するためには、どんな経験が必要だと思いますか。
一つでも「できた」という経験を持つことだと思います。中学校で担任をしていたとき、児童養護施設から通っていた生徒がいました。字を書くことも勉強も苦手で、今で言えば発達障害の特性がいくつか重なっていたのだと思います。その子がある日、「先生、俺、高校に行きたい」と言うので、国語や数学を毎日のように教えました。本当に大変でしたが、本人に高校へ行きたいという強い意志があったので、合格することができました。
その子が中学校の卒業前に書いた振り返りの作文は、以前とは見違えるほどしっかりしていました。段落があり、漢字を使い、きちんと読める文章になっていた。「合格」という経験が変化を生んだのでしょうね。僕はうれしくて、コピーを取り、校長や教頭、ほかの先生たちにも配って歩きました。そして高校に入ると、3年間無遅刻・無欠席で通い、皆勤賞をもらったんです。
一つ達成をすると、それまでできなかったことまで、できるようになることがあるんです。成功体験が次の成長を引き出していく。この力は子どもだけのものではありません。大学生や大人でも同じです。小さくても「できた」と思える経験が一つあれば、そこから人はどんどん伸びていけると思います。
閉じこもらずに確かめにいけば違う世界が見えてくる
──長年、学び、調べ、発信し続けてこられた原動力は何でしょうか。
僕の場合、心が動くことが出発点です。「どうしてこんなことが起きるんだろう」という疑問もありますし、怒りが原動力になることも多いですね。
最近では、SNSを介した子どもの性被害の深刻な現実を知り、強い憤りを覚えました。どうしたら防げるのかと考える中で、科学的根拠に基づく包括的性教育の必要性を痛感しました。そこで、専門家や関係団体をつなぐ「CSE HUB」を立ち上げ、情報発信や連携づくりに取り組んでいます。心が動いたら、そのままにせず、自分に何ができるかを考えて動くんです。
たとえばいじめについても、かつては「日本特有の現象だ」と言われていました。でも、本当にそうだろうかと疑問に思って調べてみると、ノルウェーをはじめ世界各国で起きていた。そこでそのことを新聞に書いたところ、文部科学省が調査し、国際シンポジウムが開かれるまでに至りました。閉じた世界の中で思い込まず、自分で確かめにいくと、それまでとは違う事実が見えてきます。
これまでに300冊を超える本を書いてきましたが、それも「あれは何だろう」「もっと知りたい」と関心を広げてきた結果です。自分の心が引っかかったことを放置せず、調べ、誰かに会い、さらに考えてみる。そうすると、一つの疑問が次の学びへと連鎖していく。それが楽しいんですよね。
学ぶ力は「感動力」だと思います
──最後に、公務員として日々働く皆さんへ、メッセージをお願いします。
今はカスタマーハラスメントなどもあり、公務員の皆さんは本当に大変だと思います。ただ、強い言葉を向けられたときに、それをすべて個人の問題として受け止めないでほしいんです。背景には、社会への不満や制度上の問題など、構造的な要因もあります。「これは自分一人に向けられたものではなく、社会の矛盾がここに表れているんだ」と捉えるだけでも、心はずいぶん軽くなります。一人で全部を抱え込まないでください。
そして、いくつになっても、人は発達したい、成長したいという意欲を持てます。僕も間もなく80歳ですが、それは変わりません。学ぶ力とは、言い換えれば「感動力」だと思うんです。何かを見て驚く、疑問を持つ、腹が立つ、心を揺さぶられる。そうやって心が動くから、もっと知りたいと思い、次の行動につながっていく。目の前の人や出来事を決めつけず、自分の心が動いた瞬間を見逃さないでほしい。いくつになっても、ビビッドな心を持ち続けてくださいね。
















